戦うチェーンソーアジア・オセアニア

種類 ショート
担当 姫野里美
芸能 フリー
獣人 フリー
難度 普通
報酬 1万円
参加人数 8人
サポート 0人
期間 02/06〜02/10

●本文

●チェーンソードとショットガン
 映像の仕事と言うのは、何もTVだけではない。カラオケの映像なんてものもある。今回は、そう言った類の仕事だった。
「チェーンソー会社のプロモ映像?」
「はい。宣伝用に、画像を作って欲しいそうです」
 香港のとある映像会社に持ち込まれた依頼書には、チェーンソー会社の名前が書かれ、自分の製品を売り込む為に、5分程度の映像を作って欲しいと記してある。
「5分か〜。まぁ、CMだしなぁ。で、何か問題があるのか?」
「それが‥‥。内容の指定がありまして。むちゃくちゃなんですよぉ」
 その依頼書には、こう書かれていた。
『以下のアイテムを必ず使用して、戦闘シーンらしく作ってください。必ず、当社製品が魅力的な品とわかるように』
 そして、アイテムのリストには。
「えーと、チェーンソーにショットガン‥‥? おい、うちはジャパニメーションの会社じゃないんだが」
「でも、そう言う指定なんですよ。なんでも、既存のきこりシーンではインパクトが足りないって仰られてましてね〜」
 頭を抱える映像会社の2人。が、受けてしまった物は仕方がない。使うアイテムの他は、話の流れも曲も、全て一任されている。
「まぁ、仕方ないか。これ、仕事回しておいてくれー」
 そんなわけで、チェーンソー会社の映像仕事は、めぐりめぐって若手芸能人達に依頼されるのだった。

タイトル:未定
内容:チェーンソーを使った戦闘シーン
使用アイテム:主役級にチェーンソー、補助としてショットガン。ライバルとして、巨大な斧、ドリル等も可。
備考:必ず当社製品のチェーンソーが、魅力的な品だとわかるような仕様にしてください。その他の内容や音楽等は、全て貴社にお任せいたしますが、インパクトのある様なものでお願いします。

 なお、依頼書には上記の様に書かれていたそうである。

●今回の参加者

 fa0160 アジ・テネブラ(17歳・♀・竜)
 fa0318 アルケミスト(8歳・♀・小鳥)
 fa0374 (19歳・♂・熊)
 fa0406 トール・エル(13歳・♂・リス)
 fa0631 暁 蓮華(20歳・♀・トカゲ)
 fa0757 グリード(24歳・♂・熊)
 fa2653 レオナード・レオン(29歳・♂・獅子)
 fa2844 黒曜石(17歳・♂・小鳥)

