【NIA】牧場の悪魔南北アメリカ

種類 ショート
担当 姫野里美
芸能 フリー
獣人 4Lv以上
難度 やや難
報酬 20.7万円
参加人数 8人
サポート 0人
期間 11/29〜12/03

●本文

 物語と言うのは、いつもなんでもないような事件から始まる。
 その日、調査の続くヨーロッパから大西洋一つ隔てた南米の牧場で、一つの事件が起きた。とある牧場で、従業員の1人が行方をくらまし、その直後、牧場と隣接する畑に、巨大なモンスターが出現すると言う噂が立ち始めたのだ。
 目撃者曰く、その体はまるで耕運機のようなパワーで、なおかつモグラのように、地面へと潜って行ったそうだ。そして、通行途中にある岩や丸太は、頭についた鍬でほうり投げていたそうである。
 その牧場は、南北アメリカでは、おおよそポピュラーな、五桁のヘクタール数を誇る牧場だ。中では、牛や馬、羊等が放し飼いにされ、中央の高台には、牧場を見渡せるゲストハウスがある。各動物のテリトリー内には、悪天候の際に収容する牧舎があり、放牧地の他、飼料用の畑等がある。今回、その化け物が出没しているのは、その全域のようだ。
 周囲には、粉砕された障害物が残る中、人々の口には、ある一つの伝説が上り始めた。
 それは、この辺りの村々に伝わる化け物の伝説である。その昔、ハロウィンが終わり、クリスマスの準備が始まる頃に、次々と人を襲ったと言う化け物だ。
 人々は、物珍しさも手伝って、次々と牧場を訪れた。そして、その騒ぎは地元のTV局やラジオ局にも伝わった。彼らは事件とばかりに、その牧場へカメラやマイクを向けたのだが‥‥何人か帰ってこない。
 曰く、行方不明になったスタッフは、何人かが同時にいなくなっている。
 出没した牧場は、南米のものらしく、広範囲に及んでいる。車がないと、全てを探すのは無理そう。
 昼間は眠っているのか、目撃回数が少ない。
 近くには、昔の人々が住んでいたと言う遺跡や、古い教会なんかがある。

 これらの報告を聞いたWEAは、一つの判断を下した。
 すなわち‥‥NWだと。

『南米の牧場で、大型のNWが出没しているらしい。今のところ、牧場と隣接する畑がテリトリーだが、力をつければ、街中に出る可能性もある。その前に、どうにかしてほしい』

 各局を通じて、そんな依頼が出されたのは、まもなくの事だった。

●今回の参加者

 fa0892 河辺野・一(20歳・♂・猿)
 fa1522 ゼクスト・リヴァン(17歳・♂・狼)
 fa2386 御影 瞬華(18歳・♂・鴉)
 fa2614 鶸・檜皮(36歳・♂・鷹)
 fa2671 ミゲール・イグレシアス(23歳・♂・熊)
 fa3014 ジョニー・マッスルマン(26歳・♂・一角獣)
 fa4468 御鏡 炬魄(31歳・♂・鷹)
 fa4892 アンリ・ユヴァ(13歳・♀・鷹)

