【GANG】デビュー!アジア・オセアニア

種類 ショート
担当 葉月十一
芸能 3Lv以上
獣人 フリー
難度 普通
報酬 6.6万円
参加人数 8人
サポート 0人
期間 10/25〜10/27

●本文

 レコーディングが終了して数日。
 ようやくトラックダウンの終わった生のCDが須崎渉(fz0034)達の元へ届けられたのは、デビューステージを明後日に三日後に控えた日だった。
 メンバーの誰の顔にも、皆満足そうな表情を浮かべている。
 ここに来て彼女達も、ようやく実感したようだ。自分達がアイドルとして華々しいデビューを飾れるという事を。
 だが、まだだ。
 ステージまでにまだやる事は沢山残っている。後三日のうちに、デビューCDの曲の振り付けを行わなければならないのだ。
「――というわけで、振り付け方は、お前達が各自で話し合って決めるように。俺はこれからステージの方で打ち合わせがあるからな」
 プロデューサーの渉にそう告げられた八人は、思わず互いに顔を見合わせた。さすがに三日というのは厳しいのではないか、と。
 だが彼は、事も無げにこう言い放ったのだ。
「自分で考える努力をしないやつは、この世界であっという間に凋落するぞ。『GANG』がこれからどうなるかは、全てお前ら自身にかかっているんだからな」
 言葉の端々は厳しいながらも、それは先人である渉からの激励の言葉に他ならない。
 そして。

『ハイプロ期待の新星、新世代のアイドルグループ『GANG』!
 10月25日、いよいよCDデビュー!!
 デビュー当日は、○○遊園地特設野外ステージで堂々のデビューライブを公開。
 なお、このステージの模様は衛星中継により、全世界に向けて発信される予定です。世界中が彼女達の魅力の前に虜になることでしょう。
 今こそ『GANG』が世界へと羽ばたく――――!!』

 ハイプロ公式サイトのトップページには、『GANG』デビューの告知が堂々と公開された。

●今回の参加者

 fa2122 月見里 神楽(12歳・♀・猫)
 fa2726 悠奈(18歳・♀・竜)
 fa3661 EUREKA(24歳・♀・小鳥)
 fa3728 セシル・ファーレ(15歳・♀・猫)
 fa4339 ジュディス・アドゥーベ(16歳・♀・牛)
 fa4823 榛原絢香(16歳・♀・猫)
 fa5302 七瀬紫音(22歳・♀・リス)
 fa5939 祥月 暁緒(19歳・♀・兎)

