【AoW】拝火教――闇の竜中東・アフリカ
| 種類 | ショート |
|---|---|
| 担当 | 葉月十一 |
| 芸能 | 3Lv以上 |
| 獣人 | 3Lv以上 |
| 難度 | 難しい |
| 報酬 | 8.6万円 |
| 参加人数 | 8人 |
| サポート | 0人 |
| 期間 | 10/25〜10/29 |
●本文
●聖典『アヴェスター』――隠された手記『――点在する焔は囲い。
あらゆる情報を排し、その力を弱めるためのもの。
『ヤツら』に仲間意識はない。なれど、もし母たる存在が生まれてしまったら‥‥それは大挙として押し寄せるだろう。
だからこそ、二重三重の囲いを私は創った。最後の砦――友たる彼の命の煌きを護る為に。
それは、墓標。
それは、懺悔。
それは、戒律。
二度とこのような悲劇が起きぬよう、心砕いた者同士が、争う事がないように。そのような悲劇は自分達だけで十分だと――それは彼の決意。
眠る『魔竜』は、二度とこの世に解き放ってはならない事を。
私は、後の世に永久に伝えよう。
――ザラスシュトラ』
●ペルセポリス――繰り返す悲劇
その一報がＷＥＡへ届いた時、彼女の顔は青ざめるを通り越して真っ白になった。
ここ最近、世界各地で頻発するＮＷの騒動。それに連動する形で発見されるミテーラの存在。
そんな世界が騒然となる中、伝え聞く『カドゥケウス』の行動によって僅かながらでも光明が見え始めたことにホッとした矢先の事件――――。
「ペルセポリス遺跡から、大量のＮＷの動きが確認出来たわ」
「なに？」
彼女の言葉に、須崎渉は厳しい視線を向けた。
「そのＮＷが向かう先は、もう決まってるわよね。最後の封印が存在してる都市よ」
「――ヤズドの拝火教寺院か」
こくり、と彼女は頷く。
ＷＥＡも必死で食い止めようと試みたが、如何せん数が多すぎる。辛うじて街へ入る寸前でその多くは殲滅出来たものの、それでも数にすれば数十単位のＮＷが町の中に紛れ込んでしまった。
「溢れたＮＷを先導したのは‥‥貴方の友人よ。多分彼、ＤＳに騙されてるか操られてるのね」
そうキッパリと告げた彼女に、渉は苦虫を噛み潰したような表情を浮かべる。先の言動を思い出し、確かにそうかもしれないと納得した渉だった。
彼女は須崎の隣に立つ獣人達に視線を向けると、こう告げた。
「貴方達には、その彼をなんとか捕縛して欲しいの。いくら騙されてるとはいえ、彼はまだきっと普通の獣人よ。おそらく‥‥須崎さんとの友情を利用されてるとしか思えないわ」
それでは『アヴェスター』にも書かれいたかつての悲劇の繰り返しだ。
それだけは絶対に阻止したい。
「彼はペルセポリス遺跡にまだいるみたいね。おそらく‥‥地下へ降りるつもりなんじゃないかしら」
魔竜は遺跡の地下に眠る。
かつて捜索した場所は、かなりの広さを誇っていた。おそらく更に地下へ続く道があるのだろう。そしてその先には――。
「『大祭壇』が破壊されない限り、封印は決して解けないわ。でも、何かの拍子で刺激してしまうかもしれない。だから――」
「‥‥そうだな。俺も一緒に行くつもりだが‥‥どうか光流を止めてくれ」
彼女の言葉を受けて渉が続けると、彼は深々と頭を下げた。
●これまでの情報
○拝火教
光と闇の対立を掲げた現存する宗教の原典とも目される宗教。
『アフラ・マズタ』と『アンラ・マンユ』の二神の伝承が現在にも伝えられてきているが、力に飲まれようとした一人の獣人と、それを食い止めようとしたもう一人の獣人の悲劇が、後の世に伝承として伝えられる。
開祖たる『ゾロアスター』は、『カドゥケウス』所属の人間であり、『オーパーツ』である『祭壇』の『火』を護る為に拝火教は生まれた、らしい。
○祭壇
拝火教信者の居る町や村には必ず存在し、信者達はこの祭壇の炎を拝する形を取っている。
実は祭壇そのものが『オーパーツ』であり、灯る炎は決して消えない効果を持つ。点在する『祭壇』は結界の役目を果たし、ヤズドの寺院に存在する『大祭壇』にＮＷを近づけさせない為のものであった。
『大祭壇』は封印そのものであり、ペルセポリス遺跡地下に眠る『魔竜ダハーカ』と呼ばれるＮＷを封じている。
○アヴェスター
失われたとされる拝火教の聖典。
その内容は拝火教に纏わる神話的なものだとされていたが、先日発見された物からは、拝火教に纏わる二神の伝承、拝火教の成り立ちに関する真実がそこに記されていた。
○魔竜『ダハーカ』
ペルセポリス遺跡地下に眠る巨大ナイトウォーカー。ミテーラかどうかは不明だが、その力は全ての生命を凍てつかせる、と伝えられている。
