【金いい】社長が来た!アジア・オセアニア

種類 ショート
担当 姫野里美
芸能 フリー
獣人 フリー
難度 普通
報酬 0.8万円
参加人数 10人
サポート 0人
期間 12/04〜12/08

●本文

 さて、あっちこっちでシリアスな事件が頻発している今日この頃だが、ここオフィスPでも、重大な事件が起きていた。
「太平洋‥‥。実は‥‥隠していたことがある」
 ずずずぃっと詰め寄る藤田D。近すぎる顔に、洋ちゃんが後ずさりしながら、じと目で答える。
「いつもじゃないですか。一体今度はなんです?」
 ろくな事をしでかさないディレクターに、ちくりとそう言う洋ちゃんだったが、藤やんはひとことこう言った。
「‥‥‥‥鈴本が帰ってくるんだ。五日後に」
「しゃ、社長がっ!?」
 名前を聞いて、顔を引きつらせる洋ちゃん。
「うむっ。これを見ろ」
 携帯メールを見せびらかす彼。そこには『五日後に家帰るからヨロシク♪』と、顔文字付きで綴られている。
 視聴者は考えた事がなかっただろうか。これだけ無茶をやらかすプロダクションの、社長は何をやっとんじゃ‥‥と。
「あの男‥‥とうとう映画修行から帰ってくるらしいぞ」
 それこそが鈴本氏である。諸事情により、海外で映画制作のノウハウを学んでいたのだが、その留学を終えて、北海道に帰ってくるそうだ。
「ツー事は‥‥歓迎会をやらなきゃいけませんね‥‥」
「うむ。盛大な歓迎会を考えねばなるまい‥‥」
 にやり‥‥と、共犯の笑みを浮かべる二人。こうして数日後、芸能人達にこんな通達が送られていた。

『社長が帰ってくるので、【盛大な歓迎会】を企画してください。酔っ払いのやることなので、どんなに【激しい】歓迎会になっても、無礼講とします』

 まぁ、金いいメンバーが考える事なので、ロクな事にならないのは、確かなようである。

 だが、その頃。成田では‥‥。
「ふふふふ。そんな事は、はなっからお見通しだ。藤田の奴め‥‥。俺の目を誤魔化せると思うなよ‥‥」
 そう簡単には引っかかる器じゃないオフィスP社長・鈴本氏。悪巧みをしているはずの事務所に、さぁっさと手を回してしまう。

『社長命令だ。藤田に色々言われてるだろうが、従う必要はない。奴をやり込めたいバカは、この指止まりやがれ』

 どうやら、歓迎会に乗じてネタ企画をやろうとする藤田Dに対抗して、鈴本氏の方でも、何かやろうとしているようだ。
 目には目を、歯に歯を、そしてネタにはネタを‥‥と言う奴である。

 ところが。

『『『えーーー! 酒屋のトラックが、化け物に襲われて、行方不明ー!?』』』

 市内の某酒蔵から直送するはずだった日本酒運搬トラックが、途中の高速道路で襲撃されて、そのまま行方をくらましたと言うのだ。
 どうやら、飲み会やるにしても、一筋縄ではいかないようである。

●今回の参加者

 fa0475 LUCIFEL(21歳・♂・狼)
 fa0922 亀山 綾(18歳・♀・亀)
 fa2340 河田 柾也(28歳・♂・熊)
 fa2341 桐尾 人志(25歳・♂・トカゲ)
 fa2361 中松百合子(33歳・♀・アライグマ)
 fa3072 草壁 蛍(25歳・♀・狐)
 fa3306 武越ゆか(16歳・♀・兎)
 fa3503 Zebra(28歳・♂・パンダ)
 fa4035 尚武(20歳・♂・牛)
 fa4361 百鬼 レイ(16歳・♂・蛇)

