覚醒! 宝貝巨兵! 弐アジア・オセアニア

種類 ショート
担当 姫野里美
芸能 3Lv以上
獣人 フリー
難度 普通
報酬 7.9万円
参加人数 8人
サポート 0人
期間 10/14〜10/18

●本文

●大河の川浚い
 特番で、暫くお休みしていたダークハンター封神録だったが、肝心なものをやっていない事に気付いた。そこで、関係スタッフが集められ、その補完をする事になった。
 ちなみに封神録とゆーのは、主に中華資本で放映されているバラエティ番組である。
「ダメだ。足りないわっ!」
 オープニングその弐。整備班長の白素貞さん‥‥通称白小姐は、設計図を片手に、そううめいている。
「ナにが足りないんですか」
「このままでは、宝貝巨兵が起動しないのよっ!」
 オペレーター役の洋ちゃんに言われて、べしぃっと指差したのは、簡素な目鼻立ちの、針金細工っぽいロボットである。
「あれ、起動するんですかっ!? てっきり子供の工作かと‥‥」
「ええいお黙り。私の理論は完璧なのよっ! 後は、あれさえあれば‥‥」
 そう言って、悔しそうに巨兵を見つめる白小姐。その目線が、ちょうど股間の位置になってしまっている事に、カメラも本人も気付いていない。
「あれってなんです」
「エネルギー変換用オーパーツ」
 さらっと恐ろしい事を口にする白小姐。
「はいぃっ!? そんなもの、どこにあるんですかっ!」
「えぇと、確か黄河の河口付近に、セットしておいた筈なんだけど‥‥」
 画面の隅に「仕込み?」とか言うテロップが踊った。
「それがさー、台風でやられちゃって、どっか行っちゃったのよねぇー。悪いけど、見つけてきて。お願い☆」
 どこで覚えてきたのか、顔の前で手を組み合わせ、首を傾げておねだりする小白姐だった。
「そんなわけで、我らが探すは、この辺りに流された大地の宝珠だ!」
「って、広いんですけどっ!!」
 芸人達が文句を言うのも当然で、連れてこられた目の前には、海と見まごう大河が広がっていた。
「何か手がかり無いんですか?」
「基本的に、大地のパワーを吸収して変換するものだから、ソレに関わる場所かなんかにあると思う。河を抑える都合上、どこかの村に祭られている可能性が高い。なお、写真はこれだ」
 差し出された写真には、琥珀色の直径50cmほどの珠が映っていた。確かにこれなら、既に拾われている可能性が高そうだ。ちなみに、陰陽術では、土は地を意味し、東西南北を繋ぐ中心として位置付けられている。また、水を制御する役割もある為、それを利用されているのかもしれない。
「まずは場所を絞り込む事だ。そんなわけで、皆! お願い☆」
「☆マークつけたって可愛くねぇ!」
 ダークハンター封神録は、生身で戦う物語風バラエティなので、仙人の皆さんがいっしょーけんめー宝珠を探す姿も、余す事無く放映されてしまうのだった。

●今回の参加者

 fa0475 LUCIFEL(21歳・♂・狼)
 fa0917 郭蘭花(23歳・♀・アライグマ)
 fa0922 亀山 綾(18歳・♀・亀)
 fa1163 燐 ブラックフェンリル(15歳・♀・狼)
 fa2002 森里時雨(18歳・♂・狼)
 fa3369 桜 美琴(30歳・♀・猫)
 fa4254 氷桜(25歳・♂・狼)
 fa4622 ミレル・マクスウェル(14歳・♀・リス)

