太平洋探検隊救出編南北アメリカ

種類 ショート
担当 姫野里美
芸能 2Lv以上
獣人 3Lv以上
難度 やや難
報酬 9.9万円
参加人数 8人
サポート 0人
期間 05/10〜05/14

●本文

●始まりはジャングルの奥
 南米アマゾンで、謎の巨大遺跡が発見された!
 それを知った金曜いいでしょうメインディレクターであるミスター藤田は、看板俳優である太平洋を隊長とした、一大探索プロジェクトをでっち上げる。
 題して。

【金いい特別企画・太平洋探検隊がゆく】

 これは、太平洋隊長を中心とする冒険者達の、汗と涙と気合と根性の、壮大なチャレンジである。

【太平洋探検隊・第一回ロケ・水晶どくろの謎を追え!】
 南米アマゾンの地下に眠る謎の遺跡。そこには水晶どくろがあると言う! その怒りに触れたものは、大いなる災いが降りかかる伝説が! 太平洋をリーダーとする探検隊が、その難事件に挑む!

「って、それどっかの遊園地アトラクションじゃないですかぁぁぁ!」
 そんなわけで、深夜のうちにこっそり飛行機で、謎遺跡に一番近い村まで、放り込まれちゃった太平洋さん。目隠しを額につけたまま、藤やんに食って掛かっていた。
「うるさいなー。今回の企画は、夢を売る商売なんだから、実在してようがしてまいが、かまわねーんだよ」
 どこ吹く風で、耳の穴なんぞほじっている彼。つまり、藤やん曰く、7割‥‥いや、9割でっち上げでも、まーーったく問題ないらしい。
「横暴な‥‥」
「えぇい、神輿の観音様は、黙って指示に従えつーの。ほれ、お許し書き。あ、日程は二泊三日ね☆」
 その彼が渡したのは、地元自治体の撮影許可書である。担当調査官の話によると、遺跡は地下に広がっており、内部には侵入者を拒むような、様々なギミックが施されているとの事。丸太が転がってきたり、飛び石の上を渡らなきゃいけなかったり、切り立った壁をロッククライミングの要領で挑まなきゃいけなかったりするアレだ。もっとも、詳しいギミックは、行ってみないとわかんないらしいが。
「本ッ気で遺跡に泊まる気かよ‥‥」
 しかも、彼らの足元には、人数分のお泊り取材用機材。どうやら、冗談ではなさそうである。
「最近調査が始まったばっかの新品ホヤホヤだ。安心して潜ってくるがよい」
「できるかぁぁぁぁ!!!」
 NWとか、ヤバいオーパーツとか出てきたらどうするんだぁぁぁ! とか言う太平の叫びには、耳どころか足も貸してくれない藤やんだった。

 さて、喚く洋ちゃんを、カメラが取り終わった後の事である。
「藤やーん、これかなり広いみたいっすけど、全部回るんスか?」
「当たり前だ。でなかったら、良い画像は撮れないだろう」
 謎の遺跡は全4階層。入り口のある島が、札幌ドーム一個分と書いてあるところを見ると、ほぼドームがまるまる1個埋まっているものと考えて良さそうだ。そこには、一面にレリーフが施され、中にはあり得ないモノも混ざっている模様。
「つぅ事は何、俺‥‥生贄!?」
 顔を引きつらせてそう尋ねる洋ちゃん。中にはアノマロカリス型NWがいるかもしれないそうだから、自分の不運さから言って、途中で被害に遭いそうだと自覚しているらしい。
「がーんばってアノちゃんの非常食になって来い」
 その上、すでに藤やんの頭の中では、『アノマロカリスに拉致られる太平洋』の構図が出来上がっているらしい。きっと、いなかったら別のスタッフあたりに、アノマロカリス役をやらせるつもりなんだろう。
「ホントに拉致られたら、どーすんですかぁぁぁぁ!」
「その時は救出部隊を用意してやるから」
 にやにやと笑いながらそう言う彼。その為に、既に地元芸能事務所に、WEAを通じて応援を要請しているそうだ。
「だいたい、お前だって獣化すれば、ちったぁ持つだろ」
「宙吊りパンダなんて、洒落になりませんよぉぉぉ‥‥」
 いつもの事なので、覚悟は完了しているが、さすがにいやんな気分は抜けない太平洋さんだった。

