香港メイドさん物語アジア・オセアニア

種類 ショート
担当 姫野里美
芸能 フリー
獣人 フリー
難度 普通
報酬 1.3万円
参加人数 8人
サポート 0人
期間 12/12〜12/18

●本文

 香港のとある雑居ビル。
 ここに、『ふりひらのお洋服を着たメイドさんに、ご奉仕をしてもらう世界と言うのは、そもヨーロッパ発祥ではなく、日本のアニメに育成された文化だ!』と思いこんでいる映像会社の社長がいた。
「よし! メイドがダース単位で出てくるDVDを作るぞ!」
「は?」
 冬晴れのある日、山ほど詰まれたDVDやらゲームやらを片手に、そう宣言する社長。
「話は何でも良い。とりあえずメイドさんを集めて、どうにかする話を作るんだ。毎回可愛いメイドさんにご奉仕三昧! 売れるぞ! これは!」
 思い込みが激しいのか、1人で盛り上がっている彼。
「しかし、予算がないんですがー」
「そんなものは、B級だから必要ない! このあたりにも、メイドさんになりたい新人がゴロゴロしているだろう! 監督や脚本家やスタッフの腕を振るいたい奴らも大勢いるだろう! そいつらをかき集めて、メイド服とギャラと機材さえ用意してやれば、後は自分でどうにかしてくれる!」
 むちゃくちゃな話である。しかし、一度こうと決めたらてこでも動かないのを知っている社員は、こう助言した。
「確かにメイドさんは萌えますね。が、今のスタッフには、ある程度ネタを与えないと、良い物作ってくれませんよ。どうでしょう、例題とネタを与えて、それを流用して萌え萌えメイドさんDVDを作ってもらうと言うのは」
「よしそれは名案だ。さっそくやってくれ!」
 そんなわけで、突如、メイドさんをてんこ盛りにしたDVDのキャスト&スタッフ募集がかけられるのだった‥‥。

 そして、一週間後。インターネットのHPに、謎の募集要項が載った。
 私だ。
 今回の指令は、メイドさんがてんこ盛りに出てくるDVDを作る事だ!
 メイドさんとワイヤーアクションさえクリアしてくれれば、どんなネタでも構わん!
 例えば、こんなのだ!

『すぅぱぁメイド大戦』
 ※クラシックメイド達とご主人様が平和に暮らす楽園に、突如押し寄せるフレンチメイド! そこへ乱入する巫女教団! 果たしてメイド達は、ご主人様にご奉仕する楽園を守りきる事が出来るのか!?

 なんか格闘な雰囲気になってるのは、書いた奴の特性とゆー事にしておいてくれ。ちなみに、撮影場所はメイドのいそうな所ならどこでも構わないが、配給会社が香港なので、太平洋とユーラシア大陸を越えるのはNGだそうだ。あと、アジアでもあんまり奥地は勘弁な! まぁ、香港周辺と日本、遠くてもシンガポール辺りまでだと思ってくれればOKだ。

 なお、ご主人様は公平を期すために視聴者と言う事になる! それさえクリアしてくれれば、後はやりたい放題だ!
 挑戦者、求む!

●今回の参加者

 fa0085 一二三四(20歳・♀・小鳥)
 fa0244 愛瀬りな(21歳・♀・猫)
 fa0262 姉川小紅(24歳・♀・パンダ)
 fa0587 猫美(13歳・♀・猫)
 fa1234 月葉・Fuenfte(18歳・♀・蝙蝠)
 fa1575 アリシア(9歳・♀・虎)
 fa1660 ヒカル・マーブル(20歳・♀・牛)
 fa2411 皐月 命(17歳・♀・アライグマ)

