【金いい】花火で夕涼みアジア・オセアニア

種類 ショート
担当 姫野里美
芸能 3Lv以上
獣人 フリー
難度 普通
報酬 7.9万円
参加人数 8人
サポート 1人
期間 08/26〜08/30

●本文

 旧暦の七夕も過ぎ、ようやく夏らしくなってきた頃。
「よし。次の企画はこれだ!」
 オフィスPでは、相変わらず藤やんが問答無用なイベントをでっち上げていた。

【どきっ! ヨゴレだらけの夕涼み☆ 花火もあるよ!】

 どこの煽り文句だよと言いたそうな文字が、企画書に踊っている。そしてさらにそれにはこう書いてあった。

【用意するもの】
・太平洋含むヨゴレ数名
・金たらい、1斗缶、水、やかん、はりせん等ツッコミ兵器各種
・花火たくさん
・浴衣、スイカ、アイス、かき氷、うちわ、扇子等夕涼みセット

 ものすごく金のかかっていないセットである。正直、どっかのホームセンターで揃えられる品々ばかりだ。おそらく、出演者以外は、一般家庭でも調達可能だろう。

「‥‥一体何やらせるつもりなんですか」
「うむ。とりあえず花火で撃ちあいだな」
 洋ちゃんの問いに、藤やんは至極あっさりとそう言った。顔を引きつらせる彼、こう食ってかかる。
「またそんな危険なものをっ!」
「お題が無いとつまらないだろう。そうだなー、改造OKで、一番花火を輝かせてた方が勝ちってルールにして、まったり過ごそうじゃないか」
 ご近所迷惑対策に、公園の使用許可取っておいたぞっ! と、いつものロケ地を示しつつ、そう言う藤やん。その手には、何故か6面さいころフリップが示されている。
「って、なんすかそのフリップは!」
「うちの番組の御約束だ! 今更言うな!」
 ちなみに、書かれていた花火は次の通り。『ロケット』『ねずみ』『パラシュート』『線香』『手持ち』『吹き出し』の六つ。詳しい本数も、持ち方も書いてないのが、非常に怖い。
 で、そんなわけで、芸能人達に、こんな仕事が回ってきた。

『手持ち花火で撃ちあい上等の夕涼み番組に参加してくれる芸人さん達を募集します。正直、話が進まなくて構いません。て言うか、進まない方が良いです』

 『能』が抜けてるのは、つっこまないで上げるのが、優しい大人と言うモンだろう。

●今回の参加者

 fa0922 亀山 綾(18歳・♀・亀)
 fa2002 森里時雨(18歳・♂・狼)
 fa2029 ウィン・フレシェット(11歳・♂・一角獣)
 fa3072 草壁 蛍(25歳・♀・狐)
 fa3175 下心充(22歳・♂・一角獣)
 fa3194 ジョンジョル(26歳・♂・狐)
 fa3503 Zebra(28歳・♂・パンダ)
 fa4123 豊浦 まつり(24歳・♀・猫)