 そんなわけで、金いいスタッフ&出演者各位!
 太平洋と共に、謎の遺跡二泊三日の旅に付き合ってくれる勇者を求む!
 なお、水晶どくろの怒りに触れても、当方は一切関知しない。
 以上だ!!

●今回の参加者

 fa0750 鬼王丸・征國(34歳・♂・亀)
 fa0898 シヴェル・マクスウェル(22歳・♀・熊)
 fa1206 緑川安則(25歳・♂・竜)
 fa2609 朱凰 夜魅子(17歳・♀・竜)
 fa2670 群青・青磁(40歳・♂・狼)
 fa2671 ミゲール・イグレシアス(23歳・♂・熊)
 fa3453 天目一個(26歳・♀・熊)
 fa3622 DarkUnicorn(16歳・♀・一角獣)

●リプレイ本文

「むむまぁいどー」
 唸った発音で片手を上げて、そう言う、オオサカンなミゲール・イグレシアス(fa2671)。
「ミゲール言いますねん。ミカちゃん☆ って呼んでーな♪」
 体の割りには、かーいらしー声でもって、周囲にハートマークを飛ばしまくるミゲールに、藤田Dは、カメラ越しにハリセンを飛ばす。
「嘘や。ミカエルって呼んで下さい。殴らんといてーな。痛いねん」
 わーきゃー言いながら逃げるミカエルだが、顔は思いっきり笑っている。体重120kgを誇る筋骨流々とした総合格闘家だ。なんばハリセンごときでは、びくともしないだろう。
「初めまして、よろしくお願いします。あれ、太平洋さん、いないのか?」
 そんな彼に、ぺこりと挨拶するシヴェル・マクスウェル(fa0898)。しかし、肝心の隊長がいない事に気付き、きょろきょろと周囲を見回す。
「すでに出発しているそうよ。軽く挨拶しておきたかったんだけどね」
 天目一個(fa3453)がそう言った。そうすれば、いざと言う時、救出がスムーズに行くと思ったんだが、タイミングがずれてしまったらしい。
「私もよ。その方が、混乱せずに行動できると思ったんだけどねぇ」
 残念そうにそう言う朱凰 夜魅子(fa2609)。
「さて‥‥呼ばれたはいいが、出演ではなく、緊急時の対処班か‥‥。久々に遠慮なく体を動かせるということだな?」
「楽しみやなー」
 画面には映らないが、前向きな思考回路のシヴィに、頷くミカちゃん。夜魅子も、少女らしからぬ獣のような猛々しい不敵な笑みを浮かべている。久々に歯ごたえのある敵と闘えそうだ。
「中東の地下遺跡に残る予定だったんだが‥‥人生ってのは、ままならねぇもんだな‥‥」
「そう言うもんだ」
 群青・青磁(fa2670)の少し残念そうな表情に、それなりに年輪を重ねた鬼王丸・征國(fa0750)、煙管をくゆらしながら、そう諭す。
「愚痴をぼやいててもはじまらねぇな。気をとり直してやるとするか」
「うむ。所属の皆に苦労はさせたくないからのぅ」
 弱小プロダクションの所長だと言う彼、所属の皆に、給金面で苦労させない為、今日も遺跡で燃えている。
「これが内部の地図だ。中は、落とし穴等々があるらしいぞ」
 そんな彼らに、シヴィはロケハン隊の友人から貰った、内部の詳細な地図を配った。それには、スタッフが仕掛けたトラップ等々が併記されている。
「中には、アノマロカリスがいるらしいとの噂があるが‥‥、生態についてはよくわからんなぁ」
 敵の行動や、攻撃方法の参考になれば‥‥と、アノマロカリスの事が書かれた本を読んでいた夜魅子、本を閉じてそう言う。
「NW化しているなら、見た目どおりの能力値ではないだろう」
 鬼征がそう言いながら、防弾チョッキやライダースーツが見えないよう、番組タイトル入り藍色ジャケットを羽織る。と、シヴィは考え込むようにこう言った。
「しかし‥‥、ぼーっとしているのも芸がないな」
 いざとなったら、カメラに映らないように、完全獣化で挑む予定だが、その間、体を遊ばせておくのも勿体無いと言ったところだ。
「罠でもしかけておくか? 転がる岩とか、熊とか」
「そーだな。当たっても怪我しない奴なら、それで良いだろう」
 妙案を思いついたらしいシヴィに、鬼征さん、そうアドバイスする。と言うことで、皆で、出演者達にローリングストーンをプレゼントする事にしたのだった。