●リプレイ本文

「ほんじゃー、脚本が上がるまで、衣装あわせしといてくれやー。ふみ、カメラテストもやっといてくれ」
「分かりました。BGMもおいらが探してきます。では、メイドさん達、着替えて来て下さいな」
 皐月 命(fa2411)と一二三四(fa0085)が、細かい材料を揃えに行く中、メイドさん達は、撮影用の衣装へとチェンジしていた。
「クラシックメイドですから、露出の少ない、シンプルなものの方が良いですね」
「私は逆にアメリカンなミニ丈ひらひらのメイド服ですわね」
 月葉・Fuenfte(fa1234)が選んだのは、足首までスカートのある黒のシックな長袖のメイド服、対照的に愛瀬りな(fa0244)は、腕も足も出しまくったメイド服だ。
「パンツ見えそう‥‥」
 同じフレンチメイド派役のアリシア(fa1575)が、衣装に顔を赤くしている。と、そんな彼女に、りながこう言ってアドバイス。
「下着モデルだと思えば平気よ。全裸になるわけじゃないし」
 ちなみに、スタッフにも男性はいるので、中身は見せパンだ。
「曲の感じは、こんなんでいいかなぁ。メイドさん達も、登場シーンの希望があったら、言ってくれる?」
「役の性格上、自分に厳しく他人に厳しく、セクシーでってカンジかなぁ」
 着替えが終わったところで、ふみがそう聞いてきた。その手に、山ほどのCD、りなが衣装と同じ様な感じで‥‥と希望を伝える。
「私の役どころは、クラシックメイドのリーダーですから、暖かくてほわほわした感じの‥‥、隣のお姉さんとか、管理人さんって言う感じの雰囲気がいいなー」
「んー、わかった。その2人は、そう言う感じで。後はストーリーにあうようにして見るね」
 姉川小紅(fa0262)の申し出に、メイド達の要望を聞いたふみは、CDの山と格闘しに行くのだった。

 最初は、時間のかかる特撮シーンからの作成になった。
 メイド衣装の小紅とヒカル・マーブル(fa1660)が、クリスマスソングが奏でられる中を、電飾の飾りつけに勤しんでいると言うシーンである。2人とも、役柄はクラシックメイド派の『小紅』と『ヒカル』だそうだ。
「それじゃ、小紅ちゃん、そこに置いてある電飾を、脚立の上から落としてくれるかな」
 監督役のメイの求めに応じ、その通りにする小紅。
「しょうがありませんねぇ、直しちゃいましょう」
 そう言うと、ヒカルはメイド服の裾をふわりと広げ、その壊れた電飾の上へと手をかざした。待つ事数秒。電飾が壊れたのと同じ時間を、同じポーズで過ごしたヒカルに、カットの声がかかる。
「こんなもので良いのでしょうか?」
「上出来や」
 ヒカルがそう尋ねると、頷くメイ。終わったテープは、すぐさま編集へと回される。
「ふみ、後でこれ逆回しにして、編集な」
 頷くふみ。どうも、『不思議な力でものを直す』と言うシーンだったらしい。こんな感じで、撮影は順調に進んで行くのだった。

 『AKIBAコーポレーション』と書かれた、公園風の豪邸‥‥。
「甘い。甘いわ! そんな衣装では、御主人様への御奉仕力が足りなくってよ!」
 クラシックのマーチめいたメロディと共に、そう声が入る。カメラがそちらを向くと、ボディ用のファンデーションで、ラメを追加した少女のおみ足が映った。
「我々は、地獄からきたニューウェイブメイド‥‥!」
 露出度の高いメイド服に身を包み、額に黄色い符を貼り付けたシアが、声を張り上げる。ちなみに、ちょっと香港を意識しているらしく、えりの形と刺繍がちょっぴり中華風。
「その名も、霊幻キョンシー冥土シア! MOEMOEフォースで、地球の未来にご奉仕しちゃう♪」
 カメラがアップになり、ポーズを決めたシアの周りにお星さまが散っている。説明しよう! MOEフォースとは、Marvellous Obedience Emporyフォースの略だ!
「下賎な‥‥。品性がありません。アレが示すのは、忠誠ではなく、媚です、媚!」
「ふふふ。クラッシクなんて、今更時代遅れよ。これからは、こう言うセクシーな衣装でこそ、よりMOEの心で御奉仕出来るのYO☆」
 月葉が嫌悪したようにそう言うが、『リーダー』と名札の付いたリナちゃんは、ミニスカートから見せパンを覗かせて、軽くウィンクしてみせる。この辺の過剰な色気は、本人の希望と、メイの指示だ。
「あー。リナお姉ちゃんだー。と言う事は、一緒に働けるねぇ☆」
 が、そこへそんな彼女の努力を無にするような、猫美(fa0587)のアニメ声。
「違うわ! 私はNMを世間に広める為に来たライバル! と言うわけで、今年は、ご主人様の為に、萌え萌えでセクシーキュートなクリスマスにするのよっ!」
 びしぃっと指差して、彼女との関係を否定するリナ。ネコミが悲しそうな顔をする中、彼女は飾りかけのツリーを指差して、こう命じていた。
「ツリーと言えば、やはりもみの木! こんな小さいのじゃなくて、もっと大きいのがふさわしいですわ!」
「じゃあネコミ、調達してくる〜」
 そこへ、ネコミがそう言って、掌をくるっと回転させた。と、効果音つきの煙が舞い上がり、手の中に魔女っ子さながらのホウキが現れる。それに腰掛けると、彼女の体がワイヤーで浮き上がり、背景が今までの公園めいたお屋敷から、空へとチェンジする。どうやら、飛行状態になったのを演出しているらしい。
「お待ちなさい! そうはさせなくってよ!」
 一方のリナ、同じ様にホウキを呼び出し、こっちは太ももさらけ出してまたがる。風に煽られて、スカートがひらひらと舞い上がった。この辺は全てワイヤーアクションでこなされている。
「困ったわねぇ。喧嘩は良くありませんわ〜」
「違うもん、勝負だもん」
 のほほんっとそう言うヒカルに、シアがムキになってそう言った。
「ああ、それならいいかもしれませんねぇ〜」
 口では困ったと言いつつ、楽しそうな小紅、あっさりとその勝負を受けて立つ。一応『メイド長』の肩書きがぶら下がっている彼女、自分の仕事と衣装に誇りを持っているらしい。
「ツリーに負けない立派なケーキを作らないとですねぇ」
「ふふふ、ぽけぽけ娘には負けません。あきゃあっ!?」
 そんなヒカルを馬鹿にしたようにそう言うシアだったが、ふんぞり返った瞬間、履いていたヒールに引っかかり、乗っていた屋外用の道具入れから転げ落ちてしまうのだった。

