【金いい】追いかけて肉アジア・オセアニア

種類 ショート
担当 姫野里美
芸能 2Lv以上
獣人 3Lv以上
難度 普通
報酬 7.9万円
参加人数 8人
サポート 0人
期間 05/21〜05/25

●本文

●お花見どうでしょう
 本州では四月が花見のシーズン。だが、ここ北海道では、桜は5月の花。何しろ、雪が融けると同時に、梅も桜も同時に咲いちゃうお国柄(多少語弊有)なので、本州とは一ヶ月ずれているのだ!
 そんなわけで、ここ札幌の桜の名所、円山公園では。
「ってか、なんだこの貧相なセットは」
 札幌における桜の名所‥‥円山公園に連れてこられた太平洋。げんなりしている彼の目の前に置かれているのは、ででんと置かれたバーベキューセット。しかも、その辺のホームセンターで安売りされているような、あまり見栄えのしない代物だ。
「南米に予算を突っ込んだせいだ。文句を言うな」
「企画組んだのお前だろうがぁぁぁぁ!」
 俺の責任じゃねぇぇぇ! とツッコミを入れる洋ちゃん。が、藤田Dは鼻息荒くふんぞり返って、目の前に巨大な肉塊を置いた。
「えぇい、つべこべ言うと、食わせてやらんぞ」
「こ、これはっ!」
 ぺかーーーんと油で光っているかは定かではないが、まな板の上に置かれたのは、ほどよく油の乗っかった、美味そうな羊肉だ。
「俺がせめてもの慰みに、名寄の専門店からゲットしてきたジンギスカン用お肉5kgだっ!」
「おーーーーーー!」
 おそらく、予算の半分はそこにつぎ込まれているであろう品に、目を輝かす洋ちゃん。「では、さっそく人数を集めて‥‥」と、花見の算段を練っていた時の事である。
「ん? なんだあれは‥‥」
 公園の反対側から、土煙を上げて乱入する影。
「鳥? 飛行機‥‥?」
「いあ! NWだっ!」
 お約束のボケなんぞをかましつつ、そこへ映ったのは、角と筋肉はついているものの、何故だか羊に酷似したNWだった! 
「あーーーー! 俺の肉ーーーーーー!」
 しかも、勢い余った羊もどきは、そのまま頭の上‥‥ちょうどコアがある辺りに肉を乗せ、そのままダッシュで山の中。
「太平洋。これはチャンスだ」
「は?」
 ニヤリと笑った藤やん、洋ちゃんの肩をぽむっと叩き、カメラを向ける。
「奴が逃げ込んだのは、円山公園の裏! つーーまりっ! 肉が食いたきゃ、裏山駆けずり回って、あのNWを捕まえて来いっ!」
「えーーーーーーーーーー!!!」
 びしぃっと指を突きつけられて、文句を言っても、藤やんは仕事の名の元に、それを受け付けちゃあくれないのだった。

●今回の参加者

 fa0204 天音(24歳・♀・鷹)
 fa0898 シヴェル・マクスウェル(22歳・♀・熊)
 fa0922 亀山 綾(18歳・♀・亀)
 fa1170 小鳥遊真白(20歳・♀・鴉)
 fa1206 緑川安則(25歳・♂・竜)
 fa2002 森里時雨(18歳・♂・狼)
 fa3134 佐渡川ススム(26歳・♂・猿)
 fa3425 ベオウルフ(25歳・♂・狼)

