金曜いいでしょう?アジア・オセアニア
種類 |
ショート
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担当 |
姫野里美
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芸能 |
1Lv以上
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獣人 |
1Lv以上
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難度 |
普通
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報酬 |
1万円
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参加人数 |
8人
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サポート |
0人
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期間 |
11/25〜11/29
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●本文
オフィスPと言うプロダクションがある。
北海道を拠点にしている、小さな地方プロダクションだ。
そこには、知る人ぞ知る『太平・洋』(おおだいら・ひろし)と言うタレントがいて、『金曜いいでしょう』と言う看板番組を持っている。そのメインディレクターである、藤田氏曰く。
「よし。次は食い物系で行くぞ。お前ら、ちょっくら事前にシミュレーションしてこい」
そこでだ。新人達に与えられたのは、この番組のシミュレーションだ。
看板タレントをぶっ壊すわけには行かないため、事前に本当に企画をやっても大丈夫か、近くのファーストフード店に赴き、試して来てもらうと言うのが、仕事の内容である。
無論、面白ければ、本放送の枠で『検証シーン』として、流してもらえるらしい。と言う事は、それなりのリアクションが求められると言う事だ。なお、一応明記しておくと、相手の店の連中には、何も知らされていない。
ルールは、以下の通り。
1:サイコロで食べる担当を決める。
2:サイコロで食べる量を決める。
実にシンプルである。が、そこに用意されたのは、10面と6面のサイコロ。そこには『どう使うかはお前らが決めれ』と、ディレクターのメモ紙が用意されていた。つまり、下手すりゃハンバーガー10個とか言う鬼のような量になるわけである。
挑戦者、求む!
●リプレイ本文
●お仕事お仕事♪ サイコロでeat?
「どもーーー。まいむ☆まいむのコウダでございます〜」
「とゆー訳で、まいむ☆まいむのキリーでございます〜! 相方ともども、よろしゅうお願い申します〜!」
海賊放送局「P!」所属の若手芸人、河田 柾也(fa2340)と、桐尾 人志(fa2341)が、Vの撮影が開始されたと同時に、元気良く喋り始める。映し出されたのは郊外にあるスーパーの大型店舗だ。ファーストフード店選びの相談がまとまらなかったので、こうなったらしい。なお、まいむ☆まいむは2人でネタあわせがすんでいるので、第二部にまとめてと言う事になった。
「では。ルールを再確認しますね」
三月姫 千紗(fa1396)がそう言って、ルールを解説する。参加者全員が、6面と10面のサイコロを振り、最も多い数値を出した人が、食べるジャンルを決める。もっとも少ない数値を出した人が、食べる担当。同じ数値の場合は、両方。後は食べるメニューと個数を決めと言うもの。
「変なの出ませんように‥‥えい!」
最初のダイス振り。フィミア=イームズ(fa0036)は、そう言うと、床で軽くターンなんぞかけつつ、安物のサイコロを振った。
「ああっ!」
全員の表情が凍りつく。
「‥‥うそ‥‥」
一番小さな出目を出したのは、フィムだったのだ。うつむき加減でそう呟く彼に、アルヴェレーゼ(fa2163)が嬉しそうに「最初のチャレンジャーは、フィムさんに決定〜」と宣言する。
「あり得ない! そんなのダイスの女神様が認めたって、絶対、私は認めない!!」
がたっと席を立ち上がり、絶叫する彼。テロップに『強情』と流される中、千紗がにっこり笑って、サイコロを差し出した。
「はいはーい。証人はてんこ盛りなので、覚悟決めましょうね〜」
