香港メイドさん物語2アジア・オセアニア

種類 ショート
担当 姫野里美
芸能 2Lv以上
獣人 フリー
難度 普通
報酬 3万円
参加人数 8人
サポート 0人
期間 03/16〜03/20

●本文

 香港のとある雑居ビル。
 ここに、『ふりひらのお洋服を着たメイドさんに、ご奉仕をしてもらう世界と言うのは、そもヨーロッパ発祥ではなく、日本のアニメに育成された文化だ!』と思いこんでいる映像会社の社長がいた。
「よし。とりあえずDVDが好評みたいだから、第二弾を作って、日本市場に売り込むぞ!」
 彼の手元には、以前作った『香港メイドさん物語』のDVDがある。もの珍しさもあって、それなりにネタにはされているようだ。
「業界に文句言われませんかね?」
「うむ。まだ実物は作っていないから大丈夫だ。とりあえず、こう言うものを見つけたんでな」
 そのDVDの下には、パソコンでプリントアウトしたと思しきチラシがあった。モノクロのそれには、『コスプレをして、会場で撮影会』と書いてある。
「遊園地貸切のコスプレダンパ‥‥。何スか? これ」
「ネットを巡回してたら見つけた。面白そうだから、ちょっとやってみようと思ってな。ほら、ちょうどメイドINじゃぱんだったっけ? あれの発売も決定したみたいだから、勝手に賛同企画って事で!」
 かなりこじつけくさいが、要はメイドの衣装を着て、会場へ殴りこみ、次回作の宣伝をしてくればいいそうだ。とは言え、中身は何も決まっちゃいないのだが。
「怒られても知らないッスけど‥‥。つまり、衣装もって、DVD持って、ここ行って営業してこいと」
「うむ。そうすれば、物好きな日本企業が、食玩かフュギィアでも作ってくれそうなんでな。そうだな‥‥ただ練り歩くのはつまんねーし、調度ノリの良さそうなコスプレイヤー達が揃ってるから、舞台借りて、10分くらいのショーをやるとか、良いんじゃないか? ちょうどホワイトデーシーズンだし」
 普通の遊園地ショーなら、むしろ観客は引いてしまいそうだが、その辺りはノリの分かりそうな御仁ばかりである。安心して挑んで良いのかもしれない。
「例によって、細かい所は本人達にお任せですか?」
「おう。そうしてくれ」
 こうして、仕事募集用メールが、関係各位に回されるのだった。

『コスプレイベントに出演してくれるメイドさん募集!!』

 なお、可愛くて綺麗なメイドさんであれば、男女問わないそうである。

●今回の参加者

 fa0402 横田新子(26歳・♀・狸)
 fa0932 RASEN(16歳・♀・猫)
 fa1386 百瀬 悠理(13歳・♀・兎)
 fa1646 聖 海音(24歳・♀・鴉)
 fa1660 ヒカル・マーブル(20歳・♀・牛)
 fa1680 碓宮椿(21歳・♀・猫)
 fa2492 アマラ・クラフト(16歳・♀・蝙蝠)
 fa2986 朝葉 水蓮(22歳・♀・狐)

●リプレイ本文

【香港メイドさん物語2】
●ご挨拶
 主催者への許可等々は、既に会社がやってくれたようだ。そんなわけで。仕事を受けたメイドさん達は、都内某所にある遊園地へと集まっていた。
「おはようございます。皆様、今日も1日よろしくお願いいたします」
 用意された更衣室で、にこりと笑顔で挨拶する聖 海音(fa1646)。人間関係の基本はご挨拶なので、彼女は、お仕事する他のメイドさん達にも、深々と頭を下げる。
「今回は、メイドのコスプレイベントですか。こう言った衣装は、一度は着てみたかったんですよね」
「あの‥‥。あたしはこれが正装なので、コスプレじゃないんですが‥‥」
 横田新子(fa0402)の反応に、本職がメイドさんなヒカル・マーブル(fa1660)、苦笑しながら、そう答えている。
「そうなんですか? うーん、私に会うサイズあるでしょうか‥‥」
 そんなヒカルに、不安そうにそう言う新子。かなりぽっちゃりさん体型の彼女、ウエストを見ている所、なかったらどうしようと気になる模様だ。
「大丈夫ですよ。正装ですから」
 安心させるように彼女はそう答えている。まぁ、ぽっちゃりさん過ぎるから、正装衣装がないと言うのは、確かにおかしな話ではあった。
「メイドさんかぁ。この間、ドラマで演じて以来かな、ボク」
「基本、私服は着物だからのぅ。若くなった気分じゃな?」
 届けられたメイド服を片手に、わくわくと言った表情で、そう言う碓宮椿(fa1680)と朝葉 水蓮(fa2986)。
 本人達の名誉の為に付け足しておくと、二人とも20代前半のうら若き女性なので、口で言うほど年寄りではない。
「曲はこんなものでいいですか? 一応、DVDを見てアレンジしてみたんですけど」
 既に着替えたアマラ・クラフト(fa2492)が、ギター片手に軽く演奏して見せた。若干ポップテイストにアレンジされていたそれは、皆で踊るのにぴったりな曲調だ。
「これなら、全員で踊れそうですね。後は、盛り上がるように皆で合唱すると良いのかな」
 海音、それを聞いて、だいたいのスケジュールを皆へ伝える。それによると、だいたい3曲くらいの演奏だ。まぁ、持ち時間10分程度なので、これくらいが妥当だろう。
「何はともあれ、最後まで皆で頑張ろー☆」
「おー!」
 椿の掛け声に、腕を上げるメイドさん達。そんなわけで、香港メイドすぺさるライブは開催されるのであった。

