【PSF】騎馬棒倒しアジア・オセアニア

種類 ショート
担当 姫野里美
芸能 3Lv以上
獣人 フリー
難度 普通
報酬 7.9万円
参加人数 8人
サポート 0人
期間 09/15〜09/19

●本文

 9月後半。
 世間ではそろそろ暑さも和らぎ、失せた食欲や意欲や煩悩が、むくむくと頭をもたげるシーズンである。
 そんな中、またもやここオフィスPでは、藤やんが次なる企画を、洋ちゃんにつきつけていた。
「突然だが太平洋。金は欲しいか?」
「へ? あ、まぁそりゃあ‥‥、あって困るモンじゃないですけど‥‥」
 ここで、目をおぜぜにして首を縦に振ると、爽やかなイメージが壊れると危惧した洋ちゃん、目線をそらしながら、そう答える。
「よし、ならば決定だな。次の企画はこれだっ!」
 ででんっと効果音と共に、突きつけれたタイトル。その内容に、しばし固まる洋ちゃん。
 
【ヒメニョ杯・コスプレ半裸棒倒し玉入れ騎馬戦付き】

 ぱっと見ただけで、三つ以上の競技が混ざっている。
「あのー‥‥」
「説明しようっ! これは、半裸になって棒倒しを行い、先にくくりつけられたくす玉から、現金30万円をゲットした奴が勝ち! と言う、極シンプルなルールの競技だっ!」
 眉を潜める洋ちゃんに対し、藤やんは勝手にそう言った。どうしてもやらせる気なんだなーと、半ば諦めの境地に達した洋ちゃんは、足元から取り出した学生帽を被り、肩手を上げる。
「質問です先生!」
「はい、太平洋君!」
 何気に仕込み対応済みの藤やん。手にした伸縮棒で、ぺしぺしと事務机を叩いた。
「コスプレって何やるんですか!?」
「うむ。実は大変危険な競技でもあるので、安全策を考えて、全員半獣化が義務だ。その方が、ぱわふりゃあなゲームになるしなっ」
 まぁどれだけ非力なアイドルでも、獣化さえしてしまえば、それなりに身を守る手段を持つ。それを誤魔化す為、コスプレの名を冠したようだ。
「その2! 玉入れ付きって!?」
「それはだな! 体力や腕力に自信のない奴に配慮して、時の運を活かせるよう、こんな配置にしてある!」
 じゃじゃんっと取り出したフリップには、棒倒し用の棒が描かれていた。現在小道具さんに作らせているらしいそれには、くす玉が数個、取り付けられている。隅っこに描かれた『拡大図』によると、そのくすだまの中に、『あたり』があるらしい。ただし、どこがどうあたりなのかは、謎なのだが。
「その3! 騎馬戦も付いてるんですか!?」
「うむ。一応PSF賛同企画でもあるので、棒倒しを行いつつ、騎馬を最後まで維持出来た奴をカウントし、多い方のチームにPSFポイントが与えられると言う寸法だ」
 なお、騎馬の台座は用意したそうである。無論、その中に混ざって、騎馬として出ても構わないそうだ。
「今度は個人戦じゃないんですかいっ!」
「30万だけを目指せば、個人戦になる。騎馬戦だけに的を絞ってもいいし、当然両方狙っても構わない。ただし、全てをこなすには、超人的体力と格闘力と時の運が必要だがな!」
 そう言いきる藤やん。なお、賞金は30万だそうである。

●今回の参加者

 fa0427 チェダー千田(37歳・♂・リス)
 fa0984 月岡優斗(12歳・♂・リス)
 fa2002 森里時雨(18歳・♂・狼)
 fa2172 駒沢ロビン(23歳・♂・小鳥)
 fa2340 河田 柾也(28歳・♂・熊)
 fa2341 桐尾 人志(25歳・♂・トカゲ)
 fa3134 佐渡川ススム(26歳・♂・猿)
 fa3175 下心充(22歳・♂・一角獣)