認めて貰えないのは、やっぱりネタなんだろう。がっくりと気落ちしながら、彼は再びサイコロを手にする。
「では、次は食べる量です」
さりげなくステップを踏みつつ、ターンでダイスを上に投げるフィム。店の中で踊ってる彼に、周囲が怪訝そうな表情を見せるが、カメラがあるので、それほど騒ぎにはなっていない。見物人は多いが。
「良かった、普通の出目で‥‥」
ほっと胸をなでおろす彼。と、そこへLUCIFEL(fa0475)がこう囁いた。
「つまらない出目だなー。いっその事、シェーキ四つとかどうだ?」
「油ものでも良いですよ☆ タブレット持ってきましたから」
一方、被害を逃れた日宮狐太郎(fa0684)も、持ち込んだ清涼剤をかしゃかしゃ鳴らしながら、そう誘う。
「じょ、冗談でしょう‥‥?」
本気ですか? と、表情を固まらせるフィム。その肩をぽふんと叩き、『これも仕事だ』と諭すルシフ。テロップに『諦め重要』と出る。仕方なく、レジへ向かうフィム。
「スマイルスマイル☆ 芸能人は、笑顔が命。それに、こうしておけば、店長さんも気前良くシェーキを注いでくれますよ☆」
「誰が飲むって言いましたかっ。自分の食い物は、自分で決めます」
笑顔で携帯カメラを構えたコタにそう言われ、ダイスを振る彼。彼が選んだのは、『キムチチキン』なるメニュー。見るからにスパイシーなそれに、眉をひそめるコタ。
「でも、平気みたい‥‥」
千紗の言う通り、フィムはケロッとした表情で、チキンスティックを平らげて行く。その光景に、お肉大好き娘の千紗ちゃん、次第に視線が熱くなる。
「食べます?」
「ちょっとだけ‥‥」
そうは言いながら、大喜びでかぶりつく彼女。だが直後、ひーひーと過剰な反応を見せる千紗。テロップに『辛』と流れた。
「あれ、そんなに辛かったですか?」
すっとぼけた様子でそう言うフィムだった。
●覆面必須
15分後。
「さて。第二ラウンドと行こうか」
落ち着いた一同を見回して、そう言うルシフ。
「まだ続けるのかよ」
「当たり前だ。まだフライドチキン屋のお姉さんと、あっちのドーナツ屋の店員に、アプローチをしていない」
そう尋ねてくるアルに、彼はきっぱりとそう言った。どうやら彼、『レディにはアプローチしなきゃ失礼』が心情らしい。彼が真実の愛を捧げられるのはいつの日かわからないが、さっさとダイスを振ってしまう。その結果、御指名を受けたのは、大人しく端っこでコーヒー飲んでた夏姫・シュトラウス(fa0761)だ。
「えぇぇぇっ。わ、私ですかぁ‥‥?」
頑張ってね☆ と、一般客前でのスマイルを欠かさないコタに、彼女は「‥‥ちょ、ちょっと待っててください‥‥」と小さく言って、トイレへ駆け込んでしまう。再び彼女が現れた時、その姿は一変していた。リングへ上がる時と同じ様に、白い虎のマスクを被り、白のタキシード姿となっていた。
「ふはははっ。フライフィッシュ10個がなんぼのもんじゃっ。いくぞ、そこのパン焼き芸人っ」
その姿で、躊躇いもせず店へと入って行く夏姫。何故かアルまで道連れだ。
「なんで俺まで〜」
「バカもの。1人で持てる量じゃないだろうがっ」
女性とは言え、プロのレスラーでもある夏姫にとって、ハンバーガー10個くらいどーってことないのだろうが、手伝いはいるようだ。
「ちくしょう、ルシフ。てめぇもつきあえっ」
「良いだろう。出番だし」
で、女の子大好きのルシフさん。これが野郎なら『1人でもってこい』と蹴倒す所だが、夏姫の為ならエンヤコラのようだ。
「やってまいりました新たな戦場。白いマットのジャングルを離れ、いざ降り立ちしはここ、ショッピングモール。鍛え抜かれた胃袋を武器に、フードファイトに挑む闘う乙女。その名は!」
そのルシフにBGMを演奏させながら、ナレーションを入れるアル。ショッピングモールで手に入れてきた100円懐中電灯を照らし、こう宣言する。
「夏姫・シュトラウス!!」
覆面の口元がにやりと笑う。どうやら彼女、お仕事衣装と覆面を身に付けると、性格ががらりと変わってしまうようだ。一種の二重人格である。
「さーて、夏姫選手、周囲の視線なんぞお構いなしだぁ。この自身に溢れた態度はどこから出てくるのかぁ!?」
見たまんまの感想をほざくアルの前で、周囲の視線なんぞまったく気にせず、無意味に自身に溢れた態度で、店員の所まで行き、夏姫さん一言。
「フライフィッシュ10個」
一瞬あっけにとられる店員。しかし、そこはバイトとは言えプロなので、逆に「ドリンクも一緒にいかがですか?」と、当たり前な勧めをこなしてくる。どうする夏姫!?