●リプレイ本文

「ラブパワー変換装置とかあれば、無限のエネルギーを与えられるんだがな♪」
 さ〜て、どう動くかな。と行った表情で、周囲を見回し、次いで持ち込んだ宝貝と言う名の装備品を身に付けるLUCIFEL(fa0475)。
「それはいいけど、さっさと探しに行ってくれる? 動かないと、面白くないんだけど」
「えー、こう言うのは、先にカメラさんが‥‥」
 郭蘭花(fa0917)の台詞に、渋る森里時雨(fa2002)。と、亀山 綾(fa0922)が、その後頭部をすぱこんと軽くはたきながら、こう突っ込んだ。
「それは太平洋探検隊の時やろ? せやけど、むやみに探してもなぁ‥‥」
 彼女の言う通り、川の流れはとても速い。と、森里は荷物の中から、サーチペンデュラムを取り出す。
「そう言う時にはこれ! 探索用宝貝! それと、水中用宝貝も用意していたので、探索はばっちりです!」
 軽く言い飛ばす森里。その腰には、すでに大きな浮き輪が装備されている。ついでに海パンも装着済だ。
「と、とにかく。お店広げると大変だから、出来るだけコンパクトにねー」
 ランがそう言ってまとめに入った。おかげで、せっかくデコレーションした森里のスプリングトレノGTAは、ボディに『DH封神録』と番組名を入れるだけに留まっている。
「ふふふ。宝玉が‥‥呼んでいる」
 一方ルシフは、身に着けている黄金の左腕をおさえ、ランのカメラで、ポーズを決めていたり。と、そのランが、ファインダーの向こうで、こう言い出した。
「あれ? ところで何人か足りなくない?」
 ひーふーみーと数えると、居るのはルシフ、ラン、綾、森里の4人。ミレル・マクスウェル(fa4622)と桜 美琴(fa3369)、そして氷桜(fa4254) は既に聞き込みと称して、近所の村へ向かっている連絡が入っているので、残る一人は燐 ブラックフェンリル(fa1163)だけ。が、彼女は天文学的数値をたたき出すほどの方向音痴なので、おそらくここへたどり着く段階で、既に迷子になってしまっているようだ。
「ここはどこかなぁ。おっかしいなぁ」
 その証拠に、彼女はぜーんぜん違う川岸を、きょろきょろと周囲を見回しながら、歩いていた。と、その視界に、なにやら密談をしている二人が映る。怪訝そうに思った燐は、そのまま覗いている事にした。
「では、仕掛けはばっちりなんだね?」
「‥‥は」
 一方のミコはと言えば、まるでヒオを部下のように従え、そう確認していた。言葉少なに頷くヒオ。
「ま、邪仙も仙人だし。文句は言われないわ。ふふっ。これで仕込みは万全だね」
 その手には、とぉっても見覚えのあるアクリルの玉が転がっていたり。まるで悪の女幹部そのもののような笑みを浮かべ、満足そうだ。
「全ては仰せのままに‥‥」
 しかもよく見ると、ヒオの持ったバックが、丸く膨らんでいたり。
「何かすごいもの見ちゃった気がする。早く知らせないとー!」
 あれは絶対裏切るんだぁ! と思った燐、そう言ってくるりと回れ右をする。だが、方向音痴な彼女のこと、やっぱりそのまま迷子になってしまうのだった。

