ドーム爆破指令アジア・オセアニア

種類 ショート
担当 姫野里美
芸能 2Lv以上
獣人 フリー
難度 やや難
報酬 3.1万円
参加人数 8人
サポート 0人
期間 03/10〜03/14

●本文

●大型ドームに爆弾設置
 それは、イベントでごった返す某ドーム施設での事だった。
「さすがに、コンサート会場にもなるだけあって、結構広いな。こりゃ、吹き飛ばすのは骨だぞ」
「そんな事、おおっぴらに言わないでくださいよ。いくらシナリオ上の話とは言え、うかつに外で話したら、通報された例だってあるんですから」
 どうやら、話ている2人はとある番組のスタッフらしい。
「俺達2人だけで考えてても、仕方なさそうだ。とりあえず、あちこち写真を撮って、会議にかけた方が良いと思う」
 あちこちでひそひそと囁かれる姿を見て、片方がそう言った。と、もう片方も、ガイドマップを眺めながら、使えそうな場所をピックアップする。
「そうッスね。えぇと、観客席とアリーナ、それに周りの売店とトイレ、それからエントランスを2〜3箇所って所ですかね?」
「ああ。そんだけ材料があれば充分だろう」
 一箇所に付き、2〜3枚も撮影すれば、充分な資料だ。そう思ったスタッフABは、撮った写真を手に、早速上司であるディレクターに報告する。
「成る程な。よし、ここは広く意見を募集して、若手のアイディアを取りいれよう」
 頷くディレクター。今回、撮らなければならないのは、テロリストの爆弾設置シーンだ。5万人程が収容できる大型ドームで、イベントが行われており、満員に近い客がいると言う設定。半周20分かかる広大な場所で、視聴者が納得するほど巧妙に、爆弾を仕掛けて欲しいそうである。そのドームが軽く吹き飛ばせるくらいのものを。
「先方に連絡入れてあるんだな?」
「ういっす。ロケ会場は、平日だとかなりヒマになるそうです」
 実際にロケが行われるのは、5千人程の小さなドーム。なんでも、イベントのない閑な時期を使い、エキストラ100名程度で撮影するそうだ。
「CG加工は、後でどうにかなるから、その辺は考えなくて良いと伝えてくれ。余計な部分に時間をかけられるのもアレだしな」
「わかりました」
 ただ、その辺りの加工はあまり考えないで良く、スピーディな爆弾設置シーンを撮って欲しいと言うのが、今回のお仕事だった。

●今回の参加者

 fa0538 金城匠(24歳・♂・虎)
 fa0826 雨堂 零慈(20歳・♂・竜)
 fa1200 姫月・リオン(17歳・♀・蝙蝠)
 fa1206 緑川安則(25歳・♂・竜)
 fa2163 アルヴェレーゼ(22歳・♂・ハムスター)
 fa2582 名無しの演技者(19歳・♂・蝙蝠)
 fa2605 結城丈治(36歳・♂・蛇)
 fa3175 下心充(22歳・♂・一角獣)

