【AoS】金いいＳＶ祭アジア・オセアニア
| 種類 | ショート |
|---|---|
| 担当 | 姫野里美 |
| 芸能 | 3Lv以上 |
| 獣人 | フリー |
| 難度 | 普通 |
| 報酬 | 7.9万円 |
| 参加人数 | 8人 |
| サポート | 0人 |
| 期間 | 07/29〜08/02 |
●本文
夏である。ここ、北海道でも、昼間はうだるような暑さになりつつあり、熱さの苦手な道民にとっては、苦手な季節がやってきた。
「うー、あーつーいー‥‥」
頭に氷嚢乗っけて涼む洋ちゃん。ちなみに、一般企業でも、北海道において、クーラー完備と言う職場は、けっこう少ない。よっぽどの大手でもない限り、夏場は扇風機でやり過ごすのが、北海道流だ。
だが、彼の所属するオフィスＰに置いて、弱みを晒すと言うのは、すなわち死を意味する。
「そんなに暑いのなら、涼しくしてやろうじゃないか！ 太平洋！」
ばたーんっと扉開いて現れたのは、いつもの疫病神こと、オフィスＰが誇る、問答無用ディレクター、藤田氏である。
「む、出たな妖怪！」
またなんかやるんだ‥‥と、直感的に察知した洋ちゃん、ぴったりと壁に張り付く。が、藤田Ｄは、まったく気にせず、にやりと笑ってこう言った。
「わーはははは！ やってしまえ！ 北大アメフト部員！」
「いー！」
どっかの特撮のノリで現れた、屈強な御仁達。よく見ると、なんだか今まで見た事あるよーな奴もいる。こうして、彼をはじめ、暑さで唸っていたかあいそーな芸能関係者が、全国各地でひそかに攫われて言ったのだった。
なお、念のために追記しておくと、事務所には全て話が通っているおり、家族や友人には、きちんと連絡が入れてあるそうである。
さて、藤やんが、洋ちゃんを連行したのは、どこともしれない海岸だった。しかも、北海道と比べて、傍若無人なくらい暑い。見回すと、他の何人かの芸能関係者が、強制連行の憂き目に合ったようだ。
「と言うわけで、お前らには、ここ、沖縄の某無人島で、サバイバル勝負をしてもらうっ！」
「はいーーーー！？」
集まった御仁達に、そう宣言する藤田Ｄ。何でも、今度のイベントであるAthletic of Summerに連動する形で、この無人島を使って、夏の運動会を敢行しようというのが趣旨らしい。
「勝利者には、素敵なご褒美をくれてやる！ 詳細については、このＤＶＤを見ろっ！」
「い、いつの間にッ！」
そんなＶ作る仕事あるんなら、俺らに回せ！ と言いたげな芸能関係者の表情をよそに、ＤＶＤプレーヤーが無情にも回り始める。それにはこうあった。
『金いい主催。無人島使って、水鉄砲サバイバル勝負！』
ＡＯＳのチーム編成に乗っ取って、水鉄砲と水風船を使い、フラッグを奪い合うと言うもの。なお、勝負がつかなかった場合は、文字通りのビーチフラッグを行い、勝敗を決する。
濡れたらアウト＝ヒットとして扱う。１マッチ、３デュエル。つまり、１デュエル＝３０分の勝負を３回行う。ゾンビ行為（＝ヒットしたのにしてないと言い張る行為）には、ペナルティとして、次のデュエルに出られない等の制約が課せられる。フィールド制限は特に設けないが、フラッグは分かりやすい位置に置く事。チームメイトの誰かが持っていた等々は禁止だが、ダミーやはずれの製作はＯＫ（裏に明記しておこう！）。ただし、道具はその辺に転がっているものか、自分の持ち物を使う事。
「ＴＶ映りを意識して、戦略より、演出を重視すると良い感じだ！ あと、余りにも酷い反則行為をしたら、ヒメ・ニョン先生への生贄に捧げてやるから、覚悟しておけ！」
「何ーーーー！！」
騒ぐ連中を尻目に、ヘリコプターで去って行く藤田ディレクター。いつもながら、本当に横暴な奴である。
合掌。
●リプレイ本文
●１回戦「３デュエルあるんだよなー。勝利者へのご褒美も気になるし〜」
森里時雨（fa2002）がでっちあげた、大量のフラグを立てつつ、相手陣地の様子を、茂みの影から伺うＬＵＣＩＦＥＬ（fa0475）。
「あんたの場合、ヒメ先生とデートとかでも、許しそうな気がする」
「もちろん☆ ま、とりあえず楽しもうか」
椚住要（fa1634）がそうツッコミを入れると、彼は指を振りながら、カメラ目線で答えている。
