踊れ企画会議アジア・オセアニア

種類 ショート
担当 姫野里美
芸能 フリー
獣人 フリー
難度 易しい
報酬 0.2万円
参加人数 15人
サポート 0人
期間 03/30〜04/03

●本文

●俺の企画を採用してくれ!
 春。数多の番組が最終回を迎え、そして新しいスタートをきる時期。アイベックスの企画室では、プロデューサーが机に突っ伏して、うめき声を上げていた。
「駄目だ。こんなアンケートでは、現場の声が聞こえてこない!」
 彼の周囲には、各種企画用紙が散乱している。と、その様子を見た隣の部下が、気の毒そうに「もうすぐ番組改編期なんですけどねぇ‥‥」と呟いた。
「よし、そこのお前! 今から、芸能関係者各位に打診して、やって欲しい番組を聞いて来い」
「はい!?」
 プロデューサーは、その部下を捕まえると、そう言い出す。目を丸くする部下壱号に、彼はこうまくしたてた。
「特にバラエティと、日本米国以外のドラマや映画、それとポップス関係の番組企画が足りない!」
 何でも、脚本や監督のやりたいシナリオと、視聴者が求める内容に、微妙にズレが生じているんだそうだ。
「おいそこのお前! その範疇内で、何かやって欲しい企画や番組や映画があるかどうか、関係各位から、アンケートを取ってくるのだ!」
「えぇぇっ」
 捕まったスタッフくん。GO! パピー! ってな感じである。
「何か限定的っすけど‥‥。まぁ、いいか」
 引っかかる物はあったが、上司命令なので、部下くんは早速関係者に打診するのだった。

『企画を採用して欲しい奴、俺のところにもってこい! 期日は五日後だ!!』

「来るかなぁ‥‥」
「こなけりゃ赤字になるだけだよ‥‥」
 果たして、どれほどの人間が答えるのか? それは神のみぞ知る。

●今回の参加者

 fa0388 有珠・円(34歳・♂・牛)
 fa0441 篠田裕貴(29歳・♂・竜)
 fa0629 トシハキク(18歳・♂・熊)
 fa0847 富士川・千春(18歳・♀・蝙蝠)
 fa0858 シャミー(15歳・♀・猫)
 fa0922 亀山 綾(18歳・♀・亀)
 fa1780 山田夏侯惇(10歳・♀・豚)
 fa2002 森里時雨(18歳・♂・狼)
 fa2177 縞八重子(27歳・♀・アライグマ)
 fa2492 アマラ・クラフト(16歳・♀・蝙蝠)
 fa2573 結城ハニー(16歳・♀・虎)
 fa2683 織石 フルア(20歳・♀・狐)
 fa3072 草壁 蛍(25歳・♀・狐)
 fa3175 下心充(22歳・♂・一角獣)
 fa3179 和泉 姫那(23歳・♀・猫)