●リプレイ本文

 そんなわけで、芸人達は、草壁 蛍(fa3072)のスポーツカーで、酒‥‥いや、トラックを追いかけていた。
「ほらほら、ちゃんと運転するっ。じゃないと、またゆかの同人誌送り込むわよ!」
「そ、それだけはご勘弁をっっ! アレはもう嫌です!」
 運転手の洋ちゃんを、模造刀でぎりぎりと締め上げる蛍さん。と、原因の武越ゆか(fa3306)は窓の外を指差し、のほほんとこう言った。
「料金所で聞いたら、すごいスピードで、ここ走ってたそうなんで、意外と近所に潜伏している予感がします。ほら、ああいう人も居るし」
「待ってぇぇぇぇぇ!!!」
 死にそうな形相で、Zebra(fa3503)が自転車で追いかけてくる。彼は、追走しながらこう呟いた。
「しかし、発信機でもついてない限りまず見つからないと思うんだけど、なぜか今回は見つかるような気がするなぁ」
 その直後、周囲をぶっちぎって暴走中の配送トラックの姿が見えた。まるで捕まえてごらんなさぁい! とばかりに、通過していくトラック。それを見て、蛍はこう判断した。
「様子が変だな。やっぱりNWが潜伏済みか‥‥」
「ふふん。こんな事もあろうかと、こういうものを用意してみたんですけどー」
 ゆかがそれを見て、ごそごそとダッシュボードの中から、オレンジの回転ランプを取り出す。
「って、それは犯罪なのでわっ!?」
「大丈夫っ。赤じゃないし! 撮影用だし! 謝るの藤田さんだし! ゆか、一緒に謝るの‥‥応援するからっ♪」
 真っ青な顔をする洋ちゃんに対して、ゆかはそう言うと、さっさと車の天井に取り付けてしまった。
「そう言うわけだから、飛ばせ! 太平洋!」
 蛍さんに逆らうと後が怖いので、洋ちゃんは泣く泣くアクセルを踏み込む。
「よぉし。食らいなさいっ」
 併走したその運転席へ、狂月幻覚を食らわせる蛍さん。即座に減速するトラック。そこへチャリのゼブが歩道から覗き込むと、運転手が鼻の下を伸ばしてにやけた顔のまま、ひっくり返っていた。
「蛍さん、何見せたんですか?」
「トウテツに18禁な目に合わされる幻覚」
 いわゆる触手でお楽しみとゆー奴である。が、その瞬間、むくむくと本人から触手が生えた。
「むむっ、このままではいかんでごわす!」
 あわてて尚武(fa4035)がその姿を牛さんに変え、まるで闘牛のように、頭を下げ、角へとそのパゥワァを集約し始める。
「援護するぜー」
 そこへ、ライトバスターを持ったLUCIFEL(fa0475)が、ZXP400で走りこんできた。しかし、傍から見れば、棒を持って暴れているようにしか見えない。
「頑張れー」
 頭を抱える洋ちゃんの横で、ゆかはやっぱり応援に精を出しているのであった。