「じゃあ追加で‥‥スマイル1つ」
思いっきりただメニューである、スマイル=お水だという伝説もあるんだが、彼女はどうして言いかわからないようだ。と、そこへアルがこうツッコミを入れた。
「コラァ! そこの店員ッ。死地に赴く戦士には、時給850円の笑顔で、優しく見送るのが礼儀だろうッ」
その一言に、お姉ちゃんは自分のやる事を思い出したようだ。
「は、はい。本当に宜しいのですね?」
「戦士に二言はない!」
きっぱりと切り捨てる夏姫。
「ふはははは。この程度、何でもない! 何でもないぞぉ!!」
「面白そうだから、僕も写真撮っておこうっと」
何故か時折高笑いを上げながら、堂々とした態度で、瞬く間にハンバーガー放り込む夏姫の姿に、コタはマイ携帯のシャッターを、ぽちっと押すのだった。
●ラブトラップ
「さて、僕の運はどれほどか‥‥挑戦あるのみっ!」
そのコタが、そう言ってダイスを振り落とす。結果、ルシフに出番がまわってきた模様。
「多いですねぇ‥‥」
「勢いで押せば、どうにかなる‥‥。たぶん」
うらやましそうに千紗がそう言う中、運ばれてきた山もりフライドチキンに、冷や汗しきりのルシフ。と、その1本‥‥ちょうど、太ももの辺りにかぶりついた瞬間、ゆらりと現れる野郎が1人。
「‥‥食いモノにかぶりつく男って‥‥セクシーだな」
普段、姉にしか見せない微笑を浮かべ、色っぽい瞳で、誘うように‥‥囁くように言うアル。突然の口説き文句めいたセリフに、お約束の通り、げふごふと吹き出すルシフ。
「ああっ。ルシフさんが喉にっ」
「み、水‥‥」
ばたばたと要求するルシフに、他の1人が「はい。どうぞ」とコップを差し出した。
「ありがとう‥‥君を見ていると胸が張り裂けそうだ‥‥」
その細い姿から、女性だと思ったルシフ、潤んだ瞳で、水を渡そうとする手を掴み、そう一言。テロップに『流石』と映る。
ところが。
「それは良かったですねぇ」
おてての主を見上げれば、そこにいたのは、きゅーとなスマイルの少年アイドル。
「って、コタ‥‥?」
「気に入って貰って良かったですね!」
しかも、仕掛けた張本人のアル、にやぁりと笑って、水の入ったコップを掴んでいる。
「ほら、遠慮せずにあーーーんしろ♪ あーん♪」
だばだばとそれを流し込みながら、悲鳴を上げるルシフを堪能するアルだった。
●まいむ☆まいむのフードFショー
そして、開始から1時間後、まいむ☆まいむの2人が再び画面に登場する。
「何が出るかな♪ 何が出るかな♪ それはサイコロ任せよっ‥‥おおおおお!」
三段ジャンプの容量で、六面ダイスをほうり上げるキリー。ころころと転がって、出た目は5。力の限り『特盛カレー』である。
「しゃーない、瓶牛乳はデフォでつけてや。道産パワーで乗り切るで」
「なら、飲み物は自由、最初に僕からのサービスで牛乳を一本。福神漬けやらっきょも食べ放題だっ」
顔を引きつらせるキリーだったが、ここで『ごめんなさい出来ません』は許されない。なので、あえて逆に要求すると、コウダくんがどどんっと瓶牛乳、そしてつけ合わせ三点セットを叩きおいた。
「関係ない話だけど‥‥料理バイキングに行く時は、飲み物は控えろっていうよね。胃に入れたものが水分で膨張して、そんなに食べてないのに満腹になっちゃうらしいよー」