●リプレイ本文

●舞台裏
 がやがやとざわめく観客席。
 プロデューサーの須崎渉(fz0034)の説明によれば、チケットは既に完売、立ち見も出る程の人の入りだ。
 さすがは天下のハイプロ。今日がデビューのアイドルにここまで人を集める魅力がある事を、ステージの袖で待機する彼女らは改めてそのネームバリューに驚きとともに緊張もひとしおだった。
「いよいよライブですね〜」
 少しのんびりした口調のジュディス・アドゥーベ(fa4339)だが、表情はやはり固い。緊張に手をぎゅっと胸元で握る。
 同じように固い表情の祥月 暁緒(fa5939)。無理もない。今回集まったメンバーの中で、一番経歴が浅いのだから。
 それでも、彼女は顔を上げてにっこりと笑みを浮かべる。
「まだまだ新人で、沢山ご迷惑をかけましたが‥‥でも、皆と一緒に頑張れて楽しいです」
 その言葉に、榛原絢香(fa4823)が私も〜と手を上げる。
「皆とこんな立派なステージを踏めるなんて夢見たい。でもきっと、ここが終着点じゃないよね」
 そう言った彼女に、全員がハッと顔を上げる。
 今まで緊張の中にあった誰もが、そこから続く絢香の科白を読み取っていた。
「‥‥そうだね。きっと、ここから、なんだよね」
 ぽつり呟く月見里 神楽(fa2122)。
 幼い外見ながら、その芯はしっかりとこれからを見据える彼女。言葉どおりこれからが始まりなんだと心に言い聞かせていく。
「今までステージは数多くこなしてきたけど、やっぱり『アイドル』となると緊張の度合いが違うわね」
 仲間達との年齢差はさすがに暗くなってしまいがちなEUREKA(fa3661)だが、やはり選ばれた以上は今まで頑張ってきた成果を全て出していきたい。
(「そうよ。なんといってもデビュー出来た訳だし、三十路の希望になるの!」)
 内心で奮い立たせるその後ろ姿を見て、七瀬紫音(fa5302)は改めて感心していた。
 自分が他のメンバーに比べて劣っていると思い込んでいた紫音にとって、年齢差という絶対的な不利(?)を物ともしない彼女の姿は、やはりどこか憧れてしまう。
「ここまできたら、精一杯頑張るだけですね」
「そうだよ! いよいよ本番、みんな頑張ろうね!」
 皆の気持ちを引っ張るように悠奈(fa2726)が声を上げる。それに呼応して、セシル・ファーレ(fa3728)が隣のメンバーと肩を組み始めると、気が付けば全員が円陣を組んでおでこをつけていた。
「やっぱり、気合入魂といったらこの体勢ですよね」
「セシル、わかってる〜!」
 にこりと笑うセシルに悠奈も笑みを返す。それが伝染するかのように他のメンバーも皆、表情に笑みを浮かべていく。
「いくよ、みんな! ふぁいとー、おー!!」
「「「「「「「おー!!」」」」」」」
 開幕直前。
 メンバー全員の掛け声が勢いよく上がった。

●オープニングステージ
 開始時刻と同時に強烈な光がステージを取り込む。
 一斉に袖から出てきた八人は、ステージ中央に正八角形の形にそれぞれが立った。揃いの白のワンピースを基調に独自のカーディガンを羽織った姿。
 前面中央に立つセシルと絢香。その両脇には紫音と神楽が後ろに控えている。
 そして――流れてくるウィンドチャイム。
「あの夏の空に〜浮かぶ白い入道雲〜」
 伸び上がるセシルのソロ。ピンスポットを浴びた彼女が、目を伏せたまま一歩前進し、一人手を空へと上げる。
「突然の雨が〜僕達を世界から切り離した」
 静かにゆっくりとターンをし、そのまま右手を左肩に添えると、早くなるメロディに合わせて一気に両手を観客に向けて差し出した。
「〜戻せずに未来を刻む〜♪」
 そのまま弾みがつくと同時に、全員が軽やかに踊り始めた。
 続いて絢香にスポットが当たると、彼女は一歩前へと進み出る。
「あれから何度も喧嘩したね〜」
 背の低さを利用した可愛らしいステップ。左手は胸の前に留め、リズムに合わせて伸びやかに歌う。
「高鳴る鼓動を抑えるのに必死だった〜」
 二人のソロが終わって背中合わせに立つと、そのままユニゾンを歌いながら徐々に歩いて距離を開ける。
『〜君の笑顔』
 と、一旦歌詞を区切ると、二人はスキップで戻り、互いに掌を合わせて見つめ合いながら歌い続ける。
 やがてその腕を羽のように広げて前を向き、彼女らはそのまま空へと掲げる。同時に後ろにいた紫音と神楽も、同じように片手を羽根のように斜め下へと広げた。
 そして――四人のコーラス。
『あの夏の空に〜浮かぶ白い入道雲〜』
 歌いながら、四人が横一列に並ぶと、後ろに控えるコーラスは、前列の間から顔を出すような位置に立った。
 そのまま歌詞が二番に移ると、セシルと絢香の立ち位置に紫音と神楽が移動する。同じような振り付けを繰り返すと、メロディに合わせて観客からハモるような合いの手が入ってきた。
 それを聞いて、彼女らは互いに笑みを浮かべる。
 そして。
『〜交わした約束の意味を』
 全員が掌をひらひらと揺らし、横一列に並ぶ。そのまま曲に合わせて集合ポーズを決めると同時に、全員が羽織っていたカーディガンを一斉に脱いで、一曲目は終了した。