 んで。
「おかえりー。お酒、調達できた?」
「もちろんです。この俺にかかれば、NWなんぞちょちょちょいの‥‥」
 衣装を持ってきた中松百合子(fa2361)が、食材を片手にそう尋ねると、ルシフが早速薔薇を片手にそうささやく。
「あー、そうだ。これ、差し入れ。ようやっと鈴本社長こと、ミスターが帰ってくるから、お祝いね☆」
 その彼女が差し出したのは、吟醸酒一升瓶が2本。蛍がタダで貰ってきた一升瓶とあわせると、軽く樽一個分だ。
「暫く日本を離れていたから、帰ってきたって実感がわく宴会にできるかしら。社長は今、成田?」
「ああ。そろそろ千歳に着く頃だろう。今、コーダが迎えに行ってる」
 藤やんがそう言った。もう上陸していると知り、彼女は残念そうに顔をしかめている。
「せっかくミスターと藤田Dとチーム分けして、沖縄スタートで対決しながら北上すれば、更に悲惨‥‥もとい、面白い映像が撮れそうと思ったのに」
「その企画、実現した暁には、是非ウチに撮らせてーな。めっさ面白そうや」
 カメラの亀山 綾(fa0922)も乗り気のようだ。こうして、彼女がカメラを回し始め、『社長が来た!』と銘打たれた枠内で、こう語り始める。
「えー、ただいまオフィスP内は、シャチョー帰還の歓迎準備に追われてまっせー」
 その事務所の内部は、既にビニールカバーで全て覆われ、どっかのビールかけ会場さながらとなっていた。その光景を撮影しながら、綾ちゃんは、準備を進める河田 柾也(fa2340)と桐尾 人志(fa2341)へと話を振った。
「コーダはん、そちらは今は何をされてるんでっかー? ちゅうかそれナニ?」
「はっはっは。社長歓迎の秘密兵器や」
 カメラの中で、ぶくぶくとあわ立っているのは、紫色の液体。横に、何本かのジュースの空き瓶があり、中には『ハスカップ』と書かれたピンクの缶が混ざっていた。
「いいですか? 太平さん。札幌に建てた太平御殿もスープカレーも、社長が払うお給料あってですよ」
 ずずずいっと顔を近づけて、念を押すように詰め寄るキリーくん。そこへ、まるで計ったかのように、『社長』こと鈴本氏が到着する。スーツに身を固めた彼は、結構モデルでもやってそうな風情である。
「いやー、悪いね。こんなに大勢で歓迎してもらっちゃって」
「鈴本社長、おかえりなさいませ。ささ、まずは一献。洋ちゃんが社長の為に料理を作ったんですよ☆」
 小料理屋のおかみさん風に、楝色の着物に赤紫と白の縞帯を着け、適当にまとめた髪に、シニヨンのエクステをつけて、赤と黄色の玉簪をさした百合子さんに出迎えられて、にへらと頬を緩ませる社長。
「はじめまして! この間入ったばっかりの百鬼レイですっ。よろしくお願いしますっ」
「体力派カメラマンの亀山 綾や、よろしゅうにっ! ネタの為なら例え火の中水の中や!」
 挨拶する百鬼 レイ(fa4361)と綾ちゃんの他、活きの良い芸人さんばっかりで、社長は満足そうだ。そんな彼に、『小料理屋 洋』と書かれた屋台風のセットで、いつの間にか板前風に着替えた洋ちゃん、ついうっかり鍋から目を離してしまう。
「って、太平先輩! 鍋焦げてる!」
「きゃー! 水ー! 水ー!」
 ナッキーが指摘したそこには、ぶすぶすと白い煙が上がっていた。と、その刹那、大騒ぎする洋ちゃんに、上からバケツのお水が降り注ぐ。
「ふふふ。社長に仇なす料理は、全て我らまいむ☆まいむが排除するのです」
 かけたのは、サバイバルゲーム用迷彩服に身を固めたまいむ☆まいむの2人。
「そしてさらに、社長には気分だけでも味わってもらいましょうっ。中松さんっ、お願いします!」
「はいはーい☆」
 キリーくんの要請に答えて、中松さんが運び込んできたのは、某道民球団のユニフォーム。それを彼女は、一人一人にぽいぽいとかぶせていく。そしてコウダくんは、一向気にせず、ぐふぐふと笑うと、水鉄砲の銃口を向けた。
「悪いッすね。これも明日のおまんまのためなのです! 食らえ、必殺タバスコアタック!」
「ダブルグレープボンバー!」
 よいこも悪い子も真似禁止な液体が、どばどば撒き散らされている。あっという間に銃撃戦と化した室内で、ナッキーは紙皿の上に、ざらざらとスナック菓子を配っていた。
「はいはい、ジュースのお供にこちらをどうぞ。社長のお土産です」
「おーー。社長太っ腹!」
 緑と赤のカラフルなそれは、とってもインターナショナルな香りのするお菓子だ。
「さぁさぁ、どうぞどうぞどうぞっ!」
 しかしナッキーは、必要以上に浮かべた笑みで持って、それをざらざらと太平洋の口に押し込んでいた。
「ああっ! 太平先輩が倒れたっ! しっかりして下さい〜」
 倒れている洋ちゃんを、ゆさゆさと揺さぶり起こそうとするナッキー。
「よくもやってくれたな。看板スタァの敵討ちだ! いくぞ相方!」
「任しときー!」
 それを見て、まいむ☆まいむが敵討ちとばかりに、後ろから襲い掛かる。しかし、ナッキーは、首をすくめて避けてしまう。そして、2人が手にしていたクリームパイは、見事太平洋を直撃してしまった。
「ふははは! 見たか、シェービングクリームパイの威力を!」
 自慢げにそう言うコウダくん。弱点は水をかけられるとなくなってしまう事だが、そう言う危険物は、既に別室へ待機だ。
「って、とどめ刺しちゃってますよ。先輩」
