【続・遺跡発見】発掘アジア・オセアニア

種類 ショート
担当 姫野里美
芸能 フリー
獣人 3Lv以上
難度 普通
報酬 7.9万円
参加人数 8人
サポート 0人
期間 07/23〜07/27

●本文

 この世界には、まだまだ秘宝と呼ばれる物が存在する。そしてそれを求める者も。
 そんな‥‥秘宝を求める者が、ここ‥‥ヨーロッパのとあるホテルで、書類を片手に、思索にふけっていた。
「ふむ‥‥日本、か‥‥」
 彼が読んでいた書類は、先日行われた遺跡の発掘調査の報告書。残念ながら、NWが出た関係で、その調査は中止になり、一般研究者から、WEA預かりとなってしまったようだ。
「知られては困る遺跡を揉み消した形だな。だが‥‥ヒミツのヴェールに包まれた姫君を、重い扉の向こうから救出して差し上げるのもまた、興味深い事象だ‥‥」
 口調が少し芝居がかっているのも道理。壁には、数々の受賞トロフィーが飾ってあり、テーブルには、書きかけの原稿が乗っかっている。折りしも、電話のベルが鳴り、居留守を使った彼の目の前で、留守番電話が再生される。
「ルーファスだ。悪いが、仕事中で出られない。後にしてくれ」
『先生! 締め切りは二週間後なんですが! ホントに次の演出、大丈夫なんでしょうね!』
 担当らしきその御仁は、また電話する旨を伝えて、電話を切った。それを聞き終わった彼‥‥ルーファスは、手帳を開き、こう呟いた。
「やれやれ。せっかちな御仁だ。物事には全てインスピレーションが必要だと言うのにな」
 その手帳には、びっちりと予定が書き込まれている。だが、彼はその1ページに大きく×の字を描き、こう綴った。

『オキナワで取材』

 そして、やおら携帯電話を取り、先ほどの御仁に連絡を入れる。
「ああ、俺だ。明日から暫く日本にいることにした。携帯は繋がらない可能性があるが、原稿はメールで転送する。何かあったら、ヒメ・ニョン女史に連絡しておけ』
『って、ちょっと先生!!』
 相手の返事も聞かず、ぶちりと電話をたたっ切るルーファス。そして、今度は別の人に電話をかける。
「ああ俺だ。ヒメを頼む」
 手馴れた様子で、目的の人物を呼び出す彼。出てきたのは、一部では有名人の作家、ヒメ・ニョンである。
『あら。何か御用かしら?』
「人集めを頼みたい。そうだな‥‥。腕っ節の立つ人形を数人。方法は任せる。明日にはそっちに着く」
 ぶっきらぼうに、表情さえつけず、用件だけを告げる彼。
『面白そうな事やってるじゃない。いいわ、協力して上げる。物語を紡ぐ神父様にね』
「一言多い」
 電話の向こうで、くすりと笑う彼女。機嫌を損ねたように、電話を切るルーファス。彼が、機上の人となったのは、それから数時間後の事だった。