「なんだか、とんでもないチームに割り振られた気がしますデス」
ルシフの姿を見て、白海龍（fa4120）は、不安そうにそう呟く。
「まぁ、目立てば良いんじゃないかな。こんな風に」
一方、そう言ったｊｏｋｅｒ（fa3890）は、白の着物に白マントに麦わら帽子、マントの背には紫色の蝙蝠と『白組上等 恐悦至極』の文字が刺繍されている。
「いえ、ここはこうあるべきですっ！」
安部彩乃（fa1244）がそれに大きく『完全制覇』と書かれた白いのぼりを、背中に追加。
そんな中、開始の笛が鳴らされ、森里が高笑いしながら躍り出ていた。
「現れたなレッドデビルども！ てめぇらには、負ける気がしねぇ！」
「森里サーン、色が逆デース」
赤はこっちですよ‥‥と、ツッコミを入れるハッカイ。
「なぁ、アレって、通称負けフラグって言うんじゃないのか？」
「はっはっは。気にするなっ！」
要のツッコミに、あさっての方向を向きながら、そう答えるルシフ。「どうするぅ。向こう、自信満々だよ〜」
もっとも、白組チームの鶴舞千早（fa3158）は、そんな事ご存知ない風情で、不安そうに気圧されている。
「さぁ、スペルをセットしろ、デュエルだ！！」
「って、どこいくねん！」
佐渡川ススム（fa3134）が、そう言いながら森の中に逃げ込もうとする。そこを、洋ちゃんに捕まった彼は、罰として、砂浜に埋められていた。
「本当は赤が良かったけど‥‥しょうがないし」
背中が大きく開いた、真っ赤なセパレートタイプの水着を着た千早が、残念そうにそう言った。と、ルシフが「俺のところに来るかい？」なんぞと、粉をかけている。
「いきなり人のチームメイトを口説くんじゃない」
「俺の愛は不滅。たとえこのような無人島に漂着しようとも、俺は不滅なのだ」
そう言って、慌てて引き剥がすジョーに、彼はそう言ってふんぞり返っている。だが、それでも千早は、赤組の方に入りたそうだった。
「とりあえず、当てられるようにしないとね」
その千早が、そう言って、ライフル型の水鉄砲を手に、最後尾へ下がる。と、同時に、ルシフが隠れていた茂みから一歩、前へ出た。
「任せろ。この俺が殲滅してやるぜ‥‥わぁぁっ」
が、台詞を言いきらないうちに、千早のロングレンジ水鉄砲が、足元に炸裂する。
「中々当たらないもんだねー」
距離が遠い分、狙いが定まり難いライフルを、まるでバトンのようにくるくる回しつつ、そう呟く彩乃ちゃん。
「そんな時は、こうするのよ☆」
と、千早が拳銃型の水鉄砲を、新体操の棍棒の様に、前後に回しつつ、撃ちまくっている。それを避けようとするルシフも、同じ様にアクロバティックな動きを見せている所を見ると、それに合わせれば、見栄えも良くなりそうだった。
「なるほどですっ。そう言うことなら、私もやれるですっ」
納得した様子の彩乃ちゃん。いかに対戦車ライフル風味とは言え、中身は水鉄砲だ。こっそり半獣化すれば、どうにか振り回せるだろう。
「ああレディ！ どこに行くんだ！？」
「ちょっと仕込ですぅ！」
その為、彼女はカメラを千早に向けさせたまま、フレームアウトを敢行中。女の子しか見えてないルシフが、目敏くそれに気付き、追いかけようとする。
「そうはさせるかー！」
その刹那、いち早く半獣化を済ませた森里が、卑怯くさく俊敏脚足で回り込み、足元に仕込んだビニールシートを、えいやっとめくる。すっこける彩乃ちゃん。
「ふはははは！ これぞトラップ！」
「却下！ そんなアブないのは、死なばもろともなのですっ！」
ついでに彼、拾ったビニールの人形を、彩乃ちゃんの的にしようとするが、危険物は、本人ごと対戦車ライフルもどきで、除去されている。「今のうちにフラグを‥‥！ えぇい、貴様は盾だ！」
「人を生贄にするなぁぁぁ！」
ざっぱーんと水飛沫を立ててお亡くなりになる森里を尻目に、その騒動の隙に、洋ちゃんの後ろからにじり寄る佐渡ちゃん。後ろから拳銃突きつけられた状態で、進まされた洋ちゃんが、ハッカイの仕掛けた落とし穴の犠牲になったのは、その直後の事。
「ふ。貴様の犠牲は忘れないぞ。って、おわぁぁぁっ」
もっとも、自慢げにフラグを抜き取った佐渡ちゃん、その努力も空しく、彼も落とし穴に捕まって、あっさりびしょ濡れになっていた。