●リプレイ本文

 そんなわけで、集められた芸能人達は、打ち合わせ用の会議室へと集まっていた。と言っても、製作会社付属の会議室なので、折りたたみテーブルとパイプイスくらいしかないのだが。
「公の場での初仕事だな。気合入れて行くか」
 殆ど真っ白の概要書を手に、ガムをかみ締める暁 蓮華(fa0631)。
「黒曜石だ。よろしく」
 仕事量ありそうだなぁ‥‥ってな顔をしている彼女に、黒曜石(fa2844)がそう言った。長い黒髪を持つ彼、既に赤いルージュとシャドー、付けまつげにネイルアートまで完備し、いつカメラが回っても良い仕様になっている。
「希望は、役者とナレーターで。アジです‥‥」
「アルケミスト‥‥アルミで‥‥結構。よろ‥‥しゅうに‥‥」
 アジ・テネブラ(fa0160)と、アルケミスト(fa0318)が交互にそう言った。派手な外見のクロとは対照的に、控えめな2人。特にアルミは、まだ日本語が得意ではないらしく、言葉も途切れ途切れだ。
「まぁ3人とも、そんなに固くなるな。俺は焔。スタントマンだが、頑張らせていただこう」
 無口な彼女達をなだめながら、焔(fa0374)が概要書を手に取る。
「さて、今回の仕事だが、チェーンソーを使った戦闘映像か‥‥。豪快だな」
 流石に本物は後から合成だろうと思うが、持つだけでもけっこうな絵になる。腕の細い女優陣に出来るのか? と言う疑問をわかせていると、やっぱり細身の美少女‥‥に見えるトール・エル(fa0406)が、頬に手を当てて、胸をそらした。
「チェーンソーだろうとなんであろうと、華麗に踊ってみせますわ。おっほっほ!」
「うむ。確かに画期的なモノだが、いくらヒールでも試合では使えんからな。試合前のアピール代わりに、存分に使わせてもらうさ」
 グリード(fa0757)もそう言っている。まぁ、確かに彼の体躯と職業からすれば、チェーンソーを振り回すなど、造作もないだろう。
「とりあえず! 今回の予定だ」
 そんな役者さん達に、今回の作成画像の時間割と、それぞれの役目を表示するレン嬢。このうち、彼女の担当は、撮影現場での指示とメイク、それに撮り終わった後のCG加工等である。
「内容はわかった。音楽は、入れるのか?」
 彼女からの指示を受け、そう尋ねてくるクロ。プロモ画像とは言え、殆どが戦闘シーン。それなりに効果音や音響なども必要になってくるだろうとの事。
「無論だ。期日まで時間がないからな。撮影と平行で進めて欲しい」
「わかった。それと、衣装‥‥。希望はあるか?」
 言葉少なに役者達に確かめるクロ。まぁ、今回はアレンジだけだから、それほど手間もかからんだろう。と思い、その分服飾に力を入れたいようだ。確かに、彼の本日のお召し物を見れば、それは適任なのかもしれない。ちなみに、本日の衣装は、ゴスロリのロングドレスに、ヘッドドレス、チョーカー、踵高ブーツ、シルバー系のアクセサリを多数装備。まるで、カタログそのまま出てきたような格好だ。
「白のインバネスコートをお願い‥‥。演技に‥‥自信がない‥‥から‥‥、半獣化して、エンジェルに見えるように‥‥」
 アルミがそう申し出る。無理ならいいから‥‥と、出来れば‥‥と言った調子の彼女を見て、レオナード・レオン(fa2653)も希望を出してきた。
「そうだなぁ、CGとワイヤーアクションで、ファンタジー活劇っぽく出来ないか? 後、俺ショットガン希望な」
「台本には、木の悪魔とありますから、それを倒しに来たエクソシストって事で。あと、得物は二丁拳銃がいいですわ」
 トールも序盤に使う武器を申請している。さすがに本物を使うわけには行かないので、タダのモデルガンなのだが、彼の希望は、なんでも魔力のこもった銀の弾丸を撃つ事だそうだ。
「どう考えても、CGは必須か‥‥。こりゃ、後半は寝れねぇな‥‥」
 役者達の要望に、頭を抱えるレンさん。どうやらほぼ全ての役者に、CGをつけなければならない為、かなり大変そうだ。
「俺も手伝おう‥‥」
「ありがとな。お前ら、要望は出来るだけ聞いてやるが、その代わり、びしびし行くぞ!」
 クロが申し出てくれたものの、今回も眠れなそうだ。覚悟を決めたレンさんは、モードを仕事用に切り替えて、役者達に厳命するのだった。

 そして。
「で? 何で役者の俺達まで、物資を運んでるんだ?」
 社名の入った木箱を目の前にして、文句を垂れ流す焔。だが、レンさんは、そんな彼を蹴り飛ばしながら、ガムを噛み噛みこう言った。
「つべこべ言うな。人少ないんだから。お前らがそうやって物資を運んでくれるからこそ、あたしはこうして持てる力のすべてをだなぁ」
 見れば、ジャケットのポケットから、バランス栄養食が覗いている。3食それじゃ、身体に悪いだろうと、焔は思ったが、あえて言わない事にする。
「大げさだなー」
「何でも良いから、はよ運べ」
 彼女に喝を入れられ、積み上げられた木箱を見下ろす焔。大きさにはかなりばらつきがある。
「チェーンソーは後から合成するからいいとしても、大き目の奴をチョイスするべきだな」
 会社から渡されたカタログを見ると、丸太を切るものから、彫刻に使うものまで、様々な種類があるそうだ。しかし、どれも一定量の大きさを持つ為、それを入れられる箱を選択したかった。
「でも、俺一人で運ぶのか?」
 裏方の人数は少ない。
「頑張って‥‥」
 アルミがうるんとした表情で応援してくれる。お手伝いと称して付き従っているものの、まだ小学生だ。身長131cmの子供には、酷な荷物ではある。
「あれじゃ、無理だろ」
「確かに‥‥。あの小さな相棒では力不足だし、二人で運ぶとなれば身長的に面倒だからな。ビジュアル面で十分に役立ってもらっているから、力仕事は俺が引き受けよう」
 ため息をつきながら、せっせと木箱を運ぶ焔。力仕事に従事できそうなぶじおかとレオンは、ただいま衣装に着替え中なので、手が空いていない。
「んじゃ、配置終わったら、カメラ回すぞ。準備しとけー」
「おー」
 よっこいせ、と空箱を持ち上げる焔。
「そんなにぶすくれるなよ。皆で頑張り、素晴らしい作品に仕上げようぜ」
 その頬が膨らんでいるのを見て、レンはそう言って、持っていたガムを、労い代わりに差し出すのだった。