●リプレイ本文

 今回のオープニングは、むやみやたらにキュートでポップな曲からスタート。ミラーボールでスポットオンしているのは、ミニスカートタイプの黄色い浴衣を身に付けた草壁 蛍(fa3072)である。何でも、不思議なパウワァで、ムチャプリンセスになったそうで。
「クイーンに戻る為には、沢山のムチャ力を集めなくちゃいけないの! それでは、ホタルのデンジャラステージ♪ 今日も景気良くデフレに消費税込みで始まりまーす♪」
 亀山 綾(fa0922)が構えるカメラの中で、プリンセスポーズを決めるホタル。こうして幕を開ける、金いい夕涼み。
「ふふふ。番組の諸問題は、この私の登場で、全て解決しました」
 画面切り替わって、今度は下心充(fa3175)。ホタルに当てられていたピンスポを向けさせ、ファンレターを写し取ったと言う究極融合衣装ヨセガキモノを優雅にたなびかせ、そう宣言する彼。洋ちゃん以下出演者陣が、きょとーーんとした表情でいると、彼は座っていた席の後ろから、御手製フリップを取り出した!
「公式はこうです」
 それには、資金の節約+視聴率アップ+ゆうやけこやけ=下心充の起用と、充の字で書いてある。
「って、ちょっと待ちんさいっ。なんだそのツッコミ満載な公式はっ!」
 洋ちゃんがたまらずそう指摘すると、充は真顔で、さも心外だと言わんばかりの口調で、こう答えた。
「何を言っているんです。良いですか? 私が参加することで、低資金と言う面がクリアできました。私が登場するだけで、甲子園の決勝戦並に視聴率が稼げますからね」
 自信満々の彼。演出に、ミラーボールが追加されている。
「その無駄な自信は、どこから出てるんだ〜!」
「事実です。まぁしかし、問題が無いわけでもありませんね。世界中の私のファンに向けてアンケートを行った結果、内容はまったく見ずに私だけを見ているようなのです!」
 洋ちゃんがそう言うと、彼はきっぱりとそう言い切って見せた。
「その根拠は!」
「これです!」
 ででんっと効果音が入り、新たなフリップが表示される。
(下心充が個人的に取ったと言われるアンケートより)
 そう隅っこに書かれたアンケートには、充の字で、『充様が出てるなら何でも良い』『充様ステキ』なんぞと言う、賛美の文句が綴られている。
「しかし、これもハンサムフェイスの宿命であります。甘んじてそれを受け入れるとしましょう」
「えぇい、顔が良いのは認めるが、そんなもんは却下だっ!」
 ぴきーんと頭に青筋入れちゃった迷彩柄浴衣の森里時雨(fa2002)、ここぞとばかりに、手にしたSHOUTで、充にボイスツッコミを入れる。
「お前ら花火はどうした! 花火は!」
「大丈夫ッ。この通り大量にっ」
 洋ちゃんのツッコみに、森里がずらりと並べたのは、見た目も黒い蛇花火。それを見た充、困惑した表情で、こう考え込む。
「なるほど。さて、お題は花火ですか。それもいちばん輝いたものが勝利。まいりましたね。私のミラクルフェイスより輝くものなど存在しませんのに」
「「黙れ」」
 森里と洋ちゃん。声をハモらせてツッコミ。しかし、充はめげずに着物の襟元をはだけて見せた。
「そんなに言うなら、見せて差し上げましょう。花火よりも数段上の、私の得意技を!」
 意味もなくどこかの戦隊モノから調達してきたらしい、カッコよさげなBGMの後、安っぽい効果音と共に、充が発動したのは!
「ハンサムフラーッシュ☆」
「うぉっ。まぶしっ!」
 どっかで見たような技だが、付き合いの良い森里、そう言って転がってくれる。
「これは使用すると、あたり一面が照らされるスペシャルな技です。近くにいた女性軍は、もう私にメロメロとなるのです。男性方にも‥‥効果は抜群でしょうね」
 満足したようにそう言って、くるっと洋ちゃんの方を振り返る彼。しかし、当の彼はと言うと。
「そうだなー。こないだの事は、まいむ☆まいむの2人に、申し訳ない事しちゃったよ」
 カメラの綾ちゃんに向かって、沖縄無人島決戦の時の事を、しみじみと語っていたり。
「次は個人戦やろか」
「そろそろ、運動会のシーズンだしねぇ。本土は」
 絶対何かやらされるに決まってる‥‥と、そう言いたげな洋ちゃん。
「と、とりあえず。花火持ってくる」
 一通りオチがついたと判断したZebra(fa3503)がそう言った。ちなみに彼は、浴衣の胸をはだけて、裾を帯にはさんだ尻端折り姿‥‥よく岡引さん達がやっている姿だ‥‥になっている。
「て、ゼブさん。後ろ後ろ!」
「はっはっは。セクシー路線で4649!」
 しかし、かがむとお尻が見えそうだ。森里がそう言うが、彼は全く意に介していない。そのまま、ここぞとばかりに、積み上げられた花火を、彼らの前に提出する。
「こう見えても、ジャパンの花火は初めてなのでござる。国ではバズーカとかミサイルばっかりだったのネ」
 その、花火の束を見て、感慨深げにそう言うジョンジョル(fa3194)。浴衣からチラ見えする赤ふんどしが、せくしぃきゅーと。
「こう言う、線香花火やネズミ花火なんかの、小さい花火が楽しみなのでござる」
 興味深そうに、それらの束をつまみ上げる彼。同じ様に、花火をつまみあげたゼブは、手持ち花火の包み紙を剥きながら、こうぼやく。
「しかし、花火の改造ってよいこには見せられないよなー。って、そこ! 何すりかえてるっ」
 が、世の中にはさらに悪乗りする御仁がいるようで、発煙筒を混ぜ込もうとする森里に、彼は後ろからハリセンツッコミを敢行するのだった。