●リプレイ本文

「よくぞ来たな! ヨゴレ吹き荒ぶ戦いのフィールドへ!!」
 高笑いしている佐渡川ススム(fa3134)。ショートタイツ&上半身裸の上にファントムマントを羽織り、頭には闘魂鉢巻。背中に背負ったなんばハリセンという扮装で、ボスっぽくのたまっている。
「なーんか場違いな気がする!」
「ヘイ、ちみっ子ユート君、イケナイ世界へウェルカム☆ 大丈夫、君は生贄な素質アリな事を証明している! 純真なコドモに戻るなら今のウチ☆」
 その足元では、桐尾 人志(fa2341)が笑顔で、顔を引きつらせる月岡優斗(fa0984)を引きずり込んでいる。気圧されている様子の駒沢ロビン(fa2172)。そこへ、人懐っこい顔に、横長六角形のごんぶと伊達眼鏡をかけたチェダー千田(fa0427)が、マイク片手に煽り倒す。
「そんな事言ってると、あの悪の権化を倒せないぞっ! 気合を入れて、あの輝ける三十万円を狙おうじゃないかっ!」
 その指先には、そそり立つポールと、アクリル玉。
「しかし、ヘアヌード写真集出して開き直った元アイドルみたいな方ばかり集まりましたねぇ?」
「藤田Dはどうやってこんな面子集めてきたんだ。ここは僕らの虎の穴ですか」
 キリー君の的確な表現に、かくーんとアゴの外れそうな表情と仕草で、出演者達を映させる河田 柾也(fa2340)。と、そんな彼から、カメラを奪い取りつつ、下心充(fa3175)がこうのたまう。
「ああ、私が半裸でコスプレとは、何とファンサービスな事でしょう。この私の素肌を見た女性は悶絶してしまうのではないでしょうか」
 心配そうな顔をしつつも、無意味にカメラ目線の彼、御約束の通りにピンスポットを当てさせつつ、その罪作りな自分に酔いしれている。番組の意向でしたら、仕方ありませんね‥‥なぞとほざいている。
「って、この衣装はなんだ!」
「執事服☆」
 そんな中、洋ちゃんが悲鳴じみた声を上げていた。と、チェダーは語尾にハートマークを浮かべて、きぱりと解説。が、その割には、ジャケットもズボンもスケスケである。
「ええい、皆細すぎなんじゃー。栄養取らんかー」
 ガタイのでかいコーダ君。ジャケットはともかく、このままでは、ズボンのファスナーが閉まらないので、仕方なく付け替える事に。で、待っている間、上だけでもと処理しようとした相方に、キリー君がこう言った。
「そこ、ニプレス使用不可。はい、ここ試験に出ますよー」
「何の試験だよ!」
 ツッコミ返すコーダ君。この辺は、しっかりネタを合わせている様だ。
「そういえば、イギリスでは半裸のコンパニオンが存在するらしいですね。服装はこれに習うとしましょう」
 それを見て、充が自分の衣装を取り出した。で、その着付け方法に従い、いそいそと服を脱ぎ始める。上も下も。
「この衣装ならば、きっとヒメニョ杯の開催委員の方にも気に入ってもらえるでしょう。ねぇ?」
 六尺ふんどし締め始めちゃった充、装飾品代わりに首輪を巻きつけながら、ヒメさんに向かって軽くウィンクしてみせる。が、彼女は、不満そうにこう言った。
「いや、顔は良いんだけど、相手が‥‥」
 じーと視線を投げかけたのは、既に完全獣化して、着ぐるみ狼の振りをしている森里時雨(fa2002)。そんな彼を、佐渡ちゃんが必死で着ていた学ランを脱がしにかかっていた。
「うぎゃあああ! なんじゃこりゃー!」
 が、その余波で、学ランの内側に仕込んでいた玉入れの偽玉が爆発する。至近距離にいた佐渡ちゃん、哀れ生石灰まみれに。その粉が落ち着くと、そこにいたのは、狼コスの上に、赤い三角頭巾姿になった森里。
「愛と結城と希望の名の元に☆」
「字が違うだろう! やるなら‥‥こうだ!」
 うっかり魔法少女っぽい台詞をはいちゃった森里、気に食わんとばかりに、頭巾をひっぺがされ、代わりに渡されたのは、ちょっとサイズの小さい海パンだった。
「サイズが違う〜!」
 しっかり着てしまってから、文句つける森里。その横っちょには、白地の布に『2年4組 月岡優斗』と書いてある。
「えーと、時雨にーちゃんに、水着が行ったって事は、僕の衣装は‥‥」
 やっぱり着る事自体は問題にしてない森里を見て、ゆーと君は自分の衣装を探した。そこへ、キリー君が、入れ替えた衣装を広げてみせる。
「そんなちみっこにはこれ! パプアニューギニア島はダニ族の正装!」
「でたな。ネタ衣装!」