●リプレイ本文

「私が提案する企画は素晴らしいものです。これが通れば、視聴率50%のWBCを超えることができます!」
 最初の意見人は、下心充(fa3175)。
「これは私が出ずっぱりの番組です。私が出演することで、世界中の人間が幸せになります。なにしろ私はイケメンです。世の中の女性が喜ばないはずはありません。男性は、まあ、嫉妬にかられて不幸になる方もいるかもしれませんね。ですから、この番組は『地球と女性を救う』となっているのです!」
 ちなみに、番組内容としては、イイオトコだと自負する充が、登場するだけで視聴率が50%越えると豪語するので、カメラ目線と有名女優とのスキャンダルで視聴者を引っ張り込み、80%台を狙うと言うものだ。
「最後に私が取って置きのセクシーなポーズを見せます。セクシーさは、あのモンローを超えています。このポーズで視聴率は90%といったところでしょうか」
 100%は無理でしょうね。とか、謙遜らしき事を言いながら、ざーとらしく髪を書き上げてみせる充様。
「はい次の人」
 が、進行役の縞八重子(fa2177)に、あっさりとぶち切られてしまう。んで、2番目は篠田裕貴(fa0441)。
「俺が提出しようと思っている企画は、ミュージカル。あんまりそう言う形式のテレビドラマって見たことないから、テレビが良いんじゃないかな」
「あんまりやりすぎると、本家の舞台業界から、クレームがつくんよね。それ」
 歌って踊れる場所が欲しいと言う気持ちは分かる。だが、業界と言うのは、結構面倒だと、縞Pは告げた。
 それは、篠田もわかっているらしく、舞台だけにはこだわらないそうだ。TV番組で、科白と歌混じりっていうのも良いし、全編科白なしの歌と踊りのみっていう形式も面白いんじゃないかと、彼は言う。そして、それには、富士川・千春(fa0847)も賛成のようで。
「ミュージカルで、『ドラマ』を歌や音楽でストーリーを演じられないかしら」
 解説しておくと、彼女が言っているドラマと言うのは、番組のと言う意味ではなく、ドラマティックな物語‥‥と言う意味のものだ。
「そうねぇ‥‥テレビ番組だから、続けて見る人が楽しめるものがいいわね。ストーリーのメインターゲット層は、やっぱり女性層になっちゃうけど‥‥」
 男性向けではない番組構成に、苦笑する千春ちゃん。彼女は充の壮大な計画を後方もなく消しながら、自分の提案をホワイトボードへ書き記す。それは新人歌手かバンドと音楽界を絡めた話だったり、現代を舞台にした耽美な吸血鬼ハンターだったり、森の動物達が音楽を奏でる子供向けのお話だったり、色々だ。
「私は、時代劇っぽいミュージカルなんか良いんじゃないかと思います」
 その彼女とは逆の方向性を提案したのはアマラ・クラフト(fa2492)。彼女が書いた演目は、『新説・池田屋事変』とあった。
「別に史実のままに行う訳ではありません。どちらかといえば、蒲田行進曲に近い雰囲気です」
「だから、日本ドラマはマズいと‥‥」
 難色を示す縞P。それでも、彼女はその企画‥‥いわゆる新撰組もので押したいらしく、企画書を読み上げる。
「まぁ、物が物ですから、ここで血生臭い計画が挙がったり、ぶっ飛んだ計画案も次々と飛び交います‥‥結局は京都炎上に落ち着きますが‥‥」
 止まらないので、とりあえず話だけは聞く事になった。性質上、血なまぐさい計画になったりする中、壬生新撰組の屯所では古高俊太郎を拷問にかけ京都炎上計画を知る‥‥そうで。
「ここで本当に拷問にかける訳にはいきませんので、その辺りは演技って事で。新撰組は深夜、池田屋に討ち入りをします。無論、御存知の階段落ちもありますよ。翌朝、京都三条を新撰組が闊歩して締めくくる‥‥といった具合です」
 頭を抱える縞P。彼女自身も、考えていた企画があるらしい。それを聞くに、以下の様な話だ。
「取り敢えず、あたしがネタとして考えていたのは‥‥学園物のドラマかしらね〜? もちろん、普通の学園物じゃなくって、超能力とかが使える人間専門の学校とか‥‥それこそ、本物の学校を作って、そこに通って貰ってそこで起きる人間ドラマをドキュメンタリー風にしてもいいわよ?」
 それこそ、アマラの案も外伝のような形で出せると思うし。と続ける縞P。
「だったら私、ダンスフェスティバルみたいな感じの物をやってみたいですね」
 シャミー(fa0858)がそう言った。ジャンルごとに分け、審査員呼んで、その中で誰が一位か決める‥‥と言った、オーソドックスなコンテストだそうだ。
