覚醒! 宝貝巨兵! 壱アジア・オセアニア

種類 ショート
担当 姫野里美
芸能 3Lv以上
獣人 フリー
難度 普通
報酬 7.9万円
参加人数 8人
サポート 0人
期間 10/14〜10/18

●本文

●女王候補育成命令
 特番で、暫くお休みしていたダークハンター封神録だったが、肝心なものをやっていない事に気付いた。そこで、関係スタッフが集められ、その補完をする事になった。
 ちなみに封神録とゆーのは、主に中華資本で放映されているバラエティ番組である。
「突然呼び出しって何の用だ?」
「俺、これでも他の仕事あるんスけど」
 オープニング。いつもの様に呼び出される偽西遊記御一行様。すっかり戦闘員代わりにこき使われているらしい彼らを並べ、女狐さんは、鞭をぺしぺしと鳴らしながら、こう言った。
「えー、皆さんに重大なお知らせがあるのよぉん」
 そして、カメラの向こう側に合図してみせる。と、ほどなくして、上は30過ぎの熟女さんから、下は16歳くらいの女子高生まで、種族も体格も容姿も様々な女性が入ってくる。
「今回から、入れ替わりで、女王候補生の研修を兼ねる事になりました。候補は8人いますので、皆さん、丁重にご指導よろしくねぇん」
「えー」
 露骨にいやんな顔をする御一行様。いや、唯一坊さんだけは『ハーレム☆』なんぞと抜かしているが。
「文句言わないっ。あ、これが候補生達のプロフ」
 狐様から渡されたそれには、眼鏡っ子、チア娘、にゃんこ、毒舌、パワーファイター、巫女、天然、南米帰り、インパクト‥‥等々、それぞれ特徴的な女王候補達が書かれている。
「あと、今度のお仕事先。ここに、大地の力を自在に操る宝玉があるって言う話よぉん。女王候補連れて、さっさと奪ってきなさい」
 放映期間が開いてしまったので、多少キャラが変わってはいるが、その内思い出すだろう。
「へーい。で、どこにあるんです?」
 豚さんがそう言うと、彼女は『えーと、多分仙人達が探してるから、その辺り』と、投げやりなセリフをもらす。そんなわけで、妖怪達は女王候補を引き連れ、地図に示された宝珠の場所へと向かうのだった。
「おい、数日前に台風来てて、増水してるって言ったか?」
「忘れちゃったわよぉん」
 そう。そこが、台風で偉い事になっているとも知らずに。

●今回の参加者

 fa0509 水鏡・シメイ(20歳・♂・猫)
 fa0918 霞 燐(25歳・♀・竜)
 fa2073 MICHAEL(21歳・♀・猫)
 fa2122 月見里 神楽(12歳・♀・猫)
 fa3516 春雨サラダ(19歳・♀・兎)
 fa3800 パトリシア(14歳・♀・狼)
 fa4120 白海龍(32歳・♂・竜)
 fa4371 雅楽川 陽向(15歳・♀・犬)