 さて、数時間後。
「各員、携行装備品チェック。どー考えても何か起こすぞって空気だな‥‥」
 周囲に流れる不穏な空気に、やれやれと言った調子で、持ち込んだトカレフにサイレンサーを取り付け、セーフティを外す緑川安則(fa1206)。既に降魔刀は、腰の位置だ。服も、迷彩仕様に変わっている。
「カメラは回ってへんな。今の内に、獣化しとこ」
 周囲を見回したミカちゃん、既に熊の姿になっている。緑川も竜の姿に変じていた。
「まだ中に出演者いるじゃろう。わしは半獣化にしておく」
 そう言って、角を生じさせるDarkUnicorn(fa3622)。とっさにカメラに映ってしまう事を考えた彼女は、ひと目で救出班と分かりやすい、ナース服を着込んでいる。腰の特殊警棒が、チャームポイント。
「それじゃ、乗り込むとしますかねぇ」
 天目も同じ様に半獣化だ。ただし、耳がバレないよう、スカーフを頭に巻きつけている。
「スタッフからの報告では、一匹は天井に張り付いて逃げたそうよ。そう言う能力があると見て良いでしょうね」
 どこか飄々とした調子で、頭上を見上げる彼女。時々止まっているのは、遺跡のあちこちに、簡単な警報装置をしかけているせいだろう。
「じゃが、確かアノマロカリスはカンブリア紀の海の生物じゃったよな? なんで水も無いこんな場所におるんじゃ?」
「元々は、蛇やトカゲだったのかもしれないわねぇ」
 怪訝そうに首を傾げるヒノトに、そう答える天目。
「出たようだ」
 先頭に居た緑川が、彼女を制した。ちりん‥‥と糸に付けられた鈴を揺らしたのは、出演者に海老と蔑称された、やや小ぶりのアノマロカリス。
「まあ良い。こんなに早く獲物の顔を拝めたのも、日頃の行いが良い証拠かもしれん。これ以上、遺跡を歩き回らなくても済むしの」
 早速のお出ましに、嬉しそうな顔をするヒノト。
「わしの装甲は、簡単には貫けんぞ!」
 スタッフからの報告では、完全獣化して甲羅にこもれば、その攻撃は防げたとある。その判断から、山ほど防弾シリーズを着込んだ鬼征、半獣化して、霊包神衣を唱えた。と、思った通りアノマロカリスの牙は、まったく歯が立たない。
 と、その時だった。
「まずいわよ。太平さんが、アノマロカリス型NWに攫われたみたい」
 スタッフに同行していた天目が、呪いシーンの撮影中に起きた事故を報告してくる。
「護衛ついてたんだが、まさかあんな所から、現れるとは思っていなくてな‥‥」
 同じ様にくっついていた夜魅子が、申し訳なさそうに、報告する。と、そんな彼女達に、緑川は首を横に振った。
「気にするな。そう言う不測の事態の為に、俺達救出班がいるんだからな」
「と言う事は、まずは太平洋の救出が最優先だな」
 シヴィが、目的をはっきりさせるようにそう言う。
「トラブルメイカーだな、太平洋は。しかしアイドルとしては、トラブル歓迎‥‥と見るべきかな?」
 そんな中、どこか楽しそうに微笑みながら、ヒノトの頭を撫でる緑川。
「嬢、おぬしは下がっておれ」
「わしは緑川の側におる」
 NWハンターを名乗っているとは言え、まだまだ戦力としては厳しいヒノト、鬼征の指示に、銃を握り締める緑川の後ろに、ペトリと張り付くのだった。

