BLACK・Xmasアジア・オセアニア

種類 ショート
担当 姫野里美
芸能 3Lv以上
獣人 1Lv以上
難度 普通
報酬 7.9万円
参加人数 8人
サポート 0人
期間 12/25〜12/29

●本文

●べりぃ苦しみます?
 さて、世間様がクリスマスに染まっているその頃。
「太平洋。今からファンタジーランドに行かないか?」
 社長席にふんぞり返‥‥って居ない社長・鈴本氏は、太平洋を呼び出して、そう言った。
「え? 年末のこの時期って、めっさこんでません?」
「チケットは抑えた。なんだったらヒメも呼んでやるが」
 名前を聞いたとたん、げっそりとやつれる洋ちゃん。
「まぁそれはともかく、綺麗どころは事務所の子を連れてけばいいだろう」
「ヒメはいりませんが、綺麗どころがいるならいきます〜♪」
 しかし、その後社長がぶら下げたえさに、大喜びで飛びついている。
「よし、決まりだ。藤田、手配を頼む」
 へいへい、とメールを撃つ藤やん。ルンルン気分で『可愛い子来るかなー☆』とやっている洋ちゃんを尻目に、こっそりとこう尋ねる。
「って、おい鈴本。本とに綺麗どころ呼んだのか?」
「ああ。女性じゃないけどな」
 どうやら、鈴本氏がお呼びなのは、いわゆる『可愛い男の子』らしい。相変わらずさらっと恐ろしい事を言う御仁である。

【ファンタジーランドの魅力を、道民に伝えると言う名目で、太平洋を担ぎ出した。無論、そんなものは名目に過ぎないので、金いいらしいツアーを企画してくれ。なお、綺麗どころも激しく求む!】

 まぁ、深いところは気にするな。なにせ金いいだからな!

●今回の参加者

 fa0475 LUCIFEL(21歳・♂・狼)
 fa0922 亀山 綾(18歳・♀・亀)
 fa1726 小鳥遊 日明(12歳・♂・蝙蝠)
 fa2340 河田 柾也(28歳・♂・熊)
 fa2341 桐尾 人志(25歳・♂・トカゲ)
 fa3306 武越ゆか(16歳・♀・兎)
 fa4487 音楽家(13歳・♂・竜)
 fa5279 桃木舞子(12歳・♂・小鳥)

●リプレイ本文

「はいっ! 僕らは道民に夢と希望と煩悩を与える為、東京はここ、ファンタジーランドへとやってまいりました!」
 司会進行の河田 柾也(fa2340)君、全身黄色いクマさんの格好で、桐尾 人志(fa2341)君と共にご登場。
「てかコーダ君、なんやねんその格好は」
「いや、コスプレ禁止って聞いてたんやけど、クリスマスシーズンは、クマだのネズミだの、普通の動物くらいならOKって、スタイリストのねーさんに渡されたんや」
 その相方にツッコまれ、くるりと回ってポーズを決めるコーダ君。まぁ、確かに彼の腹なら、詰め物なしでも立派なクマになる事だろう。
「それはともかく、すでに太平洋先生は、偽ロケ設定に騙され、園内の広場で、とある綺麗どころと待ち合わせているはずです。それでは、呼んでみましょう」
 キリー君がそう言って、お手手を振る。と、画面が切り替わり、亀山 綾(fa0922)ちゃんが洋ちゃんを映し出す。
「亀ラマンの綾や。すでに洋ちゃんは、一張羅着て、バス停で愛しのハニーを待っているようやで」
 そこでは、武越ゆか(fa3306)のクリスマス専用バス情報に従い空しく1人で待ちぼうけを食らっている洋ちゃんが映っていた。
「さて、現場のゆかちゃん。洋ちゃんの様子はどうですか?」
「寂しいですねぇ。ここは、地元県民のふりをして、乗り切るしかないですねっ。なお、若干安く買えるツアーもありますので、参考にしてください〜」
 レポーター役のゆかが、こっそり実況をしながら、道民の為のファンタジーランドツアー情報を、テロップで流している。
「おはよーございまーす。あの、太平洋さん‥‥ですよね?」
「こ、こんにちは‥‥。社長に言われて、来ました‥‥」
 ボーイッシュな女の子をイメージした、色違いのゴスパンク風ファッションに身を包んだ小鳥遊 日明(fa1726)と、桃木舞子(fa5279)が、紹介状らしき手紙を差し出す。リップグロスでつやつやにしてもらったメイクに、洋ちゃん完全にノックアウト。
「洋ちゃん、完全に硬直してますねぇ。若干ロリ入っていることに、まったく気付いていません」
 モニターでそれをチェックしているキリーくんがそう指摘しているが、それはこのさいドッキリと言う事で目をつぶろう。
「いやー、見事な美少女っぷりですから。まぁ、カメラの綾ちゃんが、『撮りがいがある』ってゆーとりましたから、化けレベルも格段に違うんでしょう」
 突っ込みらしく、コーダ君がそう解説してくれる。
 さて、ここで今回のルールを説明しよう。指示は全てインカムと、各種添乗員からのフリップで行う。仕掛け人は随時、その指示に従わなければならないのだ。
『はーい。それじゃあマイくん。ちょっと甘えてみてー』
 コーダ君、マイク越しにそう指示。と、緊張した面持ちのマイ、おずおずとこう切り出す。
「ゆ、遊園地なんて、春の修学旅行できたきりだから、楽しみです〜」
「仕事でファンタジーランドに来れるなんてサイコー! がんばりまーす!」
 若干硬い演技だったが、日明が美味くフォローしてくれたおかげで、洋ちゃんすっかりパトロン気分。
「「はい、引っかかりました」」
 満足げなまいむ☆まいむだった。

