【猪鹿超!】干支狩りアジア・オセアニア

種類 シリーズ
担当 姫野里美
芸能 フリー
獣人 3Lv以上
難度 普通
報酬 9.4万円
参加人数 8人
サポート 0人
期間 01/17〜01/21

●本文

 今年の干支はイノシシだ。
 この、イノシシと言う生き物。猪突猛進と言う言葉に代表されるように、まっすぐで一本気‥‥と言うのが、概ねの評価である。
 だが、それは大いなる誤解だというのが、ついこの間発覚した。
 とある新聞記事によれば、日本で鳥獣被害の三本指に入るのが、このイノシシくんだそうである。他には、鹿と猿が一般的だそうだ。
 で、今年は干支と言う事もあり、張り切っちゃった猪くんがたくさんいたらしい。とある山間の町では、被害が深刻化していた。
 山に餌の少なくなるこの時期、野生動物が街中に降りてくる事は良くある。山間とは言え、それなりに町としての体裁が整っているそこでは、生ごみをあさりに来るイノシシが、以前から目撃されていた。問題は、その中に1匹、通常の3倍凶暴なイノシシが混ざっていたのである。
 追い払おうにも、3割ほど体がでかく、危ないので近づけない。地元の猟友会を‥‥と言う声も上がっていたが、何しろ近所に小学校があるので、うかつに銃が撃てない。
 そこで、力の強い者に、とっ捕まえてもらおうと、自治会を通じてバイトを募集し始めた。イノシシに対抗できる人材を‥‥と言うわけである。
 状況は、こうだ。

 朝、早い時間‥‥ちょうど出勤とごみ出しにかかる頃だ‥‥に、山から下りてきて、出されたごみをあさる。
 おなかが一杯になると、近所の公園の砂場で砂浴び。時々、子供の姿も見受けられるので、家族で来ているようだ。
 昼ごろになると、今度は畑へ出向き、冬場の作物を荒らす。ビニールハウス等々にも足を踏み入れられているので、柵や囲い等々は、余り効果がないのかもと言われている。
 群れのリーダーと思しきイノシシは、前述のふた周りほど大きなオスイノシシ。他に、ひと周り大きなイノシシに率いられたグループが2つあり、被害は町全域に及んでいる。
 町の大きさは、歩いて30分もあれば、繁華街や住宅からは抜け出せる。が、周囲には畑や果樹園が広がり、車で一時間圏内が、イノシシ達のテリトリーであるようだ。

 以上を元に、イノシシ3グループを牛耳る大イノシシを捕獲、群れを山まで追い返して欲しい。

●今回の参加者

 fa0378 九条・運(17歳・♂・竜)
 fa0847 富士川・千春(18歳・♀・蝙蝠)
 fa1402 三田 舞夜(32歳・♂・狼)
 fa2748 醍醐・千太郎(30歳・♂・熊)
 fa2859 ダンディ・レオン(37歳・♂・獅子)
 fa2944 モヒカン(55歳・♂・熊)
 fa3936 シーヴ・ヴェステルベリ(26歳・♀・鷹)
 fa4135 高遠・聖(28歳・♂・鷹)