 で、探索中の仙人はと言うと。
「すいませーん。このあたりで、漢のお宝、金の玉、知りませんか?」
 可愛らしく裏声作りながら、笑顔で話しかける森里。
「心当たり有りません? 股間にジャストフィ‥‥うぉわぁぁぁ!」
 で、さらに怪しい台詞を口にしかけて、後ろから綾ちゃんに思いっきりハリセンでドツかれていた。
「な、何をするんですか! 俺は別に金の玉を股間にセット‥‥」
「えぇい、こんド阿呆がああぁ! ひ〜か〜り〜に〜なれぇええぇ!」
 そのままゴールデンハンマーを食らわす綾。ぷすぷすと煙を上げてひっくり返っていた森里は、痙攣しながら、彼女に尋ねる。
「つか、アンタだれ」
「うちか? うちは亀の甲羅の美少女仙人、綾山や!」
 そう言って、尻尾をぴくぴくさせる綾ちゃんは、体のラインが見えるチャイナドレスに身を包み、腰にはハリセンを装備している。ランが煽りで映したその姿は、下着代わりに水着を着用し、グラビアアイドルっぽくポーズを決めていた。
「そないな事はどうでもええ。よい子も見てるのに、そーゆーお下品な事は禁止や。あんまり言うと、河童に売り飛ばすぞ」
「勘弁してください」
 即答する彼。無意識のうちにケツを抑えた森里は、くるっと振り返って、ミリィにこう言った。
「と言うわけで、そこの通りすがりのお嬢さん。何か知りませんかっ」
 緑色のつなぎにぶかぶか帽子と言う、ひと昔前の農婦のよーな姿をした彼女、赤い髪に褐色肌と、どーみても海外向けな顔立ちの女の子である。
「え、えーと。それならこの辺りで引っ掛かってるのを見かけましたよ?」
 彼女が指し示したのは、轟々と音を立てる大河である。顔を引きつらせる森里に対し、彼女はその川岸で、井戸端会議に興じている近所の奥様達を指す。
「さっきあの辺で、お母さん達に聞きましたー」
 しかも、その一人はなんとミコだ。彼女曰く「こう言うところから、情報はもれたりするのよ?」だそうで。
「ちゅうことで。森里はん、任せたで! 名づけて鵜飼い作戦や!」
 どこで調達したのか、ロープを取り出す綾ちゃん。
「よし、私が結んであげましょう」
 それを、ミコが森里の腰にぎゅーっとくくりつけている。
「一応ダウンジング棒を持たせてみる?」
 ミリィがそう言って、折れ曲がった針金を、彼の手に持たせる。
「それは名案やなー。ほな、男なら元気良く行ってみようかいなぁ!」
「って押すなぁぁ!」
 がけの上で、じたばたと抵抗する森里。が、それもそこまでで、ミコはそんな彼を、ハイヒールで思いっきり蹴り飛ばした。
「ぐだぐだ言わないで、沈んできなさいっ!」
「桜さん! うわやめ!」
 川面に落下する森里。がばごぼと沈んでいく彼に、綾ちゃんはこう言う。
「ロープは任せといてナ! 剛力の術を心得た仙人のうちにはこんな激流、小川のせせらぎに等しいで」
「なくても大丈夫だ。対処はしてある」
 ロープを持った彼女がそう言うと、どっちが悪役と聞きたくなりそうな黒一色の格好で、スカルフェイスを装備したヒオが、浮き袋を片手に、そう言った。見れば、すぐ助けられるように、潜水用具がスタンバっている。
 ところが。
「あっ、手が滑った」
 半ばお約束のように、綾ちゃんの手からすっぽ抜けるロープ。そのまま流されていく森里。
「うーん、森里くんは無事の帰還を祈っておくわ」
 にこやかーにその流されていく彼を見送る綾とミコ。が、その直後、くくりつけられていたロープがびぃんっと張った。見れば、森里の体には、もう一本のロープが、いつの間にかくくりつけられていた。
「いや〜ぁ、念のため2本結んどいてほんま良かったわぁ☆」
 そう嘯く綾ちゃん。が、その背後で、カメラのランと、ヒオがため息をつく。
「私が言わなきゃ、そのまま流すつもりだったでしょうに‥‥ねぇ?」
「まったくだ」
 どうやら、安全対策を進言したのはランで、こっそりロープをくくりつけたのは、ヒオらしい。しかし、そんな彼女達の苦労なんぞ、意に介さず、ロープを手繰り寄せ、こう尋ねた。
「どやー、なんかあったかいなぁ?」
「こんな濁った河じゃ、何も見えませんよ! つか俺、何か馬鹿な事言ったんだろか」
 上から下まで泥水でびしょびしょになった森里。が、その様子を見た腐れ女子シスターズは、ひそひそと相談中。
「こう言う自覚ゼロの男に対する制裁は、何が良いでしょうかね」
「そうやなー。向こうの川岸に、見覚えのある河童がいるから、売り飛ばすってのはどうや?」
 綾ちゃんが指し示したのは、対岸できょろきょろと探し物をしているらしい河童さんの姿。合図をすると、すぐさまレジャーボートで乗り込んできた。
「あ、いややめてっ。シリコダマなんて抜かれたくないっ」
「大丈夫だよ。痛いのは最初だけだから☆」
 ロープで縛られたまま渡されて、滝涙をこぼす彼に、そんな事ほざく河童。
「あー、そういえば、その金の玉、直ぐに漁師さんの網に引き上げられて、持っていっちゃいましたけど?」
「よし、探しに行くぞっ」
 それを聞いた森里、今がチャンスとばかりに、するりと河童の腕から逃げ出す。
「ちっ、逃げられたか‥‥」
「うーん、残念。それにしても皆、せっかちねぇ」
 残念そうなのは、河童ばかりではなく、ミコも同様だ。こうして、近所の漁師が見つけたと言う宝珠の場所へ行ってみる彼らだったが。
「やったぁ、まさしく金の玉の宝庫ですねっ」
 ずらりと並んだアクリル製の宝珠、大小取り混ぜ、まるでスイカ畑のように、ごろごろと転がっている。しかも、郷土資料館と称した、せくしぃ博物館に飾り付けられていた。
「って、ランちゃんモザイク処理はっ!」
「彼女なら、今ご飯作ってるよ。向こうのお茶会に頼まれたって」
 で、それにカバーをかけるはずのランは、妖怪側の連中に頼まれて、飲茶を作っているそうだ。と、そこへ鳥の丸焼きを作り上げたランが、美味しそうな匂いを漂わせながら、彼らの元へ料理を運んできた。
「ご飯できたわよー。一緒にどうですかって」
「わぁい、食べるー」
 匂いにつられたミリィ、自分が通りすがりの少女役だと言う事なんぞ、すっかり忘れて、ローストチキンに群がっている。
「俺が切り分けてやるよ」
 で、そこにはまだ何もしてないはずのルシフが、彼女の皿に肉のきれっぱしを乗せてやっている。こうして、時ならぬ小宴会が繰り広げられている中、ミコは。
「まだまだ甘いわね‥‥ふふふ‥‥。皆油断している今がチャンスね。準備は良い?」
 何故か一人集団から離れ、ヒオにそう命じている。
「御心のままに」
 彼女の命令は絶対とばかりに、深く頭を垂れるヒオ。その手には、何故か起爆装置が握られていた。

