朝まで論争SHOW!アジア・オセアニア

種類 ショート
担当 姫野里美
芸能 2Lv以上
獣人 フリー
難度 普通
報酬 4.8万円
参加人数 8人
サポート 0人
期間 06/08〜06/16

●本文

●朝まで論争SHOW!
 月に一度、深夜に行われる特番があった。
 名前は、『朝まで論争SHOW!』。通称、『朝論』である。
 何人かの専門家を招き、日本や世界の様々な問題について、始発が出る時間まで、生中継で議論を繰り広げる番組だ。
 もっとも、たいていは相手の話を聞かない文句の言い合いになるのだが、そこは深夜番組なので、ゲストや司会がツッコミやまぜっかえしをして、だいたい収めていると言う内容である。
 まぁ、内容が過激なので、決まった司会やレギュラーが寄り付かないと言う困った事項はあったが、そこはそれ、若手芸能人の修業代わりと言う事で、業界では概ね受け入れられている。
 さて、今回のお題はと言うと。

『お題: 南米で目撃された謎の巨大海老。その存在やいかに!』

 そして、それはすぐさま企画書になり、各芸能関係者に回されたわけだが‥‥。
「藤やん‥‥。これって‥‥」
「うむ。間違いなく、こないだお前が食われそうになった奴だな」
 添付された写真を見ながら、大仰に頷く藤田D。
「どーすんですかぁ。俺、口は達者じゃありませんよ」
「うむ。そう思って、既にエージェントを送り込んだ!」
 疑わしげな眼差しを向ける洋ちゃんに、彼はふんぞり返ってそう言う。
「と言うわけだ。お前らの役目は、朝論に潜り込み、敵‥‥いや、各種専門家と称する怪しげな連中を、熱血論破して来い」
「って、今から募集かけてんじゃないかYO!」
 呼び出された芸能関係者に、厳命を下す彼。後ろのホワイトボードには、こう書いてある。

・巨大海老肯定派(3名)
 肩書きは様々だが、概ね『あれは古代に絶滅した筈のアノマロカリスが生き残っていたんだ!』と、鋭いツッコミをしてくる。証拠がどこにもないので、口先三寸が主な武器。

・巨大海老否定派(2名)
 肩書きは概ね博士や教授だのと言った、博識ある方々。概ね『アノマロカリスなど居ない。あれは海老か蛇、もしくは巨大昆虫だ』と言い張っている。が、番組的に面白くないので、かなり不利。

 ちなみに、各専門家に成りすます事は可能だが、肩書きを付け、それっぽく振舞って欲しいそうである。

●今回の参加者

 fa1473 勇姫 凛(17歳・♂・リス)
 fa2002 森里時雨(18歳・♂・狼)
 fa2396 海風 礼二郎(13歳・♂・蝙蝠)
 fa2868 矢沢きゃおる(19歳・♀・狸)
 fa3386 硯 円(15歳・♀・猫)
 fa3503 Zebra(28歳・♂・パンダ)
 fa3594 黒影 美湖(21歳・♀・猫)
 fa3878 影丘深菜(15歳・♀・小鳥)