●リプレイ本文

 相談の結果、鶸・檜皮(fa2614)と河辺野・一(fa0892)が連絡組、御影 瞬華(fa2386)、アンリ・ユヴァ(fa4892)、ゼクスト・リヴァン(fa1522)がA班、ミゲール・イグレシアス(fa2671)、ジョニー・マッスルマン(fa3014)、御鏡 炬魄(fa4468)がB班と言う事になった。
「あ、河辺野、サーチペンデュラムを貸してくれ。車でやるから」
 一方の鶸はと言うと、そう言って、必要な物資を、車へと運び込む。高機能双眼鏡を持ち込み、車窓にはスモークシートを貼り付け、うっかり中身が見えないようにしていた。これは、車で完全獣化をして、目的のものを探すためである。
「さて。確か昼に情報収集を行い、夜に探索を行う‥‥だったか」
 一方、御鏡がそう言いながら、車を走らせていた。と、後部座席でふんぞり返っていたジョニーが、相変わらずどこから溢れてくるのかわからない自信をみなぎらせている。
「任せるNE。ミーにかかれば、皆きっと快く話してくれるZE!」
「だとええねんけど。まずはその古い教会に行ってみよか」
 ミゲールがそう言って、目的地を地図に示す。牧場のはずれに立つその教会は、レンガ造りの古びたたたずまいだった。
「アンリ達が聞いてきた話だと、くわもぐを鎮めたのは、ここの教会らしいな」
 そう言う御鏡。メモ代わりの手帳を取り出す。彼も記者を名乗る身。それ相応の成果は為せる様にと、軽く聞き込んで来た内容を記してあるようだ。
「そうやと、牧師か誰かが、何か知ってるかもしれへんな」
「MEが聞いてきてあげるZE。HAHA〜」
 ミゲールがそう言うと、ジョニーがひょいひょい〜と、中へ入り込む。普段は常駐の牧師はいなかったが、裏口に『御用の方は押してください』と書いてあった。
「だそーなんだけど、何時頃? どのような場所で? 何をしていたら出現したのか? 教えて欲しいZE!」
 インターフォンの向こう側に、矢継ぎ早に語りかけるジョニー。相手が戸惑っている様子を見て、御鏡がこう言った。
「落ち着け。物事は順序だてて聞くことが大切だ」
「そうだったNE。それじゃあ、順番に教えてもらうNE」
 ぺしっと額を叩いて反省するジョニー。こうして、順序良く尋ねたところ、だいたい出没するのは夕方以降、主に土の深い場所で、放牧していた牛や馬や羊が帰る頃に、どこからともなく現れると、教えてくれた。
「ハロウィン終わった後にーというと、宗教なら万聖節の後やからという理由は付くけど。NWやから、活動が活発になる時期なんやろな。何か手がかりないんやろか」
 ミゲールがそう言う。御鏡も「情報の出入りが少ないはずの牧場に、現れる事自体不審だしな‥‥」と、そう呟いた。
「どこかに、オーパーツでも潜んでないやろか」
「可能性があるとすれば、そのくわもぐを鎮めた聖書なり聖歌なりだが‥‥」
 彼の案に、御鏡は祭壇へと近づく。キリスト像の置かれた、ごくごく当たり前の祭壇。融けかけた蝋燭の置かれた燭台。
「さすがに、そこまで調べさせては貰えへんやろなぁ‥‥。こんな分かりやすい場所に、あるわけへんやろし」
 挨拶程度に祈った後、燭台をひっくり返すミゲール。しかし、どう見てもごくごく普通の代物だ。
「気を落とす事ないNE! これだけあれば、オーパーツなくても充分だZE! HAHA!」
 唯一の救いは、ジョニーの明るい笑い声だろうか。まぁ、彼の言う通り、『人通りが増える頃に現れる』と言うのは、重要な情報だ。こうして彼らは、それに則り、牛舎へと向かう事にした。
「気張るのはええが、体調を崩してると、いざ出会ったときに大変やで」
「MEは大丈夫だZE」
 そう薦めるミゲールに、大げさな調子で笑い飛ばすジョニー。しかし、運転する御鏡の表情は硬いままだ。
「この嫌な予感が、全ては杞憂であれば良いが‥‥な」
 まだ、遺跡を調べていない。その前に探さなければならないので、手は出せていないが、その胸のうちには、そこはかとない不安だけが積み重なっていたのだった。