●リプレイ本文

【ドーム爆破指令】
 そんなわけで、挨拶を済ませた芸能人御一行様は、とりあえず『どーやって吹き飛ばすか』を会議していた。
「爆弾の知識等ありませんので、どこまで出来るかわかりませんが‥‥やるだけやってみましょう。皆さん、何か意見はありませんか?」
 姫月・リオン(fa1200)がそう言って、爆破案のメモを取る。
「そういう事なら、この私にすばらしい案があります」
 と、下心充(fa3175)は、ふふふふ‥‥と、パイプ椅子の上に足をかけ、持ち込んだらしい台本を取り出し、読み上げて見せた。
「まずは私がステージの中心に登場します。とびきりのイケメンが現れたことで、ドームの中は文句のつけようもないほどのスタンディングオペレーションに包まれるでしょう」
「「「「「は‥‥?」」」」」
 長々と自画自賛を始める彼に、目が点になる他の出演者達。と、彼はさらにその具体的な内容を続ける。
「そうでなくても、突然のショーに驚くことは確実です。ウインクに投げキッス、いざとなれば太ももの露出まではサービスしましょう。私の魅力に目を奪われているうちに、仲間たちに爆弾を設置してもらいます。仕掛け終わると同時に私は退散します」
「‥‥‥‥」
 まるでそこだけスポットライトが当たっているような語り口である。と、充くんってば、開いた口のふさがらない共演者に、まるでカメラでも回っているような風情で、胸に左手を当て、遥か天空を仰ぎ見るように右手を掲げ、こう宣言する。
「多くのファンたちに悲しまれることになりますが、これも撮影のためには仕方のないことです。巻き込まれでもしたらグッドフェイスが台無しですからね。最後は爆発をバックにイナバウアーでポーズを取ります。これで世界の半分は私のファンで埋め尽くされる事でしょう」
「‥‥1人でやれよ」
 流石にそこまでトリップされると、話が進まないので、緑川安則(fa1206)がツッコミを入れる。
「と言うのは冗談です。複数のテロリストで、同時に仕掛けると言うが、よろしいのではないかと」
 後頭部に巨大なたんこぶを作った充、乾いた笑いを浮かべて、そう提案した。表情が若干引きつっているのは、たぶんチャンスがあったら、マジでやろうと思っていたからに違いない。
「なら、我が輩はテロリスト役だな。爆弾もやりたいけど‥‥」
 名無しの演技者(fa2582)ことネームレス、そう立候補する。裏方も希望するが、やはり爆発物の知識はない。
「爆弾なら、私が何とかしよう。これでも陸自の入隊経験があるからな。本物らしい爆弾のデザインくらいは出来ると思うぞ」
 そんな彼らの知恵袋的存在になったのは、元陸上自衛官の緑川。
「そうですね。後は緊張感を与える為に、爆破の動機付けに、捜査官を配置するのはどうでしょう」
 その一方で、結城がそう提案する。確かに、ただ爆破するだけよりは、重厚感が出そうだ。
「んじゃ、とりあえずその方向で。機材等々は、手配してもらえるよう頼んでおきますね」
 まとめるリオン。そんなわけで、共演者達は、指定されたロケ地である地方ドームへと向かう。
「それにしても‥‥私は本業をほったらかしにして、一体何をしているんでしょうか‥‥」
 その帰り道、ぼそりと呟くリオンだった。