 救出犯が向かったのは、アノマロカリスが消えたと言う、水晶ドクロの安置場所だった。
「祭壇の下に、こんな広い空間があったとはな‥‥」
 人工的に作られた祭壇の下には、新たな階層が広がっていた。
「誰かお助けー」
 真っ暗な中、ライトを向けると、パンダ化した洋ちゃんが、悲鳴を上げていた。
「どうやら、奴を非常食にしようって魂胆だな」
 よく見れば、洋ちゃんの腰のあたりには、うねうねとした触手が巻きついている。それを見て、そう判断する夜魅子。
「そうはさせるか! とりゃぁぁぁぁっ!」
 このまま食わせてなるものか、と。青磁が俊敏脚足を使った。軽快な足捌きを利用して、その触手部分へと、飛び蹴りを食らわせる彼。
「今だ!」
 NWの触手が緩んだ隙に、夜魅子が洋ちゃんの腕を強引に引っ張り込んだ。竜の腕力で引きずり出され、洋ちゃんは涙目になりながら、触手を抜け出す。
「大丈夫かの?」
「ああ。俺、丈夫だから」
 それでも、ヒノトの問いに、そう答える洋ちゃん。多少がたついてはいるが、彼女が持ち込んだ救急箱セットで、どうにかなるレベルらしい。
「なら良かった。何しろ、治癒命光は使える回数が限られておるからの」
 すりむいたらしき傷に薬を塗って、包帯を巻いて。安心したようにそう言うヒノト。
「負傷者は後退して応急処置を受けろ! 太平洋を守りつつ、周囲警戒続行!」
 その洋ちゃんを庇いつつ、指示を飛ばす緑川。この辺は、元陸上自衛官だそうなので、経験の賜物と言う奴だ。
「使うヒマがないと良いんだが、そうも言っていられないかもしれないな」
 防御力を生かして盾になっていた鬼征が、触手攻撃を受け止めつつ、そう言った。甲羅には篭っていないが、触手の攻撃は、中々彼を傷つけない。もっとも、彼も触手攻撃を、上手い事捌くほどの身の軽さはなかったのだが。
「NWハンターって言っても、まだまだ経験値不足ってな。ヒメちゃん。しっかり教練しろよ! 今日の屈辱は明日のためってな!!」
「う、うむっ」
 そんな彼に守られながら、緊張した顔のヒノトにそうアドバイスする緑川。
「経験その1、対NW戦闘は可能であれば完全獣化で挑むべし!」
 完全な竜の姿をとる緑川は、宣言すると、降魔刀を抜いて切り込んで見せた。
「本体が姿を見せたわねぇ。それじゃ、攻めるとしますか」
 天目が、まるで他人事の様にそう言いながら、金剛力増を使う。ひと回り大きくなった筋肉は、完全獣化の効果と合わさり、メリケンサックの一発を、日本刀並みにパワーアップしてくれた。
「どうやら甲殻類っぽい感じだが‥‥。こんな所じゃ、何に取り付いているか、わかったもんじゃないな」
 シヴィが同じ様に金剛力増を使って、ヴァイブレードナイフを振り下ろす。関節を狙ったそれを、NWは受け止めきれず、一部に傷が走った。
「ガタイはでかいが、それほど身は軽くないみたいだぞ」
 その様子に、シヴィがそう言った。確かに攻撃力は高いが、その動きは、自分が完全獣化せずに挑んでも、どうにかなる程度だった。
「でも、この触手、結構素早いぞ! それに、攻撃力も高い‥‥」
 俊敏脚足で走り回っていた青磁がそう言った。もし、それを使っていなかったら、とっくの昔に捕まっていただろう。
