IDOL Audition【本選】アジア・オセアニア
種類 |
ショート
|
担当 |
葉月十一
|
芸能 |
3Lv以上
|
獣人 |
フリー
|
難度 |
難しい
|
報酬 |
なし
|
参加人数 |
8人
|
サポート |
0人
|
期間 |
09/25〜09/29
|
●本文
●次世代アイドル募集――最終選考
ハイパープロジェクト――通称ハイプロ――のオフィシャルホームページ上で告知された新世代のアイドルグループのメンバー募集。
『Global Artistic New Generation IDOL』――通称『GANG』
『Global(世界的)』で『Artistic(芸術的)』な『New Generation(新世代)』のアイドルを発掘しようというプロジェクトは、その募集を全世界規模に広げ、アジアのみならず、欧州、中東、南北アメリカの会場で多くの参加者が集まった。
その結果、各会場の予選を突破したのは、たった9名にまで絞られた。
本来ならその九名で競い合う形にするべきだが、まだ見ぬ原石がいる筈だ、との今回の仕掛け人でもある須崎渉(fz0034)の一声のもと、敗者復活という形で先の9名に加えて若干名程募集する形になった。
応募要項は以前と同じく、中学生以上で歌う事が好きな者であればプロアマは問わないといったもの。 勿論、正式の予選を突破していない以上、予選突破者に比べればマイナスからのスタートになる。そんなハンディをも吹き飛ばすぐらいの熱意を持った人材ならば、きっと他のメンバーに負けないだろう。
そんな渉のコメントが、告知ページの最後に掲載されていた。
○最終選考課題
四人一組のグループとなり、提示された課題曲をそれぞれが協力して歌うこと。振り付け、パート割り等は各自で考えること。
今回は、歌い方や振り付けも含めてアイドルとしての総合力を審査します。グループ分けをした理由は、グループになることでどのような行動(プレイング)をするかを見る為です。その為、グループ全員が合格メンバーになるとは限りません。
ちなみにグループ割りはミーティングルームでの挨拶順とし、1→A、2→B、3→C‥‥の順番になります。
なお今回の最終選考後でメンバーに選ばれた者は、職業欄が『GANGハイプロ』となる事をご了承下さい。
○課題曲
『光と闇の黙示録』
近付いてくる 滅びの音色 一瞬の罠
運命の糸 絡みついて もう逃げられない
戦いの舞台は整えられてく 予定調和
さあ 運命のダイスは 今投げられた
※
光と闇が交差していく 本当の意味も判らないのに
虚構と現実 目を閉じたまま 一番最後に嗤うのは誰?
※
囁いている 記憶の欠片 夢現に
傾く天秤 零れ落ちて もう止められない
届かぬ声にそれでも張り叫んでる 道化のように
きっと 答えはそこに あると信じてた
光と闇が埋め尽くしてく 真実の鍵を隠したままで
最後と最初 背中合わせで 悲劇の幕が静かに開く
冷たい雨が世界を閉ざしていく 螺旋回廊
もう 帰る場所さえ 失くしていたのに
※
求めた未来 手を伸ばしても 手の中に残る真実は何?
●リプレイ本文
●A班――咲き誇る花
「いよいよですね」
緊張した面持ちで、それでも微笑を浮かべようとするEUREKA(fa3661)の言葉に、七瀬紫音(fa5302)と祥月 暁緒(fa5939)は静かに頷いた。
ようやく辿り着いた最終選考。その中でチームを組んだ三人。
彼女たちの中でこれまでの練習が、走馬灯のように蘇ってくる。
「ここまで練習出来たのは、お二人のおかげだね。私一人だったらとても無理だったよ」
「そんなことはありません。私こそ、まだデビュー仕立ての身ですから、お二人に色々とご迷惑をおかけした筈です」
紫音の言葉を受けて、暁緒が謙虚に返す。
そんな互いを尊重し合う気持ちがあったからこそ、今回のチームでも一緒になって一つのものを創り出していけた。
二人の様子を見て、EUREKA自身はそう感じる。
だからこそここで廃るわけにはいかない、と彼女は微笑を浮かべて宣言する。
「此処まで来たからには、ベスト以上を尽くすわ! 一緒に頑張ってきました仲間の為、そして待っていてくれるかもしれないファンのためにも」
「今はもう、『GANG』以外の名前は欲しくありません。だから、私の‥‥私達の最高の歌を披露します」