 そして‥‥日本。ライブハウス柏木。
「で? なんで俺に、そんな有名人の護衛とアルバイトのかき集め役を依頼すんだよ」
「前回、扉埋めちゃったのは、あんたのトコの従業員でしょ」
 常連達が、いつもの様にやってくると、マスターは何やらお客さんの相手をしていた。だが、彼らはその客の顔を見て、目を丸くする。
「げ。なんで耽美の女王がここにいるんだ!?」
「はぁい☆ 来ちゃった♪」
 ツッコミ所満載の返答をしてきたのは、もう40は越えてるはずだが、30前半にしか見えないヒメ・ニョン女史である。
「来ちゃったじゃねぇだろ。お前、仕事どうしたんだよ」
「だって暑いしー。潤いが欲しかったんだもーん。つべこべ言うと、そこの常連、贔屓の店に叩き売るわよ?」
 マスターにツッコまれて、じろりとにらみ返すヒメ。その態度に、頭を抱えたマスターは、こう言い返した。
「人身売買してんじゃねぇ。って、それはともかく! ルーファスっていや、昔は俳優でぶいぶい言わせてた、超大物じゃねぇか! 何で自分で動かないんだよ」
「あの子、昔から、ひねくれ者だったし。それに、担当に付きまとわれるのが嫌なんでしょ」
 が、流石に妖怪じみた性格をしているだけあって、その程度では、顔色ひとつ変えない。
「だったら、俺達が行っても、うっとおしがられるだけじゃねぇか?」
「ばかね。そこを上手くやるのが、あんた達の仕事でしょ。それに、私は当日、水泳大会の取材で忙しいし」
 それどころか、マスターにそう言い返し、クーラーの真下でホットチョコをすすると言う、ある意味贅沢な行為をやらかしながら、お仕事再開中。
「それ、別名お仕置き準備って言うんじゃ‥‥」
「そーとも言うわね。うふふふ。藤田クンにお礼言っておかなくちゃねぇ。をほほほほ」
 さらに、一部で金いい鬼ディレクターと恐れられる藤田氏まで、後輩扱いである。その態度に、戦慄を覚えざるを得ないLH柏木組だった。

『沖縄の無人島で、オーパーツ掘りを手伝ってくれる健康な若人求む』

 なお、職種は問わないそうである‥‥。

●今回の参加者

 fa0475 LUCIFEL(21歳・♂・狼)
 fa0629 トシハキク(18歳・♂・熊)
 fa1077 桐沢カナ(18歳・♀・狐)
 fa1244 安部彩乃(16歳・♀・アライグマ)
 fa2002 森里時雨(18歳・♂・狼)
 fa2814 月影 愛(15歳・♀・兎)
 fa2830 七枷・伏姫(18歳・♀・狼)
 fa3715 梓羽(12歳・♂・鷹)

●リプレイ本文

「海だ海だ海だー☆」
 目の前に広がる青い海に、目を輝かせている月影 愛(fa2814)。彼女の脳裏には、すでに石拾いを終わらせて、リゾートでパラダイスが浮かんでいるようだ。
「取材と発掘が先だぞ」
「いいじゃないか。お前さんだって現実逃避中だろう。その分、俺が何とかしてやるよ。こいつを生かすために、発掘作業やりにきたようなもんだからな」
 ルーファスが不満そうにそう言うと、トシハキク(fa0629)が、自らの腕を軽く叩いてみせながら、そう言った、と、転がる石を蹴り飛ばしながら、LUCIFEL(fa0475)がこう尋ねてくる。
「どうせなら、宝貝や神器みたいなのが、出てこないかねぇ」
「パオペエ? ジンキ? 確か、中国伝承に出てくるオーパーツだったな」
 オーパーツには詳しいらしいルーファス、彼の台詞に、興味を示したらしく、そう呟く。
「でも、オーパーツってどんなものかな。カナは見たことないから、気になるよ」
 どきどき‥‥と言った様子で、洞窟を覗き込んでいる桐沢カナ(fa1077)ちゃん。そんな彼女に、ルーファスはこう解説してくれた。
「ここに埋まっているのは、クリスタルのオーブだ。効果は取り出して見ないとわからないが」
 ずいぶんと饒舌なのは、やはり興味のある物には、口が軽くなる故だろう。と、その説明を耳にした安部彩乃(fa1244)、後ろ頭に冷や汗流しながら、手を合わせてこう言った。
「私はオーパーツより、こっちの海が気になるですっ。策謀とか第二目標とかない事を祈ってるですっ」
「ありえねー。だって、ヒメセンセの息がかかってる仕事だぜ!? 絶対何かあるに決まってる‥‥」
「そのセンセとやらは、海でバカンス、僕らは洞窟で土いじりか‥‥」
 背中に寒イボを立てている森里時雨(fa2002)に対し、そう答える梓羽(fa3715)。と、愛ちゃんは不満そうに頬を膨らませながら、あさっての方向を向く。
「いーなー。あたしも、こーんな仕事は、体力のある人に任せて、センセと学生狩りしたいよぉ〜」
 瞳を潤ませる彼女には、すでにどこぞのアイドルか誰かと、ひと夏の恋の冒険を繰り広げられている幻が浮かんでいるに違いない。
「それなら俺は、その美少年狩りしてるハンターさんを狩ろうかな☆」
 そのひと夏の冒険を、現実にしようとしている愛の歌い手ルシフさん。「んじゃ、俺はその出会いとフラグを立てるため、某少年誌的特訓を!」
 もう1人の下僕、生贄野郎・森里くんは、ヒメの亡霊と連敗記録を振り払うようにそう叫ぶが、ジスにぐいっと首根っこ掴まれて、飛び込み台代わりの岩の上から、突き落とされている。
「ふむふむ。ロープレスバンジーに命をかける少年と、その兄と水着少女のひと夏の冒険‥‥」
「俺、アニキも彼氏も調教もいらねぇっす!」
 びしょ濡れの森里、滝涙流しながら、ルーファスに訴える。が、他の面々に揃って却下されてしまうのだった。

