BOYS LOVE STORYアジア・オセアニア

種類 ショート
担当 葉月十一
芸能 3Lv以上
獣人 1Lv以上
難度 難しい
報酬 8.8万円
参加人数 8人
サポート 0人
期間 09/22〜09/25

●本文

 ――それは、出会ってしまった二人の物語。

 壁際に縫い取られた身体。
 押さえつける腕は、自分の力ではビクともせず。突然の行為にただ戸惑いだけが全身を過ぎる。
「は、離――」
 せ、と言いたかった口を塞いだのは柔らかい感触。
 驚きのあまり頭の中が真っ白になった。
 抵抗に力を失くせば、ゆっくりと離れていく相手の身体。
 そして。
「‥‥わりぃ」
 呟きとともに、彼はその場を立ち去る。
 後に残されたのは自分ひとり。ワケもわからず、ずるずると凭れた壁伝いに力なく座り込んだ。
「なんだよ、それ――」

 ――絡み合う少年達の想いの、激しくも切ない物語‥‥。


●出演者募集
○少年(主人公)
 基本的に十代(中学〜高校まで)の少年。性格設定等は任意に。
○相手役
 年下から同学年、上級生、教師など役付けや性格の設定は任意に。
○その他
 彼らを取り巻く人々。幼馴染み、クラスメイト、親友など自由に設定して下さって結構です。勿論、主人公達に恋愛感情有りで絡んで頂くのも構いません。

●設定
 話の筋や結末に至るまで、基本的に皆様で話し合って決めて下さい。OPから分かるように、そういうジャンルの恋愛映画になりますので、苦手な方はご注意下さい。
 なお公開の関係上、基本は全年齢向け作品となりますので、あまりに過激な台本には映倫ならぬ寺倫による修正が入ります事をご了承下さい。

●今回の参加者

 fa0074 大海 結(14歳・♂・兎)
 fa2029 ウィン・フレシェット(11歳・♂・一角獣)
 fa2850 琥竜(26歳・♂・トカゲ)
 fa4263 千架(18歳・♂・猫)
 fa5019 大河内・魁(23歳・♂・蝙蝠)
 fa5035 ラファエロ・フラナガン(12歳・♂・狼)
 fa5313 十軌サキト(17歳・♂・一角獣)
 fa5825 仲間好色(10歳・♂・狼)

●リプレイ本文

●PART:1『クラスメイト』
 ――ったく、なんなんだよアイツ!

 叫びたい衝動を必死で抑えながら、少年――桐原真樹は腹立たしさに一人イラついていた。
 昨日のことを思い返すたび、普段考えない頭がグルグルと回る。おかげですっかり寝不足になったというのに、肝心のアイツ――同じクラスメイトの和泉蒼は、何もなかったかのように平然としていた。
(「これじゃあ、必死で考えてた俺の方が馬鹿みたいだ」)
 相変わらずの無表情で、無愛想。
 思わず真樹がキッと睨んでみても、蒼はまるで表情を変えない。寧ろ、視線が合えばこちらをじっと見るから、自分の方が先に顔を背けてしまった。
「まーさきー!」
「うわっ!?」
 急に後ろから抱きつかれた。
 振り向かなくても、声だけで分かる。友人の海田 真生斗だ。
「ちょっ、真生斗! いきなりビックリするだろっ」
「ん〜おはよっす!」
 大声で抗議しようが、彼はいっこうに気にせず、更に挨拶とともに頭を撫で回してくる。過剰なスキンシップは帰国子女だから、という理由だが、元々の性格もあるだろうと真樹は思ってる。
 ニコニコと楽しげな真生斗の様子に、結局いつも好きなようにさせてやった。
 すると。
「んで? えらく難しい顔してたけど、なんかあった?」
 グッと思わず押し黙る真樹。
 さっきまでの天真爛漫な笑顔とは一転、真生斗の表情は真面目なものだ。こういうところが友人としていいところなんだろうな、と真樹は思う。絶対口に出して言わないけど。
 だから、思わずポロッと言葉が零れてしまった。
「――あのさぁ」
「うん?」
「男にキスしたいとか思うことある?」
 一瞬の沈黙。
 言わなきゃよかった、と後悔しかけた真樹に、真生斗は今日一番の笑顔でこう答えた。
「好きならいいんじゃねーですかい?」
 相変わらず微妙な日本語だ。
 思わず洩れる苦笑とともに「サンキュ」と礼を言うと、真樹は蒼の姿を探した。さっきまで感じてた視線の場所にはもう居なくて。
「アイツ‥‥!」
 考えるより先ず行動、が自分の信条じゃないか。
 そう思った途端、真樹は廊下を駆け出していた。

