光と闇の黙示録/第六章アジア・オセアニア
種類 |
ショート
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担当 |
葉月十一
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芸能 |
3Lv以上
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獣人 |
1Lv以上
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難度 |
やや難
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報酬 |
7万円
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参加人数 |
10人
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サポート |
0人
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期間 |
10/02〜10/05
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●本文
――『光』、或いは『闇』へと殉じる者達は、どこへ向かおうというのか‥‥。
崩壊の足音は、日に日に世界へと広がりつつあった。
先ず大都市が沈黙し、人々は不安と恐怖に混乱した。更に追い打ちをかけるかのように、理性を失くした人々が破壊の限りを尽くした。
逃げようにも、既にどこにも逃げ場がない事を数日の内に知ることとなるだろう。
破壊されていく日常に、人々はただ理解するほかなかった。どれだけ祈ろうとも、神は自分達を助けてくれないのだ、と。
「――もっと、もっとよっ!」
女王は高らかに声を張り上げ、死者を従える。
「さあ。貴方の忠誠を示しなさい‥‥」
巫女は託宣の如く指を差し、信者の命を使い捨てる。
「ふん、こんなものか。お前の血は」
暗殺者は恍惚な笑みを浮かべ、ただ紅い血を集めていく。
「‥‥捧げるんだよ、あの人に!」
鬼の子は苦痛に顔を歪めながらも、灼熱の業火で贄を捧げる。
そして。
「‥‥さあ、どうする? 『お前』が作ったモノは全て、俺が粉々に破壊してやるよ!」
復讐に染まる表情を浮かべ、少年は天へと咆哮する。
憎悪の連鎖が今ようやく成就しようとすることに、ただ彼は嗤う。廃墟の中に立ち、その手を血に染め上げたまま。
『少年』の力と呼応するかのように増大する闇は、眷族たる覚醒者達にも影響を与えた。その結果、光の覚醒者は苦戦を強いられる事となる。
元より防戦一方の戦況は、後手後手に回らざるをえず、それはひいては度々の敗戦を物語っていた。
それでも、もう一人の『暁』の声を聞いた今、なんとか闇の侵攻を食い止めようと必死だった。
「――なんとか彼だけでも」
悲痛な声を上げる少女は、痛む胸を押さえながら懸命に立ち。
「今生こそは、諦めたくはありません」
美丈夫な彼女は、受け継いだ光の中に希望を見出し。
「目覚めた以上、あの子のことを食い止めてみせるわ」
一番新しい戦士である少女は、ただ前だけを見つめて進む。
彼女らの意思に後押しされる形で、『彼』はもう一度頑張ろうと決意を新たにした。
その思いこそが、『光』にとっての唯一の――そして最後の希望。沸き起こる力は、徐々にだが眷属たる覚醒者へと知らぬうちに還元されていく。
――――『光』と『闇』、その結末は刻一刻と迫っていた。
●出演者募集
ファンタジー映画『光と闇の黙示録』は、子役である一哉主演(役名:神威暁)の連作映画です。
『闇の神』として覚醒した暁。彼率いる『覚醒者』達によって、世界は次々と闇に飲まれていく。絶望が人々の間に静かに、だが確実に蔓延していっていた。