●リプレイ本文

「コレが噂に聞くドラマ風バラエティーでゴザルかー! なんだかワクワクするでゴザルー!」
 そう言う白海龍(fa4120)。上半身はそのたくましいボディを見せびらかすように裸、下半身だけ袴。んでもって裸足と言う、実に妖怪らしい格好である。
「久しぶりの召集だ。気を引き締めねばな」
 何か勘違いをしているような気がするが、それでも候補として選ばれた以上、お仕事はしなければならない。頭を抱えつつそう呟く霞 燐(fa0918)。
「女王候補生がイッパイでゴザルかー! 拙者ラテンの血が騒ぐでゴザルー!」
 一方の白海さんは、輝く太陽を頭の後ろに背負い、そう叫んでいる。と、そこへ春雨サラダ(fa3516)が、すぱこーんと後頭部に突っ込みを入れた。
「って、明らかにお前、ラテン系じゃないじゃん」
「はっはっは。そこは聞かないでほしいでゴザール」
 すでに漫才として成立しつつある掛け合いを見て、今度はMICHAEL(fa2073)がこう言った。
「眼鏡っ子、チア娘、にゃんこetc。あたしって何になってるのかなぁ」
「絶対毒舌」
 前回参加した時に行った台詞なんぞ、すっぱり忘れて、そう言う彼女に、猿のにーさんがそう言った。
「えー。ただのいぢり魔なだけだもーん」
「じゃあにゃんこは神楽なのかな? でも、神楽ちっちゃいから、ちびにゃんこかな?」
 しれっとしてそう言うあたり、自覚はないようだ。と、今回初参加の月見里 神楽(fa2122)が、半獣化状態で、小首をかしげながらそう言う。
「ああ、大地の力を自在に操る宝玉‥‥。面白そうな一品よね〜。仙人達には勿体無いわ! そんなわけだから。がんばってね☆ミ」
 ごうごうと流れる川べりで、なぜかハリセンを片手に、妖美な笑みを浮かべるミカ。しかも、もう寒いってのに、なぜかレオタード張りの衣装である。
「って、何で俺が働かされるんじゃー」
「ミカ、か弱い歌い手だもーん♪ おねがいね☆」
 その衣装でもって、おねだりする彼女。ぶつぶつと文句を言う偽西遊記御一行様だが、相手は一応女王候補なので、逆らえないらしい。
「とにかく地図どおり現地へ行くでゴザル!」
 気を取り直すように白海がそう言った。そして、流れの速い河を見て、目を丸くする。
「おおっとこれはなんという水でゴザルか! よおし、拙者ここに橋をかける事に決めたでゴザル! 女人に危険な橋を渡らせる事は、武士の風上にも置けぬゆえ、心してかかるでゴザルー!」
「って、俺を巻き込むなぁぁぁ!」
 手伝うデござるよ! と、何故か積み上げられていた丸太の方へと向かう彼。不運な豚さんが、うっかり引っかかって連行されてしまっている。しかし白海は、そんな彼の文句になぞ耳も貸さず、丸太を加工し始めた。
「木を斬ってー! 縄で縛ってー! そして増水したこの水の中にしっかりと建てるのでゴザっ!」
 だが、そう言った刹那。いきなりその体が、水の中に沈む。盛大な水柱を立てたところを見ると、どうやら、足を滑らせて、転落してしまったようだ。
「うぬぅっ小癪な水め! おおっ! み、皆の衆っ、ここは拙者に任せて先へ行くでゴザル! 後は任せたでござるぅぅーーー」
 そのまま、ばしゃばしゃと暴れる白海さん。だが、水の勢いは衰えず、そのまままるで死亡フラグを立てたかのように、どんぶらこっこと下流の方へ。
「あーあ、流されちゃった」
「仕方がない。あそこにレジャーボートがあるから、それで引っ張りあげておけ」
 その様子を見て、ミカがそう言うと、燐が河口付近に止めてあった船を指差す。偽西遊記御一行から「「あるなら使えよ!!」」と言われてしまうのは、言うまでもない。