●ショー
「うわぁ、なんだかお客‥‥じゃなかった.御主人様がいっぱい‥‥」
 パフスリーブの黒のワンピースに身を包んだ百瀬 悠理(fa1386)が、舞台袖から観客席を見てそう言った。彼女の衣装は、袖口と衿が白で、ピンクのリボンがあしらわれている。エプロンには、肩と裾の部分に、フリルが施されている。ゴスロリ色を出す為に、頭にはカチューシャの代わりに、ヘッドドレスを着けていた。
「やっぱり大勢の方の前は恥ずかしいですわ〜」
 その衣装のまま、モジモジとしてしまう彼女。簡単なステージではあったが、いわば本職の芸能人が歌って踊ると言う事で、興味を示したコスプレイヤーが、結構な数集まってきたようだ。
「それでも良いと思いますわ。本来のメイドと言うのは、慎ましやかで目立ってはいけないものですから」
 そう言って、悠理を励ますヒカル。彼女の衣装は、オーディションに着た衣装と同じ、チャイナ風のメイド服だ。
「そろそろ出番だよー」
「「はーい」」
 そうこうしているうちに、舞台の幕が上がり、OP曲が流れ始めた。
「お帰りなさいませご主人様」
 司会は新子だ。彼女のメイド服は、オーソドックスなエプロンタイプだ。華やかに見せる為に、若干リボンやレースが多めに付いており、手に持ったバスケットには、DVDとマイクの本体が入れられている。
「あのメイドさん太ってるねー」
 観客がくすくすと笑いながらそう言ったにも関わらず、彼女は笑顔を崩さない。この辺は、ヒカルが教え込んだ『メイドは奉仕の精神で』と言うプロ根性の賜物だ。もっとも、コメカミに青筋アゲハが2〜3匹止まってたりするが。
「そして、メイドさん達による物語世界へとようこそ! しばらくの間、この素敵な時をお楽しみください」
 自分に対する文句を意識外へと押し込め、新子はそう言って、指を鳴らした。と、両脇からドライアイスがたちこめ、それが晴れると、数人のメイドさんが登場する。
「いくよ! まずはOP曲、Hello My Masterから!」
 元気よくそう言って、アマラがギターをひとならし。赤いフリルエプロンに、黒のミニ丈な袴と上衣。黒巫女メイドと言った衣装の袖や裾には、金色のラインが入っている。可愛いメイドさんと言うよりは、かっこよく綺麗な部類のコンサートの舞台衣装に見えた。