「ケーキが出来ましたよぉ」
 画面いっぱいに『数時間経過』と文字が出た後、ヒカルとシアが、出来上がったケーキを一緒に運んでくる。まるでウェディングケーキのような高さのショートケーキだったが、飾りつけはそれほどでもない。難色を示す小紅に、シアはきゅぴーんっと目を煌かせて、こう宣言する。
「ふふふ。仕上げはこれから! シアの力を見るですよ!」
 そう言うと、シアはクリームの入ったデコレーション用の袋を持ち、ポーズを決めた。すると、周囲に虹色のCGが巻き起こり、彼女の頭部‥‥ちょうどカチューシャの辺りに、可愛らしい耳が生える。
説明しよう! シアはMOEフォースで獣化することで各能力‥‥特ににMOE度が上昇するのだ!
「そして! 黄符から供給されるアルティメット霊幻パワァが、私をはるか高みへと舞い上げるっ!」
 そう言うと、獣人技能にものを言わせ、背中のワイヤーを使ってジャンプする。ヒカルが踏み台にされた。
「MOEフォースを使えるのは、あなただけではありません! 私だって‥‥!」
 対抗するように、小紅がカチューシャを撫でるような仕草をした。と、そこにはぴょこんっと丸っこい獣耳が生える。
「きゃあんっ!」
 が、同じ様に飛ぼうとして、盛大にこける小紅。説明しようっ! 小紅はMOEフォースを発動すると、パンダ娘になり、ドジっ娘に強化されるのだ!
「ケーキの飾りつけは、お2人に任せて、私達はお部屋のお掃除をしてますわねー」
 クリーム撒き散らしながら、ケーキの仕上げを行っている3人の足元で、月葉はいそいそとそれを片付けているのだった。