「通りそうなのは、このあたりだっけ?」
「ああ。信頼できる筋からの情報だ」
 ハルサの問いにそう答える燐。見ればその手に持った小冊子には、『DH封神録・仙人サイド台本』と書いてある。どうやら、スタッフを丸め込んで、貰ってきたようだ。
「じゃあとりあえず罠の設置でもしとこうかな」
 雅楽川 陽向(fa4371)はそう言うと、デッキの上にアウトドア用のテーブルを広げた。そして、ヨゴレ防止用のビニールカバーを広げ、そこに次々と料理を並べていく。
「わぁ、美味しそう〜」
「あの人に作ってもらったんですよ」
 目を輝せる神楽に、陽向が指し示したのは、明らかに仙人サイドと名札の付いたカメラさんである。
「ってカメラさんかいっ!」
「たくさんありますから、皆でどうぞー」
 あきれるミカとは対照的に、その品々を皆に勧める陽向。そんな中、燐はもふもふと饅頭を食いながら、こう呟く。
「さて、向こうも大変そうだが、ここは親切な占い師の登場と行くか‥‥」
 そして、饅頭を飲み込むと、ドレスにソフィーを身に着けて、トーテムズボーンやら、エオローネックレスやら、神霊の数珠を持ち込み、怪しげな占い師へと変装する。
「‥‥ま、噂の出所はわからんし、信憑性に欠けるがな」
 そして、折りよく聞き込みに来た仙人その1に、そう教え込んでいた。その子は、こっくりと頷くと、他の仙人達を呼びに行く。
「私もついていってかまわないかな? 面白そうだ」
 いかにも好奇心と言った調子で、それについていく燐。
「神楽ちゃん、あなたも見張りに出てね」
「えー。でも、知らない人について行ったら行けませんって、お母さんが‥‥」
 その様子を遠くから見ていたミカが、そう指示をする。が、あまり気乗りのしない神楽。
「そうだ。いー事考えた!」
 ややあって、彼女は何か思いついたように、てこてこと仙人に近づく。
「あのね。あのね。見張りに付いていきなさいって言われたの。でも、知らない人について行っちゃ駄目だから、知ってる人になって☆」
「神楽!?」
 まさか即効ネタばらしをするとは思わない燐、泡を食って止めに入る。しかし、相手の仙人は、まったく気づいていない様子で、あっさりとOKを出した。
「仙人が天然で助かった‥‥」
 ほっと胸をなでおろす燐。そんなわけで、一向は川面に停泊中のレジャーボートへ。
「ようこそ。船上の飲茶会へ☆ ああ、そっちの占い師さんもどうぞ。それから、そこに隠れている方もね」
 にっこりと笑顔で出迎える陽向。と、レジャーボートの陰で、まるで姉妹のように様子を伺っていたハルサとパトリシア(fa3800)も、船の上へご招待。
「あ、宝珠を捜してるの? 実は私もなの‥‥。あれがないと、病気のおかーさまは‥‥」
 お茶を出されたハルサは、そう言って目を潤ませ、切々と事情を語る。なんでも、あの宝珠がないと、母親が風土病で大変なことになるそうで、あることないこと吹き込みまくっていた。
「駄目ですかぁ? ねぇ、駄目ですかぁ?」
 目を潤ませたまま、ずずずぃっと迫るハルサ。と、同じようにパティも目を潤ませ、こう言い募る。
「手伝ってくれないと‥‥。私‥‥思わずこんな事しちゃうんですぅ」
 その手に持った長さ3mくらいの革鞭が、するすると伸びた。そして、あっという間に仙人達を縛り上げてしまう。
「って、すでに縛り上げてるしー」
「はい。これはすごくよく伸びる鞭の宝貝で、『禁鞭』って言うんですよ」
 ミカがそう言うと、彼女はにっこりと笑顔で、武器の説明をしてくれる。
「それに、逃げられたら困るんですもの。ね、お願いしますぅ」
 一方、ハルサはと言うと、ペンライトをつけたり消したりして、地味に脅迫中。
「大丈夫。そんな脅ししなくても、きっと見つけてくれるから。ですよねー!?」
 陽向が、クリーム入り春巻きに、しょうゆをたらしながらそう言うと、仙人さん達、こくこくと頷いてくれる。
「そうですかぁ? よかったぁ」
「ま、まぁ私も手伝いますよ。やっぱり、強そうな人の方がいいですからね」
 ほっと胸をなでおろすハルサとパティ。と、陽向はまるで監視役か何かのように、ロープの端っこを握り、彼らを船外へと放り出す。
「さて、じゃあ話がまとまったところで、分担して探しましょ。ほら、あんた達もいくのっ!」
 ミカの要請に、偽西遊記一行は顔を引きつらせる。だが、どうやら逆らえないようだ。
「よし、後は仙人さん達が、見つけてくるのを待つだけですね☆」
「邪魔はしませんから、ゆっくり見付けてくれたらええですな☆」
 そんな彼らの様子を、生暖かい目で見守るハルサと陽向だった。