続く暁緒が、自分の意気込みを言葉に乗せる。
そして。
「須崎さんの笑顔が見たくて、仲間の力を借りてきました。どうぞ、よろしくお願いします♪」
――流れてきた前奏は、勢いに乗ったメロディ。
中央に立つ暁緒。右後にEUREKA、左後に紫音が位置し、時間差でターンすると白いベールがひらりと舞う。
最初は、EUREKAと紫音の歌声。
すかさずベールに隠れた暁緒が姿を見せて続きを歌う。そのまま三人、顔を隠したまま後ろへステップしながら声を合わせていく。
それぞれがお互いの位置を確認しつつ、彼女達はくるくる回る。
歌声を、踊りを、丁寧に一つ一つ掛け合わせ、彼女達独自の世界が作られていくのを、渉はじっと観察している。
やがて間奏が流れると、祈りを捧げるようなポーズを取る三人。位置を変えながらも、彼女達は渉に背を向ける事は殆どなかった。
全てを見てもらうように――そんな思いがひしひしと伝わってくる感じだ。
二番に入ると、更に動きも激しくなっていく。それでも滑らかな動きにしようと動かす手足は、その指先までしっかりと力がこもっていた。
EUREKAと紫音が暁緒をベールで隠す。そのまま彼女が下がると、二人は素早く近付いて互いの背中を合わせた。
そしてクライマックス――左右に離れた間から、暁緒が前へ出ると三人で声を合わせて歌い上げる。
その後、僅かな間奏の後で少しテンポが下がると、項垂れる二人を後ろに暁緒が一人歌う。そして、まるで雨を振り払うような仕種を受け、三人は基本の位置へと戻ると、最後の盛り上がりを見せた。
伸ばした腕。掴み取る未来。胸に抱いて祈りのポーズ。
そのまま――曲はゆっくりと終わる。
●B班――いつまでもそばに
「絢香ちゃん、セシルちゃん、今日はよろしくね」
「ううん、こちらこそよろしく」
「皆と逢えて、このオーディション受けれてよかった」
笑顔の悠奈(fa2726)に、セシル・ファーレ(fa3728)と榛原絢香(fa4823)も同じような笑顔で返す。
ここに来るまで、事前にしっかりと打ち合わせを行った三人。
歌も踊りも半人前だと自覚する悠奈は、それこそ自分が納得するまで頑張ったつもりだ。今は皆と一緒にしっかり合わせる事だけを考えている。
当然、踊りに気を取られて歌を疎かにしないよう、自分に自分で言い聞かせる。
(「大丈夫。あれだけ練習したんだもの。きっと出来るよね」)
一方のセシルは、緊張を隠すように常に笑顔である事を心がける。
オーディションだと、今だけは考えない。これは自分にとってはいつもの大切なステージ、いつでも本番の気持ちだ、と言い聞かせていた。
「‥‥四人目のメンバーは、私達の歌を聞いてくれる皆さん」
「え?」
ポツリと呟くセシルに、悠奈は思わず振り向く。
ね、と同意を求めると、その言葉を聞いていた絢香はうん、と強く頷いた。
「皆と逢えて、オーディション受けれて、私本当によかったよ。これからも絶対、一緒に活動したい‥‥GANGとして!」
はっきりとした意気込みを、彼女は口にする。
それは他の二人にとっても同じ事。
気持ちは、一緒だ。
「――それじゃあ始めるぞ」
プロデューサーの渉の声に、三人は一斉に前を向いた。
「よろしくお願いします!」
――先程と同じメロディーライン、だが軽やかな感じに仕上がった曲調が流れ始める。
そのテンポに合わせるように、先ずセシルのソロが始まる。掛け合わせる二人の声を挟み、彼女はとびきりの笑顔を浮かべたまま。
やがて三人のユニゾンがそのままハモリへと変化し、サビへと入る直前にセシルが両手をふわりと差し出した。
サビへと突入すると、絢香と悠奈の二人は背中合わせに立ち、そのまま反転する。そして最後は三人でいっせいに前を見据える形でコーラスを合わせていった。
そんなサビの勢いのまま、二番は最初からアップテンポの曲調になり、三人はそれぞれに元気よく動き回った。その度に色違いのコサージュが胸元で揺れ、彼女達の元気よさをアピールする。
その後、間奏からラストのフレーズへは一旦テンポが落ち、大人しめな印象で絢香がソロを歌う。どこか子悪魔な印象の笑みを浮かべたまま、最後のサビへ突入していく。
そして、ラストフレーズ――一切のBGMが消え、三人の歌声だけが伸びやかに響く。