●リプレイ本文

「円山公園か‥‥。そういや、修学旅行で来たきりだったな」
「うーむ。これだけ人がいると、出来るだけ人間の姿でいて、半獣化にしておいた方が、無難そうじゃのう」
 周囲を見回してそう言う小鳥遊真白(fa1170)に、天音(fa0204)が言った。雑木林同然の裏山だが、そこかしこに花見客が行楽に訪れており、彼らを興味深そうに見物中。亀山 綾(fa0922)が『芸能人、ジンギスカンのために羊を追いかける!』のロケにしちゃった為だろう。すでに、焼き肉セットは、は、ダンボールにマジックで『肉奪還作戦本部』なんぞと書かれた看板を装着済み。
「ちゅうことで太平はん、あんさんが『ジンギスカン食べ隊!』の隊長や! あんじょう頑張ったってや!」
「なにぃ! 食われるのはごめんだからな!」
 そんな彼女に、背中を思いっきり叩かれて、文句垂れる洋ちゃん。
「‥‥はあ、太平洋はトラブルメイカーなのは確定だな。やつのいるところ、必ずトラブルになる」
 2人のやりとりを、苦笑しながら見ていた緑川安則(fa1206)、やれやれと思いながら、特殊警棒を腰に挿す。
「しっかり肉を取り戻してさっさとカタをつけよう。あんまり時間を掛けてたら、見頃が過ぎる」
 桜の舞い散る中、そう言って、羊モドキ捕獲に意欲を燃やすシヴェル・マクスウェル(fa0898)。
「よし、これよりミッションを開始する。捜索班、状況を報告せよ」
 まぁ、洋ちゃんも藤やんも、獣人である以上、NW捕獲の邪魔だけはしないだろう。そう思い、真白はトランシーバーにそう話かけた。
「こちら天音、ターゲットの姿は見えない」
 その向こうから、すでに先行した天音の声が聞こえてくる。覗き込んだ双眼鏡の視界には、羊モドキの姿は見えないようだ。
「やはり、闇雲に探すのは良くないか」
 マックスのところも同じである。彼女も既に半獣化を済ませていた。
「まだ被害は出ていないが、何だかNWにしてやられたって気分だ。おのれ、このままではすまさんっ!!」
「うむ。NW許せねぇ!」
 なんだか人格がちょっぴり変わってしまっているベオウルフ(fa3425)に、激しく同意する森里時雨(fa2002)。
「まずはNWが去っていった先の確認だ。太平さん、どっちに行ったか覚えてるか?」
「確か‥‥上に行った覚えがある」
 マックスの問いに、頂上の方を指差す洋ちゃん。それを聞いたベオは、その筋骨流々とした胸板をちらつかせつつ、半獣化。
「まだ人目がある、獣化はまずいで?」
「それもそうだな。んじゃ、こうすれば良いだろう」
 綾ちゃんが、カメラを構えたまま、そう忠告してきた為、彼は納得した表情で、ごそごそと変装用グッズを取り出す。もう5月も半ばだってーのに、耳まで隠れるような帽子に、膝まであるジャケットは、いくら北海道でも、ちと問題な気がするが、彼らは本州の人間なので、しゃあないという事で。
「まともに追っかけても、向こうは土煙を上げて猛ダッシュする相手だからな‥‥。気は抜けないか‥‥」
 半獣化を誤魔化したところで、俊敏脚足を使って、逃げたNWを追いかけるベオ。それを見て、マックスは綾の機材を抱えながら、こう尋ねた。
「とりあえず、一般人がいなければ、問題ないだろう。誰か、鋭敏系の能力持ちはいないか?」
「あれ」
 彼女が指し示したのは、サーチペンデュラムを、携帯地図の上でくるくるしている森里と太平洋。そこだけ見ていると、まるで怪しげな遺跡探索隊である。まだ南米気分が抜けないようだ。
「見つけたぞ」
 その頃、ベオは双眼鏡の向こう側に、羊モドキの姿を捉えていた。
『下手に仕掛けるなよ!? 綾が行くまではな!』
「わかっている。現在は、そのまま追跡中だ」
 トランシーバー越しに指示するマックスに、彼はそう答えている。格闘家を名乗る以上、動きを見れば、その軽業技能の高さも分かると言うもの。見付からないように、木々の間に潜み、次の指示があるまでは、じっと我慢の子だ。
「司令! 民間人が入り込まないように、こうしてみました」
 その間に、森里は一般視聴者が入りこまないよう、黄色いテープで立ち入り禁止区域を捏造中。そうこうしているうち、綾も現場でカメラを回し始めている。
「敵戦力は暴走状態のNWだが、問題ない。ただし肉は落とすなよ。アレには予算の半分のレアリティあるんだからな」
「いわずとも、肉こそ最重要事項だ!」
 緑川が忠告すると、佐渡川ススム(fa3134)が、ばさりと上着を脱ぎ捨てた。
「って、なんだそ格好」
「宴会芸だっ!」
 自慢げにそう言った彼の衣装は、闘魂鉢巻になんばハリせん、ブラストナックル&ファントム装備、さらに半獣化した尻尾を、股間に回し、シークレット孔雀尻尾と組み合わせた、白鳥の湖風宴会芸ルックである。
「佐渡さん、是非これもっ!」
 そこへ、森里が持ち込んだ富嶽褌を追加装着し、晴れて立派な変態衣装の出来上がりだ。
「おうっ! 行くぜ太平洋っ!」
「俺は生贄じゃねぇぇぇぇ!!」
 同じ様に褌を装着させられて、佐渡ちゃんに連行される太平洋。
「ふ。これで俺だけはまっとうに映るぜっ」
 高濃度イロモノに紛れ、社会地位死守を果たそうとする森里の魂胆に、周囲から「「無理無理」」と、ツッコミが入ったのは、言うまでもない。