●リプレイ本文

「害獣退治に使命を載せて♪ 荒れる町にあと僅か、凶悪害獣倒すため、やってきたよご一行〜♪」
 どこぞの某ロボットアニメな替え歌を披露しつつ、トラックを降りるモヒカン(fa2944)。
「しっかし、久しぶりの仕事が、猪退治のバイトっていうのもアレよねー。出来れば、ただの猪退治ですんでくれれば助かるんだけどなぁ」
 必要そうな物資を、ため息をつきながらそう言って、トラックに積み込むシーヴ・ヴェステルベリ(fa3936)。天敵がらみなので、気分はとても憂鬱だ。
「まぁ、住民にとっても猪にとっても、普通の猪は山に帰すのが一番だし」
 富士川・千春(fa0847)がそう言いながら、ワイヤーをまとめている。その数をチェックしていた三田 舞夜(fa1402)、原稿片手にぼそりと一言。
「猪ですか‥‥。怖いから寝るとい言う展開は怒られる‥‥んでしょうね。やっぱり」
 犬獣人の彼、聞いた話では、追いかけたまま行方不明になるわんこもいるので、荒事には触りたくないようだ。
「当たり前です。野生動物が人のいるところで活動していると、思わぬ事故にも繋がりますから」
「仕方ない。これも仕事ですし、頑張りますか‥‥」
 だが、はるちーに言われ、仕方なく何かノートパソコンに打ち込み始める。
「とりあえず、この車は好きに使って良いぞ。てか、この辺りだと、ないとどうにもならねーからな。感謝するといい」
 ふはははは! と、ふんぞり返るモヒカン。まぁ、トラック自体はありがたく使わせてもらうとして、気になる事は、別にある。
「それにしても、依頼人はどこまで知ってるんだ? それによって、人払いの方法が変わって来るんだが‥‥」
 高遠・聖(fa4135)がそう尋ねてきた。募集したバイトが一般人か芸能人かで、よってきた野次馬対処が変わるとの事。と、それを聞いたはるちー、苦笑しながらこう答える。
「うーん。どうも普通のアルバイトとして雇ったみたいです。車借りようとしたら、驚かれちゃいました」
 モヒカンのトラック一台では足りないので、レンタカーを手配しようとした所、TVに出てくる歌系アイドルが来たと、サインを求められてしまったようだ。
「それで、なんとなく視線がちくちくするのか‥‥。よし、千春。お前は今からリポーターだ」
 少し考えた聖は、びしいっとはるちーにそう言い切っていた。驚く彼女に、彼はこう告げる。
「何故芸能人がいるって説明になるだろ。これで雑誌の困った人を助け隊になるからな」
 そう言って、愛機である一眼レフをしまう聖。カメラを回さないのは、変な物‥‥すなわちNWが映っては困るからだそうである。
「けど、あれはどうする?」
 と、その時マイヤーがトラックの荷台を指差した。そこでは、九条・運(fa0378)がまるで演説台かなにかのように、片足を縁にかけつつ、力強くこう宣言。
「猪諸君! 弱いヤツは俺の餌だ!!」
 と。調子に乗ったモヒカンまで、その反対側で、こう演説ぶってみせる。
「獣の領域を犯した人間は、殺されても文句は言えないが、人の領域を犯した獣は、食料にされても文句は言わさん! 連中にも味合せてやろう! 人類の恐怖というものを!!」
 妙に迫力があるそれに、遠くから野次馬根性全開で見守っていた村人は、あんぐりと口開けっ放し。
「くっくっくっくっ‥‥、猪は脂が乗ってる方が好みなんだが、こんな季節のヤツを食すのも悪くは無い‥‥」
 いや、運の場合、すでに猪をさばいて胃袋に収める方が重要のようだ。
「「と言うわけだ! 安心して、我らに任せるが良いっ!!」」
 意識の相違はあれど、やる気は満々な彼らに、シーリィは苦笑しながら一言。
「ま、まぁ、どっちにしろ、普通の猪もどうにかしなきゃいけないから、対策考えた方がいいみたいねー」
 一番無難なのは、獣化も半獣化もしないまま、丁重に山へお帰りいただく事なので、やはりそう言った対応も必要だろうと、彼女は主張する。
「それについては、こう言うものを用意してきた」
 と、そこへマイヤーが、出来上がった原稿をプリントアウトしてきた。それは、大きく引き伸ばされ、あちこちに猪のイラストが挿入されている。
「何これ」
「うむ。対猪関係の、協力PR文章だ」
 シーリィが尋ねると、彼はそう言って、これで看板を作るよう指示をする。そして、同じ絵柄のチラシを、肉体労働担当な面々にも配っていた。それには、『生ゴミなどは有機肥料化などに利用してて可能な限り出さないようなする』『休耕の畑等は放置せずに管理する』と書かれ、理由と共に、下線が引いてある。
「本格的にやる時間も資金もないが、作物があるから、えさと間違われるんだろうし」
 誘導原因は、出来るだけ排除するのが上策‥‥と、彼は主張する。
「とりあえず、こいつを配りつつ、情報収集ってところだな」
「そうだな。町に大きな被害が出る前に、片付けなければならんだろうし」
 聖の提案に、そう応える醍醐・千太郎(fa2748)。今のところ、出没するのは限られている。とりあえず、その周囲に忌避剤をまく事にしたのだった。