「――おうおう、青春だねぇ」
「つか先生、さっきからずっと見てたじゃん」
 走り去る真樹の後ろ姿を見送る真生斗が振り向いた先には、体育教師である斉藤の姿があった。真っ赤なジャージにサンダル、ソフトリーゼントの髪型というある意味定番のスタイルだが、それなりに生徒には威嚇の効果を示している。
 もっとも真生斗自身は、別段気にもしなかったが。
「よっぽど悩んでんなら、相談にでも乗ってやったがなぁ」
 口調は教師のそれだが、口元が微妙に歪んでるのを真生斗は見逃さない。
「先生、大人の悪い顔ー!」
「こら、からかうな」
 斉藤が態と腕を振り上げると、きゃーとダッシュで逃げる真生斗。
 その姿を追ってやれやれと苦笑した後、ふと視線を先程姿の消した生徒の元へ向ける。
「‥‥ま、思ったとおりにやればいいさ」
 呟いた小さな囁きは、誰に届くともなく鳴り響くチャイムの音に掻き消された。


 ――それから、数日。
 結局、キスの理由については、蒼の無表情に近い真顔で有耶無耶に誤魔化されてしまった真樹。
「ふざけんな!」
 そう怒鳴ってもまるで堪えない相手に、何もなかった事にしよう、と決意したのだが‥‥。

「蒼、何見てるーん?」
 真生斗が軽くスキンシップを仕掛けようとするのを、蒼はただジロリと無表情で見返した。
 そのまま、何も言わず席を離れていく背中を別にメゲることなく見送ると、蒼がさっきから見ていた場所へと視線を移す。
 そこには友人の真樹がいた。
 どうやら向こうの方も蒼の視線に気付いていたらしく、自分と目が合った途端、真っ赤になって顔を逸らした。
 その様子が面白くてニヤニヤしてると、怒ったような表情でキョロキョロし始めた。
(「ああ、探してんのかぁ?」)
 そう思って蒼が去って行った方を指差してやると、彼はますます顔を赤くしながらも同じように教室を出ていった。
 なんだ、両思いじゃん。
「マサキ、がんばるよ! じゃなかった、がんばーれよ!」
 咄嗟に真生斗が叫ぶと、廊下から「うっさい!!」と怒鳴り声が聞こえた。