●MC〜メンバー紹介
「皆様、こんにちは!」
「皆さん、こんにちは!」
 ちょうど中央に立っていた神楽と紫音がまず先に挨拶をすると、客席からは鸚鵡返しのように「こんにちは!」と返ってきた。
 その反応に気を良くした彼女達。
「今日は、わざわざ私達『GANG』のデビューライブに来てくれてありがとうございます!」
 そう紫音が礼を述べると、続く神楽が元気よく手を振った。
「『GANG』の意味は『世界的で芸術的な新世代アイドル』、名前のとおり私達は世界中から集まったメンバーなんだよ」
 一旦、言葉を切ると、途端に上がる大歓声。
「それじゃあまず、メンバー紹介にゴーゴー! まずは私、GANGの一番ミニマムっ娘、月見里神楽です」
「七瀬紫音です。どうぞよろしくお願いします」
 二人の自己紹介を受け、他のメンバーも次々に自己紹介していく。
「セシル・ファーレです。よろしく!」
「あたしは榛原絢香、今日、そしてこれからも一緒に、めいっぱい楽しんでいこうね!」
「悠奈です! みんなー、元気〜?!」
 勢いよく腕を振り上げジャンプする悠奈に、観客の完成も一際高くこだまする。
「いつも常春のジュディスです〜。季節を問わず、春風のような優しい歌をいっぱい歌っていきたいと思っています〜」
「祥月暁緒です。実は‥‥まだここに居るのが夢みたいで」
 ジュディスの挨拶の後、暁緒の番が回ってきたとき、彼女はそう言って思わず自分の頬を抓るそぶりを見せた。痛いですね、と照れる彼女にコールが巻き起こる。
 そして最後に。
「GANG最年長、ゆーりことEUREKAです。‥‥今、お母さんコールした人! ファン一号認定!」
 くすり、と微笑む彼女にお母さんコールもまた続く。
 その声援に負けないよう、彼女達も精一杯声を合わせて張り上げた。
「これからよろしくねー!」

●バラード〜そして、エンディングへ
 先程までの喧噪とは打って変わったメロディアスな曲が流れ、観客は次第に静まっていく。それを見て取り、彼女達はそれぞれの立ち位置へと立つ。
 そのままイントロが終わると同時に、後列に位置していたEUREKAと暁緒が最前列へ躍り出た。
「すれ違う人ごみ ふと目に付く背中〜」
 背中合わせに立つ二人のユニゾンの歌声が響く。その間、他のメンバーは静止したままだ。二人のパートが終わると同時に、今度はジュディスと悠奈も前へ出てきて、鏡合わせのようにして歌い始めた。
「遠ざかる声さえ 記憶に蘇る〜」
 全体の印象が寂しげで、観客もどこか固唾を飲んで見守る雰囲気だ。
 各自のソロが始まると、ソロを歌うメンバーに向けてそれぞれが手を差し伸べた。全員のコーラスが始まると、彼女達はそれぞれに動き出し、立ち位置をくるりと入れ替わる。
 後列にいるコーラスのメンバーも、ゆっくりと手を胸元から耳へと移動するジェスチャー。
「笑われてもいい」
 四人が動き、
「怒られてもいい」
 残りの四人が同じように動く。ノスタルジックなメロディにあわせ、ゆっくりと腕を動かす八人。重なるコーラス。重なる掌。人形のような動きは、見てる観客にどこか幻想的な雰囲気を映し出す。
 そして、最後のサビへと移ると、今度は片手をすっと天へと伸ばした。
「何度生まれ変わっても あなたを愛します〜」
 ゆらゆらと揺れる八人の体。互いの声が響き合い、ゆっくりとスローダウンしていく中、最後の歌詞を歌い上げると、そのまま両手を胸に引き寄せ、ゆっくりと広げた。