 そんなわけで、軽く交流を深めた一行は、作業の為、お出掛け服から、汚れても良い服装へと着替えていた。
「まぁ、欲望が大多数を占める本音はちょっと置いといて。NWが出るかもって言うし、動き易い格好の方が良いよねっ」
 そう言う愛ちゃんの格好‥‥何故かひと回り小さめの、ハイレグカットの競泳用水着である。と、彼女は持ち込んだ武器を見せびらかしつつ、胸を逸らした。
「心配し無くても、ちゃーんと武器も装備してるわ☆ これは戦闘服よ」
「そうそう。水着は愛の戦士の戦闘服さ☆」
 いや、お前の場合はちょっと違うだろうルシフ。と言うツッコミは、3倍くらいの文句が返って来そうなので、やめておくルーファス。
「こっちも、自衛策はしておくか」
 きょろきょろと周囲を見回すジス。力仕事は得意だが、格闘は得意じゃないそうなので、念の為、完全獣化しておきたいと、提案する。
「大丈夫なのか?」
「ああ。念の為、この辺りにはイエローテープを張っておいた。この間の落盤事故の折には、割と見物客もいたようだし、こうしておけば、近付いては来ないだろう」
 シュウも一般人の目を気にしているようだ。と、七枷・伏姫(fa2830)が半分ほどに減った黄色いテープを見せながら、人払いをしていた事を告げる。
「ならOKか。あんまり獣化は好きじゃないけど」
「あたしもそーしよ〜っと」
 作業を効率よく行う為には、12歳の体のままでは不利過ぎる。そう判断したシュウも、背中から翼を生やす。それを見たカナも、そう言って白いきつねの姿になった。
「そだ、いっぺんに掘ると、へばっちゃうから、交代でやらない?」
「細かい作業は、この姿じゃ無理だからな。それでも良いと思う」
 たとえ完全獣化したとしても、熊のジスには敵わない。一方、熊の手のジス、自らの手の変わりに、カナに繊細な作業を頼んでいた。
「まずは、石をどけるんだっけ?」
「ガレキがあると、土も出てこないですからね〜」
 カナの問いに、彩乃はそう答えて、石を拾い上げた。と、横からルシフがその石を奪い取る。
「俺が代わるよ。レディに泥臭い作業をさせるのは、気がひけるからな」
 そう言って微笑んで見せる彼。話によると、一般人が調査に来ていて、NWが出たから、扉ごと埋めたとの事。その扉を掘り出す作業に、ココロの調律師としては、女性の手を借りるなんて、気がひけると言った所か。
「頑張ってくださいね。美味しいご飯と、冷たい飲み物は用意して置きますから☆」
 一方、あまり力のないカナちゃんは、アウトドア用セットを設置し、即席休憩所を構築している。その上には、持ち込んだアウトドア用の食事セットと、幾つかのペットボトルが置かれている。
「細かい作業が必要になったら、手を貸してくれなー」
「はーい」
 ジスにそう言われ、元気よくお返事する彼女だった。