「あったよー」
「何!? 本当か!」
 報告に駆けつける燐。と、神楽は転がっていたアクリル製のボールを拾い上げ、にっこりと笑う。
「ほら、こんなに沢山☆」
「って、マテ。だれだこんなに大量に用意したバカは!」
 顔を引きつらせる燐。と、水鏡・シメイ(fa0509)は持っていた扇子をぺしりと叩きながら、こう言った。
「いやー、手に入れてよかったですねー。あ」
 が、着物の袂から、アクリル球の残りが転がり落ちている。どうやら、見守っている間に、偽物の宝珠をばら撒いたらしい。
「うふふふ。綺麗な金色の玉だねー」
 が、当の神楽は、まぁぁぁったく気にせず、アクリル玉を転がして遊んでいる。どうやら彼女にとっては、ただのビー玉にしか見えないようだ!
「しかし、これじゃあ、どれが本物かわからないぞ」
 数多く転がったそれは、どれも似たような色をしており、まったく見分けが付かない。と、陽向はその中の一つを拾い上げ、こう提案する。
「そう言う時には、実験してみればいいんちゃうか? へい、神楽ちゃん。パス!」
 ぽいっとまるでボールのように、それを放り上げる彼女。と、神楽はボールにじゃれ付く子猫そのままで、それをぱしっと受け取る。
「はーい。いっくよーー」
 えいっと放り投げ返す彼女。それは、違う球にぶつかり、まるでビリヤードの様に、反対側にあった球を、陽向の元へと転がしてくる。
「ああっ! それは!」
 顔色を変えるシメイ。よく見れば、それには小さく『危険物』と書かれていた。
「ドリブル!」
 サッカーの要領で、その球を蹴り飛ばす陽向、意外と軽いらしく、それは簡単に宙へと舞う。
「シュート!」
 それを手で持った彼女、そう叫ぶや否や、今度はバスケの要領で、目の前に居た豚さんの頭へと炸裂させる。たんこぶ作ってひっくり返る彼を尻目に、リバウンドしたそれを、彼女は今度はバレーの要領で、アタック。
「ゴール!」
 受け止めようとした坊主ごと、川に落ちる球。直後、激しい水柱と共に、坊主が宙に舞う。
「ふう。ええ汗かいたわ」
「爽やかに言ってんじゃないっ」
 頭を抱える燐ちゃん。が、彼女はそんな燐ちゃんに、懇々とお説教を開始する。
「えー。これぐらいできなんだら、あの輝く星にはなれんのやで!」
 かくして始まる青空漫才教室。それを気の毒そうに眺めていたシメイ、『本物』と書き込まれた宝珠を抱え込みつつ、こう言った。
「やれやれ。いわんこっちゃない」
「あー。シメイさんが、本物の玉持って行こうとしてるー」
 目ざとく見つけた眼鏡っ娘候補生のパティが、指差して大声を上げる。
「いやだなぁ。これは僕が本部に持っていくんですよ」
「あぶなーーーいっ!」
 だが、そこへ迷子の仙人が降ってきた。気づいた燐、ひっくり返っていた坊主と豚と、仙人をかまっていた猿と河童を引きずり出し、悪役らしい表情で、命を下す。
「ほほう。そうはさせないわ! 行け! お前達!」
 彼らが仕事の一環だからと、仕方なさそうに返答し、あらかじめ指示された通り、仙人達の背後に布陣する。出口をふさがれた格好の仙人。
「悪いな。これが私のやり方だ」
 そんな彼女を、背後からプラチナムスパチュラを変形させた武器っぽいもので脅す燐。
「そんなわけで、人質にしちゃいましたぁ。てへ☆」
 パティも、彼女をお手伝いするかのように、仙人を拘束している。
「宝玉を差し出したならば、五体満足のままお返ししよう。だが、要求がのめないのならば‥‥。どうなるかはわかるな?」
 女仙を人質に、宝玉との交換を要求する燐。この辺りは、きちんと悪の女王候補としてのお仕事をしているようだ。いや、してもらわなければ困るのだが。
「それだけじゃないわよ。かもん!」
 対抗するように、ぱちっと指を鳴らすミカ。と、現れたのは、頭に水草を乗っけたままの白海さんである。流れ流されて、ようやくたどり着いたらしい彼は、目の前の状況に、目をぱちくり。
「あれ? 拙者は何をしていたでゴザル?」
 そらそうだ。今まで水と格闘していたんだから。とりあえず仙人達に猛進していく白海さん。ええ、相変わらず完全獣化中で。
「俺らは何もしてなぁーーいっ!」
 結局乱闘騒ぎになる妖怪サイド。余波で一人仙人が押し戻されていた。そんな中、宝珠はコロコロと転がっていき、神楽ちゃんの目の前へ。
「にゃ☆ たまたまさん、神楽とまた遊びたいの?」
 にぱっと笑って、それを拾い上げる彼女。と、そこへ騒ぎを静観していたシメイが、屈みこんで両手を差し出した。
「神楽さん。その宝玉、少し貸して頂けますか?」
「はーい♪」
 同じ妖怪組と言う事で、あっさりとそれを差し出す彼女。シメイはそれをバックに収めると、仲間を尻目にそのままいずこかへ姿を消してしまった。
「えぇい。次こそは必ず勝つ! 覚えておれ!!」
 一方、燐達の方はと言うと、その場にあった宝珠が全て偽者だと知り、怪我をさせないうちに、さっさと撤収するのだった。