 さて、各地で伝説の詳細を手に入れたアンリ達のチームは、それに基づき、手分けして張り込み兼捜索を行っていた。
「あふ‥‥。そろそろ時間ですかねぇ」
 昼間、何が起きても支障がないよう、先に仮眠を取っていた御影が、あくび交じりにそう言いながら、起きてくる。
「お疲れ様です。あ、そうです。眠気覚ましに飴などどうですか?」
 そう言ってアンリが、赤い飴玉を差し出した。見ると、パッケージに『暴君キャンディ』なる文字が躍り、凶悪な面構えの唐辛子が、地獄の愛嬌を振りまいていた。
「‥‥遠慮しておきます」
「そうですか? 美味しいですよ」
 御影が断ると、ぽいっとそれを口の中に入れるアンリ。外側は普通の飴だが、中には激辛ハバネロソースが入っているそれに、彼女はかけらも顔色を変えない。
「よく平気ですね‥‥」
「何か不思議な事でも? あ、体力温存の為に、車内では寝かせてもらいますんで」
 普通、そんなもの食べたら、眠れなくなってしまいそうなもんだが、彼女はいっこう気にせず、助手席で目を閉じている。
「ゼクストさんは後ろでお願いします。私は獣化後が獣化後なんで、これつけさせてもらいますね」
 御影がそう言って、ぐるぐる眼鏡を装着する。確かに、いかに人気の少ない牧場とは言え、黒翼の女性が運転していたら、悪魔の使いと間違われそうだ。
「しかし、広大な牧場‥‥ですね。全く、探すのには骨が折れそうです」
 ため息をつきながら、車を走らせる御影。その傍らには、ゼクストが手に入れてきた地図がある。かかっているBGMがなければ、眠ってしまいそうだ。
「ふぁぁぁ、よく寝たぁ」
 しばらく走らせていると、アンリが目を覚ました。
「そろそろ日暮れですけど、どうします?」
「起きますよ。確か、目撃されたのはこの辺りだって言ってましたし」
 ごそごそと、ダッシュボードに置かれた地図を手にするアンリ。聞いてきたところによると、NWは、地中をモグラのように進み、人の居るところに現れるそうな。
「だとしたら、ちょっとやってみたい事があるんですけど‥‥いいですかね?」
 御影がそう尋ねると、「かまわないですよ」と頷くアンリ。OKを出された彼はと言うと、それまで掛かっていたラジオのボリュームを最大値まで上げる。
「うわっ、うるさっ」
「いやー、話を聞くと、騒がしい方に来るみたいですから、おびき寄せられるかなぁって」
 後部座席で寝ていたゼクストが飛び起きる。その理由を告げる御影。地中を主な棲家とするのなら、地上の音や振動に、呼び寄せられるのではないかと思ったそうだ。
「おや、ビンゴ」
 鋭敏視覚で夜目と視界を凝らし、耳を傾けていたアンリに、地面を掘り進む耕運機のような音が聞こえてきた。見れば、地面が少し盛り上がっている。
「ラジオにひきつけられたみたいですね‥‥」
「これで何とかひきつける!」
 ゼクストが、アウトドアナイフを取り出し、御影が車を走らせる。その間に、アンリは「了解です!」と答えて、ゲストハウスに連絡を取る。
「どうやらアンリ達の班が、遭遇してるらしいな。急いで連絡してくれ!」
 目的のくわもぐが姿を見せたらしい。車を走らせる中、河辺野は急いで他の面々に、知友心話で呼びかけるのだった。