 いよいよ本番となった。
「しかし‥‥いくら後でCG合成するからって、これはないんじゃないか?」
 レオンの文句も当然で、村を襲ったと言うモンスターは、それっぽい形に切り抜いた木の板だった。ご丁寧に、目と口と鼻が、落書きチックに、マジックで書かれている。
「この方が切り易いだろ。相手がどんなものであれ、演技するのが役者ってもんだ」
「まぁ‥‥違いないんだが」
 後で、思いっきりモンスターらしい立派な画像つけてやるから、文句を言うな。と言わんばかりのレン、それぞれの武器を持った役者達に、こう宣言する。
「んじゃー、本番行くぞー」
 カチンコが成った。シチュエーションは、とある山間の村。人々は林業で生計を立てている‥‥と言う設定だ。
『平和な村が、突如モンスターに襲われた!』
 前撮りしたアジのナレーションが入る。効果音は後でクロが入れる為、今は用意されたBGMだけだ。タイミングを計る目的もあるそれが終わると、再びナレーションが入った。
『だが、そこに戦士達が現れた!』
 カメラが、役者一人一人の表情を撮る。まずは、素肌にスカイブルーのデニム生地で出来たオーバーオールを身に付けたぶじおか。ところどころ、黒ずんだ染みがあるのは、血を表現しているのだそうだ。持っているのは、ハンマーである。
「あれは、木の悪魔トレントですわね‥‥」
 シスター衣装を身に付けたトールがそう言った。演技力は高くないので、セリフは極力カットされてしまっている。それは、レオンも同じだ。
「食らえ!」
 迷彩柄のズボンにジャングルブーツ、上はタンクトップと言う、筋肉が自己主張してくれる衣装で、レオンがショットガンをぶっ放す。まぁ、ファンタジーに銃火器もへったくれもないものだが、スポンサーの意向には従った方が良いだろう。
「お食らいなさい!」
 そう叫ぶトール。彼が二丁拳銃で、複数の的に、舞うように弾丸を浴びせ、ぶじおかがハンマーを振り降ろし、アジが刀を振り下ろす。全て模造品だが、そのしわ寄せを引き受けるのは、レンがOK出しているので、あまり気にしないようにする。
「きゃー!」
 シーンは、次にその戦士達がピンチに陥る場面の撮影に入っていた。いくら攻撃しても効果がなく、一時撤退すると言った設定だ。既にアジの模造刀は、折られたものと交換されている。
「くうっ。なんて奴だ。ショットガンや剣が役に立たないなんて‥‥」
 派手に撃ちまくった後で、吹き飛ばされるレオン。よく見ると、ズボンとタンクトップの後ろに、細いワイヤーがついている。しかし、木の後ろに穴は開いているものの、本体には、被害が全くかかれていない。
「どうしましょう!」
「大丈夫だ。今、アレを輸送中だ! 皆! それまで持ちこたえろ!」
 トールのセリフに、レオンは力強くそう宣言‥‥したつもりだったのだが。
「どうしても、セリフが平坦だなぁ‥‥。ま、仕方がないか‥‥」
 何しろ、全員練習代わりに参加して、芝居能力はゼロである。アクションこそ、軽業やダンスの技能を使って、良く出来てはいるが、セリフが棒読みになってしまう事に、レンは顔をしかめっぱなしなのだった。

