【封神録】八甲田修業アジア・オセアニア

種類 ショート
担当 姫野里美
芸能 フリー
獣人 フリー
難度 普通
報酬 1万円
参加人数 10人
サポート 0人
期間 05/27〜05/31

●本文

●春の八甲田で秘密の特訓だ!
 ダークハンター。それは、この世界に潜む悪しき妖怪達を狩る、現代の仙人物語である‥‥。
 彼らが住まう世界は、視聴者の基準で言えば、19世紀から20世紀にかけてのワールドだ。ただ、そこはTVなので、時々あり得ない人工物が出たりする。そんな場所は、通称『仙境』とされ、現代と遜色ない技術を誇っていると、番組では説明していた。
 そして、そんな仙境に建つのが、ダークハンター極東支部である。そこでは、大師匠と言う名の、いわゆる『長官』が、整列した狩人達に、雷を落としていた。
「なっとらん! なっとらんぞ! お前達!」
 彼が怒鳴っている理由。それは、前回の戦いぶりである。
 説明しよう! ダークハンター封神録は、生身で戦う仙人物語である。名目はバラエティだが、ドラマ風に仕立てなければならないので、多少無理無茶無謀が出てくる。それを視聴者にわっかんないように誤魔化しつつ、上手く辻褄をあわせる事が、ダークハンター達に求められたお仕事だ。詳しくは、以下の通り。

キャラルール:役を作っても、素のままで挑んでも可。CG抜きのリアルな演技でやるので、その為なら、容姿0でも問題なし。ただし、武器防具道具その他は、現実に調達してくる事。中身は張りぼてでも構わないが、実在させなけらばならない。一応TV映画なので、悪役で出てくる事もOK。ただし、携帯電話だけは、世界観の都合上、必ずごまかす事。

諸注意:徹底的なリアリティを追求する為、極力CG、ブルーバック等々は禁止。関係者は概ね獣人で、逃げ回る一般の方には、全て着ぐるみだと説明してあるので、獣化OK。本職じゃなくても構わない。

 しかし、第1回と言う事で、皆勝手がわからず、手加減せずにやってしまい、ボスであるはずのお狐様が、病院送りになってしまったのだ。それで、長官が雷を落としていると言うわけである。
「そこでだ! こんなものを用意した!」
「はーい☆」
 その長官の指示で、整備班長の蛇姉さんが用意して来たのは、前回と同じ偽西遊記御一行様である。即ち『破戒僧』『関西弁の猿』『踊る豚』『少年愛の美学に目覚めた河童』の4名様だ。
「これは、諸君らが闘ったデータを元に開発した、パオペエマペットだ。今回、諸君らには、これを相手に、八甲田山で修業をしてきてもらう!」
「精巧に作ってあるから、こーんな事もしちゃうわよ」
 命を下す長官の横で、何故か4人そろって同じポーズをしてたりするパオペエマペット。ちなみに、画面上では糸がついているだけで、前回と同じ役者さんである。つまり、生身。
「今回は、彼女にも同行してもらう。良いと言うまで帰ってくるな!」
 そのパオペエマペットを操る彼女、今回はジャッジ役として同行するそうだ。
 そんなわけで、第二回目の放映は、展開的にはお約束の『使いこなせていないパオペエを扱えるようにする』内容になったのである。
 何。実際には八甲田山は連山名で、固有名詞は存在しない?
 気にするな!!

●今回の参加者

 fa0475 LUCIFEL(21歳・♂・狼)
 fa0791 美角やよい(20歳・♀・牛)
 fa0922 亀山 綾(18歳・♀・亀)
 fa1163 燐 ブラックフェンリル(15歳・♀・狼)
 fa2002 森里時雨(18歳・♂・狼)
 fa2680 月居ヤエル(17歳・♀・兎)
 fa2836 賈・仁鋒(23歳・♂・狐)
 fa2944 モヒカン(55歳・♂・熊)
 fa3293 Even(22歳・♂・狐)
 fa3765 神塚獅狼(18歳・♂・狼)

