【遺跡発見】完璧な共鳴アジア・オセアニア

種類 ショート
担当 姫野里美
芸能 3Lv以上
獣人 3Lv以上
難度 やや難
報酬 9.9万円
参加人数 8人
サポート 0人
期間 06/27〜07/01

●本文

 それは、ライブハウス柏木のオーナー、柏木博之氏の元に、ある1人の男性がやってきた事から始まった。
「‥‥大学の教授?」
「何うさんくさい顔してるんだよ。これでも、学内じゃ有名なんだけど」
 助手らしき学生が、いぶかしげな表情を向けたマスターに、早速文句をつけている。何でも、どこかの大学で、ギリシア・ローマ系の神話に関して新たな研究を‥‥と、そんな事言ってる、考古学者さんだそうだ。
「学生でもない俺が知るか。それで、何の用なんだ?」
「実は、ある程度の周波数と、ある程度の共鳴指数を、安定して出せる人を探していてね。ちょっと手を貸して欲しいんだ」
 その文句を突っぱねるマスターに、若い教授は苦笑しながら、ある写真を見せる。それには、周囲を鍾乳石に囲まれた、白い洞窟が映っていた。
「洞窟‥‥?」
 ぱっと見た限りは、まるで幾本もの柱が立ち並ぶ、神殿のステージだ。その中央には、まるで石で出来た扉の様に、重ね合わさった岩がある。
「実は‥‥、この洞窟には、考古学上イレギュラーな品が眠っていてね。調査をしていたんだが‥‥。どうやら、この奥に進むには、ここにある石の扉に‥‥」
 その写真を片手に、何やら難しい話を始める教授。助手の兄ちゃんに「センセ、素人にそんな事言ったってわかんないよ」と注意され、慌てて我に帰る。
「失礼。まぁ、要約すると、この洞窟で、約30分ほど、連続して演奏して欲しいと言う事なんだ」
 事前調査の結果、その岩の奥に、何やら隠された部屋があり、岩は、ある条件下の微弱な振動を与え続けると、開き扉の様にずれて行くとの事だ。
「ふむ‥‥。なんだか良くわからねぇけど、要は長丁場をこなせってことか」
「そういう事だよ。細かい調査機材は、こちらで用意するけど、割とデリケートな共鳴作用なんで、プロの手をかりたいと言うわけさ。WEAに問い合せたら、ここを紹介されたって訳」
 しかも、立ち位置も複雑に作用した、ある程度のメロディが必要だそうなので、素人では難しいそうだ。さしずめ、オリンポスの神々に捧げる歌を、神殿で演奏しないと、鍵は渡せないと言った所か。
「なるほど。それで、実際はどうすりゃいいんだ?」
「現地集合現地解散かな。地図と渡航費用は渡しておくから、それぞれ楽器を持って、集まってくれれば良い」
 そう言って、調査ベースのある場所の、案内図を渡す教授。それによると、沖縄のある無人島にある洞窟のようだ。
「‥‥わかった」
 顔を引きつらせながらも、頷くマスターだった。

 そして。
「‥‥てなわけだが、俺から少し注意事項がある」
「ほえ?」
 人数を集めたマスターは、話を聞きに来た面々に、こう告げた。
「WEAに問い合せてみたんだが、相手の教授は、非芸能関係者だ。つまり、人間様だな」
「えー」
 思いっきり不満が上がる。スタッフをはじめ、大半が獣人ではない存在。と言う事は、半獣化で底上げが出来ない。
「しかも、この遺跡に仕込まれてるのは、考古学上云々って品じゃなく、オーパーツの可能性が高いそうだ」
 今回の依頼には、直接関係はないが、世界のあちこちで、堰を切ったように、謎の遺跡やらオーパーツやらが、見付かっている。今回隠されたアイテムも、それに関わる可能性が高い。
「で、だ。オーパーツがらみって事で、そんだけ獣人が集まってて、調査機材って言う媒体があるとすると、まぁ‥‥えさに釣られて、出てくる可能性もあるわけだ」
「マジかよ‥‥」
 ただでさえ、遺跡仕様な洞窟である。もしかしたら、何か別な物が、封印されているのかもしれない。行って見なければ、わからないのだが。
「とりあえず、仕事なんで、行って来ては欲しいんだが、まぁその辺りは気ーつけーと言うわけだ。んじゃ、これ地図とガイドラインな」
 マスターの渡したガイドラインには、4拍子で、速度は♪=100、伝説を語るサーガのような曲、低音と高音の2パート。ただし、歌詞は雑音になる可能性があるので、出来るだけ入れるなとある。
「「はーい」」
 なんだか難しそうな依頼だが、それなりにやりがいはありそうだった。