「あれ? あたし元に戻っちゃった?」
 燐ちゃんの得意技は、天性の方向音痴だ。その為彼女は、さんざん探し回った挙句、元の場所に戻ってしまっていた。
「まぁいいか。宝珠はどーこかなー」
 わくわくとした表情で、クリスタルナイツ(と言う名の眼鏡)を、上げたり下げたりする彼女。と、その視界に、ルシフとヒオの姿が映った。見れば、何か丸いものをいくつか埋め込んでいる。と、ルシフは新しい球を転がしながら、ヒオにこう尋ねていた。
「ん〜、爆発はフェイクにするとしても、突風とかってどうにか起こせないかねぇ」
「いや、普通に爆発物を仕込んでかまわないと思う。飛ぶのは奴だ」
 オペレーター役の洋ちゃんをちらりと見ながら、そう答えるヒオ。ルシフの案では、突風で飛ばされた後、パラシュートを開かせようとしたらしいが、そこは派手に吹っ飛ばす事にしたらしい。
「何してんねん嬢ちゃん」
「わぁっ、びっくりした。いきなり声かけないでよっ」
 そんな彼らの姿を覗き見していた燐、後ろから猿に声をかけられて、飛び上がってしまう。
「ぼーっとしてる方が悪いねん。ほんで、宝珠は見つかったんかいな」
「見つかったとしても、あんたになんか渡すもんですかっ。ぜーったい動くの見てやるんだからー☆」
 お猿の問いに、あっかんべーとやる燐。この後、彼女は妖怪達の争奪戦に巻き込まれ、えらい目を見てしまうのだが、それはまた別の話だ。
「ああ、酷い目にあった。あの猿、絶対許さないんだから‥‥あたっ」
 こきこきと肩をならしながら、ようやく戻ってくる燐。と、その足元に何か大きなものが転がっていて、彼女は思いっきり顔面を強打してしまう。
「もう、何でこんなところに‥‥って、やだこれ、宝珠じゃない」
 目を輝かせる燐ちゃん。急いで掘り起こし、仲間の下へまっしぐら。彼女はそれを、宝貝ロボへとセットする。ところが。
「あっ! それ偽物‥‥」
 ルシフが、まずいと言った表情でそう言った。しかし、時既に遅く、偽の宝珠は、ロボの中へ吸い込まれていく。直後、ういーんと目に赤い光が宿り、ロボはごごごごごご‥‥と、何がきしんでいるのか分からない音を立て始めていた。
「起動しちゃった? えぇい、こうなったら! いっけぇ! 木刀☆スカッドミサイルーッ!!」
 このままだと、何が起きるか分からない。そう判断した燐は、持っていた木刀を、ロボに向かって投げつける。しかしそれは、狙いをはずれ、あろう事か、周囲に山ほど埋められたフェイクの宝珠に突き刺さってしまう。しかもそれは、火薬入りの危険物。直後、ちゅどーんっと盛大な花火が上がっていた。
「えぇい、こうなったら仕方がない。この隙に宝貝巨兵に金の玉を装着し、中華キャノンを発射してください!」
「きっとこれが、真の宝珠へと導いてくれるはずだ!」
 森里とルシフがそう言うや否や、洋ちゃんったら、無理やりカースマスクにファントムを装備させられて、座ったままの宝貝ロボのコクピットに蹴りこまれてしまった。
「えーん。おろしてぇぇぇ」
 何故か肩のあたりで振り回されているミリィ。起動したはずの宝貝巨兵は、でたらめな動きを繰り返している。
「受け止めてあげるから、こっちに!」
「とりあえず、これで動きが止まればっ!」
 燐が助けようとしているのを見て、森里が、俊敏脚足を使ったまま、水面を蹴り上げる。そのぱわふりゃあな蹴り技により、水柱があがり、巨兵の動きが制限された。大きく後ろにつんのめるロボ。そのままひっくり返った巨兵は、偽宝珠の火薬で、盛大に吹っ飛んでしまうのだった。