 そして。
「ヤツの知能が羊並であれば追い込むのは容易の筈‥‥!」
 獣人達が配置を完了した網の中へ、突進してくる羊モドキ。それを確認しながら、真白はそう言った。
「そんな事ぁ気にしねぇ! 肉だにくーーー!!」
 もっとも、佐渡はまったく気にしていない。依然、宴会芸すぺさる衣装のまま、羊モドキを追いかけ回している。
「皆、熱くなりすぎるな! 肉が確保出来なければ我々の負けだ! 冷静に機会を待て」
「俺の肉を返せぇぇぇぇぇ!!」
 真白の注意にも、耳を貸さず、そう叫びながら、走って行く佐渡ちゃん。
「あーあ。ありゃあ聞いてへんなー」
「構わん。裏山から出さず、肉さえ落とさなければ、後はこっちの仕事だ」
 カメラで追ってる綾ちゃんが、呆れたようにそう言うと、緑川は首を横に振る。確かに、盛大な格好で追いまわす佐渡に気をとられ、NWは周囲の網に全く気付いていない。
「わかった。私が足止めに回ろう。これ借りるぞ」
 そんな中、マックスは本部に置いてあった茶色い液体のペットボトルを片手に、そう言った。ほのかに香るその液体は、明らかに飲み物ではないが、気にしないでおこう。
「いた!」
 ほどなくして、追いかけっこに興じている羊モドキを発見する彼女。
「目標補足! ターゲットは敵の頭の上だ!!」
「任せろっ! 足の速さは伊達じゃねぇ!」
 緑川が、角に刺さったお肉を確認すると、森里が羊モドキの目の前に飛び出していた。
「を〜ほほ♪ 捕まえてごらんなさ〜い☆」
 くるっと振り返り、海岸を走る恋人達の台詞を吐きながら、上着を半脱ぎにし、お肌を晒す彼。
「森里のアホ! それは腐れ女子にアピールする方や!」
「いや。とりあえず、餌にはなっているようだっ!」
 しっかりカメラに収めつつ、そう言う綾ちゃんの隣で、双眼鏡ごしに、食いついている事を確かめる緑川。見れば、森里の格闘家の割りには、艶やかお肌に、食欲を刺激された羊モドキ、角で突付き倒していた。
「しくじるなよ、佐渡川・太平! 花見の成否は貴様等の働きにかかっているのだから!」
 NWの意識が、森里に向いたところで、真白の指示が飛んだ。綾の忠告に従えば、銃は使えない。
「おうっ! 食い物の恨みは末代までだっ!」
 だが、既に佐渡はやる気満々で、木の上に待機中。
「来たぞ!」
「流石にこの状態で挑むのはきついが‥‥、食らいやがれっ!」
 森里を追い掛け回していたNWが、マックスが待ち構えるあたりへと突進してきた。そこへ、彼女は持っていたペットボトルの中身をぶちまけた。ぷーんと濃厚な香りが立ち込める中、目をやられたNWは、視界を失って、あちこちランダムに突進している。
「大平さん頼みますよ!」
「こう言う時は‥‥隊長、突撃の見本見せたってぇな!」
 そこへ、森里と綾ちゃんが、2人して洋ちゃんを、羊のまん前に蹴り飛ばす。
「とりゃぁぁぁぁっ!」
 悲鳴が上がる中、すかさず佐渡が上から羊もどきの背中に飛び乗っていた。
「よし、上手く食いついた!」
「うむ! 良い画像が撮れそうや!!」
 変態白鳥仮面のロデオは、傍から見ていると、酒を飲み過ぎた酔っ払いか、暖かくなると増殖する連中の域に達している気もするが、芸人的には美味しい姿なので、綾ちゃんはむしろ一枚絵で撮っている。そのカメラの中、佐渡を振り落とそうとするNW。暴れた衝撃で、角から肉が外れ、落ちそうに!
「佐渡さん! 肉こっちに!」
「死んでも肉はぁっ‥‥!」
 森里が何とかパスさせようとするものの、自分が落ちるのも構わず、肉を抱え込む佐渡。そこへ、業を煮やした森里が、持っていた鞭で、角を絡め取った。
「うぉわぁぁぁっ。引っ張られるぅぅぅぅっ!!」
 しかし、しょせんへたれ属性なので、そのまま押さえ込む事は出来ず、宙へと放り投げられてしまう。見れば、先程より、ひと回り筋肉が大きくなっていた。
「ふんっ。この程度、拙者の手にかかれば‥‥ってぐはぁっ!」
 肉を確保したと見た天音、鋭敏視覚を使い、NWの攻撃を回避しようと試みたが、相手の方が素早い為、紙一重で角をぶつけられてしまっている。
「早! てか、なんてパワーや。しゃあない。画像乱れるけど、編集でなんとかするで!」
 彼らだけでは、手が足りないと判断した綾、カメラを固定すると、自分も攻撃に加わっている。
「今や、今のうちに肉を奪い返すんやっ!」
 突付かれても大丈夫なように、霊包神衣をかけてから、おさえ込む彼女。
「標的ゲット! あとはこのナイトウォーカーを打ち倒すのみ!!」
 その隙に、洋ちゃんに肉を渡した緑川、特殊警棒で殴りかかっていた。
「私が押さえつけている間に、コアをやれ!」
 同じ様に、ヴァイブレードナイフとクローナックルで、羊もどきを押さえつけていたマックス、天音にそう叫ぶ。
「えぇい、角と怪力が恐ろしいだけじゃ! そこを打ちのめせば、こちらに勝機はある!」
 相手が素早いが故に、カウンターアタックはままならなかったものの、都合4人が張り付いている今なら、角への集中攻撃も可能だ。
「逃がしてなるか!」
 特殊警棒を自らの武器に振り下ろされ、流石に不利を悟ったNW、4人を振り落として、逃亡を図る。そんなNWに、彼女は破雷光撃を放った。まっすぐ伸びた雷は、走りだそうとしたNWの足元へ、強烈な一撃をお見舞いする。
「肉さえ奪えば、こっちのもんだ! うぉりゃぁぁぁっ!」
 怯んだ隙に、コアへの一撃を食らわせる森里。びしり、とひびが入った。
「‥‥ブラスト」
 そこへ、上に乗ったままの佐渡が、ブラストナックルをコアに押し付けたまま、起動させる。ぼむっと何かが爆発するような音を立てて、羊は程なく肉塊にされるのだった。