 相方のコーダくんが身も蓋もないツッコミを入れた。知らない人の為に解説すると、ぴっちぴちのビキニ並な紐衣装に、大事な所を飾るケースが付いているシロモノだ!
「他に、ほど良いぴちパンを演出するアマレスユニフォームなんぞがあります!」
 そればかりではなく、キリー君が用意したのは、バストの大きな人用の、レスリング衣装とブーツ。
「さて、今日のご注文は、どっち!?」
「両方とも嫌だぁぁぁ!」
 コーダ君に問われ、即答するゆーと君。相談の結果、ロビンくんがスケスケでぶかぶかな執事服と眼鏡を着用。コーダ君が、その立派なバストを、惜しげもなく晒すと言う事になった。
「まぁ、相方。とぉっても御似合いで」
「残念だなー。せっかく新妻エプロンを用意させたと言うのに!」
 キリー君に言われ、ゴッツイ棒読みで、そう言うコーダ君。と、そこへ佐渡ちゃんが割り込んできて、行方不明な裸エプロンの到着先を示してみせる。
「何で僕がこんな目に!」
 白いふりひらハートエプロン姿なのは、ゆーと君だった。その姿に、ほっとしたような様子を見せる、トレーニングウェア上下の洋ちゃん。ところが、それを混ぜ込んだ当の本人‥‥佐渡ちゃんは、高笑いしつつ、こう叫ぶ。
「甘い! 甘いぞ太平洋! どーだ? 一人だけまともな格好してるのは恥ずかしいだろう?」
「ってミイラ男が現れたっ?」
 が、そんな悪役台詞はいている佐渡ちゃんの衣装はと言うと、明らかにサイズの合わないギリシャ神話風装束。いわゆる、布がぐるぐる巻いてある姿だ。
「あーー! 僕が着る筈だった衣装!」
 ロビンが驚いた表情でそう言った。小鳥獣人の彼、半獣化必須と言われ、翼が出ても大丈夫なように、そう言う衣装を発注したらしい。
「気にするな! 芸人にとってネタ衣装こそが正装!! ちみっこや少年もそう思うだろう?」
「ちみっこって言うなっ!」
 佐渡ちゃん、NGワードをつついて、ゆーと君に蹴り飛ばされてしまう。
「はーい、それでは複数の男達が、タマをイヂる為に棒を握りに行く競技、いざ参戦!」
 オチが付いたところで、チェダーが軽くほざきつつ、開始を告げる。
「さー! それでは始めますか!」
 コーダ君、そう言うや否や、自分の所属する騎馬に、幸運を付与している。ただし、見た目は円陣を組んで、気合を入れているようにしか見えない。
「って、何かテカってるー」
「だって、こんなに天気が良いんじゃ、焼けちゃうじゃない☆」
 キリーの台詞に、そう答える彼。ピーカン天気に、上半身むき出しのアマレス衣装では、お肌に素敵な模様が刻まれてしまう。もっとも、塗るのはサラダオイルだったりするのだが。
「ふふふ‥‥。ここはひとつ、エレガントにくす玉を狙わせていただきましょうか」
 そんな、バーベキューだかチャーシューだか分からないコーダ君を尻目に、騎馬の上で、ダビデ像みたいなポーズを決める充。まるで、本物の乗馬の様に、カメラ目線を向ける彼だったが。
「すまん! 隠していた手鏡が、そっちに飛んでった!」
 森里が投げた手鏡が、すかこけけーーーんと、充の額を直撃していた。
「ふっ。半裸の私は、着衣の時より、十倍以上も美しい‥‥!」
 ぽとりと手元に落ちたそれには、自分のパーフェクトなボディが映し出されている。おまけに反射した光で、下から照らしてくれるそれを、彼はレフ版代わりにして、カメラにアピール中。どうやら、自分が居れば、1人で30倍の視聴率が稼げると思っているようだ!
「よし、奴は自分の姿に見惚れている! 今のうちに、賞金を!」
 それを投げつけた元凶の森里、彼が自分の姿に酔いしれている間に、突撃命令を出す。
「わぁぁぁ、こっちこないでぇぇぇ!」
 巻きこまれる形となったロビンが、騎馬を崩されてはたまらないと、慌てて後ろへ逃げた。
「オラァ! タマぁ取ったらぁ!」
 その間に、加速をした森里、騎馬の上から俊敏脚足で、棒に飛び移ろうとする。だが!
「させるかぁ! 芸人は身体を張るんじゃーー!
「いやー、神に息子イサクを差し出す油ハムの気持ちが判りますわー」
 意味の良く分からない例えをしながら、立ちはだかるまいむ☆まいむ。その頭を、まるで岩石をわたるかのように飛び回る森里。衝撃で、滑りやすくなったコーダくんの肩から、アマレス衣装がぺろんと向けるのを見て、チェダーが煽った。
「モザイクボードなら、山ほど用意してある! さぁ、思う存分脱衣とポロりをするが良い!」