 さて、まったりと相談した結果。豊浦 まつり(fa4123)の提案で、サイコロを三回振って、一回目で実際に使用する花火、二回目で使用する本数、三回目で持ち方を決め、アドリブもよし、やり直しもよしって事で、アバウトに決める事になった。洋ちゃんも特に反対しなかったので、彼女は早速、さいころを手にする。
「さぁて、それでは振ってみようかぁっ」
 どでんっと出て来たのは、キャラメルのオマケではなく、紙相撲の台座に、自前の水晶ダイス。
「って、何これ」
「サイ姐特製、さいころ土俵☆ 行司は私ね♪」
 疑問符をぶつけるゼブに、彼女はそう言った。だが、じーっとそれを見つめていた彼、きっぱりとこう一言。
「却下」
「なんでよー。この天才ぎゃんぶらぁの私に向かって!」
 即座に食ってかかるサイ姐。しかし、ゼブも負けじと反論してくる。
「却下つーたら却下だ! 天才マジシャンのプライドにかけても、自分で振るぞ!」
「あ、ちょっと!?」
 水晶ダイスを奪い取る彼。サイ姐が止めようとするが、全く聞かずに、サイコロを振ってしまう。
「見よ! このフィンガーテクをっ!」
「えい」
 が、そこはお互いダイスの扱いを生業とする御仁達なので、転がしたダイスに、横から修正が入ったりする。
「あ、今何かやっただろ! 卑怯なっ!」
「しーらない☆」
 ゼブが食ってかかるが、サイ姐、知らん振り。ぎゃあぎゃあと口喧嘩を始める二人に割って入るように、今度は森里がこう言った。
「それでも、藤やんに任せるよりはマシだっ! つーことで、サイ姐さん。お願いしまっす」
「まーかせて!」
 ぐっと腕まくりして、本領発揮の彼女。コロコロっと転がっていった出目は。
「ええと‥‥。線香を6本ロケットのように? うわ‥‥微っ妙‥‥」
 解読した彼女、顔を引きつらせながら、そう答えるのだった。