 かくして、めでたく焼き肉争奪杯が始まったのだが。
「えぇい、肉ばっか喰うなぁ! ちゃんと野菜もご飯も食べんかいっ」
 しっかり自分の分500gを確保した綾ちゃん、肉を奪い合う芸能人達を、そんな事言い出しながら、撮影中。
「そうだそうだー。野菜摂取も必要だぞー」
 美容と健康にいいんすよ! と、もっともらしい事言いながら、持ち込んだジャガイモやアスパラを、他の面々へ通しつけようとする森里。
「って、藤田D! 俺の皿に葱ばっか乗せないでくださいよぉ!」
 そんな彼の皿に放り込まれたのは、ひと束余計に用意された焼き葱。どうやら、彼がこっそり葱ノートを見ていた事が、藤田Dに知られてしまったようだ。
「せっかく芸人いるんだから、なんかやれー」
「よし。では俺が秘伝の踊りをっ!」
 彼が葱塗れにされる中、真白の要請に従い、ズボンに手をかける佐渡。下ネタ好き体質が、天音の持ち込んだ日本酒効果で強化されちゃったらしく、すでにお盆を用意済み。
「馬鹿者! 風情を楽しまんか、風情をっ!」
 流石に公衆の面前で、おヌード晒すのは、放送上よろしくないと言う事で、即座に天音に特殊警棒で成敗されていた。
「こっちも出来たぞ」
 下ネタ芸人が画面から消えた所で、ベオが先ほどの羊NWを、捌いて持ってくる。が、かなりミンチ。
「表面の汚れは落としたし、毒もない。陸上自衛隊レンジャー修了課程では、蛇を捕まえて食ったりするぞ。しかも敵に見つからないように、煙や明かりも使えなくなっているから、皮を剥いで生肉で」
 ぶーぶーと文句垂れる芸人に、緑川が怖い事例を持ち出していた。
「太平や佐渡川、別に食っても構わないぞ? 案外うまいかもしれないし。もちろん、私達はまっとうな肉をいただくが」
「俺もまっとうな肉の方が‥‥って、無ぇ!?」
 マックスが、おもしろ半分でそう言い出す。謹んで遠慮しようとした洋ちゃんの肉は、すでに彼女の胃袋へ。
「無理やり食わすなぁぁぁ!! お前も巻き添えじゃあ!」
 ベオがせっかくだから‥‥と、洋ちゃんの口へ放り込む。1人で生贄になるのは納得行かないと、彼ってば、佐渡を巻き込んで、NWハンバーグを試食させていた。
「浅ましい‥‥。なんと浅ましい‥‥」
 ぼそりとそう言う森里、佐渡と洋ちゃんから、容赦なく蹴りこまれてしまうのだった。なお、各位の怪我は、治療費3割引で治して貰ったそうである。