【NiA】音ゲーONLアジア・オセアニア

種類 ショート
担当 姫野里美
芸能 3Lv以上
獣人 3Lv以上
難度 やや難
報酬 8.2万円
参加人数 8人
サポート 0人
期間 11/29〜12/03

●本文

 現代社会と言うのは、おおよそ情報の溢れる土地柄である。その際たるものは、やはり電気機器の溢れる場所であろう。そして、その電気機器の溢れる場所で、ある事件が起きた。
「なぁ? 知ってる? 奴が帰ってきてるんだってさ」
「え、あいつ‥‥15年も前に引退宣言して、今はゲームの営業部長やってるって聞いたけど‥‥」
 東京‥‥秋葉原。平日昼間からゲームセンターに集う者達の間でささやかれる『噂』があった。かつて、伝説となった名うてのゲーマーが、いつの間にか現場に戻ってきていると言うのだ。
「けど俺‥‥一週間通い詰めだけど、見た事ないぜ?」
「オンラインゲームだから、会社から参戦してんのかもな」
 しかし、その姿は誰も見た事がない。と言うのも、今回舞台になっているそこは、オンラインで全国のゲーマーとセッションを行うと言ういわゆる『音ゲー』で、一人一人ブースに入り、ステージの一員になりきって演奏すると言う代物だ。オンラインのそれは、個人情報に配慮してか、名前と場所しか表示されず、男か女か、年齢さえ分からない状態だ。
 それだけなら、ただの趣味人の噂で通っただろう。しかし、その噂が立ち上ってから数日後、犠牲者が出た。しかも、同時に複数‥‥である。
「で、うちに白羽の矢が立ったと」
 所変わって、ここはLH柏木。電話口でそう話すマスターに、WEAの使いらしいヒメはこう話した。
『だって、どう見たってNWだもの。アンタのところの連中なら、ある程度実力あって、戦闘できる子いるでしょ。おびき出すのに、音ゲー勝負とか銘打てるだろうし。何しろ、何故か同時進行されてるから、やみくもに探しても引っかからないのよ』
 どうやら、音ゲーと言う事で、楽器の演奏出来て、戦闘も出来る面々を集めたいようだ。ヒメ曰く、噂は秋葉原に集中しているようだ。つまり、秋葉原のゲームセンターのどこかに、奴は潜んでいると言って良いだろう。それを探したいようだ。なお、かの地では、有名どころのゲーセンは、全部で5箇所。そのうち二箇所が、大型店舗だそうである。
『方法は任せるわ。ただ、なんか一ひねりしないと、多分出てこないから、気をつけて』
「‥‥わかった」
 そう言って電話を切るマスター。伝説のゲーマー、同時進行する事件。解決するのは、結構難しそうだ。

『秋葉原に出向いて、音ゲーで伝説のゲーマーを追い詰め、NWを引っ張り出して倒してくれ』

 それでも、マスターは常連達に、その事を話すのだった。

●今回の参加者

 fa0142 氷咲 華唯(15歳・♂・猫)
 fa0441 篠田裕貴(29歳・♂・竜)
 fa0745 ミーア・ステンシル(18歳・♀・小鳥)
 fa3158 鶴舞千早(20歳・♀・蝙蝠)
 fa3622 DarkUnicorn(16歳・♀・一角獣)
 fa3672 美笑(16歳・♀・竜)
 fa5113 豊田せりか(16歳・♀・犬)
 fa5167 悠闇・ワルプルギス(22歳・♀・蝙蝠)