●リプレイ本文

 霧の立ちこめる深き山々‥‥と言う触れ込みの、八甲田トレッキングコース。そこでは、出演者達が、指導係の整備班長に連れ込まれていた‥‥。
「うふふふ、前回は残念な結果に終わっちゃったから、しーっかり修業しなくちゃネェ☆」
 腹から綿のはみ出た河童のぬいぐるみを、そう言って柱に押し付ける月居ヤエル(fa2680)。
「それじゃ、キミ達頑張ってねぇー」
 積極的でないEven(fa3293)が、整備班長に、ごーろごろと喉を鳴らして、甘えている。当然、お仕置きされる彼。
「ここは若き仙人たちの修行場。前回、必要以上の殺生を行ってしまった若き仙人達は、更なる修行を積んでいた‥‥」
 たんこぶ作ったイヴンが、亀山 綾(fa0922)に言われたナレーションを入れる中、協議の結果、整備班長改め白素貞小姐、通称白小姐は、仙人達にこう告げる。
「とりあえず。貴方たちの宝貝を見せてもらいましょうか」
 と、LUCIFEL(fa0475)は必要以上に擦り寄りながら、手にした槍とパワーブレスレットを恭しく差し出した。
「俺のはこれだ。火尖鎗に強精輪」
「こいつは星燕と言う‥‥。ある程度の力量がないと、中に本当に隠されている刀身を出すことができない」
 神塚獅狼(fa3765)が持ち込んだのは、一見すると何の変哲もない木刀。続いて、夜宵こと美角やよい(fa0791)が持っていた装飾品を見せる。
「私はこの三つかなぁ」
 彼女の説明によると、相手の弱点を透視出来る掌中眼に、宝貝鋏である金蛟剪。それに一次的に腕力の増強を図れる金剛琢だそうである。ちなみに見かけはどうみても、モノクルにマルチツールの鋏、それにダイヤモンドリングである。
「私は呪符で。実は、福引で当てたプレミア車くらいで、全然宝貝らしくないものしかなくてね」
 あはははは‥‥と後ろ頭をぽりぽりと掻く燐 ブラックフェンリル(fa1163)。他に持っているのは、降魔の木刀くらいだが、格闘技能が余り高くないので、やっぱり使い道がないようだ。
「ふふふ。俺の宝貝は‥‥これだ! って、待ちやがれぇ!!」
 一方、森里時雨(fa2002)は手にした神秘のタロットを高々と掲げて見せた。が、折りしもそこへ山特有の強風が吹き、タロットカードを遥か彼方へと飛ばしてしまう。
「なんだか面白そうだから、私もついていこーっと☆」
 そんな森里を、燐ちゃんは適当に書いた札を貼り付け、俊敏脚足を起動させる。
 ただし、進む方向が斜め145度ほど違っていたが。

「まあ、気を取り直して修業修業。まずは軽く坊主さんに挨拶しましょうか‥‥」
 軽く行方不明宣言した仙人達はほったらかし、イヴンは練習相手になった偽西遊記御一行に、近付いていた。
「しかし‥‥、今度は極東ですか‥大変ですね〜」
 一緒にお茶をすすりながら、和やかに談笑始めるイヴンさん。
「うぬ。何でも次は砂漠だそうだ。河童が皿が乾くと騒いでたなー」
「それはご苦労様です‥‥」
 どこの砂漠で、何をロケるのかは知らされていないが、暑くて大変なのは間違いないようだ。が、和みすぎたせいか、白小姐に、思いっきりドツかれてしまう。
「しっかり修業しないと、ホントに食べられそうですね」
 仕方なく、団扇を両手で構え、坊主に挑むイヴン。が、いかんせん団扇に描かれたパンダが、全てをぶち壊しにしていた。
「いきます!」
 大きく振り仰ぎながら、坊主の足元に、ソニックナックルを打ち込む。周囲の空気が爆発するように震え、地面を暴風に巻き上げていた。
「あっちも盛大にやっとるのう。ほな、そっちの色男も、修業始めてぇな」
 なんばハリセンを腰に挿した綾が、ルシフにそう言った。彼女の両手は、業務用カメラでふさがっている。重いので、ゴールデンハンマーはナシだ。
「いや、それが重くてなー」
 彼が持ち込んだ火尖鎗、実は本物。しかし、ルシフ自身には持ちきれない為、振り回すと言うより、ようやく持ち上げていた。
「俺が鑑定してやろう。見せてみろ」
 獅狼がそう言って、彼から槍を受け取っている。2人の練習風景に、ここぞとばかりにカメラを回す綾ちゃん。その中で、ひとしきり振り回している獅狼、こう言った。
「ふむ‥‥。使う物の意志・精神力によってそれがどう上手く操れるかって所だな。道具に人間が操られているようでは、それは『使われている』のであって『使いこなしていない』わけだし」
 まぁ、獅狼の方が、重い物を持つのには、慣れているのかもしれない。その指導を聞いた彼は、考え込む仕草を見せる。
「まずは武器と語る事だ。お互いを理解しなければ、相棒とは呼べん」
 そう言うと、獅狼は自らの木刀を抱え、その場で座禅を組んだ。目を閉じ、まるで瞑想の様な体勢となる。さすがに滝がないので、水行と言うわけにはいかないが、何事にも動じない精神力を養う事は大切だ。
「よし。ならば手合わせ願おう」
 しばらくそんな彼の姿を、注意深く観察していたルシフだったが、おもむろにそう言った。
「ふむ。良いだろう。相手が妖怪で無くてもいいわけだし」
 素振りばかりでもつまらないしな‥‥と答え、木刀を構える獅狼。
「後悔するなよ! 強精輪発動!!」
 もっとも、ルシフとてパワーが足りないだけで、格闘には少々の心得はある。そう叫ぶと、手にしたパワーブレスレッドを起動させるのだった。
「ふふーん。かかって来なさーい!」
 その一方で、ぶんぶんと腕を回す夜宵。その指には、既にダイヤモンドリング‥‥ではなく、金剛琢が収まっている。
「んじゃ、いくぞぉー!」
 まるで、子供のような対応をしつつ、豚さんは九歯と呼ばれる独特な武器を持ってきた。持ち手を見ると、木刀にポリウレタンでそれらしき飾りをつけただけのシロモノだ。
「掌中眼起動!」
 自慢げに振り回す彼の前で、夜宵は身に付けたモノクルに指を当てた。刹那、ぴぴゅーーんと効果音が入る。
「木人の弱点を見切ったよっ!」
 と、夜宵ちゃんは金蛟剪をちょきちょきと鳴らしながら、豚さんの腰辺りにひっついていた紐をぶち切ってみせる。と、糸を切られた凧‥‥もとい、人形は、その途端制御を失って、見境なく攻撃をし始めていた。
「って、カメラ狙うなボケぇぇぇ!」
 2人の様子を撮っていた綾が悲鳴を上げる。それでも撮影は止めず、自分の体を盾にして、カメラを庇うのだった。