 持ち込んだ道具は、多岐にわたった。掘る為のスコップやツルハシ、猫車などの運搬具、何故かスノコやゴムマットなんてものまである。
「道具は、これだけあれば充分かな〜。周りがこれだと、あんまりこだわった物は不要ですねっ」
 掘り出す環境の問題で、基本的に人力に頼る事になる。ゆえに、森里が希望した小規模道路工事レベルの、発電機器等は持ち込めなかったものの、その他の工具は、シュウがWEAから借りてきてくれた。
「うう、ベルトコンベアかなんかあればよかったのに‥‥」
「ここは海岸に近いから、そんな機械を持ち込むのは不可能だろう。その為に、人数を頼んだんだからな」
 嘆く森里に、ヘッドライトをつけて、そう言うシュウ。目指すオーパーツは、崩れた石と岩、その奥なので、まずはマットとスノコで排出路を整備。大きな石は拳とドリルで砕き、猫車に石を載せ、その上を往復する。
「えー、おにぎりとサンドイッチはいかがですかぁ」
「お茶やスポーツドリンクもあります〜」
 そこへ、彩乃とカナが、人数分の食事と飲み物を運んできた。暑さでバテないように、ギンギンに冷えたペットボトル達。その証拠に、表面にはびっしりと露が浮かんでいた。それを受け取る森里の前で、彼女達はにっこりと笑顔を浮かべる。
「皆さんには、鋭気を養ってもらって、私達の分も働いてもらわないと。ね?」
「ねー☆」
 その為に、エネルギーになりやすい飲み物を調達したんですよぉ☆ と、そう言いたげなカナちゃん。だが、向けられた笑顔の影に、妙なとげを感じた森里、ルーファスにこう尋ねた。
「びみょーに女子が優遇されている様な気がするのは‥‥。錯覚ですか?」
「話を聞けば、女優やモデルだそうじゃないか。そんな可愛い人形達に、傷をつけるわけにいかん」
 さらりとそう答える彼。その理論の為か、本来は戦闘能力の高い伏姫まで、完全獣化のまま、見回りに出ている。もちろん、人の来ない範囲に、NWが出ないように。
「それに、後で招かれざる客が現れるかもしれんので、体力を温存して置きたいと、彼女に言われたのでな」
 その彼が指し示したのは、休憩場所で見張りと称して、左団扇の愛ちゃん。ビーチパラソル持ち込んで、体力温存と言うよりも、バカンス中。「仕事しろよ。この下には、あんたの力が必要そうな大物が埋まってるんだからさ」
 と、そこへシュウが後ろから蹴りを入れてきた。以前仕事に訪れた者に確かめた所、そろそろ大物の崩れた扉が埋まっている筈だと、彼は言う。
「前回の奴曰く、技で上が崩れたみたいだから、結構崩落しやすいのかもな‥‥」
 彼は、パラパラと小石が降ってくる様を見て、そう続けた。森里が崩落防止ネットを張っていなければ、その小石は、作業している面々に襲いかかっていたことだろう。
「いや、それよりも、気になるのはNWだ」
 ふいっと視線を崩落現場へと戻すシュウ。その中には、今だNWが埋まっている筈だった。
「奴らは存在そのものが罪だ。彼女達を危険に晒すからな」
 横で掘り出していたルシフが、女性陣を見ながら、そう答えている。
「すでに、どこかに潜んでいるのかも知れん」
 伏姫、彼にスコップを渡し、持ち込んだ双眼鏡で、油断なく天井をチェックしている。その姿を見たジスは、作業の手を止め、ホームビデオを回しだす。
「一応、カメラ回して置きましょうか」
「後でこっちにも回して置いてくれ。仕事のヒントになるかもしれん」
 ジスも伏姫も、むろん森里も完全獣化中だ。ゆえに、放送には出せないが、資料にはなりそうだ‥‥と言う判断らしい。頷くジス。
「すっかり黒幕っぷりが板についたな」
「‥‥俺はそんなんじゃない」
 ルシフがにやりと笑って、その秘密の取引を揶揄すると、冷たい紅茶で喉を潤しつつ、力の限り否定するルーファス。
「職業柄仕方ないだろ。演出家ってのは、裏方街道を行くもんさ。結構似合うぜ? その愛称」
 このクソ暑い中でも、黒のイメージを崩さないルーファスに、ルシフはそう告げるのだった。