●リプレイ本文

●集まった専門家達
 ちゃーらちゃちゃらちゃー♪ と、テーマソングが流れる中、出演者達はスタジオに集められ、司会の黒影 美湖(fa3594)の紹介を受けていた。
「いるかいないかわからない、巨大海老アノマロカリスを求めて右往左往。そんな、趣味知識満載の偉い人が、仕事もせんと夜中に集合。こんばんは、司会の黒影美湖です」
 さっくり毒を織り交ぜたような司会をするミコ嬢。出演者のコメカミが、一瞬引きつったが、司会席は、討論席とは別枠なので、気付かないふりをする。
「それでは、暇こいた各知識人をご紹介しましょう」
「誰が暇なんですか。あ、私は生物博士の硯円です」
 即座にツッコむ硯 円(fa3386)。見た目はどう見ても義務教育終了ギリギリの外見なんだが、夜中の番組なので、見なかった事にしたようだ。
「世の中には、まだ発見されていない生き物が、沢山いるのよ。えーと、人はそれを新生物と呼ぶの」
 無理やりな理論である。そもそも、それっぽい格好をしているだけで、中身は基本的に学者ではない為、穴だらけになってしまうようだ。と、そこへ勇姫 凛(fa1473)が穴を突付くようにして、こうきり出す。
「アノマロカリスなんてナンセンスだよ。彼らはカンブリア紀において最強生物だったけれど、進化の袋小路で行き詰まった‥‥。現代まで生き残れるはずがないって事は、小学生だって知っている知識だよ」
「ふ、面白くない理論だ」
 否定波の彼がそう言うと、海風 礼二郎(fa2396)が即座に反論してきた。
「でも、世界中をくまなく探し回って、最後の一匹が死亡するところを確認したわけじゃないでしょ。カブトガイだって生き残ってるわけだし」
 念の為に言うと、この場合生き残っていたのは、カブトガニであって、貝ではない。が、頭に血の上っているらしき否定派Zebra(fa3503)が、そんなレイにクレームをつける。
「しかしですね。アノマロカリスはカンブリア紀に絶滅してるんですよ。今になっていきなり出てくるなんてのも不自然ですよ」
 ちなみに彼の肩書きは、『日本ハークネス私立生物学研究所教授・日ノ本一(ひのもと・はじめ)』さんだそうである。まぁ、この番組、毎回毎回、どこで研究をしているんだかわからないゲスト教授が出てくるので、『ホンマにあるんか!』とツッコまれそうな肩書きでも、誰も文句をつけなかった。
「いつの世も、謎の生物は、いきなり現れるんですよ!」
 そこへ、円がきっぱりと言い切った。が、一は肩をすくめ、下から舐めあげるような、偉そうな表情でもって、こう続ける。
「今までも噂が立ってたとかチラチラ見えるとかならともかく、そんないきなりなんて、ねえ。そもそもアレの化石は南米じゃロクに見つかってないんですよ」
 白衣にぶち眼鏡、手を顔の前で組み、お前はどこの不良教授だ! と言わんばかりの姿を見せる彼。と、反論出来ない円に変わり、レイが再び口を開く。
「地底に潜伏して生き延びていたんだよ。あそこだよ、ほら、アソコ。なんだったっけ‥‥そう、マントル!」
「地下数千メートルの溶岩流で、生物が生きていけるわけないだろうが」
 もっともらしい事言ってるが、画面隅には地球を輪切りにした画像と共に、『ここ』と言う表記がついている。知識のない視聴者に、念の為併記しておくと、マントルと言うのは、地下30km前後から、2900km前後にもわたる溶岩層なので、生物なんぞ一瞬にして燃え尽きちまいます。
「ですが、深海のホットスポットには、海老だって生きてますよ」
 そこへ、円が突付かれた事なんぞ、意に介さず、そんな事を言い出した。難しい事は省くが、確かに海底の熱水噴出孔の近くには、チューブワームと言う、謎の生き物が生息している。今回アノマロカリスが生存していたたのは、それに類する特殊な生存環境があったからだ! と、彼女は雄弁に語った。
「馬鹿馬鹿しい! 岩の中と、水中を一緒にしないでください!」
 マントルに生存してたんだと言い出したのは、レイであって円じゃないんだが、一さんは思いっきり一緒くたにしてしまっている。と、彼女は白衣姿の彼をみて、ぼそりと一言。
「なによう。研究所に若い学生引きずりこんでそうな目ーしてー!」
「ぎくっ。そ、それはこの際、議論とは関係ないだろう!」
 何か引っかかる事でもあったのか、眼鏡の向こうを引きつらせる一。
「何うろたえてるんだよ」
「大人には事情があるんだっ」
 レイがそう言うと、彼は即座に反論してきた。まぁ、他の若いのと違って、20代も後半なので、それなりに人生経験は重ねているんだろう。
「えー、議論が白熱してきた所で、目撃証言を見てましょう」
 そのまま、ぎゃあぎゃあと本来の議論から外れてきた所で、ミコは速やかにVTRを回すのだった。