 翌朝。
「他の所は、トタンで囲っちゃったから、出てくるとしたら、この辺りしかないわ」
 村に数箇所あるゴミ捨て場に、トタンで目隠しを済ませ、朝食を取れなくしたシーリィはそう言った。残るゴミ捨て場にいたる道で、罠をはろうと言う作戦である。
「一般人は、まだおねむの時間だな。獣化しても大丈夫か」
 聖にそう尋ねてくる醍醐。と、彼は「出来れば半獣にしておけ。見られても、まだ言い訳が立つ」と、指示してきたので、言われた通り、耳だけを生やす。
「来たみたいだぞ」
 同じように半獣化したモヒカンが、山の上の方を指す。時折鳴き声を上げながら、ぞろぞろと団体さんで山を下ってきたのは、まだ縞模様の残る子猪‥‥通称うり坊を多数連れた母猪だ。
「普通の猪‥‥であるな?」
 どうやら、偵察だろうとダンディ・レオン(fa2859)は判断した。NWっぽい奴はまだ出てこないようだ。むろん、杞憂であればいいと、彼は思っていたが。
「猪は、向こう側が見えなかったりすると、止まるから、準備したアレに追い込んでください」
 そう言って、はるちーがコの字型に組んだベニヤ板を指差す。その向こうには、モヒカンの用意したトラックとは別に、屋根の付いた家畜運搬用のものが用意されており、それに積み込んで山へ戻す策のようだ。
「心得た。む、どうやら子連れであるようだな!」
 そう言うと、レオンはつかつかと近づき、ちょこちょこと母猪に付き従っているうり坊の1匹を、ひょいっと捕まえてしまった。
「何をするつもりだ? レオン」
「獣とは言え、子を思うのは変わるまい。その汚れ役は我輩が買って出るである」
 そして、その言葉どおり、わざと母猪に見せつけるように前に回りこみ、にやりと笑って、走り出すレオン。煽るようなその仕草に、母猪のコメカミに、青筋が浮かんだ‥‥ような気がした。
「はっはっは。可哀想だが、囮にさせてもらうのであーる!」
 そんな母猪の怒りを背に受けたまま、走り出すレオン。
「よぉーし、いい子だ。付いてくるがいい!」
 小脇に抱えたうり坊くんを取り戻さんと、後を追いかけてくる母猪に、シーリィはお手製スリングを構えた。
「援護するよ!」
 べしべしと、母猪の周囲に、小石が降り注いだ。決して、当てようとはしない、ただ、追いかけさせる為に、驚かせているだけだ。
『山の上から、近づいてくる奴がいます。注意してください!』
 半獣化して、トラックの荷台に乗っていたはるちーが、知友心話で警告してくる。彼女の鋭敏な聴覚と、そしてソナーの瞳こと超音感視は、母親を援護するように近づいてくる大きな影を捉えていた。
「NWにしてみたら、私達の方が、おいしそうに見えるわけだし、子供奪われてるし、当然よねー」
 その姿を見て、そんな感想をもらすシーリィ。その直後、マイヤーが車を走らせ始める。
「猪達、付いてきているか?」
『ばっちり。特に母猪が怒っているわ』
 生体ナビゲーションと化したはるちーが、進行方向を指示している。子供を取られて怒らん母親はいないと言うわけだ。
「ごめんねー。もうちょっと我慢しててねー」
 そのはるちー、レオンが荷台で小脇に抱えたうり坊を、なでなでしながら慰めている。
「大猪の出方はどうだ?」
「んーと、付かず離れずってところです。こっちの出方を伺ってるって感じかな」
 醍醐の問いに、はるちーはそう答えた。どうやら彼女の『ソナーの瞳』には、等距離で追いかけてくる大猪の影が映っているようだ。
「普通の猪であるなら、このまま何事もなく済みそうであるが‥‥」
「そうも行かないと思いますよ。そろそろ街中です!」
 眉根を曇らせるレオンに、はるちーが警告を促す。見れば、ベニヤ板をコの字に組み合わせた空き地まで、もう少しだ。
「歩みを止める気配は?」
『なさそうです』
 マイヤーの問いに、彼女はそう答えた。うり坊を奪われて怒っているのか、彼女らをえさと見ているのかは、わからないが、止まりそうにはない。
 と、そのときである。
「消えた!? スピード上げたみたいです!」
 はるちーの『ソナーの瞳』は、早いスピードのものは、捕らえられない。その彼女の瞳から、大猪が消えたと言う事は、すなわち仕掛けてきたと言う事。
