【LH柏木】チャリティアジア・オセアニア

種類 ショート
担当 姫野里美
芸能 3Lv以上
獣人 フリー
難度 やや易
報酬 5.2万円
参加人数 8人
サポート 0人
期間 12/17〜12/19

●本文

 師走。年末のこの時期、世間では様々なイベントが起こる。
 クリスマスに始まり、正月の餅を確保する為の歳末大売出しから、冬場のお台場コミック祭りに至るまで、多種多様だ。そんな中、ここライブハウス柏木では、マスターが電話で相談を受けていた。
『マスター、ちょっと頼みがあるんだが、チャリティーバザーのにぎやかし、頼めませんかね』
「賑やかなのは結構だなー。そう言うことなら、かまわないが‥‥」
 電話の相手は、駅二つほど離れた町で行われる、歳末助け合い市だそうである。バザーや模擬店なんぞが並ぶらしいのだが、それだけでは寂しいので、特設ステージと銘打ったちょっとした舞台で、クリスマスにちなんだ何かを演奏して欲しいそうだ。
「OK。だいたいのことは分かった。楽器は持ち込みなんだな?」
『そこはお任せしますが、車はちと駐車場が足りなくて。たのんまっせー』
 電話を切るマスター。なんでも、持ち時間1人20分。楽器は手持ちで持ってこれるものなら可能。グランドピアノ等、大型楽器は、持込に手間が掛かるので不可。ただし、分解して持ってこられるものならば可能だそうだ。
 と、言うのも。
「あれ? 委員長、その日確か、取材申し込み来てるんじゃなかったでしたっけ?」
「ああ。そうだっけか‥‥。忘れてた‥‥」
 電話を切った後、バザー実行委員が、バーコード頭に冷や汗を浮かべている。確かに壁には『取材』と書いてあった。あわてて電話を入れる委員長。
「ん? ああ、別に気にしないで良いぜ。参加したい奴には、手を抜くなって言っておくし。なんなら、取材の方の連中にも、挨拶しておくか?」
『すんませんねー。何しろ、こっちは慣れてないもので』
 こういった事は初めてなのだろう。姿こそ見えないが、頭を下げている様子が伺える。仕方ねぇなぁと言った顔で、マスターはダイヤルを回した。
「そう言うわけだから、頼むわ」
『締め切り前で忙しい時期なんだから、高くつくわよ‥‥』
 電話の向こうで、ぴりぴりした声を出しているのは、ヒメだったそうである。

【チャリティーバザーを盛り上げる野外ライブを行って欲しい。対象はファミリー層なんで、それっぽい曲で頼む】

 そして、いつものように常連やスタッフを通じてメールが送られ。

【チャリティーバザーに、ファミリーライブをやるらしい。クリスマスにファミリーランドで演奏してくれそうな奴も探したいから、その辺のチョイスも兼ねて取材してきてくれ】

 TV局にも、いつものように通達が行った。
 なお、放映は生ではないらしい。

●今回の参加者

 fa0597 仁和 環(27歳・♂・蝙蝠)
 fa1376 ラシア・エルミナール(17歳・♀・蝙蝠)
 fa1406 麻倉 千尋(15歳・♀・狸)
 fa1514 嶺雅(20歳・♂・蝙蝠)
 fa2457 マリーカ・フォルケン(22歳・♀・小鳥)
 fa2847 柊ラキア(25歳・♂・鴉)
 fa3211 スモーキー巻(24歳・♂・亀)
 fa4657 天道ミラー(24歳・♂・犬)

●リプレイ本文

 そんなわけで、LH柏木や、自前で色々と持ち込んだ芸能人達は、バザーに併設された舞台の袖で、打ち合わせをしていた。
「それじゃ、みんなよろしくお願いするよー」
 スモーキー巻(fa3211)がそう言ってご挨拶。今回、初めて会う者もいる。マスターも様子を見に来ていたのだが、相談の結果、司会と演出を巻が行い、適時彼がアドバイスをすると言う事になった。
「ところで、ラーメン食べて来ていーですか? あるよね、屋台あるよね!? 腹が減ってはなんとやらー!」
「抜け駆けはなしだぞ! ラーメン豚汁フランクフルト焼きそば‥‥。醤油ラーメンあるかな」
 その演出を決める間、天道ミラー(fa4657) と柊ラキア(fa2847)は、さっさと屋台の方へ行ってしまった。
「あたしも、あれこれ面倒そうだから逃げ‥‥」
 ラシア・エルミナール(fa1376)までバザーに出向こうとしていたのだが、そこはマスターにじろりとにらまれ、踏みとどまる。
「‥‥る訳にも行かないか。こういうのは初めてだけど、まあいつもどおりにライブすればいいかなあ。まずはお客サンに楽しんでもらわないと」
「客層はファミリー向けだって言ってたなぁ。とりあえず、舞台見させて。あるもんでそれらしく飾りつけたいし」
 巻が楽屋から舞台を見物しながら、そう言って、有り合わせの材料を調達しに、バザーへ向かうのだった。