●目撃者を追え!
 VTRは、まず南米らしきジャングルの映像から始まった。
「謎のアノマロカリス。スタッフはその目撃証言を集める為、現地へと飛んだ」
 影丘深菜(fa3878)がナレーションを入れている。淡々とした口調で、いかにも真面目な証言VTRの様に話す彼女。
「そして我々は、遺跡にもっとも近い村で、重要な目撃証言を得た‥‥」
 カメラが、村の光景を映し出す。その後、画面が切り替わり、いつの間にか、ブラックバックの、どこぞの部屋の中へ。
「なお、プライバシー保護の為、証言者には、モザイクをかけさせて頂いております」
 そう言って映されたのは、どう見ても顔に細かいモザイクがかかっただけの森里時雨(fa2002)である。
「アレは、語るも恐ろしい光景でした‥‥」
 衣装は、いつもの学ランではなく、探検隊スタッフジャンパーである。が、声にエフェクトはかかっていないので、知り合いから見ると、バレバレだった。
「おかげで、俺の尊敬する太平洋氏が犠牲に‥‥。ええ、太平さんの遺志を無駄にしちゃいけねぇっス!」
 いつの間にか、お亡くなりになっている事にされている洋ちゃん。そこでナレーションの深菜が、こう注釈を垂れる。
「彼はそう言っていますが、我々の調査では、太平洋氏は生きている事が判明しています」
 んで、画面隅に、地元北海道のお祭に呼び出されている洋ちゃんの姿が映し出された。
「ですが、危険な生物である事に変わりはないと、証言者は言います。証拠の品もあるそうです」
 続けて、そう言う彼女。と、モザイクの向こう側で、森里はある品をテーブルに置く。
「毒々しい生き物でした‥‥。遺跡内には、蛇やさそりが群をなし、あろう事か、近くの村では、我々を食料として見ていたようです」
 彼が示したのは、番組内で使っていた蛇とさそりのオモチャ、それに磨いたようなぴかぴかの白骨である。
「なんだか合成っぽいですねぇ」
 すかさずそうナレーションを入れる深菜。が、森里は即座に反論してみせる。
「おまけに、調達された食材は、およそ人間の食べ物とは思えないものばかり‥‥。ここに、見本を持ってきました」
 そう言って、彼が出したのは、思いっきり芋虫である。
「地元の人の話では、これは海老の幼生体だそうです。現地では、これをエビフライにして食べるそうッス! ほら、形が剥き海老☆」
 うねうねと蠢く芋虫の一匹を捕まえて、自慢げにカメラへ向ける森里。生白いその身体は、確かに茹で上げた剥き海老に見えなくもない。
「そういえば。そんな感じがしないでもないような気がします」
 若干声が引きつっているのは、多分に気色悪いからだろう。そりゃあ、芋虫がン匹ももぞもぞしていれば、あまり見た目が良いとは言えない。
「これと同じものが、遺跡の水路にいました。標本を取ってきたので、ご覧ください」
 出されたそれ、明らかに100円ショップのオモチャな蠍。
「壁画には、これを育てる絵がありました。生簀の仕掛けも、思わず俺らが引っかかっちゃうくらいバッチリでした。人類は古代から栽培養殖技術を育んでたんスねぇ‥‥」
 感慨深げにそう言う森里。だが、深菜ちゃんは、しめくくりとして、こんなナレーションを入れる。
「結局、芋虫だか海老だかわからないものが、目撃されていた。はたして、真実はどこにあるのだろうか。それは誰にも分からない‥‥」
 そのままフェードアウトするVTR。画面が切り替わり、あんぐりと口をあけたままの出演者達が映し出される。そんな中、司会のミコは、「では、謎は謎のまま、続きはCMの後で」と、さっさとカメラをたたっ斬るのだった。