そんな中、抗い続けた光の者達にも僅かな希望が見え始める。暁の中のもう一人の『暁』――彼こそが『光』の側の最後の切り札。
見出した希望を手繰り寄せるかのごとく、今『光』の反撃が始まる‥‥。
今回募集する役柄は、以下のとおりです。
○『光』/『闇』の『覚醒者』
光の力を操って世界の破滅を防ぐ、もしくは闇の力を操って世界の崩壊を促す者達。
どちらの覚醒者も力の覚醒方法は様々で、事故や戦いに巻き込まれて瀕死の状態から覚醒する者、天から啓示を受ける者、悪の誘惑に飲まれた者、生まれながらの覚醒者など。
覚醒の際、一つの根源から力を得、それに合わせた武器を一つだけ具現化する事が出来る。
なお、今回の覚醒者のうち、『光』『闇』それぞれに一名以上の死亡者(力を奪われる者)を募集します。話し合いの上、希望するPCはその旨をプレイング内にて明記して下さい。
■前回までに登場した覚醒者■
『光』サイド:植物(死亡1)、聖火、水、創造、大地(死亡1)、精神、鉱物
『闇』サイド:死、闇、背徳、破壊、悪意、灼熱、渇
○神威暁の父親
これまでに父と姉をPCが演じましたが、姉は第四章で死亡。そのため、今後は彼の家族を父親のみに限定します。希望者がいない場合は登場しない、もしくはNPCによって演じる形になります。
なお、家族はあくまでも一般人であるため、『覚醒者』にはなりません。
○『光』/『闇』サイドの協力者、その他暁の友人知人等
あくまでも一般人ですが、後々覚醒する者として設定しても構いません。
前回までの参加者は、そのままの役柄を継続しても、死亡した事にして別の役として登場しても構いません。また前回参加していないからといって今回覚醒者となれないことはありませんので、気楽にご参加下さい。
なお今回は戦闘がメインとなりますので、『誰と』『どの場所で』戦うかをプレイング内に明記下さい。
●世界設定
物語は、神話の時代から続く光と闇の争いを、中東を意識した神話に基づいた設定で構成されています。但し、あくまでも映画上の設定として用いられてるだけで、実在するものとは一切関係ありません。
○『光』サイド
光の最高神アフラ・マズダーの守護の元、人々を闇の恐怖から守る為に人知れず戦う者達。長い年月を経て協力者の存在もありますが、戦うのはいずれも覚醒した者達だけです。
なお、覚醒した際の力の源としては、『聖火』『水』『大地』『鉱物』『植物』『精神』『創造』の何れかとなります。
○『闇』サイド
悪神アンラ・マンユの教えに従い、人々に悪徳をばらまいて世界の崩壊を目的とした者達。人々を闇で操り、堕落させ、やがては破滅へ導くためならばどんな手段をも厭わず、その為しばし歴史的大事件を引き起こして世界を震撼させてきた。
彼らの力の源としては、『灼熱』『渇』『破壊』『死』『背徳』『悪意』『闇』からになります。
【追記・改】
なお、過去に於いて覚醒する者達は光も闇もそれぞれの源となる力と同じで七人だったが、近年は何故か同じ力の根源を持つ『覚醒者』が現れている。
これは、力の中心である『神』が、より自分の力を高める為に力の根源を分散させた為である。
○宝具
覚醒した際に具現化された武器の総称。
その種類は千差万別で、覚醒者達のイメージでその姿もまた変化する。名称もそれぞれによって異なり、覚醒者達によって命名される。
●リプレイ本文
――少年は、一人佇む。
虚無の闇を湛えた瞳を虚空に向け、口元に浮かべる笑みは本能的な恐怖を誘う。
が。
「‥‥ああ、そうだ。もうすぐ‥‥もうすぐ、終わりに出来る‥‥」
零れた呟きは消え入りそうなほど切なく響き。
彼に捧げられた命の山の中、その姿はどこか儚げに見えたことを――今は誰も知らない‥‥。
●硬き者、渇く者
「この辺だと思ったが」
光の手の者が集まる遺跡へ案内したピーチクラウンは、仲間と別れて一人砂漠の中を彷徨っていた。