○光流
須崎渉の幼馴染で、先の西安の事件に何らかの関わりがある獣人。
先日の騒動で再び姿を消した彼は、須崎がかつて所属していたバンドを解散した理由をＷＥＡに誑かされたからだと信じ、友人を取り戻すために力を得ようと躍起になっている。
彼自身、何者かに操られている可能性が高い。
○社長
須崎の友人が所属していたプロダクションの社長。
プロダクションの倒産と同時に姿を消す。光流とは何度か連絡を取っているようだが、詳細は不明。
●リプレイ本文
●その名はＮＷハンター隊「ＮＷハンター隊、リーダーの棗・月華（fa6135）です。
宜しくお願いします」
彼女の第一声がそれだった。
仲間の獣人に頼まれたらしい。
『須崎渉を助けてくれ』と。
「正直、助かる。
だがいいのか？
わかってるとは思うが‥‥危険だぞ？」
助かったのは本当だ。
いざとなれば渉は一人でもペルセポリス遺跡に向かうつもりだった。
ダハーカの復活阻止はもちろんのこと、
なにより大切な親友を救う為に。
各地でダークサイドやＮＷ達の活動が相次ぐ中、彼女達の協力はまさに渡りに舟だったのだが、
――問題は彼女らの経験だった。
ＷＥＡからの依頼の経験はゼロ。
人数が揃っている事と全員が戦闘訓練は受けているらしい事だけが救いか。
彼女らの気持ちは嬉しいが、渉自身半ば私情で動いている。
その私情に彼女らを巻き込むかと思うと――、
「気にしないでください」
渉の想いを悟ったかのように棗が答える。
「貴方が友達の為に動くのと同じです。
私も彼女の為に戦いたいだけですから――」
ここにはいない、彼女らの仲間。
ある意味、今回の依頼人は彼女なのかもしれない。
「今回の作戦、棗たちも全面協力します」
●自己紹介
「ＮＷハンター隊の風宮・香燐（fa6136）です。
宜しくです。
伝言を預かっています」
仲間からの伝言。
「『友達から聞いて大体の事情は知っています』」
風宮達の仲間もこの件には無関係ではない。
が、それ以上にその彼女の友人が渉と関わりを持っている。
ヤズドの寺院を任せた仲間達のように。
「『御友達は理屈が、どうこうでは無く感情で動いているんだと思います。
ＤＳやＮＷも絡んでいて危険だと思いますけど御友達を取り戻す為、頑張って下さい。
応援しています』」
――ああ、わかっているさ。
心の中で渉は答える。
自分だって同じだ。
アイツを助け出す――その為なら俺は――、
「『それと、
余り無茶は、しないで下さい。
『ＧＡＮＧ』も活動し始めたばかりですし、須崎さんの体は、もう須崎さん一人だけのものじゃないです。
何があっても生きて帰って来て下さい。次回のＧＡＮＧのコンサートも楽しみにしています』
だそうです」
きょとんと、
毒気を抜かれる渉。
やられた。
これで自分も死ぬわけにはいかなくなった。
「白妙・桜花（fa6138）です。
桜花って呼んで下さい」
棗、風宮と同じ狼獣人。
「‥‥それとこの色紙にサイン頂けますでしょうか？」
随分ミーハーな娘のようだ。
「‥‥‥これでいいか？」
「ありがとうございます！
今回の作戦、桜花たちも頑張って全面協力しちゃいますよ！」
「ＮＷハンター隊、副リーダーの水上・日和（fa6139）です。
宜しくお願いします」
そういえば棗はリーダーと名乗っていた。
印象以上に訓練されたチームなのだろうか。
「流桜・凛音（fa6141）です。
宜しくお願いしますね」
彼女は虎の獣人のようだ。
「日和と一緒に須崎さんの護衛をさせていただきます」
「俺の？」
「何があっても須崎さんから離れません。
須崎さんが友人の説得刻も側に付きます。
ＮＷを呼ぶ仕草や須崎さんに暴力を振るおうとした刻、護衛の凛音と日和たちに仕掛けて来た刻もすぐさま友人さんを鞭で叩いて取押さえ縄で縛りコントローラーを奪います」
「‥‥‥‥‥」
まあ、熱意だけは伝わった。
「神楽・ミカヅチ（fa6142）です」
彼女も虎の獣人。
戦闘に向かう面子としては頼もしいといえば頼もしい。
「今回の作戦、神楽たちも頑張って協力させてもらいますので――」
と、言葉を濁す神楽。
「作戦が無事成功した暁には次回のＧＡＮＧのコンサートチケット‥‥都合してもらえないでしょうか？」
ゑ？
「炎王子・ヒカナ（fa6143）です」
彼女も言いにくそう――ではなかった。むしろ嬉々として、
「報酬は弾んで下さいね♪」
皆、不安はないようだ。
いや、ないわけがない。
けれど、皆、戻ってきた後の事ばかり心配しているのを見ていると――。