 楽しげに笑う声を背に、真樹が向かったのは屋上。
 ここ数日、どうしても蒼の行動が気になっていたから、一人になりたい時に彼が何処へ行くのか検討が付いていた。
 案の定、フェンスに凭れかけた姿でぼんやりと空を眺めている。その表情を見て思わず胸がギュッと捕まれた感じがした。
(「くそ、なんなんだよこれ!」)
 真樹に気付き、よお、と声を上げる蒼の口元はニヤリと歪んでいる‥‥ように見えた。
 思わずカッとなり、つい大声で喚き立ててしまう。
「な、なんなんだよお前!」
「何が?」
「いつもいつもじーっと俺の方見てさ、なんなんだよ」
「別にいいじゃん。迷惑かけてねえだろ?」
「め、迷惑っつうか、なんか気になるだろうが!」
(「ああ、もう、なんだってこんなに喚いてんだよ、俺は」)
 自分でも何がなんだか分からない感情に振り回されてる気がして、もはやパニック寸前だったその瞬間――唇に触れた温もり。
 一瞬、静まり返る屋上。
 そして。
「‥‥こうすれば黙るんだよな」
 真顔で言われ、頭が真っ白になった真樹は――反射的に手が出ていた。
 ぐぅ、と唸り声を上げて蹲る蒼。
 自分のした行動にハッと気付いて、慌てて声をかける真樹。
「わ、悪ぃ。そんな思いっきりやるつもりは‥‥」
 小刻みに震える肩に尚更心配そうな顔をすると、途端弾けたような笑い声。
「なっ!?」
「騙されてんなよ」
 大笑いする蒼に、顔中真っ赤にする真樹。
「な、何笑ってんだよ。‥‥心配して損した」
 ふいっと顔を背けてぶっきらぼうに呟いたのは、内心のドキドキを隠すため。
 だって仕方ないだろう。蒼のあんな笑顔なんて初めて見たんだから。
 この時になって、真樹はようやく自分の気持ちに気付いてしまった。あんな事があって、嫌だと思ったのに、それでも目を逸らす事が出来なくて。
 それは蒼も同じで。
 思わずしてしまった行為は、きっと自分でも気付かなかった本心だったのだろう。
(「――結局、答えは決まってたんだぜ」)
 内心の笑みを隠し、真樹を見つめる蒼。
 それに応えるように真樹が問いかける。
「お前、俺のことどう思ってんだよ?」
「――惚れたっぽい。他の奴じゃそそられねぇし」
 いたく真面目な表情に、誘われるように顔を近づける真樹。
「俺も‥‥蒼のこと、好きだ」
 掠めるようなキス。
 すぐに離れようとしたのを、蒼の手が頭をしっかり掴んだかと思うと強引に引き寄せた。思わずバランスを崩しかけたところへ、見上げる蒼の口元が笑みを刻む。いっそ艶やかな。
「‥‥コレ答え、な」
 塞いだ唇は甘く、優しく――互いの熱をじゅうぶんに伝えた。

●PART:2『教師と生徒』
「やれやれ。愛の告白かと思えば、そんな質問か? もしかして先程の授業中もずっとそのことを考えていたのか?」
 かわいい奴だな。
 そんな言葉を軽く言われ、シン・マクドナルドは思わずかちんときた。
「か、可愛いって‥‥男がそんな事言われて嬉しい訳がないだろう!」
 怒鳴った声が無駄に響く。
 思わずハッとするシンだが、ここが体育館裏で誰もいなかったことを思い出して安堵する。そんな自分の慌てる様を、目の前の男――物理教師の鳴海 恭一は事も無げに眺めていた。
「お、男に、あんな、こと‥‥」
「別に構わないだろ。したいからしただけだ。男同士で何か不都合でもあるのか?」
「ふ、不都合って――ありまくりだ!」
「どんな?」
「え、と‥‥その‥‥」
 思い切りストレートに返され、シンは思わず言葉に詰まる。
 どんなってそりゃ、とかなんとか何度も言いかけて、結局何も言いたい言葉が浮かばない。そのうちに自分でも訳が分からなくなり、なおも言い募ろうとした、その時。
「でも――――ッ!?」
 目の前には恭一のどアップの顔。当然その距離は数センチ。唇に至ってはゼロだ。
 それはつまり、またしても強引に奪われてしまったワケで。
「立ち話もなんだな。物理準備室に居るから、いつでも来いよ」
 去り際にそんな言葉を残して、余韻の欠片すら見せずに彼はその場を立ち去った。後に残されたのは、茫然と立ち尽くすシンひとり。
 結局、昼休みを終えるチャイムが鳴るまで、彼はその場所で固まったままだった。