 ――一斉に鳴り響く拍手。
 それぞれの名前のコールが始まると、いよいよラストの曲のイントロが流れ出した。アップテンポなメロディに合わせ、全員がオーバースカートを一斉に脱ぐ。
「みんな〜これで最後の曲だから、一緒に盛り上がろうね〜!!」
 悠奈の声がステージ上に響く。
 八人はそのままそれぞれの位置に移動し、全員がその場にしゃがみ込んだ。
 観客の声援を受けて、まずセシルが立ち上がって歌い始めた。
「『泣いてるの?』 君に戸惑いを隠せない」
「まるで世界の終わりだね そんな顔をしてる」
 次に神楽が自分の番で立ち上がり、そしてEUREKAと暁緒が立ち上がった。
「迷い込んだラビリンス 時は待ってはくれないの」
「扉開けば笑顔の君が そこにいるから迷わない」
 四人のソロが終わると同時に全員が顔を上げて立ち上がり、真っ直ぐ前を向いて笑顔を見せた。リズムの乗せたステップと合わせて、八人全員の声が重なる。
「〜君に届けと叫んでる!」
 その最後を両手をメガホンに見立てて、思いっきり叫んだ。
『I‘ll be there for you 難しい言葉はいらない』
 サビの最初を全員で歌い、続いてソロを歌った四人のハモリが続く。両手を動かし、観客へプレゼントを渡すかのような振り付け。
「気取らなくていい〜」
 小さく人差し指を振り、笑顔でハートを指差す動作。そのままリズムを刻みながら、四人はステップを続ける。手の動きを重視し、勢いよく水平に拡げてサビを纏め上げた。
 そのまま間奏が流れる間、彼女達は位置を移動する。
 次に中央へきたのは、紫苑、悠奈、絢香、ジュディスの四人。
 先ずは悠奈が歌い始める。
「晴れた空 浮かぶ雲 そんな日ばかりじゃないけれど」
 間を挟んで紫音が続く。
「オレンジの太陽に急かされて」
「息を弾ませ いつもの坂道を駆け上がる」
「丘から見下ろす町はちっぽけ」
 ジュディス、絢香のソロになると、それぞれが前へと一歩出る感じで歌った。そして――一斉に八人のハーモニーが響き渡る。
『悩み事なんて吹き飛ばせ!』
 勢いよく拳を突き上げる八人。悠奈や絢香などは、一緒にキックまで飛び出していた。
 そんな彼女らの動きに、観客のボルテージはますますヒートアップ。次のサビに合わせて合唱が続くと、その声援を受けて彼女らもますます気持ちが高ぶっていく。

(「ホント、デビュー出来てよかった!」)
 高らかに手を上げながら神楽は思う。
(「これからも頑張りたい!」)
 テンション上がる悠奈は、もうノリノリだ。
(「三十路だからって負けないんだから」)
 くるりと優雅なターンを決めたEUREKA。
(「セシル、これからも頑張ります」)
 続くターンをセシルは元気よくこなした。
(「ずっと、ずっと‥‥歌えたらいいです‥‥」)
 マイクを持つ手が震えながらも、懸命にジュディスは歌う。
(「ゼッタイ、ゼッタイ、これから頑張るもん!」)
 白い花のコサージュが手首で揺れるのを絢香は見た。
(「この成功を、きっと須崎さんも喜んでくれるかしら」)
 素早くターンした紫音のワンピが風に揺れる。
(「本当に‥‥私、歌が大好きです!」)
 聞こえてくるメロディーにタイミングを計る暁緒。

 そして。

『――Very Happy!』
 全員の声が重なると同時に、一斉にジャンプした彼女達。
 そのまま一気に盛り上がった直後、ジャン、という音で曲が終わった。
 一拍置いた後、今日最大の歓声と拍手が一気に鳴り響いたのを聞いて、彼女らは今日のライブが成功したことを肌で感じ取る。
 全員が互いに笑顔を交し合い、すぐに横一列に並ぶと、
「「「「「「「「ありがとうございました――ッ!!」」」」」」」」
 鳴り止まない歓声の中、彼女らは一斉にお辞儀をする。

 これが、『GANG』としての最初の一歩だった――――。