黙示録END OF BEGINNINGアジア・オセアニア
種類 |
ショート
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担当 |
葉月十一
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芸能 |
3Lv以上
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獣人 |
1Lv以上
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難度 |
やや難
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報酬 |
7万円
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参加人数 |
6人
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サポート |
0人
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期間 |
10/18〜10/21
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●本文
――A long ancient days――
それは、遥か古の時代。
いまだ世界が一つであった頃の、今はもう忘れ去られた伝承。
語ることを、語り継ぐことの許されなかった‥‥悲劇の幕開け――――。
共に生れ落ちた双りの少年。金髪と、黒髪。
彼らは互いを分けた半身として、いつも一緒だった。疑問にすら思わず、心を明け渡していた日々。その感情は、特に黒髪の少年の方が強く、二人の親も困惑するばかりで。
折りしも、世界は疑心暗鬼の時代。
やがて人は偽りの託宣を信じる。
生まれ出ずる命を二つに別つ――それこそが凶兆の徴。自分達を破滅させる悪しき存在が誕生した証だ、と。
――予定調和の理。
全ては仕組まれた事‥‥誰が? 天が、或いは世界が?
思いすらも玩ぶ存在ならば‥‥憎悪をもって従おうではないか。世界の破滅を願う心のままに。
それは、かつての虚像(きおく)。
誕生の瞬間(きおく)‥‥終わった現実(きおく)。
気付いた時には、大勢で寄ってたかって押さえつけられていた。声高に叫んでみても誰も気にせず、寧ろ奇異な視線だけが自分に注がれるだけ。
いったい俺が何をした!
なんで俺だけがこんな目に!
さっきまで隣にあった確かな温もりは、今は無残に引き裂かれて手の届かない場所へ。
楽園から――奈落へ。
伸ばした先にあったのは、闇へと至る絶望だったのか‥‥。
大丈夫、君が『そう』でないのは僕が一番よく知っている。
ずっと一緒に育ってきた、たった一つの半身だから。
だから、全ては僕の身に。
必死に叫ぶ声を背に受け、振り下ろされる刃の前に自身を捧げる。自らの命を代価に、望んだのはただ一人の解放。
それが――こんな結果になるなんて。
迷い込んだ迷宮の第一歩は、光に選ばれた絶望だった‥‥。
●出演者募集
ファンタジー映画『光と闇の黙示録』――その外伝にして、最初の物語が同時上映という形で公開されます。
つきまして以下の通りの配役を募集します。
○主人公(二人の少年)
黒髪の少年:アンリ/金髪の少年:アウラ
この時代では初めてだろう双子の兄弟。
年齢が十代である以外は、性格等を自由に設定して下さい。
○主人公を取り巻く人々
友人・知人といった味方側から、捕らえに来た兵や国王という敵方など、設定は自由にして下さい。但し、名前は以下の中から選ぶようにお願いします。名前による男性・女性の区別はありません。
ウォフ・マナフ
アカ・マナフ
アシャ
ドゥルジ
アールマティ
タローマティ
クシャスラ
サルワ
ハルワタート
タルウィ
アムルタート
ザリチュ
●その他
基本的に古代の西洋風をイメージして下さい。
また、今回のお話はあくまでも『光と闇の黙示録』という映画の外伝という位置づけです。よって結末は既に決まっています(OP部分)。そこで、皆様にはそこに至る過程をプレイングにて表現して下さい。
但し、シナリオそのものはもう一本の映画と互いに干渉することはありません。
●リプレイ本文
●始まりの物語
穏やかな日々が、流れゆく。
世界は、一つだった。
いつもと変わっているようで変わらない日常。
それは誰しもの傍らにあり、そしてすぐにでも消えてしまいそうなものでもあった。
「アンリ」
「アウラ」
二人で一つともいえる、金と黒。
二人の少年、金髪のアウラと、黒髪のアンリは共に生を受け、過ごしてきた。
「おはよう」
「うん、おはよう」
目覚めれば両親たちよりも先に互いに朝の挨拶。
どちらも、依存し、依存をされた関係をつないでいた。
流れる血は同じで、世界でただ唯一、自分と同じ存在だったからだ。
もう一人の、自分、半身を誰よりも身近に感じていたのだった。
「じゃあ‥‥僕、いってくるよ」