●今回の参加者

 fa0075 アヤカ(17歳・♀・猫)
 fa0964 Laura(18歳・♀・小鳥)
 fa1126 MIDOH(21歳・♀・小鳥)
 fa1257 田中 雪舟(40歳・♂・猫)
 fa3398 水威 礼久(21歳・♂・狼)
 fa3661 EUREKA(24歳・♀・小鳥)
 fa3863 豊田そあら(21歳・♀・犬)
 fa4028 佐武 真人(32歳・♂・一角獣)

●リプレイ本文

 その日、集められた面々は、飛行機と船を乗り継ぎ、指定された沖縄の無人島へと、足を踏み入れていた。
「しかし‥‥。なんかすごいよな」
 洞窟の内部は、まるでステージの様になっていた。それを見て、水威 礼久(fa3398) は素直に感想を漏らす。
「さて、では早速仕込みますか」
 そんな中、買い出しを終えた田中 雪舟(fa1257)は、そう言ってエプロンを身に付けていた。
「ええ‥‥。お花畑を見ていただきましょう」
 シークレット狐耳姿のLaura(fa0964)が、早速材料を切り分けている。彼女達の前には、どう見ても食材になりそうにはない物体から、普通の材料まで、多岐にわたる『食べ物』が置かれていた。
「他の人の分は、私が作りましょう。途中までは、わかりませんしね」
 雪舟はそう言うと、並べられた中から、玉ねぎとジャガイモとニンジンをより分ける。それを見て、豊田そあら(fa3863)が首を傾げる。
「あら、美味しそう。カレー?」
「ええ」
 頷くローラ。だが、彼女の手元にあるのは、カレーにはとても入らなそうなものばかりだ。
「お手伝いするわよ。って、これは‥‥?」
 そあらが、眉を潜めるのも当然で、転がっているのは、ポルトガル語で書かれた小瓶や、近所の海で取れたと思しきフジツボ、さらに市場でゲットしてきた海蛇や椰子蟹なんてものまである。
「気をつけてくださいね。日本人には合いませんから」
「そうなの?」
 雪舟にそう言われ、まじまじと材料を見つめるそあらさん。と、やっぱり手伝っていたMIDOH(fa1126)が、くすくすと笑いながら、こう言った。
「アマゾンでは、それなりに使われる香辛料なんだけどねぇ。こいつが作ると、何故か不幸な目にあうんだよ」
「私は一生懸命作ってるのにー」
 ぷうっと頬を膨らませる彼女。と、そこへターゲットの助手が、匂いに惹かれて現れる。ただし、眉を顰めて。
「おいしそうなもの作ってるけど、何その格好」
「よろしいじゃありませんか。助手さんも着けてみます? たくさんありますの☆」
 そう言って、ローラが見せたのは、愛車に山ほど詰め込まれたシークレットシリーズ。狐耳から竜尻尾にいたるまで、都合一週間分以上あるそれを見て、助手くんは「お断りします」と、顔を引きつらせている。
「で、メニューはシーフードっと?」
「‥‥の、密林風味です」
 すでに、椰子蟹だのフジツボだの海蛇だのと言った痕跡は消え、ただの魚介類の切り身になっている。「密林?」と首を傾げる助手くんに、ローラはにっこりと笑顔で、出来上がったばかりのカレーを差し出す。
「なんでもないですわ。ささ、どうぞ☆」
 多少顔が引きつってわざとらしいのは、芝居能力が低いせいなので、ある意味仕方がない。