●リプレイ本文

「えーん。この手のゲーマーは、新曲に弱いはずだから、協力してもらおうと思ったのにー」
 テーブルに突っ伏して、ぶつぶつとこぼしている美笑(fa3672)。自分もそうだから‥‥と言う理由で、メーカー側の協力を仰ごうとした彼女だったのだが、断られてしまった。
「仕方ないだろ。お前の計画じゃ、予算かかりすぎだし」
「良い案だと思ったのになぁ‥‥」
 柏木博之(fz1014)に言われ、肩を落とす彼女。HPの変更はともかく、筐体に告知流して、ポスター貼ってってのは、今からじゃ無理だとの事だ。
「そのうち、なんかやってくれるさ。あ、マスター、本業の手配よろしく」
 励ました篠田裕貴(fa0441)、そう釘をさしている。本業の仕事で来てみたかったのだが、こんな事に巻き込まれるとは思わなかったそうで、顔には苦笑がはりついていた。
「安心しろ。わざわざ言わなくても、年末には仕事がてんこもりだ」
 一方のマスターは、そう言ってスケジュール表を見せてくれる。そこには、練習を含めてびっしりと予定が書き込まれていた。
「しかし‥‥、メーカーの協力が得られないとなると、あとは自分達で調べるしかないわねぇ」
 悠闇・ワルプルギス(fa5167)が店にしつらえられたパソコンを片手に、頭を抱えている。それなりに情報を集めてみたが、せいぜい『どこそこにいた』と言う噂を集めるのが精一杯だ。
「そいつの人相とか、確かめたかったんだけどね」
「WEAの者に問い合わせたら、どうにか調達できんかのう? マスター」
 DarkUnicorn(fa3622)に言われて、肩をすくめるマスター。仕方なく彼女は、プリントアウトした地図に、噂になっているゲームセンターの場所を書き込む。
「せめて、死因や外傷を知りたいんだけど‥‥」
「それだったら、データベースに調書が残ってるだろう。それで充分だと思うぞ」
 悠闇がそう申し出ると、マスターはWEAの情報センターに、事件の写真が載っているかもしれないと教えてくれた。「それもそうね」と頷いた彼女は、早速アクセスしてみる。
「これでずいぶん書き込んだし、大丈夫かな」
 その過程で、あちこちのゲーム用掲示板に、オフ会の告知などと称して、仲間の事を書き込んでいた彼女。やや挑戦的な文章で書かれたそれは、物見高いゲーマーによって、数個のレスがついていた。
 こうして、根回しの済んだ彼らは、翌日数人のグループにわかれて、ゲームセンターへと向かった。
「さて、ギターの奴があると良いんだが‥‥」
 氷咲 華唯(fa0142)がそう言って、周囲を見回す。他の連中と別れてゲーセンへと訪れた彼。本物のギターは得意中の得意だが、こういったゲームは初めてなので、合流する前に多少慣れておきたいと考えたようだ。
 お、あれだな‥‥と、ケイは思った。何人かが群がっている筐体へと向かった。半獣化を隠す為、また芸能人だとバレない為に、帽子にコート、手袋にめがねといういでたちの彼、その群がっている後ろに回る。
「ギターはケイに張り付かせておこう。その間に、戦場の確保をしておかなくちゃね」
 その様子を、やや離れた場所から見守っていた悠闇がそう言う。しかし、今、自分達がいるのは、大型店舗の方。表も裏も、人通りはかなり多い。
「なかなかないものねぇ‥‥」
「どこも人でいっぱいです」
 困ったように答えるミーア・ステンシル(fa0745)。一通り回ってみたが、目に付かない場所と言うのは、なかなかなさそうだ。いや、あるにはあったが、ゲーセンから離れており、さらにそこに行くまでに、人通りの多い場所を通らなければならないようだった。
「そうだ。ミーアちゃん、ちょっと協力してくれる?」
「え? いいけど‥‥」
 みえみんがある提案を打ち出す。こしょこしょと耳打ちし、ヒノトにも連絡するよう告げるのだった。
 さて、その頃、残りの面々はと言うと。
「うーん。結構な人数がいるねぇ。今回は、戦闘要員に徹した方が良いかな」
 黒尽くめの服に、蒼のカラーコンタクトを装着した裕貴が、群がるゲーマー達を遠巻きにしながら、そう言っていた。
「昔ほどじゃないけど、まだ根強い人気だよね〜」
「何かべたな展開だけど、凄いことになりそうだね〜」
 流された噂のせいか、結構な人だかりである。それを見て、豊田せりか(fa5113)と鶴舞千早(fa3158)は、のほほんと口にする。
「練習したいんだけど、結構人が居て、難しいかなぁ。グッズは持ってきたのに」