 その頃、燐ちゃんはと言うと、たどり着いた社で、お参りをしていた。
「えーと、安全運転で終わりますように。それからー‥‥」
 神様にお願いしているのは、ロケが無事終わる事。そして、おおよそ人が考え付かないような、とんでもないお願い事ばかりである。
「嬢ちゃん。願い事が口から漏れとるで」
 しかも、べらべらと大声で喋ってしまっているので、通りかかった猿に、思いっきりツッコまれている。その自慢げな姿に、燐ちゃんは降魔の木刀を構え、打ちかかる。が、人化状態のままでは、殆ど攻撃力はない。するりと交わされてしまう。
「うきー! なんで上手くいかないのーぅ!?」
 あっかんべぇと、人を小馬鹿にしたような言い方に、ぷくーっと頬を膨らます燐ちゃん。逆に、同じ様に持った木刀で突付かれて、武器を取り落としてしまう。
「だったら、これはどうだ!」
「うおわぁぁっ。何すんねん!」
 直後、背中から浴びせられたのは、賈・仁鋒(fa2836)の飛操火玉である。彼があらかじめ唱えていたものらしい。
「ふ。これは密かに開発させた万鴉壷だ。この中から、万羽の鴉が、お前に遅いかかると言うわけだ」
 彼が手に持っているのは、高さ20�pほどの地味な壷である。
「どうみても単なる厄除けの壷やないか」
「そう見えるのは、お前に邪念が宿っている証。その邪念。燃やし尽くしてやろう!」
 猿のツッコミ、レンは続けて6個ほどの火の弾を空中に出し、容赦なくぶち当てる。そんなわけで彼は、レンに蹴り倒され、画面から消えるのであった。