 ところが。
「って、あの2人はどこまでメシ行ったんだよー!」
 トップバッターの筈の、天道とラキアが、一向に戻らない。司会の巻、いらいらした様子で、時計を見比べている。
「どうしようかー」
「穴埋め曲は持って来てるけど、司会がいきなり演奏始めるのは、よくないしなぁ」
 ラシアの問いに、考え込む巻。一応、大抵の人が何処かで聞いたことのある曲を、自分なりのアレンジで、引きこなせるレベルまで簡略化しているのだが。
「じゃあ、その間はあたしがつないどくよ。15分くらいだから、その後よろしく」
 ラシアがそう言って、舞台に上がろうとする。が、途中で足を止め、マスターにこう尋ねた。
「あ、そだ。お菓子ばら撒いていいの?」
「まー、それくらいならいいんじゃないかな?」
 彼が許可を出すと、ラシアは「了解〜。行って来ます」と、舞台へと躍り出る。さすがに普段のへそだしでは、教育上よろしくないので、上に赤いサンタっぽい衣装を羽織っていた。
 曲名は『Happy Merry Xms』。明るい感じの、気軽に歌えるようなPOPである。

枕元に下げた 願いの袋満たすため
きらきら輝く星空を 魔法のソリで走る

笑顔と夢のために ずっと昔から
走り続けているよ 大きなトナカイを連れて

 歌いだしからサビ、終わるまで一貫してハイテンポ‥‥だったのだが。
「あれ? ノリがいまいち良くない?」
 カラオケ音源持参で、演奏していた彼女だったが、観客の子供は、きょとんとしている。大半は小学生から、未就学児童なので、彼女が歌おうとしていた事が、あまり理解出来て居ないのだろう。子供は知っている曲じゃないと、ノリが悪い。
「まぁいいや。まだ時間があるから、適当にっと」
 それでも、最後まで歌いきったラシアは、そう呟いて、今まで歌った曲を、ご披露している。そして、その間に袋の中に詰めたお菓子を、舞台へと引っ張り出した。
「この隙に、2人を探して来て。舞台演奏は、俺がやっとく」
 司会の巻、『それではクリスマスプレゼントでーす』と煽りながら、インカムでそう指示する。
「出来るの?」
「まぁ、誰でも知ってるクリスマスソングなら、どうにかなるだろ」
 ラシアの問いに、そう応える巻。こうして、演奏を彼に交代し、知っているクリスマス曲に合わせて、お菓子を配っていると。
「遅れましたーー」
「いやー、ラーメン屋が意外と並んでてさー」
 使い捨てどんぶりを片手に、いそいそと戻ってくる天道とラキア。
「いいからさっさと着替えて来いっ」
「「うはーい」」
 さすがに角を出したマスターに怒られつつ、出演準備を整える2人だった。

 フード付の赤ロングコート、白セーター黒パンツ、頭にはトナカイ角付カチューシャの天道と、バザー巡りで着ていた黒ジャンパーを脱いで、赤ロングコートにロングTシャツ、ジーンズ、ゴーグルをつけたラキアが、『ムキムキサンタ』と題した曲をご披露しながら、スキップで左右の袖から登場する。

 赤いコート翻し サンタが町にやってくる
 キック! パンチ!  強いんだぞ!
 夢 プレゼント 運ぶから
 サンタは筋肉モッリモリー!
 サンタは サンタは 強いんだぞ〜!