「後はこんな企画も有るんだけど?」
 と、そう言いながら、彼女が提出した企画書には、『二足歩行ロボットアニメ』と書かれていた。内容は、ある日、巨大な隕石が落ちてきて、生物が巨大化し、それに対抗する為、武装変更可能な人工知能付き巨大ロボットを作成した人類の、サバイバル物語だそうである。
「確かに面白そうなんだけど、これそのままやると、文句つきますねぇ」
「需要はありそうだから、海外資本探すしかなさそうだ」
 プロデューサーとディレクターの反応は、良好だ。業界を気にしてはいるが、興味はあるようである。
「私はこういうアニメの声優をやってみたいのですよ!」
 力説する結城ハニー(fa2573) が渡したのは、アイドルらしからぬ細かい設定書だった。それによると、遠く離れた植民星において、高圧的な地球政府と自由の為に戦う反乱軍の若者達の姿を描いたロボットアニメ‥‥だそうだ。基本は、反乱軍『ペガサス』と、特務部隊である『死神隊』を軸にして描かれ、人型汎用巨大メカに乗って戦う‥‥近未来ものだそうである。
「あの‥‥俺、番組で協力して欲しい事があるんっす」
 いつになく真剣な表情の森里時雨(fa2002)。と、彼は多少申し訳なさそうな、遠い表情で、こう言った。
「本当は、こう言った番組企画に乗じていい事じゃねぇが‥‥。俺が出奔した理由は、妹と‥‥『奴』を探し出すため‥‥。禁断の私闘も買い、路上格闘の道を選んだんです。しかし、若輩者の学生兼業じゃ限界もある‥‥」
 路上格闘家を名乗る彼、それが余り褒められた行為ではない事を、よくわかっているようだ。それでも、妹と敵を探す為、今日も彼は戦い続けている‥‥と言った所か。
「恥を忍んで頼みます! 人探しバラエティをっ。これで見つかる保障は無ぇが、俺が捜していることは判る筈! 既存番組の1コーナーで構わねぇから、お願いします!」
 見かけによらず、苦労してるようだ。
「とりあえずっ! ただ探すのもアレなんで、一応企画は考えて来たッスよ」
 彼はそう言って企画書を提出した。それには、『魁おこと教室:若輩者から古参兵が雑多に集い、技量を魅せあうショーバトル!』だの『重いコンダラ:中国奥地の滝勤行や木人戦、印度山奥の座禅の後、師匠と組手が卒業試験!』だのと書いてある。
「お琴? ‥‥おとこだよね。えーと、これはつまり、某少年漫画的番組に乗じて、人探しがやりたいと」
「そう言う事ッス!」
 てへ☆ と、照れた様にそう言う森里。一個人の要望に応じる事は難しいが、その流れ自体は面白そうだ。
「そうね。なら、テレビや舞台などで演じるのでなくて、現実の世界で演じるというのはどうでしょうか‥‥。依頼人は視聴者です。彼らが望んでいるシチュエーションを、役に成りきって演じますの。これなら、妹を探す路上格闘家‥‥でも、問題ないと思いますわ」
 そんな彼に助け舟を出すように、和泉 姫那(fa3179)がそう言った。彼女によると、視聴者が望んでいるシチュエーションを、役になりきって演じるものだそうである。例えば、一日限定の彼女や、数日限定の家族。自分に忠実なメイドさんが欲しいとか、そう言う願望をかなえると言った類の。
「体験レポートは、私もやりたいです。例えば、田舎で暮らしてみたり、伝統芸能を体験してみたり、そう言う感じの。イマイチ日の当たりづらい、神前舞踊とかが良い感じです」
 そう言った体当たりバラエティは、草壁 蛍(fa3072) も興味があるようだ。
「チャレンジ企画なら、もう少し競技があるほうが盛り上がると思いますー」
 手を上げたのは、千春ちゃんだ。彼女曰く、『芸能人が何種類かのゲームに挑戦する。ゲームを一つクリアする毎にメダルを獲得し、最後はそのメダルの個数だけダーツで賞品獲得にチャレンジする番組』だそうだが。と、賞品だの賞金だのと言った台詞に、今度は山田夏侯惇(fa1780)がこう言った。
「はいはいはーい。山田が考えた企画は、賞金賞品がいっぱいもらえる番組です。番組が出したお題に対し、芸能人の方々が挑戦して、みごとクリアしたら豪華賞品がもらえる、みたいな。予算的にきびしいようでしたら、とんでもない無理難題を出せば面白いと思いまーす」
 例えば、東大試験で100点合格とか、一ヶ月100円生活とか。たまに、難易度を低くして、達成者を出せば、視聴率も稼げると主張する。