前へ出るセシル、その後ろで絢香と悠奈が向かい合って手を伸ばし――ゆっくりと重なるコーラスとともに、三人の手がそっと胸へと移動した。
そのまま、三人はアイドルらしいとびきりの笑顔で、静かに一礼する。
●C班――モノトーン・メロディ
「いよいよ本選だね」
ドキドキする緊張を胸に、月見里 神楽(fa2122)が向かい合うジュディス・アドゥーベ(fa4339)に言葉をかける。その声すら震えてる気がして、神楽自身あまり気が気じゃない。
なにしろ二年越しの夢なのだ。
『ハイパープロジェクト』――アイドルを夢見る者なら一度は所属してみたいプロダクション。その会社が募集をかけた新世代のアイドルグループオーディション。
今更ながら、どんどん緊張が強くなってる気がした。
そんな彼女の緊張を解すように、ジュディスの手がそっと神楽の手を掴む。
「大丈夫です。緊張しているのは私も同じですから」
「ほ、本当?」
「ええ。生憎と私達は二人だけですから、その分緊張も強いですけど」
そこで一旦言葉を区切ると、ジュディスは気合を入れるようにグッと手に力を入れた。
「その分精一杯アピールしてみせましょうね」
「――うん!」
そうだ、今更こんなに固くなってたら合格どころではない。
自分一人だけじゃなく、出来れば参加者全員が合格したい。
この五日間を通じて同じように何度も練習をする仲間を見て、彼女はそう考えるようになっていた。それはジュディスも同様で、その為には自分達が出来る精一杯を見せる他はない。
「Cグループ、よろしくお願いします」
「お願いします!」
二人の元気な声が、スタジオの中に響き渡った。
――流れてきたのは、うって変わった重低音ドラムとベースのリズム。
主旋律に流れるギターの音に合わせ、まずは神楽が一歩前へ出て歌い始める。その後ろでジュディスが、軽やかに見せながらも表情や仕種を垣間見せる形で踊る。
ジュディスが歌う時はその逆を。時折入るコーラスに乗せ、キーボードが少し低めのメロディを追う。
やがてサビに入ると、二人は前に出て左右が入れ替わるように動くと、対称的な振り付けを見せていく。そのまま神楽が高音部、ジュディスが低音部によるハーモニーを歌い上げた。
それから二番に入ると、今度は歌い手が逆となり、その合間にコーラスが入る。
サビの部分の振りは一番と異なり、最後の部分をゆっくりと背中合わせで距離を取るように別れて歩いた。
そのまま最後の箇所に差し掛かると、曲調は少しずつスローテンポになり、また音も抑え目にして声を強調する形に変化した。
やがてジュディスのハミングが終わると、最後のサビでテンポはそのままで音だけが元へと戻る。
そして、最後のフレーズに差し掛かった時、ゆっくりと落ちていく音とともに二人の動きも次第に緩やかになり、左右対称に片手を伸ばしたまま、軽く握りながら胸の前へと持ってくる。
浮かべた表情は少し切なげで、見ている者の胸を締め付ける印象だ。
そして――一切の音が消えた。
●結果発表
スタジオ内に並んだ八人は、誰もが固い表情だった。
彼女達の顔を一人一人眺める渉の表情も、いつも以上に無表情なものだった、と後にスタッフは語る。
そんな緊迫した空気が張り詰める中、ふっと彼の口元が僅かに緩む。
え? と誰もが思った、その時。
「それでは、不合格の者を発表する」
凛とした低い声。一気に緊張が高まる。
そして。
「――不合格者は、ゼロだ」
「‥‥え?」
思わず零れた声は、八人全員の心境。誰もがきょとんとした顔で互いを見る。
「聞こえなかったのか? 不合格者はゼロ、つまり――全員合格だ。どうやらこちらの予想以上に全員が協力し合う努力を怠らなかったようだからな。だから不合格者は無しだ!」
ニヤリ、と意地悪い笑みを渉が浮かべる。
その時になってようやく言われた事の意味を理解し、湧き上がる喜びから思わず歓声が飛び交った。
が、それを遮るような、再び渉の声。
「喜ぶのはまだ早いぞ。これからすぐレコーディングに入るぞ。既にデビューの日程は決まっているんだ。その日には、野外ステージを借りてのデビューライブが控えているからな。あまり日数はないんだ、モタモタしてる暇はないぞ!」
「あ、あの! デビューの日程って?」
イキナリの展開に思わずどもる神楽に、渉は再びニヤリと笑みを浮かべる。
「――10月25日、それが名実ともに『GANG』のお披露目だ」