コウダくんのセリフに、コタが注釈を入れている。『豆知識』のテロップ付だ。
「ふふふ。甘いな。では俺も本領発揮と行こう。ここは、ご飯ではなく、ナンだっ!」
べしぃっといつの間に出てきたのか、キリーの前に、ほかほかと湯気の立つ狐色の物体を差し出すアル。
「こ、これは‥‥!」
「はっはっは! 俺は歌が歌えてパンも焼けるんだよ! さぁ、渾身の作品を存分に味わうが良いっ」
まるで、どっかの料理アニメみたいな語り口で、オーバーに手を広げるアル。素人に負けてられない芸人根性に火がついたキリー、がしっとそれをわしづかみにすると、熱いのも忘れて口へ放り込む。
「おぉっと、桐尾選手、豪快にかぶりついたぁ!」
「じ、時間がたつ程腹に来るけど、演技力でカバーや!」
乾きもの+水分。後で腹が膨らむのは予想済みだが、そこは芸人根性で我慢する事にした。
「こんなんか?」
「‥‥コウダ、それは河馬や」
無論、両手がふさがっていても、相方のボケには即座にツッコミを入れる。
「さ、桐尾選手ようやっと半分をクリアーです!」
「今の内に、お前も何ぞ食うたんかい。これ、移動できるんやし」
しかも、実況中継かましてくる相方を、まだ食べ終わらないうちから、巻き込んでしまった。
「ほほー。と言う事は、何ぞ用意してきたんやな?」
「無論や! 厳選に厳選を重ねた店は、ここや!」
ばばんっと、キリーが紹介したのは、丼もののチェーン店である。
「コウダ君はうどん大好き人間なんですよ。なんてったって『麺喰い』ですから。女性の好みもそりゃー五月蝿いですよー、デブキャラの分際で図々しいヤツですねー。ホンマ」
「最近は、こっちの方がモテるんやっ。しかしアレですね、看板スターは大事で僕ら新人は壊れてもいい。藤田ディレクターを始めとしたスタッフのカースト制度が程よくお判りになるかと思います」
そのまま、掛け合い漫才を始めるあたりは、流石にプロの芸人である。
「その一番下がうちらやねんけどな」
しっかり、『最下層』のテロップも貰っている。
「しかし、これはくるなぁ‥‥。量が多くなると『暑苦しくなく』食べるのは大変そうやし」
デブタレにとって、料理番組はメインとも言って良い内容である。そこでは、いかに『おいしそうに』食べるのが重要だ。
「食うのは問題ないんかい」
「当たり前や。デブキャラは食いモンが命や。さぁ‥‥南無三!」
量的には、なーーんら問題はない。キリー君にそう言うと、コウダくんは、ダイスを放り投げた。その結果‥‥出目は4のカレーうどんだ。
「ある意味ナンギなメニューですやん。気張れコウダ! 骨は拾って大阪に戻したるさかいな!」
暑苦しくなく食べるのは至難の業だ。だが、そこは美味しくなるチャンス! とばかりに、高らかに宣言。
「くっそぉぉぉ! こうなりゃ自棄だ! 大盛りで!」
「よぉしっ。こっちも対抗だ。じゃんじゃん焼いてくれいっ!」
相方のやる気満々な風情に、キリーもアルに、ナンを焼かせまくるのだった。
こうして、ロケは無事終わった。
余った料理は、千紗が持ち帰り、捨てる事無く胃袋に収まった模様。
次の企画を持ち込んだアルは、企画の練りこみこそ必要だが、アイディアリストには、入れてもらえたらしい。
なお、今回の映像は、思いのほか出来が良かったので、本編で流される他、番組オフィシャルHPで、ダウンロード出来るようにしてくれるとの事だった。