 動きやすい服装で、タオルとスポーツドリンクを持ち込んだ千早、ダンスゲームの筐体を見て、そういった。暖房の効いた店内は、少し動けば、そのまま倒れてしまいそうな気温だ。
 と、そこへ。
「秋葉原の皆さーん。イベントですよー」
 近くの100円均一で手に入れてきたメガホン片手に、そう触れ回っているみえみんがいる。後ろからは、コートにタンクトップとホットパンツと言ういでたちのミーアが、三つ編み眼鏡で愛嬌をふりまき、そして半獣化をごまかす為に、メイド服で上から下まで固めたヒノトが、急遽作ったらしいチラシをばら撒いている。
「わー。メイドさんだ〜」
 変装と言うよりは、いつもの通り、トレーナーにGパン、運動靴、それに大き目の帽子と言ったいでたちで、めがねをかけたせりか、そのふりひらのヒノトに、興味深そうに近づいていく。それを見たヒノト、チャンスとばかりに、こう指示をした。
「希望的展開は、チラシの裏に書いておいたのじゃ。ぬし達の仕事は、スコアとランキングを上げる事じゃ。頼んだぞぇ」
 チラシをひっくり返すと、そこには顔文字を多用した文体で、チャート表が書いてあった。
「しかし‥‥これだけあると、何のゲームをしたらいいか、わからないねぇ」
「種類、いっぱいあるからねぇ」
 そうは言われたものの、ざっと見回しただけで、数種類の筐体がある。悩む千早だったが、とりあえずは基本と言う事で、ダンスゲームをチョイスする事にした。せりかも、音楽そのものはからきしなので、少しでも勝率の上がりそうなダンスゲームに決めている。
 頑張ってハイスコアをたたき出そうとする千早とせりかだったが、反射神経はともかく、踊りはそれほど得意じゃないので、ハイスコアと言うのには、まだ少し遠い。
「むうっ。このままでは、奴の食指が動くほどのスコアがたたき出せぬ‥‥」
 この仕事は、それをたたき出すのが絶対的前提条件だ。しかし、彼女達にはやはり荷が重過ぎるようで。
「私達もやってみようよ」
 そう言って、ミーアを誘うみえみん。自分の曲をねじ込むのには失敗したが、曲そのものは関わった事があるし、秋葉原と言う場所の都合上、ミーアの関わった曲もあるはずだと思って。
「楽器はどうしよう‥‥」
 相談の結果、みえみんがキーボードを、ミーアがドラムを担当する事になった。
「あーあ、三つ編み取れちゃったねー」
「しょうがないじゃない。あっちの方が上手に出来るんだし」
 休憩中の千早とせりかが言う通り、ミーアさんってば、半獣化の余波で、リボンが取れて、元の状態に戻ってしまっている。いや、そればかりではないかもしれんが。
 しかし、そのおかげで、なんとかランキングの上位まで持っていくことが出来た。しかし、まだギャラリーが出来る程度。伝説のゲーマーを呼び出すほどのハイスコア‥‥と言うには、完全獣化の必要がありそうだった。
「仕方ねぇなぁ‥‥」
 そこへ、今までギターゲーで練習に励んでいたケイが、割って入ってくる。
「‥‥どきな。俺がどうにかする」
 そう言って、ギターゲーにクレジットを投入する彼。既に帽子の中では半獣化済みだ。そして、メンバーの中では一番楽器を引くのも演奏するのも得意だ。伊達にライブハウスに通いつめているわけじゃない。後は、その技量がランキングに繁栄されるのを待つばかりだ。
「後は、こっちのゲームに上手く食いついてくれるのを待つだけ‥‥」
 ケイが、ボーナスステージの選曲に入った直後、『チャレンジャー』の文字が、画面に表示される。
「来たようじゃのう」
 あらかじめ調べておいた名前が表示されたのを見て、ギャラリーに紛れていたヒノトは、にんまりと笑い、戦闘組の面々へと知らせるべく、携帯電話を手に取った。
「そうか。ならばすぐにこちらにくるな。わかった。迎撃準備を整えておく」
 連絡を受けた悠闇は、そう言って電話を切ると、再び別のボタンを押した。すぐさま繋がった先は、別の場所で待機している裕貴のものだ。
 勝負は、ケイの勝利に終わった。が、それ故に連コインと言うわけには行かず、彼はゲームが終わると、そそくさとその場を立ち去っていた。行き先は、ゲーセンから少し離れた大きなビルの地下駐車場だ。
「ねぇねぇ、さっきの勝負、惜しかったねー」
 後ろの方で、ミーアの良く通る声がする。どうやら、追いついてきたようだ。
「私ももっと上手くなりたいんだけど、駅の近くに練習できそうなゲーセンがあるんだ。一緒に行かない?」