 数日後。
「一応、これで完成です。やはり、設計は詳しい人がいると助かりますねぇ」
「ちなみに、中身は時計と電池と紙粘土、それに電線だ」
 ネームレスが持ち込んだ爆弾のオモチャに、そう解説を入れる緑川。全て100円ショップで手に入れてきた安物なのだが、ダンボールやゴミ箱にカモフラージュして撮影すれば、バレやしないだろう。
「それじゃ、金城さんと結城さんが捜査官役、それ以外の人がテロリスト役、すでにスタッフのメンバーと会場全域図がバレているって設定でいいですね?」
 リオンの確認に、頷く一同。そんなわけで、撮影はまずテロリスト達が、捜査官の目をかいくぐり、会場内に潜入するところからスタートした。
「絶対にテロ行為なんて許さないぞ。さ、持ち物見せて」
「意気は盛んだがな。客が怖がってるぞ」
 黒ずくめのスーツをびしっと着こなした金城匠(fa0538)に、ぴしゃりとそう言う結城丈治(fa2605)。2人の設定は、対テロリスト捜査官。特に結城は、内閣直属の主席捜査官で、殺人やら大型武器携帯だとか物騒な許可を幾つも持っており、過去に奥さんが謀略でお亡くなりになっているそうだが、それこそそれだけで映画1本取れちゃいそうな設定がついているが、今回メインじゃないので割愛。
「お疲れ様です。これ、どうぞ」
「ありがとー」
 そこへ、スタッフジャケットをつけた雨堂 零慈(fa0826)が、ホットミルクを差し出した。実は彼もテロリストなのだが、お間抜けな捜査官役の金城君、疑いもせずにそのミルクを飲んでしまう。
「遅効性の睡眠薬です。15分後に眠くなりますから、バレやしませんね」
 心の声と称して、ナレーションめいた彼の台詞。その言葉どおり、金城君ってば、ぐーぐー寝てしまった。珈琲にしなかったのは、後で顔を覚えられてた時の言い訳用だそうである。
「じゃあ僕、また見回りに行って来ますから。最近、イベントに乗じてイタズラするやからがいますし」
「ああ、頼む」
 そう言って、彼らの側を離れる雨堂。その物騒な悪戯をしでかすのは、自分達なわけなのだが。
「出入り口は、捜査官さんが見張ってくれてます。大丈夫ですよ」
「わかりました」
 その雨堂、メインホールへ赴き、運営委員席に陣取ったリオンに、そう報告した。周囲に人がいる為、そう言う口調になったが、これはつまり『捜査官がいるから、出入り口は避けろ』と言う符丁みたいなもんである。
 そして、その報告を受けたチームリーダーの緑川は。
「爆弾テロか‥‥デモンストレーション、効果的な攻撃としては理解できるが、民間人への攻撃はしたくはない‥‥。しかしこれも任務だな」
 役柄としては、某国の特殊工作員。ドームへの搬入業者制服を身につけ、爆弾を搬入物の様に偽装してある。
「少佐、作戦開始準備整いました。いつでもいけます」
 部下役のネームレス、そう報告してくる。
「行動計画、配置場所は頭に叩きこんであるな。トラックは地下駐車場に乗り捨てる。20分以内に徒歩で脱出しろ。遅れてでも見捨てて容赦なく起爆させるぞ」
 そう言うと彼は、大型のバイナリー式爆弾をトラックに残すよう指示。
「了解。もちろんですよ。最高のショーといきましょう」
 ネームレスと共に、カートにC4入りダンボールを多数積んだ緑川、それを会場へと運び込んでいった。
「‥‥えっと、このIDでいいんですよね?」
 口調を変え、にこやかにそう言う緑川。彼が警備に提示したのは、予め入手しておいたIDカードだ。これは、開催委員に紛れたリオンからの提供である。
「上はそろそろ行動開始って所ですね。それじゃ、こっちも設置するとしますか」
 そのリオンはと言うと、あらかじめ土嚢袋に包んだ爆弾を、充と手分けして、支柱付近に複数設置して行く。「見張りやっときます」
 一方の充はと言うと、警備員の制服。役どころは、不審物チェックを行う開催委員と警備員と行った所。
「この柱と‥‥あの柱のところだな」
 会場周辺では、C4入りダンボールを爆破すべき柱のところに、疑われないようにおいている緑川の姿。爆薬を仕掛ける場所は、施設真下の地下駐車場、屋根膜を支えるワイヤーの基部、観客席の下等。
「せっかく地図を用意したんだがな」
「危険な要素は排除した方がいい」
 印を付けた地図は、用心の為、もって来てはいない。既に頭に入れてあると言う設定だ。原因は、会場を巡回している捜査官‥‥結城の存在だ。
「で、要求は? ‥‥有名女優の全裸写真を全世界に配信しろだと‥‥奴らフザケやがって!! いいから、ドームの図面を送れ!」
 直通回線で本部からの連絡を受ける結城。無論、仲間が送ったダミー要求である。いつも後手に回る本部の報告を聞き狼狽している模様。
「イベントか‥‥お祭り騒ぎもいいけど、こっちは仕事だからな。仕事はきちんとしないと」
 苦笑しながらも指定された柱に爆薬を設置していくネームレス。
「‥‥あれはCTUの人間か‥‥。まずいな‥‥急がねば」
 と、対テロ要員に気づいた緑川、作業を早めていく。
「リモコンは、故障ないな?」
「この辺は、腕によりをかけましたからねぇ」
 時限式よりは、コントロールの出来る物がいい‥‥と言う事で、リオンの手元には、どうみてもビデオのリモコンにしか見えないものがある。
 そして、作業終了5分前になった時である。
「そろそろ時間だな‥‥。後は離脱するだけっと‥‥」
 ネームレスが緑川と共に離脱。
「俺、来客の整理に行って来ます」
 雨堂は、イベント客の整理と、ダフ屋の排除名目で、エントランスから堂々と表へ出て言った。
「後何分?」
「んー、3分弱ですね」
 地下の充とリオンも、時計を手に脱出済みだ。
「想定時間内に完了したな。各員脱出に成功していることを祈ろう‥‥では」
 きっちり20分後、悪役めいた笑みを浮かべた緑川は、そう言って、リモコン式起爆装置を懐から出し、遥か遠くに見えるドームを確認して、ボタンを押した。
「なんて事だ! まったく!」
 崩れ行くドーム。その炎を背景に、充が笑い声を上げ、結城が悔しげに壁を叩いている。
「任務とはいえ‥‥虚しいな‥‥いつまで続くのだ‥‥」
 そんな中、バンに乗り込み、現場を離脱していた雨堂は、離れた場所から爆発する施設を眺めて、空しさに浸っているのだった。

 そして。
「こんなものでしょうか?」
「って言うか、ここまで凝ってやられると、むしろこいつらで1本撮りたくなるんだが」
 出来上がった画像に、監督さんはそうお墨付きをくれる。演技力はともかく、この重厚な設定は、たかだか10分程度のシーンで終わらせるには、勿体無いようだ。
「是非やってください」
 本来のマネージャーとしての表情に戻ったリオンが、そう頼んだのは、言うまでもない。