 さて、その頃。一心不乱に木刀を振る獅狼を、興味深げに観察している河童改め深沙を見つけたヤエルは、自信たっぷりに、彼をドツいていた。彼女の手元には、どこからか調達してきたエレキギターがある。既に半獣化状態となった彼女は、びしぃっと挑戦状を叩きつけていた。
「このギターの音色を聞いた者は、誰でも踊りだしちゃうの。と言うことで、演奏開始っ!」
 じゃらんっとエレキギターをかき鳴らすヤエル。みゅーじっく、すたぁと! とばかりに、曲を奏で始めた。ところが、深沙は無反応。
「えー‥‥踊ってくれないの‥?」
 ぷーと頬を膨らませ、上目遣いに目を潤ませるヤエル。しかし、元々『少年愛の美学に目覚めた河童』なので、彼は動じないようだ。
「んもー。空気読みなさいよねっ!」
 業を煮やしたヤエルが、深沙の足元に空圧風弾を炸裂させる。
「何をする! 危ないだろう」
「こないだのお返しだもんねっ」
 土砂が舞い飛ぶ中、文句をつける深沙に、言い返す彼女。おかげで、彼の足元には、誰かが掘ったかと思うような、盛大な穴が開いていた。
「なら、こっちも少々本気を出したほうが良いかな」
 深沙が、そう言って三又に割れた矛を持ってくる。ちなみにやっぱりイミテーションソードに飾りをつけた代物。
「あっ。向こうにカードもった可愛い男の子!」
 形勢不利を悟ったヤエル、あさっての方向を指してそう言った。深沙が釣られて振り向くと、森里がいる。その隙に、ヤエルはとっととその場を撤収してしまうだった。
「居たな! 俺の挑戦、受けてもらおう!」
 深沙を見つけ、カードを引き抜く森里。ちなみに、2人とも持っているのは神秘のタロットである。
「唸るぜナックル! 正義の戦車GO!」
 携帯電話用のポーチに仕込んだタロットを、彼に見せ付ける森里。引き抜いたカードは逆位置だが、本人は気にせず完全獣化する。
「くらえっ」
 獣化のパワーアップ状態で、格闘威力の上がった彼、ブラストナックルとソニックナックルを、地面に突き立てる。
「‥‥おい」
 たっぷり10秒後、動きのない森里。どころか、後ろ頭に冷や汗書いている。見れば、腰の携帯電話ケースに、中途半端に差し込んでいたタロットカードが、後ろの方に散らばってしまっていた。
「ああっ。すいませんっ。。んじゃ、いきま‥‥」
 編集で何とかしてもらう予定で、そのままポーズ決めに、腕を高々と上げようとする森里。しかし、爆風に巻かれたのは、何もカードだけではなかった。
「ちょっと待て。糸からま‥‥」
「って、いやぁぁぁん☆」
 深沙の糸が森里のナックルに引っかかっていたらしい。引き寄せられる格好となった深沙、彼に抱きついてしまう。そのまま押し倒される森里。
「これはこれで絵になるから、ええや☆」
 期せずして、深沙×森里の一枚絵が撮れちゃった綾ちゃんは、満足げにそう言うのだった。

 さて、紆余曲折あった仙人達を待ち受けていたのは、熊のような大男だった。よく見ると、熊獣人のモヒカン(fa2944)さんだ。
「くっくっく。覚悟しろ、小童ども!」
 と、彼はマントをはためかせ、大仰に名乗りを上げる。
「我が名は悪の大羆妖怪・セブン! 女王候補選別の手伝いをやる予定だったのだが、道に迷って、お前達の姿を目撃したんで、やっつけに来たのだ!」
 威張って言う事じゃないんだが、それが悪役の王道と言うものだ。と、森里それにはツッコまず、ナックル片手に殴りかかる。
「修業の成果を見せてやる! とりゃぁぁ!」
 が、モヒカン改めセブンは、彼の攻撃にびくとも動かない。避けずに、あえて受け止めているんだが、完全獣化中の毛皮には、かすり傷一つ与えていないようだ。
「なんて強靭な体力なの‥‥」
 表情を凍りつかせて、ヤエルがそう言った。と、セブンはニヤリと不敵に笑いながら、こう叫ぶ。
「今度はこっちの番だ。奥羽山脈の魔王にも匹敵する我が腕力を食らえ!」
 魔力で増強させた筋肉‥‥と言う触れ込みで、金剛力増を使った彼は、目の前にいた森里をぐわしとつかみ、投げ飛ばしてしまっていた。
「丁度いいわ。複数人数で組んでってのも、やってみたかったし」
 いつの間にか合流していた燐ちゃんそう言うと、レンも「連携なんかも試してみたいしな」と答え、万鴉壷をセブンに向ける。
「行くわよ!」
 最初に動いたのは、夜宵だった。指に嵌めたリングを軽く叩くと、彼女の筋肉がめりめりと盛り上がる。他の二つは、偵察用宝貝だから、実戦には向かないの! って事にした彼女、セブンの足元を狙う。
「ちょっと待て! 少しは加減し‥‥」
 ばしばしとぶん殴られて、流石に洒落にならないダメージを被った様子の彼。
「食らえっ! 我が愛の炎をっ!」
「って、それはマジで死‥‥おわぁぁ!」
 そこへ、ルシフが火尖鎗の炎を叩き込んでいた。ふっ飛ばされたセブン、綾のカメラに激突してしまっている。何とか画面がブレないように耐える綾。その隙に、彼は「覚えてろよ〜〜!!」と、山の向こうへと消えて行った。
「脅威は去りました。我々正義の仙人も、更に修行に励まなければならないでしょう!」
 そう言って、番組を纏めるヤエル。カンペは綾が用意したものだ。
「俺、素振りしてる間に、全て終わってしまった‥‥」
 なお、逃げたセブンさんは、真面目に修業していた獅狼の前で、地団太踏んで悔しがっていたと言う。