「お酒も用意したぜー。明日の演奏が上手く行くように、ってな」
 マリアがそう言って、地元で買って来たらしいビールと泡盛を持ってくる。そんな‥‥パーティの準備はすっかり完了! な状況を見て、困ったような顔を浮かべる助手くん。
「私、一生懸命作りましたのー」
「いーじゃん。美味しいご飯は、明日の糧だよ?」
 目を潤ませるローラの、援護射撃をするように、そう言うマリア。ついでに、居酒屋店員のノリで、『ご注文承りますよー』なんぞとやっている。
「祈念パーティと言うのも、また良い物かと」
「‥‥好きにしろよ」
 年上の雪舟に言われ、仕方なく許可をだす助手君。ニヤリと笑う3人。翌日、現場を仕切っていたらしいその助手は、強烈な酒と、ローラのカレーで、暫く寝込む事になっていた。
「どうやら、上手くいったようですね」
「よし、次は仕上げだな」
 ローラの台詞に、マリアが持ち込んだギターを手に取った。助手くんはベッドに沈めたが、教授を含めた他の面々までは手が回らなかったので、まだ残っている。今度は、彼らを現場から追い出す番だった。
「だーーっ! ボリューム高すぎっ」
 マリアがおもむろに、洞窟の中で、ギターの早弾きを披露すると、予想通り、スタッフの中から、文句が飛んで来る。
「チューニングだ」
 きっぱりとそう言うマリア。その表情は、『聞きたくなけりゃ聞くな』と言いたげな、無表情さ加減だ。
「ねぇ、デリケートな共鳴作用の邪魔になるから、あの辺どけてくれない?」
 そんな中、EUREKA(fa3661) が教授にそう申し出た。歌詞さえも雑音になるのなら、洞窟に群がっている野次馬の小声や咳も雑音になる可能性がある、と。
「俺も賛成だな。演奏者以外には、あまり近くに立たれると、人体に音が吸われて演奏の邪魔になるんで、洞窟の出入り口の方に離れていてもらいたいんだが」
 そんな彼女の意見を援護するように、佐武 真人(fa4028)もそう言った。本音は、獣化に備えて、人払いをしたいだけだが、別に嘘は言っていない。たぶん。
「あんたも教授なら分かるだろ。共鳴の作業に支障が出たらどうする」
 特に教授にはそう言って丸め込む。しかし、相手は理論に関してはプロなので、彼の主張に信憑性があるとは思っていないようだ。
「まぁ、そう邪険にするなよ。コーヒーでもどうだい?」
 と、そこへクレイスが、独特の香りを立ち上らせた褐色の液体を運んでくる。豆に詳しくない人間にはわからないが、二つの産地‥‥彼曰く、マンデリンとタンザニアらしい‥‥の豆をブレンドした荒挽きのようだ。おまけに、鼻を近づけると、ほのかにラズベリーの匂いがした。
「こう見えて、コーヒーにはちょっとうるさいんだ。豆は今朝焙煎したて、コーヒーミルも持ってきたから挽きたてを入れてやるぜっ。ほら、二日酔いには、濃い目の茶って言うだろ」
 軽くそう言ってのけるクレイス。真面目な性格らしい教授は、彼のおしゃべりには引っかからなかったが、助手に持って行くよう指示していた。
「了解。他にも飲みたい奴がいたら、言ってくれな」
 そう言って頷く彼。こうして、スタッフをコーヒータイムに誘い出した隙に、彼らは演奏へと挑むのだった。