そのうちに一つの光を見つけたピーチクラウン。
その姿を確認して、彼女は不敵な笑みを浮かべた。相手の方もこちらに気付いたようで、驚きに目を瞠る様子がどこか面白く感じる。
「あ、あなた‥‥っ!?」
「お前か。今度は生きて帰れると思うなよ」
『変化の指輪』――渇(ザリチェ)が求めるままの殺戮を得るため、ピーチクラウンの右手が剣へと変化する。
緊迫した雰囲気を察し、梢もまた戦闘態勢を取った。以前遭遇した時は、為す術もなく一方的な防戦を強いられてしまったが、今の彼女は違う。
「――私だってしっかり訓練したんだから!」
『光の彼』が教えてくれた。
自分のこの力は、『彼』を助けたいという『彼』の思いから生み出されたということを。だからこそ負けるわけにはいかなかった。
「‥‥ふん」
ピーチクラウンの鋭い太刀筋が梢を襲う。
その動きに翻弄されながらも、彼女は懸命に鉄扇で防いでいた。
時折反撃を繰り出すものの、相手にはなかなか当たらず、その度に鉄扇が砕けていく。その度に砂の中の砂鉄を集めることで、何度でもそれは再生されていく。
長引く戦闘が、彼女の『覚醒者』としての感を研ぎ澄まし、その力に見合った戦い方を見出していくようだ。
無論、ピーチクラウンとて最初は本気でなかった。
だが、相手の成長を肌で感じることで心のどこかで『闇』に属する者としてはあるまじき思考が脳裡を過ぎる。
徐々に早くなるピーチクラウンの動き。
それについてくる梢の成長
「なるほど、良いセンスしてるな」
「え?」
一瞬当たった、と思った梢の一撃は、すぐに跳ね除けられた。
殺られる。
そう思った次の瞬間、ピーチクラウンは何故か剣を下げ、変化を戻したのだ。相手の行動に訝しげな眼差しを向ける梢に、彼女は面白そうに笑いだしたのだ。
「そのセンス、今ここで失くすのは惜しい。次に会った時はもっと強くなっておく事だな」
呆気に取られた隙に、ピーチクラウンの姿は砂塵の向こうへ消えていく。
ワケが分からず、だがまたしても見縊られてしまった悔しさに、梢は空に向かって力の限り叫んでいた。
「この度会った時は、絶対私が勝ってみせるんだから!」
●漣は沈む、背徳なる悪意の前に
眼下に広がるのは、荒廃した魔都。
かつては闇を恐れるように連なっていた光の洪水も、いまや見る影もなく昏き影に沈んでいる。
「ここは神のように世界を見下ろせる最高の場所‥‥そうは思いませんか? イリスさん」
「ええ、本当に。ここからの眺めは素晴らしいですね」
恐怖と不安による混乱、そして破壊と殺戮の衝動。
もはや都市機能は麻痺したも同然の世界を、ファウストとイリスは東京タワーの外階段から微笑みながら眺めていた。
時折聞こえる雑音にも、最初は耳を貸さなかった二人だが、やがて耳障りな音が大きくなるにつれ、ファウストは小さく息を吐いた。
「間もなく様々な闇に世界が覆い尽くされるでしょう。その時こそ世界は闇の僕‥‥もはや無駄な足掻きなのですよ」
ゆっくりと振り向く。
慌てた様子を見せず、彼の視線はただ自分達に迫る少年を捉えた。
「‥‥これ以上、貴方達の好きにはさせません!」
ルガー・ハルトと彼は名乗った。
彼の息が荒い理由は、ここまでに多くの信者達を倒してきたからだ。多勢の無勢の言葉どおり、幾ら『覚醒者』とはいえ今の彼はかなりの体力を消耗していた。
だが、少年の目にはいまだ闘争心が消えていない。
その様子にイリスがクスリと笑う。
「――更なる神への捧げモノとして‥‥貴方を差し出しましょう」
そうして、彼女が一歩踏み出してファウストとの間に距離が出来たのを、狙う形で立ち上がった水柱が階段を破壊した。
ハッと後ろを振り向く。さすがに戻るには距離が開きすぎていた。
「戦力を削いだつもりでしょうが、いまだこちらの方が有利なことは変わりありませんよ」
迫る信者達に、ルガーは一瞬躊躇する。
覚醒したとはいえ、覚悟が決まっている訳じゃない。