「ザンネーン、外れデース」
フラグ片手にそう言うハッカイ。見れば、穴の周囲には、大きく『ドボン』と書かれた旗がぶち刺さっており、足元には水風船が敷き詰められているようだ！
「一応、ゲームとして進行してはいるようだな‥‥。ネタも多いけど」
全体進行を見守っていた要、若干呆れながらも、そう呟くのだった。
●２回戦
「おのれ、赤組めーなのですっ。ここは、取り返さないとですっ！」
そう言って、拳をぎゅっと握り締める彩乃ちゃん。対戦車ライフルもどきは重いし、３発撃ったら壊れてしまったので、西部劇風の典型的拳銃型水鉄砲にチェンジしてくる。
「向こうも、次は本気になってくると思うよ。それで、ここはひとつ提案なんだけど‥‥」
ジョーがそう言って、チームメイトを集め、ごそごそと耳打ち。「なるほど。それは妙案ですね。でも、上手く行くかなぁ」
不安そうな千早ちゃん。彼女が見ている赤組には、ヨゴレ担当の森里以外にも、戦力になりそうな御仁はいるわけで。
「レディを討つ事になるのは、心苦しいんだけどなー」
「まぁ、本当に怪我をさせるわけじゃないし」
弾を補充しながら、そう話しているルシフと要。漂着したビニールシートで、偽フラグを大量に製作している。要は小ぶりの拳銃型水鉄砲を２丁、ルシフは普通の水鉄砲を１丁持っていた。
「本物は、向こうに置いておくデース」
その、大量に作ったフラグと一緒に、本物を砂でこさえた陣地の中央に置く。その周囲には、一切遮蔽物がなく、取ろうとすれば、狙い撃ち決定の状態だった。
「うわはははは！ これでも食らいやがれぇぇぇぇ！」
二戦目の開始早々、森里が水を入れたペットボトルを、佐渡ちゃんと洋ちゃんに投げつけている。本当は、ロケットにしたかったんだが、穴が開いてる上、発射用の空気入れがない。
「ああっ、しまった時間が！」
と、そんな中、携帯に仕込んだアラームが、フィールドに響き渡る。わざとらしくそう言ったジョーの挑発に、乗せられちゃった森里、ダッシュで敵陣へ。
「よぉし！ 特攻じゃあああ！」
「はい、残念」
そこへ、フラグから５ｍの位置に潜んだジョーが、至近距離から射撃。
「ここは俺に任せて先にいけぇ！」
「森里！ お前の犠牲は無駄にしないぞ！」
ばったんと倒れながら、そう叫ぶ森里。死ぬ間際の御約束仕様に、大声で名前を呼ぶルシフ。ちょっと大げさなその演技に、今度は彩乃ちゃんがこう言った。
「そうはいかないのですっ！」
振り返ったルシフに延びてきたのは、磯の香りが漂うロープ。
「わぁ、狙いがーー！」
カウガールっぽくロープを投げた彩乃ちゃんだったが、狙った筈のフラグの変わりに、ルシフが引っかかっていた。受け止めきれず、そのまま彼に押し倒される格好となる彩乃ちゃん。
「絶対わざとだな」
彩乃に濡れ鼠にさせられている、やけに嬉しそうなルシフを見て、要は頭を抱えながら、そう呟くのだった。
●３回戦
一対一。赤白、それぞれ一勝づつで迎えた、運命の３回戦。
「泣いても笑っても、これでラスト勝負！ 頑張るですっ」
「ふふふ。任せろ。この俺が、レディの為に、奴らを撃ち滅ぼして見せるさ」
まだまだ元気な彩乃ちゃんに、そう答えたのは、頭に『戦利品』と書かれたルシフ。
「って、そこ！ 何裏切ってるんだＹＯ！」
「はっはっは。さっきそこの彩乃ちゃんに捕まっちゃってな！ 命を助けてもらうお礼に、さっくり裏切ったんだ！」
洋ちゃんが速攻ツッコミを入れると、ルシフは多少芝居がかった台詞で、彩乃ちゃんに膝付いて見せる。ただし、目線だけはしっかりカメラを確保していた。
「うみんちゅ五尺玉をよろしく！」
が、最後まで言い終わらないうちに、佐渡ちゃんがカメラを強奪している。
「佐渡川っ！ そこは俺の出番だろうが！」
「うわーははは！ 金いいで、いい所を見せれると思うなよー！？」
砂浜で元気に追いかけっこを始める二人を見て、ジョーが、呆れたようにこう言った。
「あーあ。人の決め台詞の時には、邪魔しちゃいけないのが、御約束なんですけどねー」
「この番組、そんな事言ってたら、出番取れないんだって」
洋ちゃんが、肩を落としながらそう答えた。と、それを聞いた要、にやりと笑みを浮かべ、フレームイン。