 数回の振りなおしの結果、まず線香花火から始める事になった。
「うーん、花火の終わりに球ができたら、肌の上へっての、リアルに熱いからNGかな?」
「まったく。線香花火は、線香は儚いのが良いのよ。小細工する人には‥‥えい」
 そう言うゼブに、今度はホタルがパラシュート花火を向けた。しかしゼブ、ちちちと指先を振り、向けられた花火をむんづと掴む。
「どうせ使うなら、このようにっ!」
 いきなりその花火をバラして、落下傘の紐部分を引きちぎり、そこに別の紐をくくりつけている。繋げた紐の先は、ゼブの腰付近に繋がっていた。
「では、点火ぁっ!」
 頷いた彼、バラしたパラシュート花火を、元の筒に押し込み、持ち込んだライターで、火をつける。が、それで飛べたら、飛行機は要らない。完全なスベりである。
「ふふふ。残念だったわね。そう言うのなら、この私が、どかーんとやっちゃうぞ☆」
 変わりに残りの花火を奪い取るホタルさん。
「どうかね、プリンセス。口とか鼻とか耳とかで持てば」
「そんなものは貴様がヤレ」
 ゼブの台詞に、彼女は一瞬ムチャクイーンの表情を覗かせる。しかるのち、その手持ち花火をゼブに向けて、ダースで点火。しかも、リクエストどおり顔をめがけて‥‥である。
「この様に、徹底的にやる時は手持ちの凶器が無くなるまでやろうね♪ ホタルとの約束♪」
 どうやら、ムチャプリンセス様にとって、目の前のイジラレーは、生贄のようだ。銃を構えて、にっこりと注釈を垂れる彼女に、ゼブがつっかかるものの、聞く耳持たないし。
「さぁて、ホタルは徹底的にヤッチャウヨ♪」
 にやぁりと笑った、ムチャプリンセス。凶器代わりの手持ち花火を、最大出目分持って、カメラへと向けた。
「こらーぁ! やめんかーいっ! カメラに向けるなーー!」
 たまらず文句をつける綾ちゃん。と、逃げ回る彼女を、花火から庇ってくれる影一つ。
「な、何者っ!?」
 手元に、青色の花火を持ち、女物の浴衣を着た少年。水色の地に、朝顔の柄が描かれた姿のウィン・フレシェット(fa2029)は、その花火が終わると、こう一言。
「隠密番長ウィン・フレシェット見参。カメラさんよ。君の安全は私が保証しよう」
 そのまま、再び闇に沈む彼。綾ちゃんの撮影技量でも、その闇を追う事は出来ないくらいだ。何しろ、黒く塗った板の向こう側にいるので。
「えぇい、闇に潜むとは卑怯な! こうしてくれる!」
「ちぃぃっ」
 その黒板に向かって、ロケット花火を10本まとめて撃つゼブ。舌打ちするウィンに、彼はおまけとばかりに、同じ量のロケット花火を、股の間から発射する。
「あひょああぁぁぁっ!?」
 が、悲鳴を上げたのは、ウィンではなく、ゼブの方だった。見れば、ロケット花火のお尻に、オレンジ色に煌く爆竹が、盛大な音を立てている。
「誰だ仕込んだ奴はーーー!」
「あ、俺っす。いやー、不良生徒って言えば、爆竹っしょ」
 復活したゼブにそう言ったのは、CMに出てくるような、爽やかな笑顔で、二つ折りアイスを頬張る森里だった。
「そんなものはおまえが股間にはさみやがれっ」
 ゼブ、即座に反撃開始。股の間に挟んでいたロケット花火の残りを振りかざし、逃げ回る森里を追いかける。
「逃がすか! そこの隠密番長! 奴を捉えて、鼠花火地獄に放り込め!」
 ゼブがNW狩りよろしく指示すると、闇から抜け出るウィン。綾のカメラがそちらへ向いた隙に、ゼブはすかさずナレーションを入れた。
「説明しようっ! 鼠花火地獄とは、上部を繰り抜いた一斗缶の中に着火した鼠花火を投入し、その缶の中に頭を突っ込み、しかる後、爆発に耐えて爽やかに微笑むと言う荒行だ!」
 見れば、既に足元には、束になった鼠花火を詰め込み済。
「ねぇねぇ。そんなチャチい仕掛けじゃなくって、これ使ったらどうかナ☆」
 と、そこへ『やる時は容赦なく徹底的に』がモットーのホタルが、背後を指し示した。見ればそこには、ドラム缶と、鼠花火が10束、吊り下げられている。返答も聞かず、いっせいに点火してしまうホタルさん。
「わーっ鼠花火こっちに置くなぁぁ!」
 引火した一つが、綾の方まで飛んで行ったが、映らない彼女は、ちゃっかり半獣化して、集水流弾で消火中。
「えぇい。そう簡単に捕まってたまるか! 食らえぇい!」
 その混乱に乗じた森里、持っていた発炎筒にいきなり点火。炎を吹き出したそれは、隠し持っていた爆竹へと引火する。盛大な音を立て、まぶしい光で装飾された彼は、こう叫んだ。
「名づけて‥‥ジ・エンド・オブ・俺! これで明度は俺の圧勝だ!」
 そのまま、鼠花火へと点火する森里。だが。
「うぎゃああ! マグネシウム入れすぎた!」
 改造された鼠花火は、まばゆい光を放っている。同時に‥‥熱も。
「なんて浅ましいの‥‥。そんな貴方達には、真の花火の使い方を教えて上げるわ! いでよ! ステキガントレット‥‥ミサイル! マイト!」
 おかげで、自慢の学ランに焦げ跡を作ってしまっている森里に、ホタルが浴衣の袖を捲り上げた。そこには、空き瓶をリストバンドにくくりつけた、都合36本のロケット花火が納まっている。
 その結果。
「と言うわけで、銃は最後の武器なので、徹底的にやる時以外は人に向けないようにしましょう♪」
「誰が、やるか!!」
 にこやかな笑顔を向けるホタルに、巻き添え食らった洋ちゃん、そう叫ぶ。こうして、芸人達は危険な花火大会に興じた結果、めでたく全員病院送りになるのだった。
 くれぐれも、よいこは真似しないでね!!