 彼が取り出したのは、自動的に画像が曇るように出来たすりガラスである。
「さぁっ! はちまきはどこだ〜! どこに隠した〜」
「いやぁぁん☆」
 しかも、それだけではなく、自ら森里の服に手ぇつっこんで、あるはずもない鉢巻を探している。
「よぉし! そういう事なら、お兄さんがんばっちゃうぞぉ!」
 その姿を見て、がぜんやる気を出すキリー君。そこへコーダ君が、アマレス衣装をそのままにしながら、奥の方を指差した。
「あそこに1人、暇そうにしている太平さんが!」
 いや、本人決してサボっているわけではなく、ロビン君を相手に、逃げ回っていただけなのだが。
「洋ちゃーん☆ こっち向いて♪」
 コーダ君がハートマークをつけた、黄色い声援で呼び、彼の注意を自分に向ける。その隙に、横からキリー君が特攻。
「食らえ! 肌ツヤボンバー!」
 胸と胸が触れ合った瞬間、吸触精気をかける彼。
「ぎゃあああ! 男に吸われるぅぅぅ!」
 返礼は、まるでスカートをめくられた女子中学生の如き往復ビンタ。
「よし! これでまいむ☆まいむの2人は倒した! 次は‥‥、そこの仔リスと猿だ!」
 勝利を確信して、そう叫ぶ森里。その手元には、どこで仕入れてきたのか、18歳未満お断りな雑誌が握られていた。
「くそう! 大人なんかに負けてたまっかーーー!」
 しかし、ソレを跳ね飛ばすゆーと君。
「ちみっこ! 俺らが奴を抑えている間に、くす玉を落としてくれ!」
「らじゃー!」
 目の色の変わったゆーと君、キリー君に言われたNGワードも、耳に届いていない。
「そうはさせん! 狙うはアタリ!」
 押さえられた方の森里は、そう言って懐から、くすねていた玉入れ用の玉を取り出す。射撃能力に自信は欠片もないが、3人かがりで押さえ込まれている今、手段はこれしかない。
「神よ、どうして私はこんなにイイオトコなのですか‥‥」
「邪魔だ充!」
 うっとりと自分の世界に酔いしれている充には、後頭部に予備の玉をぶつけて、ご退場いただいている。
「玉入れつきって、そういう事だったんだ! それなら、僕にも出来るや!」
 それを見て、ロビンくんがそう言った。が、うっかり騎馬の上で身をかがめると、どうなるか。
「落ちる! 助けてー」
「って、僕を巻き込むなーーーっ!」
 すぐ近くにいたゆーと君にすがりつくはめになる。しかし、地面に叩きつけられるはずの彼は、上手い事森里の上に落ちていた。
「森里にーちゃん、ありがとー‥‥」
「違う! 俺は美少女とのフラグを!」
 礼を言うゆーと君とは対照的に、首を横に振る森里くん。だが、そこへチェダーが眼鏡の奥を輝かせて、こう言った。
「森里‥‥。忘れたか? この番組、出演者は全員男だと言う事を!」
 ががーんと、口を開けっ放しにする彼。
「あのー‥‥。大丈夫ですか?」
「え、ええいこうなったら、奴を生贄に献上!」
 固まった森里に、ロビンがそう声をかけると、彼はフラグなんぞ蹴倒しちめーとばかりに、裸エプロンのゆーとくんを、そのままヒメさんの元へ。が、片方だけと言うのは不許可らしい。
「ああっ! そんな事言ってる間に、棒が!」
「そーいうコトなら齧歯目コスのおいちゃんに任せろ!」
 見れば、既に棒が傾きかけている。と、喋り倒していたチェダー、機を見計らったかのように、棒へと取り付いていた。そのまま、するすると文字通り仔リスのように昇って行く。
「よし、これだ! 落とすぞ!」
 こんこんとくす玉叩いて確かめる彼、その中でも、一番軽そうな音を立てた物をチョイスする。そう言って、玉をむんずと掴んだ直後、同じように掴まれる足首。見れば、にじり寄った佐渡ちゃんが、まるでゾンビみたいな顔で、いやんな笑顔を浮かべている。
「ムチャキングぅっ! 同じ白組だからと油断したのがうぬの不覚よ! 30万は俺がもらっ‥‥ぶばぁっ!?」
「邪魔なんだよ! マゾ皮!」
 手にしたくす玉を、まず佐渡ちゃんに叩きつけるチェダー。生石灰まみれだった彼に、今度はすりおろした山芋が降り注いだ。ぬるぬると滑るそれは、必死でしがみつく佐渡ちゃんを、容赦なく肉の海へ叩き落としてしまう。その間に、チェダーはさっさと棒を倒していた。
「ありがとー、これは貰っとくね☆」
 しかし、倒れた所にちょうど陣取っていたロビンに、肝心の30万は奪われてしまう。
「「やり直しを要求するぅぅぅ!」」
 納得行かない結果に、吠えるチェダーと佐渡ちゃんだった。