「そうかそうか。なら、遠慮なく、割り込ませてもらおう」
彼が走り回る佐渡ちゃんの足元に置いたのは、森里が使い損ねていた浮き輪トラップだった。ぐいっと力いっぱい踏んじゃった彼に、詰め込まれた水が、ぶしゅーと襲いかかっている。
「誰だぁ！ こんな所に、浮き輪置きっぱなしにしやがったのは！」
「アイツ以外に考えられまいっ」
しかも、ちゃっかりその責任は、森里に押し付けていた。が、そこは彼も覚悟していたようで、逆に佐渡ちゃへん水風船を押し付けていた。
「ＡＧ対抗戦の意地だ！ 生贄よろしくっ！」
防御手段を持たない佐渡ちゃん、そのまま血祭り‥‥ではなく、びしょ濡れにさせられる。がっくりと倒れこんだ彼に、同じＡＧ所属の彩乃ちゃんが、ちたぱたと駆け寄ってくる。
「ああ、佐渡川さんっ。死なないでー」
「し、死ぬ前に、い‥‥一度でいい‥‥から全裸美女でいっぱいの水着大会をこの目にしたかっ‥‥た‥‥」
がっくりとひっくり返る佐渡ちゃん。と、要がそこに「なら、今見せてやる」と言いながら、彩乃めがけて、ぷしゅー。
「いやん☆」
が、変わりに濡れたのは、ルシフの方だった。パーカーに水着着用の彼、瀕死の佐渡ちゃんの前で、濡れた服を遠慮なく脱衣。
「何でそこで野郎なんだー！」
「レディのお肌を晒させるわけにはいきませーん」
喚く佐渡ちゃんに、きっぱりと首を横に振るルシフ。視覚的トドメを刺される彼。
「佐渡ちゃんの死は無駄にしないぜ！ これでも食らいやがれ！ 赤は３倍早ぇんだぜ！」
お前チーム違うだろうと言うツッコミはさておき、ドラマチックな倒れ方をした佐渡ちゃんに、感涙した様子の森里、どこからか拾ってきたペットボトルをタンク代わりにして、水風船を投げまくる。その足元で、舞い上がらせた砂が、相手チームの視界を奪っていた。
「くそう、前が見えない！？ だが、ここで僕が抑えなければ、彩乃さんが！」
ジョーが、その水風船を、マントで払い落とす。体が濡れなければ、ヒットした事にはならないので、それを盾代わりに、彩乃を森里の魔の手から逃がそうとする。
「皆、私の為に‥‥」
うるうると目を潤ませる彩乃ちゃん。だが、視界の悪い状態では、長くは持たず、砂煙が晴れたとき、びしょ濡れで、中央に倒れている御仁１名。
「どうして僕がこんな目に‥‥」
ぴくぴくと大げさに痙攣しながら、そう呻いていたのは、ジョーではなくハッカイの方だった。
話をスロー再生させるとこうだ。
「ここは勝負の場。可愛そうですが、アナタも仕留めさせていただきます！」
要と同じく、小さめの銃で二丁拳銃にしたハッカイ、そう言って彩乃にターゲットを絞る。
「危ない！ 彩乃ちゃん！」
つっこんできた彼から、彩乃を庇うジョー。逆に、マントを盾に、ハッカイへ向かってくる。
「こっち来ないでクダサイよ！」
「急には止まれないんだよっ！」
車みたいな事を言いながら、えやっとマントを投げつけるジョー。よけようとしたハッカイに、森里の水風船が後頭部にぶち当たっていた。
「ええい、ココは俺に任せて先ニ行ケェー！」
ハッカイさん、とりあえず無駄に大げさに倒れて、夜空のお星さまになってみる。
「彩乃ちゃん！ 皆の犠牲を無駄にしないで！ さぁこれを！」
と、千早がそう言って、直径５ｍはありそうな水風船を用意し、こっそり半獣化して、サブマシンガン型水鉄砲を連結。
「こんな無様な‥‥じゃない、空しい戦いは、早く終わらせるのですっ！」
そう言って彼女は、マシンガンを乱射する。しかし、そうはさせじと要が彩乃の前に立ちふさがった。
「そうはさせるか！ ここは死なばもろとも！」
彼がぶち抜いたのは、巨大水風船の方。簡単に割れたそれから、大量の水が噴出し、そのまま全員ゲームアウト。
「そこに隠れてる藤田Ｄ！ あんたも責任取んな」
ついでとばかりに要、事態を見物していた藤田Ｄに向かって、ぴゅー。
「ほほう。良い度胸だ‥‥な！」
「だ、誰か俺に恋愛フラグ‥‥がく」
で、反撃に出た藤やんの水風船は、彩乃ちゃんに擦り寄ろうとした森里を直撃していたり。
「佐渡川さん。仇は取りましたよっ」
そんな中、水着姿のまま、ひっくり返った佐渡ちゃんを抱えて、そう言っている彩乃。そんなわけで、水鉄砲決戦は、結局うやむやのうちに終わるのだった。