「ネコミったら、どこまでいっちゃったのかしら‥‥」
 暗転後、どこぞの山の中で、お目当ての木と、妹を探すリナ。
「ふみゅーーーー! うみゅーーーー!」
 と、雪の中に響くアニメ声。慌ててそちらへ向かうと、自分の胴体と同じ太さのもみの木を、いっしょーけんめー引っこ抜こうとしているネコミの姿があった。
「うぇーん、抜けないですぅ‥‥。ふにゅっ。きゃあっ」
 しかし、彼女の小さな身体では、もみの木はびくともしない。それどころか、つるっと滑って、パンツが丸見えに。
「ほほほ。あなたのパワーでは、そんなものを抜こうなんて、100年早いですわっ!」
 で、結局なんだかんだ言いながら、ネコミが抜こうとしたもみの木を、変わりに抜こうとしていた。この辺全てCG処理って言うか、オモチャ並べて、都合の悪いところを消しているだけとも言うが。
「こ、この程度‥‥」
 ところが、一応『巨大もみの木』と言う設定なので、彼女1人のパワーでもやっぱり引き抜けない。
「一緒に運ぼ、お姉ちゃん☆」
「私1人で充分です!」
 にっこりと笑うネコミに、手伝い不要と言い張るリナ。
「やだーー。ネコミだってメイドさんだもんっ!」
 そこへ、ぼふんっと効果音が入り、ネコミの頭に耳が生える。
「発動したと言うの!? く‥‥こうなったら!」
 対抗するように、リナの頭にも猫耳が生えた。姉妹設定なのに、柄が違うのはとりあえず無視しろ。
 その頃、シアとヒカルは、MOEフォースに加え、黄符から供給されるアルティメット霊幻パワーでもって、あり得ない高さと速さで、ケーキへのデコレーションを行っていた。
「な、中々やりますわね‥‥」
「そうですかぁ? 普通ですけど〜」
 で、シアがむきになればなるほど、ヒカルはそれをあしらうように、ぽややんっと答えている。
「私にはとっておきの必殺技があるのだよ! 今こそ封印を解かれる時!」
 業を煮やしたシア、とっておきの必殺技を使うべく、どこからともなく電子ジャーを取り出し額の黄符を剥がして貼り付けた!
 が。直後、固まるシア。
「キョンシー冥土シア、死亡確認!!」
 またまた説明しよう! キョンシー冥土シアは黄符を剥がすと、アルティメット霊幻パワー供給がなくなって機能停止してしまうのだ!
「困りましたねぇ。飾りつけは終わりましたけど、散らかっちゃったままです」
「小紅様、真の『ご奉仕』とは如何なものか、教えて差し上げましょう!」
 そこへ、屋敷のお掃除担当の月葉が、自前のメイド衣装をピンスポットで輝かせながら、高らかと宣言する。
「MOEフォースチェーンジ!」
 さらに彼女は、まるでどこかのロボットアニメのような掛け声で、背中に漆黒の翼を生やす。
「大空を舞う月夜の奉仕者・月葉。ただいま参上ですわ!」
 お決まりの名乗り上げを行い、ポーズを決める月葉。ここは、回転台に月葉を乗せ、半獣化しながらポーズを取ったところを撮影、後でCG効果を入れ、合成したものだ。なお、あまり予算はない為、CGと言っても、透過光とボカシで、羽が作りものっぽく映るようにしただけだが。
「無駄無く、無理無く。それがメイドの精神なのですわ!」
 さらに彼女は、ワイヤーアクションで軽くなった身を、軽く足首のスナップを利かせながら天井近くまで舞い上がらせ、天井近くにこびりついたクリームを、難なくふき取って行く。
「ああ、綺麗になりましたわねぇ‥‥。はら?」
 感心した表情の小紅が、ぱちぱちと拍手。と、そこへ、子供の取り合いと化した姉妹によって、もみの木が運ばれてくる。それを、庭の方へと降ろさせる月葉。ところがである。
「あぶなっ」
 ネコミがバランスを崩し、クリスマスツリーの下敷きになりそうになる。それを庇ったのは、他でもない姉のリナ。
「まぁまぁまぁ、気をつけなくてはダメですよ」
 彼女の手当てをしたのは、対立している筈の小紅さんである。
「だって私達は、メイド。形こそ違えど、同じご主人様にご奉仕する仲間じゃありませんか」
 戸惑う表情のリナに、そう微笑んでみせる彼女。
「庇ってくれてありがとう、お姉ちゃん」
「本来、メイドというのは、御主人様に忠誠を尽くす物であって、相争う物ではありませんので‥‥」
 ネコミがぺこりんとお礼をすると、ヒカルはのほほんとそう言う。そこへ、フリーズして死亡確認されたはずのシアが、いきなり割り込んできた。
「その通りだっ! よく言ったヒカル!」
 まぁ、判定したのがアレなので、死んだり生き返ったりするのだよ。
「どんな服装だろうが、ご主人様を思う気持ちは一緒と言う事か‥‥」
 そのセリフに、リナはそう呟く。と、そこへキキーッと車が止まる効果音。
「みんな、お出迎え配置について〜」
 さっきまでぎゃーぎゃーと騒いでいたメイドさん達、小紅の号令に、いっせいに整列する。玄関の両側に並んだ彼女達、カメラに向かって頭を下げる。
「お帰りなさいませご主人様。メリークリスマス!」
 ぽぽーんっとクラッカーがはじける中、月葉が一歩進み出て、画面手前へ挨拶する。
「お楽しみ頂けましたでしょうか? 我々はいつでもご主人様の為に控えております。また、何かございましたら何時でもお申し付け下さいませ」
「お申し付けくださいませ!」
 他のメイドがいっせいにそれに倣い、ふみのカメラが、その集合写真をパッケージにする。こうして、『MOE、MOE、メイドさん・クリスマス激闘編!』と書かれたそれは、無事完成し、出演者達にも休憩中のスナップ写真と共に、配られるのだった。