 そして、さらに3時間が経過した。
「これが最後の石だな。後は、細かいものばかりだから、女性陣にも手伝ってもらえそうだな」
 大きな石は、あらかた片付け終わったジスが、ルーファスにそう言っている。
「結局イベントは何もなし〜。つまらないです〜」
 軽く落盤に巻き込まれる絵が欲しいなーと思っていた彩乃、森里を見て、残念そうに呟いている。だが、その直後である。
「ねぇねぇ。落盤よりも、アレを心配した方が良いと思うんだけどー‥‥」
 話していた愛ちゃん、皆の背後を、凍りついた表情のまま、指さしてみせる。小さな影が動いたのは、その刹那だった。元々は、どこかの小動物だったらしく、かなり素早い。
「えーん、どこ行ったのよぉう」
 接近戦に持ち込もうとした愛ちゃんだったが、積み上げられた石の山に潜んでしまい、中々捕まえられない。
「素早さなら任せろ」
 森里が、俊敏脚足で、逃げたと思しきあたりへと駆け込んだ。
「おわぁぁぁぁっ!」
「あ、森里が食われた。だから、単独行動は慎めと言ったのに!」
 直後、響き渡る悲鳴。しかし、ジスが舌打ちしながら、警告すると「まだ死んでない〜!!」と、石の影から抗議する声が聞こえた。どうやら、コアに拳を当て損なって、すっ転んだ模様。
「ちっ。奴の仇だっ!」
「聞いてないしー」
 滝涙を流しながら、戦列に戻る森里。急いで崩落防止ネットを外し、まるでゴールネットの様に、縦に広げてみせる。その間、彩乃に呼び集められ、ジスのところに集まったシュウが爪を閃かせ、間を縫うようにカナが飛礫火玉を発するが、中々当てられなかった。
「追いつけないな‥‥」
 こちらも攻撃を食らっていないから、撤退する程ではないが、中々追いつけそうにない。ジスが、ルーファスに指示を仰ごうとした時、伏姫がこう言った。
「むやみに追い掛け回さない方が良さそうでござるな。何とかこっちに引き寄せてくれ」
「OK! 食らいやがれ」
 ようやくネットを設置し終わった森里が、再び俊敏脚足で回り込もうとする。それを避けようとしたNWに、今度は彩乃が、立ちふさがった。進路をふさがれたNW、くるりと回れ右をする。その瞬間、待ち構えていた伏姫が、腰に挿した日本刀の柄に手をかけた。
「一の太刀!!」
 スピードが早い分、急には止まれないNWに、彼女は居合いの要領で、刀を抜き放ち、切りつける。狙いは、額のコア。それを見切ったらしい彼女は、後方宙返りで距離を取る。
「二の太刀!!」
 糸目がかっと見開かれ、日本刀が頭上で握りなおされた。突きの形となったその刀で、確実に仕留める為、彼女は俊敏脚足で、一気に間合いを詰める。強化された脚力は、何とかNWに追いつくが、まだ致命傷とは程遠い。
「三の太刀!!」
 着地した彼女は、強引に足を踏ん張ると、そのスピードを殺さないまま、刀を横に薙ぐ。
「俺ら、出番なーし」
「まぁ、楽出来たと思えば」
 倒れたNWを見て、ぶつぶつ言うルシフに、ロクな戦力になれなかったカナが、そう言って慰める。
 なお、出て来たオーパーツは、ルーファスが確保し、残りの空き時間は、海水浴に興じる事になったのだが、シュウが御約束の通りヒメに狙われ、それを巡って、愛ちゃんが不穏当な発言を繰り返し、さらにその上を行く口説き文句を、さらっとルシフが口にして、代用生贄にさせられそうになった森里は、新技開発を口実に逃亡、修行と勘違いした伏姫が後を追い、残りの面々は、ジスの持ち込んだスイカで、夏のリゾートを楽しむのであった。