●結論はどこに
 そしてCMが明けた。
「白熱した議論が続いておりますが、未だに結論は出ておりません。はたして今日もまた、うやむやのうちに誤魔化されてしまうのでしょうか」
 そんな事を喋る司会のミコ。番組オチを先に言っているような気がするが、いつもの事なので、出演者達は、一向気にせず、喋り始めている。
「そもそも! アノマロカリスとはラテン語で『変なエビ』の意味!」
 矢沢きゃおる(fa2868) が、カメラを向けられるやいなや、そう断言している。結局やっぱり海老にしたいらしい。と、ついさっきまで証言VTRにいた筈の森里が、怪しげな水晶っぽいシロモノを出してきて、こんな事を口走る。
「遺跡は古代養殖所で、超古代文明技術の賜物だと思いますよ! 水晶がバイオで品種改良の鍵っスね、きっと!」
 言っている本人も、意味はわかっていないに違いない。そんな彼らの意見に、耳を傾けていたヒメ、真面目な顔をして、こんな事を言い出した。
「確かにその話は夢があるように聞こえる。でも、本当にそうかな?」
「て言うか、夢しかないと思います」
 ツッコんでくるきゃおる。と、彼はうんうんと頷いて、こう言い出した。
「僕もあれは巨大エビだと思うんだ、世界の何処かには海流の影響から海の栄養素が溜まった場所が確かに存在する。そこで育った生物は通常では考えられないほど巨大な成長をしてもおかしくないんだ。現に鯨や大王イカの例を見ても、海ならばあの巨大さに成長する土壌は確かにある。そして同時にそれは、これから先に人類が直面するだろう食糧問題解決につながる重要な鍵なんだ‥‥」
「確かに、あれだけの巨大化した海老なら、食い応えがありそうッスね! 餌も人間丸ごととか、大量に摂ってそうだし!」
 まぜっかえす森里。それを聞いたきゃおるが、再びこう言い出した。
「つまり! 謎の巨大海老は、エビでもアノマロカリスでもなく、ただのでっかい変なエビだったんっすよッ」
 そして、そのまま『遺跡で目撃されたのは、変な海老』説を展開する彼女。言い分はこうだ。
「変な海老なんすから、ちょっとくらい変だったからって、驚く事はないのです! それが個性と言うものなのです! 昨今の子供には、心の余裕が必要なのですよ。そう、海老の形が多少変わってようが、羽が生えてようが、触手があろうが、海老は海老と認めるくらいの!」
 かなり無茶な理論だが、否定派には受け入れられたようで、ヒメが強引に自分の理論に引きずり込んでいる。
「そうだね。同時にその個性溢れる海老が大きければ、食料にもなるわけだ。これで、あの辺の食糧不足も解決だねっ」
「あれだけ大きかったら、でっかいエビフライが作れるね、専門家さん」
 レイが棒読み丸出しでそう言っている。その彼の態度に顔を引きつらせた一、彼に向かってこう詰め寄っていた。
「エビでいいじゃないですか、巨大エビだって充分化け物だ。エビじゃ不都合があるんですか? 捕まえたらきっと皆が腹一杯食えますよ!」
「海老ってあんな大きくなるんだぁ。ふぅーん」
 何か馬鹿にされているような気がする一。と、そんな彼から、無理やりカメラを奪い取り、円が指を突きつける。
「そう言われるだろうと思って、私は証拠品を用意してきました。カモン、アノマロカリス!」
 ぱちんっと指を鳴らすと、テーブルの中央にアシスタントのお姉さんが、何やら水槽を運んできた。
「実は私は、この手でアノマロカリスを育てたのです!!」
 自慢げにふんぞり返る円。小学校学習雑誌の付録みたいなその水槽には、何やら1cmくらいの生き物が、蠢いている。
「論より証拠! ここでスタッフが料理したものをご用意しました」
 そんな中、きゃおるが再び指を鳴らした。すると、『成長後』とか言うプレートをつけた、海老らしきものが運ばれてくる。
「これこそ、そこのシーモンキーもどき‥‥もとい、変な海老が成長した姿!」
 良くみりゃ、立派なアメリカザリガニさんである。
「ほら、このあたり何かそっくり」
 腹の当たりをカメラに見せるきゃおるに、肯定派はそろって「「「どこがだ!!」」」とツッコんでいる。しかし彼女は、まったく意に介さず、こう言い出した。
「とりあえず、番組スタッフがどっかから捕まえてきた変なエビっぽい何かを、変なエビチリにしてみたッス!変な味がするっすけど、健康に変な害はたぶんないッスから!」
 運ばれてきたのは、やけに毒々しい色のエビチリ。しかも、剥き海老ではなく、海老団子が入っている。どうみても、エビチリもどきだろうと思われるそれをひと掬いし、きゃおるはにっこりと笑う。
「食べ物を粗末にしちゃいけないよね☆ はい、あーん♪」
「無理やり食わすな、アホーーーー」
 なお、生贄になったのは、年功序列で一だったらしい。
 合掌。