「‥‥うん」
アンリはつい先日命を救われた。
そしてその相手に恩義を感じ、今はその人物のもとに仕えている。
その相手はドゥルジという名前を持つ美しい女性だった。
年齢不詳の、巨万の富を持つ富豪であるドゥルジ。
彼女は人離れした美貌の持ち主であり、さらにそれに見合うだけのものをもっていた。
常人離れした才人であり、彼女を慕うものは多い。
ドゥルジは集うものたちのそれぞれの才能を見抜き、その才が一番よく発揮される場所へ配するということに最も長けていた。
その才が輝くのはドゥルジに惹かれたものたちには優秀な者たちが多くいたこともあった。
彼女の力は、時の王を凌ぐほどであった。
そして彼女は、自分のある立場をしっかりとも、わかっていた。
「ドゥルジさまの所にいってくるよ。僕が今ここにあるのは、ドゥルジさまのおかげだ」
「‥‥いってらっしゃい」
アウラはアンリを見送る。
ドゥルジの元へ仕えるようになってから多少の距離はできたかもしれない。
それでも、二人の繋がりが強固なものであることは、かわりなかった。
アンリはアウラの視線を受けながら、ドゥルジの元へと向かう。
ドゥルジの屋敷にいるものたちはもう顔なじみのものが多い。
気軽に挨拶をかわしつつ、いつもの仕事へとつく。
そんな様子を、この屋敷の主人であり命の恩人であるドゥルジは瞳を細めながら見つめていた。
「ふふ、雨に打たれた野良犬のようで可愛いねえ‥‥最初は警戒していたけれども、少し手を差し伸べれば、尻尾をふってついてくる‥‥」
タローマティはそんなドゥルジの様子を傍から見つめる。
この、ドゥルジならば、この後もずっとついていくに値するとタローマティは思っていた。
現国王はその器ではなかった。ほんの少し、揺すっただけでその威信が傾く王などについて行く意味などない。
だがドゥルジは違う。
直感で、タローマティは悟ったのだ。
ドゥルジは世界を混沌に導くものに違いないと。
そしてついていくべき人なのだと、絶対的忠誠をその胸にタローマティは抱いていた。
「ドゥルジ様、そろそろお出かけの時間ですが」
「そう‥‥ではウォフマナフと‥‥アンリもつれていきましょう」
「は」
タローマティはすぐさま手配をする。
声をかけられたウォフマナフはすぐさま用意をして駆けつける。
「お嬢様を傷つける者は何人たりとも許さん! しっかり護衛させていただく!」
屈強な奴隷兵士であるウォフマナフは、ドゥルジを敬愛していた。
何事も暴力で解決しようとする粗暴な男であるウォフマナフ。
だが、ドゥルジへ向ける敬愛の念は本物であった。
彼女を守れることに、誇りを胸へと抱いている。
「ああ‥‥ドゥルジさま‥‥!」
そして呼ばれたアンリもまた、その胸に様々な思いを抱いていた。
助けられてから、ずっと抱えている恋心。
甘く切なく、辛くそれはある。
だが叶うはずがないその想い。
アンリはその想いを持っているだけで、幸せでもあった。
ドゥルジのことを一日に一目見れる、それだけで十分。
こうして傍にいられるなど、とてもうれしいことだった。
みてごらん、と周りを示される。
ドゥルジの視線を、アンリは追う。
「いいかい、この国‥‥いやいずれ世界の全てが私の前に平伏すのだよ」
ドゥルジの表情は妖艶で、何者をも魅了する毒だった。
それを受け、アンリは想いのかけらを言葉にする。
「ドゥルジさまに悦んで頂けるならばボク、何でもします‥‥例えそれが天に背く事であろうと」
「そう‥‥その言葉、忘れないわ」
ドゥルジはアンリの言葉を受け取り瞳を細める。
なんてかわいい子だ、と。
「アンリを助けて、よかった」
ふっと頭を撫でる。弟を可愛がるように、その瞳には優しさがあった。
「助けてやってもいいが‥‥無償という訳にはいかないよ、だったかしら。助けてよかったわ」
アンリに最初に向けた言葉。それを小さく、ドゥルジは呟いた。
ドゥルジたちの一行は、街をまわりそしてまた屋敷へと戻る。
その様子を、アウラは見ていた。
アンリの姿を追う視線。
だが、アンリはその視線に気がつかなかった。
アンリの視線はドゥルジに向くばかり。
「どうして‥‥アンリ‥‥」
呟きは、おとされる。
けれども、アンリが家にかえってくれば、彼はアウラのものであり、また逆でもあった。
そんな日々がしばらく続いている。
そして、これからも続くのだった。
いつもと同じように。太陽が沈み、月が昇り、一日の物語が終わって、そしてまた始まってゆく。
その積み重ね。
まだ始まってすらいなかった物事がやっと、少しずつ動き出す。
動きだし、やがて構築されてゆく一つの道筋はこの時代から儚く、そして遥かな時間の先にある。
まだ胎動すらしていない、物語の始まりの終わり。
当たり前のようにあるぬくもり。
それを失う事件が起こるのは、もう少し、先のこと。
●キャスト
アウラ:ラファエロ・フラナガン(fa5035)
アンリ:バッファロー舞華(fa5770)
ドゥルジ:銀城さらら(fa4548)
タローマティ:鬼道 幻妖斎(fa2903)
ウォフマナフ:結城丈治(fa2605)
代筆 : 玲梛夜