 とは言うものの、30分ものロング演奏ともなると、色々と決めなければならない事があるわけで。
「で、結局こいつは、開かないといけないわけだな」
「どういう曲を歌うにゃ? ハモらないとひらかにゃいみたいにゃけど」
 戻ってきたクレイスが、岩戸を軽く叩きながらそう言うと、アヤカ(fa0075) がおめめをまんまるにさせながら、聞いて来た。
「とりあえず作ってきましたわ。これ、楽譜です」
 ゆーりがそう言って、バックの中から、軽く人が殺せそうな、分厚い楽譜を出してくる。
「9割は繰り返しメロディですから、実質5分くらいしか作ってませんわ」
 他の面々が目を丸くする中、彼女はそう言った。確かに、出てくるメロディは殆ど同じものばかり。まぁ、プロでも30分もする曲を作るのは、割と時間を要する作業なので、その辺は『音を安定させる為』の名の元に、若干手を抜いたのだろう。
「人の人生を語るには、少し短いかも知れませんけどね」
 マリアがそう言うと、キャラクター1人を語るつもりで作ったら。すぐ出来ましたわーと、ゆーりは続けた。
「タイトルは何ニャ?」
「えーと‥‥、特につけてないのだけど、仮に名付けるなら…捻りも何もないけど『Leggenda』とか?」
 アヤカがこくびを傾げると、彼女はしばらく考えた後、そう答える。
「OK、じゃあ始めようぜ!」
「その前に、ちょっと練習させて欲しいのニャ☆」
 自慢の楽器を手に、クレイスがノリノリでひと鳴らしした時である。アヤカがてへ☆ と照れたようにそう言って、周囲を盛大にずっこけさせていた。
「さ、さすがに、いきなり合わせるのは難しいかしら」
「私は、高音域でいく事にします。元々声は高い方ですので、無理のない歌い方ができると思いますしね」
 顔を見合わせて苦笑しながらそう言うローラに、そあらがそう言った。と、それを聞いたアヤカにゃん、はいはいはーいとおててを上げて、こう申請。
「じゃあ、 あたいは中音部のパートを担当するニャ。高音部は沢山いるみたいニャしね」
「あ、俺はベースで低音担当な」
 クレイスも、自分の歌う領域を申請してくる。相談の結果、ゆーりがヴァイオリン、マリアと真人がギター、そあらがキーボード、クレイスがベース、ローラと雪舟とアヤカがボーカルになった。皆、自分の愛器を持ち込んでいるらしく、真人がマリアと『あんまり弾けすぎても良くない』だの『ソリッドギターだと響かない』だの言いながら、チューニングをし、そあらが『あんまり上手じゃないから、和音だけにしておきますね』と申し出ていたり、それぞれの手法でもって、立ち位置を決めていた。
「まずは発声練習ニャよ。ニャーニャーニャーニャー‥‥」
 ボーカル組のアヤカ、そう言って喉を暖め始める。だが、どう聞いても、子猫が喉を鳴らしているようにしか聞こえない。おまけに周囲に反響して、ニャーニャーニャーと洞窟中に響き渡っていた。
「だーーーっ。耳に残るニャっ」
 おかげで、同じ猫獣人の雪舟さんにもうつってしまう。苦笑するマリア。が、ぶっつけ本番よりは、練習した方が良いだろうと言うローラとそあらの主張で、暫く洞窟内には、ニャーニャーミャーミャーと、チューニングの音が響く事になる。そのせいか、気が付くと観客が姿を消していた。
「行くぜっ、この遺蹟に俺たちの最高の演奏を響かせようぜ!」
 頃合を見計らい、クレイスがそう叫ぶ。ステージは、岩戸の前。鍾乳石に囲まれ、ちょうどお立ち台に似た階段状の部分になった場所に、まるでコンサートの様に並ぶ彼ら。
 歌詞はないので、洞窟にボーカル組の歌詞にならない『声』と、楽器組のギター音が反響して行く。リズム良く共鳴させていく彼ら。だが、数分もしないうちに、そいつは現れていた。