「押さえ込むぞ! しっかり援護してくれ!」
「OK!」
 その刹那、醍醐が大猪の後ろ側へと回り込む。
「止まりやがれ!」
 タックルの要領で、大猪の後ろ足を捕らえる彼。だが大猪は、それでもじたばたと、前に進もうとする。かなり力は強い。
「なめるなぁぁぁ!!」
 そう叫ぶと、彼の筋肉がめきょっと3割増しになった。元々丸太のように太かった二の腕が、さらにその太さを増し、じりじりと大猪を引きずり戻す。
「今だ、嬢ちゃん! 縛り上げちめー!」
「えぇいっ!」
 動きの止まったそこへ、はるちーが近づいてきて、闇波呪縛を当てる。だが、その直後、猪に異変が起きた。
「やっぱりNW化してたようであるなー‥‥」
 残念そうにそう呟くレオン。無理やり押さえ込んで10秒、その体躯には、甲殻化した鎧が張り付き、鼻から突き出した牙は、その太さと鋭さを増していた。
「任せろ! ここから先は俺の出番だ!」
 そんなNW猪に、横合いから運がそう叫ぶと同時に、蹴りを入れる。ぎろりと睨まれる彼。しかし、そこは覚悟完了している御仁なので、対峙したまま、運は逆にNW猪の正面へと回り込む。ちょうどはさみ打ちにするような形となったそこへ、さらに人数が増えた。
「貴様ごときにいいかっこさせるか! 俺にも半分よこせ!」
 まるで出口へ立ちふさがるかのように、モヒカンが反対側から現れた! どっちがモンスターだかわからないが、本人たちはノリノリで両の拳を打ち鳴らした。
「負けたヤツが餌になる! それだけだ!」
「とりあえず、案はあるが、それはこいつを倒してからだ!」
 2人がかりで、飛び掛る運とモヒカン。猪は追い立てた方が早そうとか、そのまま山まで追い出した方がいいかもとか言う提案は、脳筋思考に吹っ飛ばされている。
「「食らえ! 我が渾身の一撃を!」」
 声をそろえてそう叫ぶや否や、真横に飛ぶ運。そしてモヒカンは、金剛力増で強化した筋力でもって、現金でトレードしたスパイクハンマーを、正面から振り下ろす。怯んだそこへ、運がわき腹へドスを突き立てていた。
「コアの場所は‥‥言うまでもなさそうですね」
 そう言うはるちー。見えない部分にあるなら、超音感視を使っても‥‥と考えていたが、猪のコアは、思いっきり額で輝いている。
「それにしても、袋叩きね‥‥」
 方天戟『無右』を振り下ろそうとしたはるちーだが、目の前でドス片手に、「うらららららぁぁぁぁ!」と、げしげし刺身にした後、火炎砲弾でもってあぶりまでしちゃっている運を見て、困ったような表情を浮かべている。
「可哀想に‥‥。まぁ、これも宿命かもしれんがな」
 同情するようにレオンが言った。結局、コアを破壊するまでもなく、運とモヒカンでバラしちゃったので、とりあえず食う事にした。
「美味い不味いは問題では無い、殺った獲物は食すのが自然界の礼儀だ」
 何ぞと言いながら、しっかり血抜きして水洗いして、皮剥いで解体して、大半は事務所への土産にしている運。皆で食べる分は、薄切りにして、山椒の粉とおろし生姜に暫く漬けてから、目の前で煮立っている赤白あわせ味噌鍋の具材へと変わっていた。
「食べ終わったのは、きちんと処理して下さいね? そうしないと、せっかくPRした意味がありませんから」
 はるちーがそう言って釘を刺す。今回、猪が山から下りてきたのは、里に食べ物があったのが原因だから。
「こっちは、アレをセッティングしておいた。これで普通の猪なら、順次山へ帰っていくだろう」
 マイヤーがそう言って『衛生的な問題で、砂場はしばらく利用しないで下さい』と看板が立てられている。無論、設置したのは現在鍋奉行化している運だ。
「もう里に出てくるんじゃないよー」
 山の木々の間に戻っていく猪達に、そう言って手をふるシーリィ。囮にしてしまったうり坊くんも、母猪のところにいる事だろう。
「ま、そういうこともあるさ‥‥」
 同じように餌を求めて人里に下りてくる害獣として扱われるクマ獣人の醍醐は、タバコをふかしながら、感慨深げにそう呟いて、町へと帰っていくのだった。