「柔い所を狙うか‥‥」
「ああ。殻は固そうだしな、上手く隙間をぬって、刀を突き刺すとするか」
 その彼女が、関節の隙間にナイフを振り下ろすのを見て、模造刀を武器にした青磁も同じ場所へと突き刺す。
「他のNWが来る気配はないな‥‥」
 太平洋を背後に庇いつつ、周囲を見回した夜魅子は、皆にそう告げる。
「だとすると、奴だけを倒せば良いな。コアはどこだ‥‥?」
 視線を、周囲の警戒から、本体の弱点を探す方向に転じる彼女。薄闇の中、赤く煌いたのは、アノマロカリスの頭部。
「あそこだ! 頭の付け根!」
 仲間に知らせるように、そう叫ぶ夜魅子。それを受けて、緑川がヒノトに言い聞かせた。
「経験その2! NWはコアを狙え! やつらはタフだからな!」
 他の部分は、硬い甲殻に覆われてはいても、コアが覆われていると言う事は、まずあり得ない。場所の判明したNWの目くらましに、青磁が火をつけた毛布を、投げつける。
「はいはい、食らいなさいなっ」
 その隙に、天目がメリケンサックでぶん殴った。ぎしゃあと暴れるアノマロカリスに、シヴィが容赦なくナイフを振り下ろす。なにしろNWが一体とは限らないし、撮影もある。そうそう手間をかけてもいられないのだから。
「わしが囮になるのじゃ」
 緑川の影から、ぴょんっと飛び出したヒノト。どちらかと言うと、後衛系の彼女に、NWはチャンスとばかりに、襲いかかる。
「っ!」
 避けようとしたものの、彼女の動きでは、触手の攻撃力に対応しきれず、触手に捉えられてしまう。
「バカ! 何を考えているんだ!」
「えへへ。これで良いのじゃ」
 胸の当たりから真っ赤なものを噴き出させつつ、それでもぎこちない笑みを浮かべるヒノト。半獣化を解いた彼女を食らおうと、アノマロカリスは牙を剥く‥‥。
「かかりおったな!」
 その刹那、ヒノトは即座に半獣化し、額に生やした一角獣の角を、アノマロカリスのコアに突き立てる。
 悲鳴をあげて、彼女を放り出すNW。
「いくで! ちょー、熊爪正拳突き!」
 そこへ、ミカエルが、金剛力増でパワーアップした爪を叩き込んだ。体力にものを言わせたその一撃は、コアに大きなヒビを入れる。
「イエローストーン出身を舐めるなや!」
 そのまま、熊の膂力にものを言わせて、めりめりと文字通りのベアハッグを繰り出す彼。
「この距離ならば、回避出来まいて!」
 身動きの取れなくなったNWに、鬼征が至近距離から、集水流弾をお見舞いする。使えるだけの魔力を注ぎ込んだものを叩き込まれては、いくら大型NWとて、ひとたまりもない。
「どうする? まだ、この一体とは限らないが‥‥」
 逃げる暇さえなく、押しつぶされるように倒されるアノマロカリス。肉塊と化した残骸を見て、シヴィがそう尋ねる。
「いや、太平洋は確保したんだ。ここで引き返すのが上策だろう」
 そう答える緑川。周囲を見回したが、攻撃してくる気配はない。
「出演者を、無事送り返すのが、わしらの目的じゃからな」
 人の姿に戻った鬼征も、深追いは禁物だと告げる。
「ち。せっかく用意した秘密兵器、使いそびれちまったなぁ」
 それを見て、ちょっぴり残念そうに、火炎瓶と褌を詰め込んで燃えやすくした鼓を、かばんに押し込む青磁だった。