「泗水・怜火（fa6140）です。
言ってもわからない御友達ならグーパンチでわからせるのも一つの手ですよ。
拳と拳で語り合って友情が育まれるんです！
‥‥というのは冗談です。
あんまり和まないですね。失敗です」
恐縮する怜火。
「いや‥‥そうだな、やってみるよ」
ヤズドの寺院でも同じような事を言われた気がする。
こんなに自分達の事を案じてくれている者達がいるのだ。
「――ああ、やってやる。
ぶん殴ってでもお前を連れ戻す」
●出撃
ペルセポリス遺跡内。
「隊を２隊に分けます」
リーダーの棗が指揮を執る。
「対ＤＳ、ＮＷ班は、棗、風宮、白妙、泗水、神楽、炎王子の６人。
指揮は棗が執ります。
須崎さん護衛班は流桜、水上の２人です。
こちらの指揮は副リーダーの水上さんが執ります」
「宜しくお願いします、須崎さん」
改めて日和が渉に挨拶。
「ああ、こちらこそ。
――ただ、頼みがある」
「なんでしょう？」
「俺が光流を説得している間は奴に手を出さないで欲しい。
たとえ奴がそれを拒否したとしても」
「ですが――」
「頼む。
信じてくれ。
俺は必ず生きて帰る。
だけどそこにはあいつが一緒でないと駄目なんだ」
その瞳には初め会った時とは違う信頼が。
『俺も君達を信じるから』
と。
「――わかりました。
では私達ははお二人の護衛を。
誰にも説得の邪魔はさせません」
「須崎さんの友人が所属していたプロダクションの社長というのが怪しい感じですね」
と棗。
「ああ、それは俺も感じている。
遺跡にいるのかもな」
「だとしたらＤＳの可能性が高いです。
その場合は私達６人に任せてください」
『大丈夫なのか』とは聞かない。
もう信じる事に決めたから。
「頼む」
●友を信じて
「――光流」
「渉――お前は――！」
遺跡内で対峙する二人。
それを邪魔するＮＷは棗達６人の手によって抑えられている。
結論から言うと、棗達は強かった。
まず、全員が戦闘に特化している。
狼と虎の獣人。
それだけでも戦闘向きではあるが、彼女らはＮＷ用の戦闘訓練を受けているようだ。
依頼経験のない彼女らがここまで優れた技能を有しているとは渉自身思わなかった。
極め付けなのが、その連携。
明らかに仲間と共に戦う事を磨いている。
それぞれが鞭で相手の身体を絡め捕り、止まったところを空いている者がソードで斬りつける。
一人一人の実力は渉に及ばない。
が、見事な連携が経験以上の実力を彼女らに発揮させていた。
「『ＮＷハンター隊』は伊達じゃない――か」
「渉！！」
渉が光流に向き直る。
「目を覚ませ、光流、お前は騙されてる」
光流は聞こうとはしない。
「黙れ！ 騙されてるのはお前の方だ！」
「光流！ 『社長』っていうのは誰の事だ！？
何を言われたんだ！？」
「そいつらのせいで――お前はオレを裏切った！！」
「須崎さんは裏切ってなんかいません！！」
叫んだのは風宮。
同時にＮＷの崩れ落ちる音。
「須崎さんは光流さんを心配していました！
今回だって、風宮達が来なかったら、須崎さん、一人ででも乗り込むつもりで――」
口出しをしないつもりだった。
けれど、あまりに見ていられなくて。
「貴方が須崎さんを想ってるのと同じくらい、
須崎さんも貴方を助けたいのに――、
どうしてわからないんですか！！」
「――――！」
その時、日和が別の気配に気付く。
光流の背後。
彼を操る歪な気配に。
「そこッ！！」
残された俊敏脚足を使い、斬りかかる。
日和の一撃を受け流し、飛び退いたのはスーツ姿の男――。
「ダークサイド！？」
少なくとも今の一撃を受け流せるのは人間の仕業ではない。
「――光流はここまでのようだな。
寺院も失敗したようだ。
ダハーカ復活が叶わない以上、ここは退くとするか」
「待ちなさい！！」
棗達が追おうとするより早く、スーツ姿のＤＳは闇に消えた。
●大団円
「光流」
「渉、オレは――」
「後は二人の問題ですね」
ＤＳの最後の言葉からすると、寺院の渉の仲間達は無事、祭壇を護り終えたようだ。
初めての戦いは激戦だったが、成功に一同息を吐く。
「チケット、貰えるのかしら？」
「後にしなさい、後に」
神楽の呟きを日和が窘める。
「なにはともあれ、初勝利です！」
凛音に続き、
「そうね、報酬も無事貰えそうですし」
ヒカナの言葉はそれだけの意味ではないだろう。
依頼人が、
渉が無事で良かったと。
「さあ、帰って彼女に報告です！
その後はぱーっと打ち上げしましょう！」
ＮＷハンター隊。
彼女達の活躍の物語はここから――。
代筆：冬斗