「どうしても普通の番組は、役者さんは役者さん同士、歌手は歌手の方ばかりで集まってしまいがちですし。バラエティ番組は、そういった閉塞した状況に風を吹き込むのではないでしょうか」
 子供めいた発想ではあったが、一応筋は通っている。見せ金程度で充分だから‥‥と主張するカコちゃんに、ディレクターは考慮に入れてくれるようだ。
「バラエティなら、スポーツ中継でも良いんじゃないか? ほら、前に相撲解説に、相撲好きのアーティストが出た事があっただろ。あれと同じ感じで」
 トシハキク(fa0629)が提案したのは、スポーツバラエティ。
「サッカーみたいに連続しているものは難しいが、格闘技では結構やりやすそうに思うし。それに、試合する本人達視点ではなく、実況視点でのVTRも見たいと思う」
 彼は、現状のスポーツ番組では、満足できていないようだ。色々大変なのはわかっているが、やりがいはあると主張してきた。もっとも、中継に固執すると、正規の中継会社から文句がくるので、解説くらいに留めたいディレクター。
「そうだなぁ。企業が出してる製品数品を一人‥‥もしくは一組一品担当。それぞれでプランを練ってCM作成して放映。ネット等で投票、トップを決めるって奴はどうだ?」
 有珠・円(fa0388)が提案したのは、衣料品や整髪料の宣伝でやっているようなものだ。
「ネット配信の音楽コンテストやバラエティなんかやれば‥‥。まぁ、個人的には、ここでCGによるネットアイドルなんか面白いと思う」
 最近は、TVの宣伝よりも、面白いウェブサイトもある‥‥と、アリスは言った。それに、最近のCG技術は発達しているので、生身のより可愛いアイドルを作りだす事も、可能と言えば可能だ。問題は話題になる場所が、限定されてしまう事だろう。まだまだネットよりTVやファックスが強い地域は多いのだ。
「そうだな‥‥。裏方でバンドを組んだり、美容系のドキュメンタリーもいいんじゃないか?」
 裏話的な展開を、番組にしようとするアリスの意見に、織石 フルア(fa2683)がそう言った。そう言えば以前、裏方メンツをかき集めてユニットを作ったと言う話もある。同じ様に、スタッフにスポットを当ててはどうかと言う提案だ。
「皆、ドキュメンタリーもバラエティも良いが、昼間のワイドショーを忘れてへんか!?」
 それらとは、全く違う提案をする亀山 綾(fa0922) 。彼女はきょとんとする縞PとDに、こうまくし立てる。
「カメラをかいくぐりデートせよ芸能人! すっぱ抜けカメラマン! 道ならぬ恋人達大歓迎! 週刊誌にに写真を売り込まれぬようがんばれ! ちゅうんはどうやろか。あ、これ番組の企画とちゃうか」
 そこまで言い切ってしまってから、はたと気付く綾ちゃん。が、最近では芸能人のデートシーンを番組企画にするのもありである。
「それに! そこでメモ取ってる脚本家! 最近大人しすぎ。もっとぶっ飛んだ話書いてーな! BLとかBLとかBLとか!」
 そう綾ちゃんは言うが、視聴率の都合があるので、おいそれとは趣味全開に出来ないのである。
「ふむ。春先から夏は変態が多いとよく聞く。最近は男も危ないらしいな。という事で、簡単な護身術の特集番組なんてどうだ? 防犯ベルの使い方とか、いざという時の対処方法とか、そういうの」
 フルアの提案に、森里が『敵はどこだー?』なんぞと言っていた。
「後は‥‥登場人物が男‥‥もしくは女しかいない、キワモノドラマとかだな」
「キワモノって言うなー。って、それは、どこかの同人誌じゃ‥‥」
 綾ちゃんがそう言うが、彼女はすっとぼけた表情で、視線を逸らしている。確かにそこまでイチャつかんでも、ソレっぽい言動を垣間見せる夜中の番組等々はありそうだ。
「後は、番組やったら、秘境探検モノとかやりたいんやけど。未確認生物! 謎の部族! そんなのいない? いなかったらでっち上げろ! てなノリで」
 カメラマンと音声さんの後に入って、蛇が尻尾から落ちてきたり、ピラニアに襲われた腕が映ったりする探検番組がやりたいらしい彼女。と、便乗するように、アリスがこう言った。
「だったら、その隊長に、洋ちゃん参加はダメかな?」
 確かにオフィスPの藤田Dなら、問題なく奴を放り込んでくれそうだ。
「意見は出尽くしたかしら?」
「じゃあ最後に。こういう企画会議みたいなものは常設で行えるように、意見交換ができる場みたいなものがほしいと思う」
 縞Pがそう言うと、ジスが意見をこれからも聞いて欲しいと訴える。こうして、企画会議は盛況の内に幕を閉じるのだった。