「「こんちわー。ハモニアでっす」」
 軽く挨拶を済ませた後、ラキアがマイクを片手に、トークを開始する。
「クリスマスといえばサンタさんだけど、プレゼントについて、いってみよー」
 彼が話したのは、自分が小さな頃のクリスマスプレゼントの話。まるでトークショーのような語り口で、彼は相方に話を振った。
「僕が覚えてる限りで最初に貰ったのはーおもちゃのマイク! それ握って歌いまわるお茶目な子供でした、ミラー君はどうよ!」
「俺、夜眠れない子だったんだけど、プレゼントにテディベア貰ってさー。それ以来ぐっすり眠れるようになったんだ。サンタさん感謝! 今も宝物にしてるよー」
 ちなみにそのテディくんは、現在天道くん家のインテリアとして、重要な任務を全うしているそうである。
「さって、そろそろ僕らから、歌プレゼントでっす! 歌は、『赤いヒーロー』!」
 そう言って、ギターをひと鳴らしするラキア。
「真っ赤な服に身を包み、聖夜のヒーローやってくる‥‥」
 天道がまるでヒーローショーか何かのように、イントロの台詞を言った。曲調は、ヒーローものによくあるように、明るく軽快なアップテンポの曲である。

 君が夢の世界へ行っている間
 ヒーローからそっと贈り物

 その部分だけは、少しテンポを落として、バラードより若干早いくらいの曲になっている。その間、照明はシンプルに、2人を追いかけるスポットライトだけが当たっている。

 いつだって君を 見守ってるよ
 真っ赤な服を夜空にひるがえし
 聖夜のヒーローやってくる
 僕らのヒーローやってくる

 サビの部分に戻ると、また賑やかな曲調へと戻った。背中を合わせてギターを弾いていた彼らは最後は腕を振り上げ、ターンしてコート裾翻しポーズを決める。
「うーん、やっぱりいまいち盛り上がりにかけるねぇ」
「ただ聞かせるだけだとだめなのかなぁ」
 拍手こそ鳴ったが、サンタヒーローは、何処かの番組のタイアップじゃないと、子供の耳には残らないようだ。残念そうにそう言う天道とラキア。まぁ、それなりに盛り上がってはいたせいか、当初の予定通り、人も増えてきたが。
「次はちょっとお客も巻き込んでみるよ」
 次の出番の嶺雅(fa1514)は、なにやら考えがあるようで、だんだんと増えた客を見て、そう言うのだった。

 さすがに、有名人2人の登場とあって、赤鼻のトナカイを三味線で引いているレイには、大人達の反応が違っていた。ざわざわと
「こんにちはー。俺ら、flickerの嶺雅、蜜月の仁和 環で構成されたグループの名は‥‥決めてませーん! なので今日は皆好きに命名しちゃって下サイ!」
 一曲終わった直後、レイがそう言うが、一般人はそう言われても、反応は出来ない。ただ、あちこちで苦笑するのみだ。それでも、ボリュームを落とされた中、仁和 環(fa0597)は観客にこう言った。
「えぇと、次の曲で、ちょっとちょっとお手伝いやって欲しいんだけど‥‥やってくれる人手挙げてー!」
 さすがに有名人のご指名とあって、親に背中を押された子供達が、ちょっと恥ずかしそうにしながらも、パラパラと手を上げている。
「じゃあ、そこの男の子‥‥。おにーさんよろしく」
「はいな。って、なんで司会が走るんだよっ」
 その何人かを指名し、舞台に上げさせるレイ。連れてくるスタッフは、さっきまで司会をやっていた巻である。
「君は、サンタさんになに頼んだの?」
 そう言って、子供に話を聞くレイ。まぁ、最近の子供は、だいたいゲーム。さもなきゃ車に巨大ロボ、好きなスポーツのグッズと、概ねそんな所である。と、その時だった。
「で、環くんも、今年一年、いい子にしてた?」
「え? あ、い、いい性格の子にはしてた!!」
 突然話を振られ、きょとんとした顔で、そう自滅返答をしてしまう環。
「サンタ来ないな‥‥」
「い、いきなり振るからだろぉ!」
 レイにそう言われ、思わず反論する。アドリブ対応が出来るほど、トークに慣れてはいないようだ。
「では、そんないい性格のおにーさんをお手伝いしよう。今からちょっとやり方教えるから、皆で参加してねー」
 観客の中にも、くすくすと笑いが漏れる中、レイは舞台の隅っこから、タンバリンを取り出した。ジングルベルの曲に合わせて、タンバリンと手拍子を鳴らそうと言う企画である。
「君達も手伝ってね」
 舞台に上がった子供には、タンバリンの演奏に協力してもらい、観客には手拍子を。こうして、巻き込むことに成功したレイは、環の演奏に合わせて、シャンシャンとリズムを刻む。
「今日は楽しい、クリスマス〜♪ ‥‥HEY!」
 最後は皆で一緒にコールして欲しいと、一呼吸おいて歌う環。
「じゃあ、最後は俺達のオリジナル曲を‥‥」
 その後、オリジナル曲を演奏する環だったが、せっかく作ったのに、子供はプレゼントされたチョコ入りマシュマロに夢中で、ぜんぜん聞いちゃくれなかったのだった。