「ギーチチチチ!!!」
 まるで昆虫のような外骨格を持つ、体長1m強の生き物。即座に、マリアがコードを足に引っ掛け、電源を叩き落とす。右往左往するスタッフ達に、彼女は大声でこう叫んだ。
「電気系統のトラブルだ! 不可効力だ!」
「出口はあっちです!」
 暗がりの中、ペンライトを手にしたゆーりが、そう言いながら、出口を示し、避難誘導を試みるが、混乱したスタッフ達は、欠片も聞いちゃいねえ。
「このままだと、こっちも動き難いなぁ」
「でも、これだけ混乱していると、耳を出しても良さそうですねぇ」
 困惑した表情のゆーりが、そう言っている間に、ちゃっかり半獣化する雪舟さん。ローラが現場入りした時から、やれ狐耳だなんだとやっていたせいもあってか、スタッフ全く気付いていない。その隙に、誘眠芳香を垂れ流す彼。
「皆さん、落ち着いてー。でないと、怪我しちゃいますよー」
 効果範囲外のスタッフには、ローラが輝く笑顔の和気穏笑で、魅了状態にしてしまっていた。
「よし、俺について来い」
 そんな彼らを、真人が外まで引っ張り出す。気を失った‥‥と言うか眠った‥‥スタッフは、雪舟さんがよっこいせと、外に放り出している。本当は、瞬速縮地を使おうと思ったが、あれは完全獣化しないと使えない技だ。だが、この状況でそうすれば、さらなる混乱は必至と言うものなので、我慢せざるを得ない。
「ギチチチチチィ!」
「うわ、やば! バケモンが、休憩室の方に!」
 だが、3人がかりで誘導していた結果、NWに手が回らなかったらしい。マリアが背中に翼を生やしたまま、そう叫ぶ。
「俺が何とかしてくる」
 真人がそう言って、すっ飛んで行く。頭に角が生えているのを見ると、半獣化して、中で倒れている助手に、治癒命光を使うつもりなのだろう。
「こいつ、結構素早いニャーー!」
「どっかの動物に取り付いたって所だな」
 その隙に、アヤカがおててを振り回す。
「にゃにゃにゃにゃっ! 当たるにゃッ!」
「結構素早いなぁ。当てられないじゃん」
 元々は野生だったのだろう。ちょろちょろと動き回るそのNWには、彼女のヴァイブレードナイフも、マリアのショルダーアタックも、そあらのソーンナックルも、なかなか当たらない。
「今回の面子でNWを倒すのは、かなり厳しい。外にだけは出すなよ」
「そんな事言ったって、飛び道具使えないニャ!」
 マリアの台詞に、うにゃうにゃ言い出すアヤカ。彼女が覚えた青月円斬は、月の光を集めて使う技だ。今回のような洞窟では、効力を発揮しない。
「ぎちぎち‥‥」
「大きな目標なら当りやすいだろう? こうするんだよ」
 顎を打ちならすNWが、岩戸の前に迫る。と、その刹那、マリアはそう叫び、天井の鍾乳石に向かって、空圧風弾を撃った。
「なるほど、それは名案ね」
 もう1人、同じ技を使えるゆーりが、そう言って天井に風弾を撃つ。2人係で撃った結果、鍾乳石の一つにひびが入り、NWの上に降り注ぐ。そう‥‥岩戸を塞ぐほどに。
「埋まっちゃったニャ〜」
「仕方ないですわよ」
 騒ぎが収まった後、良いのかニャーと言う表情をするアヤカに、ローラがそう言っていた。
「また掘り出せばいいだろ。それに、NWが外に出るよりマシだし」
「殲滅できればそれが一番だが、引き際が肝心ってな」
 マリアの判断に、真人がフォローを入れる。
「俺、演奏している間に、全部終わっちゃった‥‥」
 皆が戦っている間、ずーっと演奏していたらしいクレイス、遠い目をして、そう呟く。
「いいじゃないか。戦闘能力皆無なんだからさ」
「「それもそうだね」」
 声を揃えるクレイスとマリア。なお、現場は、遺跡での落盤事故と言う事で、うやむやに処理されたと言う‥‥。