だが、それでも彼にはこれ以上闇の勢いが拡大するのを止めたかった。自分の中に宿る光が、『水(ハルワタート)』と呼んだあの日から。
「そんなのは承知してます」
水柱が、やがて網状に変化する。
ハッとイリスが気付いた時には、既に足場が崩された後だった。
「――ッ?! 足場を!」
思わず悲鳴をあげ、彼女は宙へと投げ出される。
「くっ」
その声が届いた途端、水の網は彼の意思を反映して彼女の身柄を絡め取った。
苦々しい思いで見下ろすルガーと、信じられない思いで見上げるイリス。
「やっぱり‥‥僕は‥‥」
「相変わらず甘いですね、光の連中は」
「!?」
背後からの声。
そして、鋭い衝撃が背中を走る。
「他人の命を大切に思う心‥‥それさえなければ、今頃私達を倒せたかもしれませんね」
嗤うファウスト。
その声を耳の奥に聞きながら、薄れゆく意識のままグラリとルガーの身体が倒れた。崩れる階段とともに落ちていく彼を、イリスは嘲笑を浮かべて見送った。
「やはり光は詰めが甘いですね」
「本当に。所詮どう足掻いても、闇には勝てないんですよ‥‥」
『背徳(タローマティ)』と『悪意(アカ・マナフ)』が、互いに顔を見合わせ静かに微笑む。
闇に染まった二人には、もはやどんな光も届くことはなかった。
●灼熱に飲まれる炎
街を覆う灼熱地獄の前に、誰もが潤いを欲しながら死んでいく。
その様子を楽しげに見て回る鬼麿。
もはや誰もこの街に生ある存在はいない。自分と――もう一人以外は。
「隠れてないで出ておいでよ」
呼びかけに応じたのは、一人の青年。普通の人間が生きていけない世界で平然としているのは、自分と同じ『覚醒者』だけ。
しかも、相手はどうやら自分と同じ性質を持っているようだ、と青年の手に持つヌンチャクが赤く燃えるようなオーラから鬼麿はそう判断した。
「ふぅん、あんたも火を使うんだぁ。ボクの名は鬼麿。闇‥‥いや、静音様に仕える『覚醒者』さ」
「俺は桜木団十郎、まあよろしくな。どうせ――」
「「名前なんか覚えたって、意味ないけどね!」」
二人、重なる声と同時に始まった戦闘。
息もつかせぬ攻防は、体格の差もあったか終始団十郎優位に進んでいく。
彼が口から炎を吐いた事にはさすがに驚いたが、それでも鬼麿は自分の身軽さを駆使して、まるで舞うように炎をかわしていった。
それに気付きつつも、次第に追い詰めていく団十郎。
「さっきの威勢はどうした? もう逃げ場がないようだよ、少年」
だが、ここでの一瞬の油断が、彼の命取りとなった。
僅かな隙をも見逃さず、一気に灼熱の業火を繰り出す鬼麿。
「ぐあぁぁ!」
「な〜んだ、口ほどにもないね、ハハハ!」
避ける間もなく、炎は団十郎の身体を飲み込み――そして燃やし尽くしていく。少年の嘲笑う声がいつまでも続く‥‥が。
「――な、に?」
不意に訪れた胸騒ぎ。突然のプレッシャーに、ぎゅっと胸元辺りを握り締める。
(「‥‥まさか静音様の身に何か?」)
そう考えた途端、もはや他には何も考えられなくなる。逸る気持ちのまま、鬼麿は風のようにその場から姿を消した。
●想像する心、訪れる死
スケッチブックがバサリと落ちる。
慌てて拾おうとする千歳目掛けて、静音の持つ巨大な鎌が振り下ろされた。咄嗟に光の糸を操って撥ね退けたが、それ以上攻撃する事を彼女は躊躇う。
その様子に軽く舌打ちする静音。
「正義感ぶってさぁ、アンタのそういういいこちゃんな顔が癪に障るんだよ!」
誰も傷つけたくない、と千歳の全身が叫ぶ。
だからこそ静音の中の『死(ドゥルジ)』が、無性に腹を立てるのだ。闇を、死を従える彼女だからこその腹立たしさ。
「お願いです。もうこれ以上、誰も傷付いてほしくないんです」
破壊される街。傷付く人々。
神杜静が病院で忙しなく働いている姿を思い出し、千歳は懸命に訴える。彼女にとって、それが例え『闇の覚醒者』であっても、誰も傷付けたくないのだ。