 それはモグラの体躯に、クワガタの頭をつけたようなNWだった。しかも、何故か尻尾が2本もある。
「えぇいっ!」
 アンリが先制攻撃とばかりに、全力の破雷光撃を放つ。結構なダメージを食らったNWは、お返しとばかりに、頭をふり回す。
「つかまった!?」
 避けきれず、捕らえられるアンリ。彼女の体力では、その牙を引き剥がすことが出来ない。
「離しなさいっ」
 半獣化した御影、持っていたエア・スティーラーを、ぶっ放した。AT拳銃の弾は、狙い違わずその身に命中するものの、かすり傷程度しか与えられない。
「うわっ! ととっ!」
 その間に半獣化したゼクストが、アウトドアナイフを片手に、NWへとパンチをお見舞いする。が、これもまたかすり傷。その間に、NWは彼をじろりとにらみつけると、頭に挟んでいたアンリを、狙い定めるかのように彼の方へと向けた。
「いってぇ。どうやら、完全獣化しないと、まずそうだな」
 受け止めきれず、下敷きになってしまうゼクスト。ぶつかった場所が、ずきずきと痛むが、骨には異常がなさそうだ。一週間もすれば治るレベルである。
「うかつに近寄れませんね。空、行っておきます」
「その方が良いと思います。羽はないみたいですから」
 翼を広げるアンリに、御影がそう言った。見る限り、背中は硬い甲殻で覆われている。空へ飛ぶような機能はついていないらしい。
「待たせたな! 加勢するぜ!」
 車で駆けつけた鶸が、そう言ってCoolガバメントMk�Wを打ち込む。人間ならば、一発で吹っ飛ばす事の出来る威力の高い拳銃は、NWの分厚い甲殻さえ打ち抜いてしまう。
「トランクに、銃火器があります! 使って下さい!」
 その間に、河辺野がトランクを開く。しかし、取りに行く暇はなさそうだ。仕方なく彼は、反転して半獣化する。
「気をつけてください。あの鍬、つまんで投げてくるんです!」
「なるほど。近づかない方が良さそうですね‥‥」
 正直、体力に自信はあるが、体の動きはゼクストほど鋭くない。
「だったら近づかなければ良いことだ」
 翼で空中へと舞い上がった鶸が、空からガバメントを撃ち込む。
「鍬は任せました! 腕狙います!」
「おうっ」
 逃げられては困る。そう思った河辺野は、鶸が撃っている間に、飛石礫弾を食らわせる。しかし、当たりはしたものの、狙いは外れ、かすり傷を負わせるに留まっていた。
「奴さん、お出ましのようだ。急ぐぞ!」
 その頃、御鏡は必死になって車を飛ばしていた。当てが外れたのが悔やまれる。
「今のうちに獣化しとくで。何かあったら誤魔化し任せた!」
 その間に、全身熊へと獣化するミゲール。新聞に投稿されそうだが、それは記者の御鏡にもみ消してもらおう。
「見つけたYO! あれがそうね!」
 視界の中に、黒光りする巨体と格闘している獣人達を見つけ、車に箱乗りするジョニー。その手には、大型の猛獣も一撃で重傷に追い込む、大口径のリボルバー‥‥Maguna2944マグナム。
「SHOOOOOOOT!!」
 闇に響く銃声。狙いへったくれもあったもんじゃないそれは、明後日の方向へそれてしまったのだが。
「こっちきた!」
 NWは、その一発に怒りを煽られたようで、彼らの方へと移動してくる。もこもこと土煙を上げる様は、まるで重戦車だ。
「HAHA〜! あとは頑張って仕留めてくれ! MEは応援してるZE!」
 まるでひいきのチームを応援するファンのように、大声を上げるジョニー。
「御鏡はん、動き止めるで!」
「挟み撃ちにするわけだな‥‥。地に潜る敵と、空を飛ぶ俺。相性は悪くない‥‥」
 その間に翼を広げ、そのまま空中へと上がる御鏡。その手には、刈り取るモノと銘打たれる巨大な鎌が握られていた。
「逃がすか」
 ヴぃんっと空気を振るわせる音を立てて、鎌が振り下ろされる。ダークマントを翻し、打ち込んだそれは、甲殻の厚さを超えて、尻尾を切り落としていた。
「よぉし、これで後ろは安全やな! 押さえ込むで!」
 そこへ、ミゲールが爪を振り下ろす。鎌と遜色ない攻撃力を持つその一撃で、NWの表皮にひびが入った。たまらず、逃げ出そうとするNW、地面を掘り返し始めたそれに、ミゲールが立ちふさがる。
「潜らせてたまるかいな〜!」
 めきょりと盛り上がる筋肉。NW。止められるどころか、逆に地面から引きずり出されてしまう。がっちりと爪を食い込ませたミゲール、NWがいくら足をばたつかせても、びくともしない。
「ナンバープレートは見せないでくださいよ! もぐりこまれたら厄介です!」
「その前に仕留めるっ!」
 河辺野が、逃走させないように、ナンバープレートに布をかぶせた。その間に、鶸がコアに向かって飛羽針撃を放つ。明らかな弱点であるそこに、鋭い羽が深々と突き刺さり、大きくヒビを入れた。
「‥‥プレゼントだ。受け取れ」
 そこへ、高速飛翔で肉薄した御鏡が、至近距離から破雷光撃を打ち込む。
「――闇を、喰らいなさい」
 と、同時に御影も全力で虚闇撃弾を打ち込んでいた。雷のパワーと、負のエネルギーを同時に打ち込まれたNWは、コアを破壊されるより先に、その体躯をどうっと横たえている。なんとかか仕留められたようだ。
「HEY、怪我した子はいないかい? まだまだ終わりそうにないから、遠慮なく言ってくれ」
 ホット胸をなでおろし、力を使い切った中には、その場にへたり込む者もいる。そこへ、ジョニーが爽やかに歯をきらめかせながら、治療して回っていた。
「なにしとん?」
「記事には出来ないからな。せめて記録だけでも取って、WEAにでも送りつけてやるさ」
 そんな中、倒れたNWを写真に取る御鏡。こうして、倒されたNWは、WEAに引き取られ、データベースへと放り込まれるのだった。