「――シン? 帰ったのか?」
 玄関で靴を脱いだシンに、居間の方から父が声をかけてくる。
「あ、ああ。父さん。ただいま」
 よっぽどぼんやりとしていたのだろう。顔も合わせていないのに、声だけで心配そうに尋ねてきた。
「どうした? 学校で何かあったのか?」
「あ、うん、いいや。なんでもない」
「そうか」
 実際何かあった、なんてものではなかったが、変に心配かけるのはマズい。何しろ父は身体が弱いのだ。下手に告げて、ショックを受けてはたまらない。
「ちょっと疲れてるだけだ。寝れば大丈夫さ」
 そう言って、シンはそのまま自室へと向かった。


 それからの日々は、不思議と楽しい毎日だった。
 誘われるまま、何度も準備室へ足を運ぶシンを、恭一はいつも笑顔で迎えてくれる。時折仕掛けてくる変なちょっかいに、真っ赤になって怒鳴っても相手はどこ吹く風で平然としている。
 そんな日々が、自分でも気付かぬうちに心に入り込んでいたようで。
「あれー? 兄貴、なんか最近、妙に楽しそうじゃん。ひょっとして彼女でも出来たー?」
 そう言って、弟のクリス・マクドナルドにからかわれる程に、どうやら自分は彼に会うのを楽しみにしているみたいだった。
 そのうち、毎日逢わないと物足りなくなってきている自分にシンは気付く。
 平日はいい。
 だが、土日で会えないと不安が募る。連休が続くと変に胸の辺りがモヤモヤするのだ。
(「‥‥なんだよ、これ? 俺、ひょっとして‥‥」)
 当然、彼のそんな変化に恭一が気付かぬわけがない。
 何しろ、シンと初めて会った時から、ずっと彼の事を見続けていたのだ。その為にあれこれと画策し、ようやく彼の視線をこちらに向かせることに成功した。
 後は、背中をひとつ後押しするだけ。
 そのチャンスは意外と早くやってきた。

「――これ」
 シンが渡されたのはシルバーの指輪。
 別段、普通の装飾品の類の筈だが、恭一の真面目な顔が一つの意味をそれに持たせる。驚いて見返すシンに、彼はいっそ清々しい程に言葉を綴った。
「シンが高校卒業したら、海外で結婚しよう」
「え?」
「俺は本気だ」
 どくん、と心臓が一つ跳ねる。
 激しくなる鼓動とともに、顔中が熱を持っていくのを感じた。きっと今の自分はひどく真っ赤になっているだろう。
 相変わらず言う事やる事メチャクチャだけど、多分この言葉は真実。それが伝わるだけに、今自分はどんな顔をしてるだろうと不安にもなる。
「シン、返事は?」
 恭一に促される形で、シンは自分の気持ちをハッキリと自覚する。
 そして。
「俺も――恭一が好きだ」
 笑顔で、頷く。
 ふっと覆い被さってくる影にシンのまぶたがゆっくり閉じた。その意図を恭一は間違える事なく読み取り、僅かに上向きだった彼の唇に自分のそれをそっと重ねていく。


「――あれぇ? シン兄が勉強してる〜?」
「うっせぇ! お前、あっち行けよ」
 目を丸くして驚く弟に、シンは顔を真っ赤にして怒鳴り散らす。
 おおこわ、とそそくさ避難するクリスに父親が書斎の方から声をかける。
「クリス、出かけるのか?」
「うん。兄貴がイキナリ勉強し始めたから、雨で降らないといいけどね?」
 苦笑するクリスは、「気をつけろよ」と送り出す父の声を背に玄関から空を見上げた。雲一つないきれいな青空。
「行って来ます!」

 澄み渡る大気の中で、少年の元気な声がどこまでもこだました――――。

●キャスト
 【PART:1】
 桐原真樹:大海 結(fa0074)
 和泉・蒼:千架(fa4263)

 海田 真生斗:十軌サキト(fa5313)
 斉藤:琥竜(fa2850)

 【PART:2】
 シン・マクドナルド:ウィン・フレシェット(fa2029)
 鳴海 恭一:大河内・魁(fa5019)

 クリス・マクドナルド:ラファエロ・フラナガン(fa5035)
 父(声の出演):仲間好色(fa5825)