「おだまり。少しはやるようになったようだが、これならどうだい!」
アンデッドの群れが千歳を襲う。
咄嗟に張った光の盾。僅かに逸れた注意。
その隙を、彼女は見逃さない。
気付いたときには、刃が千歳の腕を切り裂いていた。鋭い痛みが全身に伝わる。
見上げると、血に濡れた鎌を肩に構えた静音。
「次は何処を斬りこんでやろうかねぇ?」
不敵に笑う彼女が目に入った途端、千歳の中で何かが爆発した。
「いやっ!」
それは殆ど無意識の――『創造(アフラ・マズダー)』に近い意識が繰り出した生成。光の糸が束となり、鋭い武器となって静音の顔を深く傷つけていた。
頬を伝う鮮血に、一瞬ぼうっとなった彼女だが、次の瞬間にはさながら夜叉の如き顔となる。
「あ、わ‥‥わたし‥‥」
「おのれぇ‥‥この私の美しい顔に傷をつけおって‥‥許さん! 許さんぞぉオンナ!!」
咆哮する彼女は、半狂乱になりながら大鎌を振るってくる。咄嗟にかわそうとするが間に合わず、迫った刃に目を瞑った瞬間――鈴の音が聞こえた。
途端、ぐぅと唸り声を上げて静音が後ずさる。
「そこまでにしてもらおうか? やれやれ、嫌な予感がして来てみれば、これか」
背後から聞こえてきたのは、静の嘆息交じりの声。振り返ると、厳しい表情をした彼女が自分と静音を交互に見やっていた。
二対一となったが、先程までの静音の凶行からこのまま続くかと思った戦闘は‥‥よもや彼女の方から退却を口にした。
「‥‥あの坊やが呼んでるみたいなんでねぇ。いいかい、この傷の代償は高いよ。次に逢う時がお前達の最後さ!」
高笑いが響く中、彼女の姿は闇へと消えた。
それを追う気力は、今の千歳にはなかった。静の方もこちらから仕掛けるつもりはなく、怪我に気付いてすぐさま治癒を始める。鈴の音が耳に心地よく、ゆっくりと痛みが消えていくのがわかった。
「――今回は、特に激しい感じがする。そろそろ決着のつけ時、なのか?」
「え? 静さん、今のはどういう‥‥?」
呟きに、千歳は怪訝な顔を浮かべる。
遥か過去の記憶――常に転生を繰り返してきた記憶が自分の中にあることを、今言うべきだろうか。僅かな逡巡の後、彼女は静かに口を開いた。
「実は――」
光の中に立つ少年は、自分に近付いてくる光の球をゆっくりと手を差し出して受け止める。
球は、そのまま少年の中へと溶け込んでいき、跡形も残らない。
「‥‥また一人、死んでしまったんだ‥‥」
悲しみに彩られた呟きが、零れて消える。
軽く唇を噛み締めるのは、それがどうしようもない現実だと知っているから。『彼』を止めるために――どうしても力を求めてしまう事を。
「お願い‥‥もう、これ以上は‥‥」
悲痛なる叫びは――どこにも届かない。
「やれやれ、折角の機会を逃したんだ。大した事じゃないなら容赦しないよ」
妖艶な笑みを浮かべる静音。
もはや主とは思えず、ただ利用するだけの偶像を相手に、彼女の言葉は容赦ない。
「――もう少し、楽しまないとな」
所詮光だと思おうとした。
だが、相手が会う度に強さを見せ、それに心なしかざわつく気持ちがあったことは否めない。彼女とならいい殺し合いが出来るだろう‥‥ピーチクラウンはそう考える。
――少年は、闇の中に佇む。
口元に浮かべる邪悪な笑み。
「さあ、早く来い」
お前らの力はその為にあるのだからな。
声に出ない呟きを胸中に残し、『彼』は静かに待つ。
集まる闇。その先に待つ悲劇を知る由もなく――――。
●キャスト
神威 暁:如月 一哉(NPC)
神杜 静:榊 菫(fa5461)
千歳:加恋(fa5624)
梢:七瀬・瀬名(fa1609)
ルガー・ハルト:ノエル・ロシナン(fa4584)
桜木団十郎:イーノ・ストラーダ(fa5820)
静音:仙道 愛歌(fa2772)
ファウスト:水鏡・シメイ(fa0509)
鬼麿(大伴蝉丸):相麻静間(fa5719)
イリス:葉月 珪(fa4909)
ピーチクラウン:☆島☆キララ(fa4137)