「ああっ。すみませんすみませんっ!」
 もっとも、使い手本人が、ナッキーに指摘されて、平謝りする羽目になっているが。
「ふんっ。所詮は手投げ弾。カモーーン!」
 つぶされた看板神輿を尻目に、ぱちーんと指を鳴らす藤やん。と、ちょっと大きめのボール投げ機みたいなものを持ち込んだルシフがいた。
「いや、この方が面白いと思ってなー。決してヒメ先生の連絡先教えてもらうなんて約束はしてないぞ」
 藤やんに買収されたらしい。後ろ手にしたそれには、なにやら携帯の番号らしきものが垣間見える。
「わぁぁぁ、社長に当たりますっ。この狭い中で、ミサイルランチャーなんかぶっ放さないでぇぇぇ!!」
 四方八方に飛び散るクリームに、あわてて社長を庇うナッキー。阿鼻叫喚の地獄絵図と化しつつある事務所内で、カメラを回しっぱにしながら、綾ちゃんはのんびりと一言。
「まったく毎回ハードなこっちゃ。こういう機会にしっかり喰っとかんと、やってられんわ〜」
「さすが綾ちゃん、動じてない‥‥」
 彼女の手元には、中松さんの作った料理が、お皿一杯並んでいたり。
「いいなぁ、その角煮美味しそう〜」
「こっちも食べる? 茄子とかぼちゃの鶏そぼろ煮」
 華やかな香りに引かれて、つつつっと寄って来たルシフに、彼女はそう言って煮物を差し出す。こいつに関しては、女の作ったもんなら何でも良さそうだとか、そう言う突っ込みはさておき、ほのぼのな雰囲気をぶち壊しにする藤やんの一言。
「って、ルシフ! ランチャー放り出すなぁぁぁぁ!」
「だからあぶな‥‥げふぅっ」
 コントロールを失ったパイ投げランチャーから放り出されたクリームの塊は、社長をかばったナッキーを直撃。こうして一時間後、事務所には洋ちゃんがべたべたした粘液で、はりつけになっていた。
「てか、なんでクリームパイがこんな状態になるんだYO!」
「いやー。数パイに1パイくらいの確率で、普通のクリームじゃなくて、やたら粘り気のあるパイが混入されてたり〜」
 そう説明するルシフ。で、それが命中すると、身動きが取れなくなるわけで。
「そう言う事だ。この際だから、実験台になってもらおうか」
 固まりになった洋ちゃんを、社長はゼブが運んで来た箱にぽいっと放り込む。それには、ゼブの名前と、数個の細い穴。洋ちゃんが抗議の目を向けると、仕掛けた張本人は、『いやー』と後ろ頭をぽりぽりしながら、社長に目配せ。
「俺もさぁ、自分の身が可愛いシィ。ねぇ? しゃちょー?」
「うむ。刺されるのはそこの2人と、相場が決まっている」
 ゼブが剣を片手にそう言うと、ぺしぺしと洋ちゃんをはたく社長。と、そこへキリー君がこう一言。
「藤やんも、人をヨゴレ呼ばわりして、1人だけ高みの見物ってのは、あきまへんで」
「冗談じゃないぞ。捕まってたまるか!!」
 相方のコウダくんと共に、藤やんまで押さえつけにかかる。しかし、彼とてさんざん恨みを買っている人物なので、逃げ足だけは速い。と、そこへ蛍さんが、愛刀片手にぽそりと一言。
「うるさいなぁ。酒に埃が入るだろう‥‥が!」
 そう言うや否や、ちゃきっと刀を抜いてしまう。酒が入ってるせいか、目が据わっており、手元もプルプル震えている‥‥様な気がした。ぴょこんと飛び出た耳をぴくつかせて、刀を振り下ろすと、藤やんのデコについた米粒が、真っ二つに割れた。
「はいはーい。キリーちゃん、2人詰め込んだら、そこの壇上運んでねぇー」
「俺1人じゃ無理だって! 相方手伝ってー」
 ひょえーと口をあけっぱにする藤やんを、綾ちゃんの指示により、まいむ☆まいむの2人が、ゼブの箱の中に放り込む。
「それではお立会い〜。ここで見せるは、でかい箱に人を入れて剣をぐっさぐっさ刺していったら普通に痛い手品だ」
 ゼブはそう言うと、テレビの回転台に乗せた洋ちゃん&藤やん入り箱を、ぐーるぐると必要以上に回転させる。悲鳴を上げまくる洋ちゃん。
「この通り、例え服を着ていてもぺろーんでございます」
 その直後、貫かれたのは、彼の体ではなく、彼の洋服。がらがらと箱からたたき出された洋ちゃん、ちょっと画像加工しなけりゃ、お外に出せない状況だ。
「寒くならないように、これどうぞー」
 そこへ、俊敏脚足まで使ったルシフが、妙に赤いスープカレーを差し出す。見た目は普通のスープカレーなそれを、口に運んだのだが。
「み、水〜!」
「んー、残念ながら、男に飲ませる水は用意してないんだなぁー」
 激辛カレーを薄めるなんぞ持ってのほか! と言いたげなルシフ。と、そんな彼らの目の前で、香ばしい匂いを放っているのは、壷に入った何かの液体。
「だ、誰か〜。あ、ちょうどよく白い液体が!」
 のどのひりつく洋ちゃん、ゆかが作った危険な甘酒をぐびぐびと飲み干す。結果はいわずもがな。もっとも、作った本人は、そっぽを向いて『頑張ってー』とジュース飲んでるが。
「鍋ができたでごわすよ」
「さーて、楽しく食べて飲んで後片付けよー」
 ヨゴレ感染しそうなそこへ、今度は尚武さんが、出来上がったちゃんこ鍋を持ってくる。中松さんがそう言って、テーブルの上に鍋を置いたが、周囲には誰もいない。
「北海道の冬は寒いなぁ。風邪引いてもうたら、明日から暴れられんようになってまうで」
 見れば、ひっくり返った洋ちゃん以下数名に、綾ちゃんが毛布をかけている所だった‥‥。