 まぁ、始まってしまった物は、今更うだうだ言っても仕方がない。シーンは、その後、援軍が到着する場面の撮影に移っていた。
「ここまでか!?」
 ボロボロメイクを施されたレオンが、そう言った。と、そこへ天空から「諦めてはいけません!」と声が響く。
「おお、あれは‥‥天使!?」
 クレーンで吊り下げられて現れたのは、ご要望通りの衣装を身につけ、背中から白い翼を生やしたアルミちゃんである。
「夢幻か‥‥、それとも神の啓示‥‥」
「いや‥‥現実さ」
 彼女と共に、援軍として到着したと言う設定の焔が、木箱を開け放つ。積み上げられた他の木箱と違い、それだけには、本物のチェーンソーが収められていた。
「これは‥‥」
「すごいですわ、聖なる力を感じますわ」
 用意されたそれを持ち上げる振りをするトール。13歳の細腕では持ち上がらないので、そこには後で別撮りしたチェーンソーを、はめ込み合成する予定。
「さぁ、悪しき者に聖なる裁きを!」
 スィートエンジェル・アルミちゃんが、声高にそう叫ぶ。半獣化している分、他のメンツより演技力の高い彼女、先陣を斬るように、急降下して行った。
「天使様も出撃なら、その聖なるパワーで、奴らをぶちのめすかね」
 その様子にレオン、実際にチェーンソーを手に取り、先ほどのシーンより倍増した木のモンスターに、それを振り下ろす。飛び散る木片。この辺りは、スロー撮影専用のカメラで撮っている為、元の画像にモンスター画像を重ねるだけで、彼の希望する戦闘シーンに仕上がるだろう。
「ひゅう〜。んじゃま、エンジェルに負けないよう、ノリノリで行こうか!」
 もう1人、力技担当のぶじおかも、軽く口笛なんぞを吹きながら、ひと回り大きなチェーンソーのエンジンをかけるのだった。

「わたくしでも軽々と使えますわ。それにすごい切れ味!」
 得意のガンカタをご披露しながら、嬉しそうにそう言うトール。
「これならいける!」
 アジも、軽快なステップで、木の胴元へとねじ込む。すれ違いざまに身をかがめ、その胴を抜くように切り裂く演出だった。
「ちぇすとぉ!」
 一方、アルミちゃんもそう言いながら、チェーンソーに見立てたアウトドアナイフを振り下ろしている。
「「「逝って良し!」」」
 最後は、全員でチェーンソーをかっこよく構えて、決めポーズの撮影だ。役者は6人いる為、ちょうど組体操の扇の形になっている。背の高いレオンは、中央付近で、チェーンソーを腰のあたりに構え、ややポージング気味。
「この‥‥製の‥‥チェーンソー。この‥‥チタンの刃に‥‥絶てぬもの‥‥それは‥‥人の心‥‥のみ‥‥」
 そう言ったアルミちゃんの背中からは、雲間から後光がさしている。
『当社のチェーンソーは、悪魔の木でも切れます』
 暗転した画面には、使用機種と共に、ナレーション付きで、そう書かれているのだった。

「カット!」
「ふぅ、快感‥‥!」
 一仕事終わったアジさん、何のビデオを見たのか、チェーンソーを抱きかかえるかのようにして、そう呟いている。
「出来、どんなだ?」
「まぁ、正直戦闘シーンで7割埋まってるしな。TVに出すわけじゃないから、これで良いんじゃないかと」
 クロに問われ、レンはそう答えた。そして逆に、確かめるようにこう続ける。
「画像処理、不自然じゃないよなー」
「ああ、ノイズもないし、音も飛んでない」
 画像調整の為、何度も見直しているが、どうやら大丈夫のようだ。
「最高の褒め言葉だな。裏方としての、あたしの誇りだ」
 が、その直後、彼女は崩れるようにその場に経たりこんでしまう。クロが慌てて助け起こすと、疲労が一気に来たらしく、「すぴー‥‥」とお休み中。
「そのまま休憩させてあげましょうね」
 ほっと胸をなでおろすクロに、エンドロールに自分達の名前が出ている事を確かめたアジが、そう言って毛布をかけてくれるのだった。