 〆は、麻倉 千尋(fa1406)とマリーカ・フォルケン(fa2457)が、一緒に演奏することになった。時間の都合と言う奴もあるが、ネタが完全に被ったので、まぁ一緒でもいいだろうと言う事だ。1人は寂しいし。
「えぇと、今回ピアノ無いんだけど、音大丈夫?」
「ええ。今回は、子供と保護者対象ですから、それほど難しい曲でもないですし」
 楽譜あわせをしているまくらんとマリーカ。いずれも、クリスマスになると、何処かでかかっている子供向けクリスマスソングだ。
「いやー、マリーカさんがピアノ弾ける人で助かったよ。歌は交互でいいかな」
「大丈夫ですよ」
 なんなら一緒にどうですか? と、答えてくれるマリーカさん。こうして、2人はキーボードを持ち込み、演奏を開始する。
 やはり、知っている曲が多いと、子供の反応も違う。幼稚園や保育園、学校の音楽室で流れていた曲に、自然と手拍子が鳴った。
「やっぱり、知名度って、重要みたいですね」
 そう感想を述べる司会の巻。そんな中、、派手にならない範囲で飾り立てた緋色のドレスの上からコートを着て、キーボードを奏でるマリーカに、演奏を任せたまくらん、自分の衣装を、クリスマストークのネタにする。
「これはねぇ。さっきバザーで買ってきた手作りのペンダントだよ」
 彼女の衣装は、ベロア生地を使った、モスグリーンの肩出しのワンピースドレス。スカートはクリスマスツリーを模って三段重ね、裾はギザギザの波を作るように処理。白×銀のモールをアクセントにし、手首足首には鈴を使ったアクセサリーで、ダンス自体も演奏に加わる様にしている。そのスカートに、安全ピンで買ってきたオーナメントをあしらっていた。
「このイベントが終わっても、大切に使わせてもらうね」
 バザーには他にも色んな物が出てるから、後で遊びに来てね☆ と、宣伝も忘れない。
「そうそう。サンタさんは、良い子の家全部を訪問する事が出来ないから、お父さんお母さんに『代わりに渡して下さい』とお願いする事もあるんだよ」
 プレゼントで思い出したんだけど‥‥と、続けるまくらん。ちょうど曲の終わったマリーカも、「だから、もし本物のサンタさんじゃなくても、がっかりしないで下さいね」と、口ぞえる。
「皆が、幸福な朝を迎えますように」
 そのマリーカ、祈るようにそう言って、ドイツ語でクリスマスソングを歌い始める。聴きなれた曲も、歌詞が変わると新鮮に映るようで、子供も大人も、しんみりと聞き入っていた。
 そこへ、自然な流れになるように、彼女はオリジナル曲をご披露する。

 だから、幸せな気分でみんな静かにお休みなさい。
 ご老人がたくさんのよい子の元へと飛べ回れるように。
 きっと、幸せな朝が待っているから。

 無理にアップテンポにしない方がいいんだーと思ったまくらん、それに続けるように、自分のオリジナル曲を重ねた。

 モミの木に 何を祈る?
 僕と君と皆の 素敵な夜さ

「「メリークリスマス!」」
 声を揃えて呼びかける二人。そこへ、環が作った銀色の紙ふぶきが、ホワイトクリスマスを演出するように舞う。
「やはり、この台詞と演出がないと、クリスマスは締まらないな」
 大喜びで紙ふぶきを追う子供達を見て、巻はそう呟くのだった。

「そこ行くお兄さんっ! この手作りクッキーなんかいかがですかっ!」
 なお、その環は、年末感謝セールとばかりに、売り場に伊達眼鏡をかけて、飛び入り手伝い中。
「レイー、これ買ってー」
「自分で買えよ‥‥」
 ラシアとレイは、変装したまま、バザーに紛れてお買い物。
「参ったな‥‥。タクシーでも呼ぶしかないか」
 やっぱりお買い物に参戦した巻、ついつい買いすぎてしまい、持ちきれなくなった荷物を目に、楽しそうに途方にくれているのだった。