 言葉巧みにそう言って、ケイの行こうとしている方向へと誘導しようとしている彼女。喫茶店横の駐車場は、夜ともなれば人通りも遠のき、まるでゴーストタウンの様な表情となる。
「上手く行くと良いなー」
「きっと大丈夫よ。地下で待ってましょう」
 せりかも千早と共に、別の入り口から、地下駐車場へと降りていく。
「来たな。ここは俺達でどうにかする。前に出るなよ」
 既に半獣化した裕貴が、そう言って、向かい側から歩いてくるケイに合図をした。いつもなら半獣化をするものだが、今回はすぐ上を人が歩いている。油断は禁物だった。
 そして、その直後。
「ここなら、話もしやすく‥‥って、いないっ?」
 ミーアが振り返ると、そこには誰も居なかった。きょろきょろと周囲を見回す彼女にせまる影一つ‥‥。
「あ! さっきおもちゃ屋さんにあったでっかいロボットと同じ奴!」
 せりかが現れたそいつを見て、そう声を上げる。そこには、グリーンカラーを持つ、一回り大きな人間型のNWが、今にもミーアに襲いかかろうとしていた。
「危ないッ」
 走り出したせりか、そう叫ぶと、持ち前の身軽さを生かして、ミーアを抱えてその場に転がる。振り下ろされた腕は、まるで斧を壁にぶち当てたかのような、重々しい音を立てていた。
「ミーア、そのまま下がれ!」
 離れた位置から、裕貴が火炎砲弾を打ち込む。暗い駐車場内を照らすそれは、場内の火災報知器に引っかかり、けたたましい音を発生させる。
「まずいな‥‥」
 音を聞きつけて、集まってくる係員。そこへ、みえみんが割り込んで、頭を下げる。
「ごめんなさい。撮影なんです! イベントなんですっ!」
「よし、今のうちに、奥まで引っ張るぞ!」
 彼女が取り繕っている間、悠闇は駐車場の奥へと走り出した。他の面々も一緒である。
「ミーアは大丈夫だよ。自分の身は、自分で守れるし!」
 遠距離が使えない‥‥と悟る裕貴の前で、ミーアはそう言うと空圧風弾を相手へとぶつける。それを避け、彼らの方へと歩いてくる緑のNW。
「こっち来ないでってば!」
 千早が、虚闇撃弾を、けん制代わりにぶつけていた。方向を変えた緑NWをかく乱するかのように、反対側へと逃げるせりか。
「良い子ね。そのまま時間稼ぎに徹するわよ。揃ったら仕掛けるから」
「そんな余裕ないかもーー」
 悠闇が、特殊警棒を片手に、虚闇撃弾で誘導する。が、せりかは逃げ惑うだけで精一杯だ。
「えぇいっ、これでも食らえっ!」
 そこへ、少し離れた場所から、ミーアが空圧風弾を撃ち込んだ。その間に、戦線を離脱したせりかは、裕貴の後ろへと避難する。
「お嬢ちゃん、隠れてな。いくぜ!」
 彼が手にした棒に意思を込めると、その端から伸びた光が、刃となった。
「食らえっ!」
 光の刃を、装甲へと叩きつける彼。アニメなんかと違い、ざしゅりと肉をえぐる音がする。しかし、直後大きく吹き飛ばされていた。
「お待たせなのじゃ!」
 体制を整えようとした裕貴の横を、走り抜けていくヒノト。その手にしていた、仕込み日傘と特殊警棒が、交互に当てられる。いや、ついでに角もだ。
「よし。合流したわね。一気に蹴散らしましょ! コアを探して!」
 悠闇が、そう指示を飛ばした。裕貴の鋭い視界が、赤く輝く目のようなものを捕らえる。怪物めいたそれを見て、彼はこう叫んだ。
「おそらくあのサイクロプス・アイがコアだ!」
「心得たのじゃ!」
 すっ飛んでいくヒノト。俊敏脚足でもって近づくと、手にした三本の武器を、コアへと突き立てようとする。
「外れちゃったわね‥‥。ヒノト、あなたの速さでは無理だわ!」
「くー!」
 速さが、倍ほどにも足りていない。もちろん、自分も。そう見極めた彼女、悔しそうにするヒノトを下がらせる。
「俺がやる。お前らは、あいつを足止めしておいてくれ!」
「仕方ないのう。囮になってくれようぞ!」
 裕貴の指示に、彼女は手を変えた。悠闇も同じ。人目を考えれば、二人とも翼は使えない。地面から、けん制するしかなかった。
「これでも食らいやがれ!」
 そこへ、裕貴がライトバスターを横薙ぎに払う。それは動きの鈍った緑NWのコアをかすめ、ひびを入れさせていた。
 不利を悟ったか、撤収していく緑NW。追いかけようにも、出入り口には、係員とみえみんが押し問答をしていて、追いかけようが無い。その間に、緑NWは、姿を消してしまうのだった。
 ただ、かなりダメージを負った為か、その後二度とゲーマーの噂を聞くことはなかったと言う‥‥。