私は可愛いメイドさん 朝は早いし夜も遅い
だけど少しも苦じゃないの 貴方の笑顔が私を癒やすの

掃除に洗濯 お料理も 全ては貴方のために

時々失敗するけれど どうか私を見捨てないで
私は貴方にずっと仕えたいから

貴方は私のご主人様
私は貴方の可愛いメイドさん

 そう歌うアマラ。掃除に洗濯のコーラスは、海音を始めとする他の出演者達だ。覚え易いメロディを意識したそれは、コスプレイヤー達にも受け入れられたようだ。テンポの良いナンバーに、後ろでメイドカチューシャ、エプロンドレス、黒の革靴、黒の濃いめのストッキングと言う、シンプルなクラシックメイドの衣装を身に着け、立て眼鏡を着用した椿が、ヘッドセットマイクをつけたまま、元気良くおどっている。スカート丈が長めのそれは、ちょっと踊り難かったが、動きに会わせて裾がふわりと舞うので、おしゃれな印象を与えたようだ。
「今度発売の、私のアルバム、『柘榴・奏』のボーナストラックに入るんで、こっちもよろしくねーー」
 ちゃっかり宣伝して、彼女の出番は終了。
「こちらをどうぞ。今なら、初回購入特典で、アマラと同じ竹箒柄の、ミニストラップがついてきます」
 その間に、ヒカルは興味を示した客に、団扇を配っている。歌や踊りが余り上手ではないのと、メイド本来の姿を見せたいと言う希望だったので、ヒカルちゃんは基本的に、各種販売配布担当の、観客対応と言う裏方だ。それでも、写真を希望する客‥‥ご主人様やお嬢様には、笑顔で『はい、よろしくお願いします』と応えていた。
 それが終わると、今度はステージに、ドリルの回転する効果音が響く。そして、アップテンポの曲と共に、『MAID IN JAPAN』オーディションで着用したのと同じ、メイドロボの衣装を着たRASEN(fa0932)が登場する。右手がふさがるのを防ぐ為に、ヘッドセットマイクを着用し、野郎ゴコロをくすぐるドリル装備を身に付けた彼女に、会場が盛り上がる。
 歌うのは、持ち歌の中から、メイドとドリルをテーマにした曲、『Spiral MAID』だ。
「さぁご主人様もご一緒にーーー!」
 海音がそう言って、観客を煽る。彼女の衣装は、普段の和服を生かして、桜色の着物に、フリルエプロン、それにミニ丈の赤い袴だ。いわゆる和メイドと言う奴である。
「「「ドリル、回させていただきまーす!」」」
 最後にそう絶唱するらせんと観客。
「次でいよいよ最後となりましたが、一緒に歌って下さいねー☆」
 歌い終わったらせん、そう言ってトークで次の曲へと繋ぐ。最後は参加メイドが全員での、ED曲の合唱だ。「御主人様、お嬢様。本日は私どものステージにお集まりいただきまして、真にありがとうございます」
 水蓮がそう言って、出演者の賛辞と、客への礼を述べている。この曲は、香港メイドさん物語のED曲だと宣伝する彼女の衣装は、オーソドックスな白と黒基調のメイド服だ。膝下まであるロングスカートから、時々覗くガーター付き黒ストッキングがなめまかしい。おまけに、少々荒業だが、半獣化している水蓮には、狐の耳と、ふわふわの尻尾が生えていた。時々ぴくんっと動く耳と、歩く度にふさふさ揺れる尻尾は、コスプレイヤー的には萌え萌えなので、良い感じではあるのだが。

素敵なわたしのご主人さま 優しいわたしのご主人さま

どうぞいつでもお傍において 何でもお申し付けください

あなたのお役に立てることが わたしの幸せなのです♪

 海音が、売り上げに貢献できますように。お客様の心を射止められますように‥‥との願いを込めて、EDを歌う。どこか社交ダンス曲めいたクラシカルなメロディに、マイクスタンドの代わりにモップをもった悠理が、優雅な舞いを披露する。
「メイドさんと踊りたい御主人様、お嬢様はいらっしゃいませんかぁ?」
 そんな彼女達の相手を、観客に募る新子。ステップ自体はとても簡単なものなので、子供でも踊れる。反応は様々だったが、とりあえず適当に目に付いた観客をピックアップし、ステージへと上げる彼女。
「香港メイド物語、好評発売中じゃ」
「詳細は、この後の撮影会で、各メイドにお尋ねくださいね!」
 水蓮と新子が、そう言う中、メイドさん達は、横一列に並び、典雅な仕草で、深々と頭を下げる。幕が下りるその瞬間まで。

●撮影会
 そして。
「す、すごい人だかりになっちゃいましたね」
「別に構わないんじゃないかしら。営業だし☆」
 『ツーショットでの写真撮影可です』と書いたプラカードを持った新子が、そう言うと、椿は笑顔でポーズを決めてみせる。フラッシュがたかれまくるその場所には、ステージを見ていたアマチュアカメラマン達が、メイドさん達を愛機に収めようと、長蛇の列を作っていた。特に、ヒカルは、見た目のよさから、引っ張りだこで、メイドアイドルの彼女、目だってしまって困惑気味。
「あ、基本的にお触りはご遠慮じゃ。写真は構わんがのう」
 でりけぇとなので、壊れやすいのじゃ☆ と言い訳しつつ、半獣化姿のまま、撮影に応じる水蓮も、中々に人気の模様。
「宜しければこちらに詳細が書いてありますので、どうぞお持ち下さいませ、ご主人さま」
 そんな中、海音は会場で借りたワゴンに、チラシとDVDを乗せ、会場を一周している。飛ぶように、と言うわけではないが、それなりに手に取る者は多い。
 イベントは、概ね成功のようだった。