「わぁっ。すごいすごーい!」
 一方、マイに関しては、まだ根は子供らしく、着ぐるみダンサーとパレードに、目を輝かせている。音楽とダンスのリズムに自然と身体が揺れている彼を見て、満足そうに微笑む洋ちゃん。そんな、ほのぼのちっくな雰囲気をぶち壊す指令を、コーダ君が出した。
『日明少年、例の計画を振ってくれ』
 OK☆と、手でマルを作ってみせる日明くん。彼は、洋ちゃんのお手手にきゅっと自分のほっぺを摺り寄せて、少し離れた花壇に、いかにも急遽でっち上げたみたいな看板を、指し示す。
「あ、太平洋さん。私、あれやってみたいな☆」
「え? そ、そう?」
 そこには、こう書いてあった。

【願いを叶えろ!伝説の玉捜索隊】
・待ち受ける数々の試練。その先にあるのは幸福か悲劇か!?

「なんだこれは?」
「イベントらしいよ。たぶん、宝探しみたいなものじゃないかな」
 目を点にする洋ちゃんに、日明はしれっとしてそう言った。
 ここでルールを説明しよう。今回、ルシフが持ち込んだ龍玉が、園内のあちこちに隠されている。ターゲットは、綺麗どころのおねだりに従い、これを全て捜さなくてはならないのだ。と、ゆかちゃんが数々のスタッフを映しながら、ご案内。
「整理券システムもあるから、上手に利用してね。待っている間も、このように可愛いキャストさん達がいるから、西館屋上にいかなくても、コスプレ楽しめるわよ☆」
 やっぱり、どこぞの即売会と勘違いしているようだ。
「すでに、龍玉の配置は完了していまっせー。現場のルシフさーん?」
 一方、キリー君に言われ、隠し場所へとカメラを切り替える綾。ところが、レポーター兼仕掛け人のLUCIFEL(fa0475)はと言うと。
「そう言うわけで、今度是非水上バスのディナーを一つどうです?」
「そおねぇ、アジアじゃなくて、ヨーロッパなら考えなくもなくってよ」
 カフェテラスで、何故かヒメを口説いていた。この後の予定は? とか、お約束な台詞が、ばしばしと飛び交っている。
「って、仕事サボって、ヒメ口説いてんじゃねぇYO!」
「あ、カメラ回ってたんだっけ。えぇと、何すんの?」
 男に振る尻尾はないルシフくん、コーダくんが突っ込みを入れる。これが後に、大騒ぎを巻き起こすことになるのだった。

「しかし、めっさ人いるなー」
 冬休みシーズンと言う事もあって、家族連れから、カップルまで、どのアトラクションも一時間待ちだ。と、げんなりする洋ちゃんに、日明はこう言って微笑みかける。
「アトラクションで並ぶのはしょうがないよね、これもテーマパークの楽しみの一つ! ポジティブに楽しもう?」
「そ、そうだねー」
 美少女に言われて、やだとはいえない洋ちゃん。そこへ、綾ちゃんが、カメラの向こうからフリップを取り出す。
『えー、洋ちゃんに連絡。ここはエスコートして、絶叫系に誘ってください』
 顔を引きつらせる彼。しかし、断るわけには行かないので、日明くんを誘うことに。
「えー、あれにも乗るの? ちょっと怖いかも」
「だ、大丈夫だよっ。た、たぶんっ」
 もっとも、彼の方はまったく気にしていない様子で、そう言っている。かえって洋ちゃんの方がビビッているくらいだ。まぁ、道内にはファンタジーランドクラスの遊園地は存在しないので、慣れていないのだろう。
「なんかどきどきしますねー」
「だ、大丈夫だっ。行ってみようっ」
 屋外型のアトラクションに並ぶ洋ちゃんと日明、それにマイ君を、超望遠で撮影する綾ちゃん。ここで男を見せなければっと焦っているのか、無意味に肩をいからせて、乗り込む。
 が。
「うひょあわぁぁぁぁ! やばいって! これ絶対落ちるって! いやぁぁぁぁ!!」
 大人の事情で、カメラの入れられないアトラクションでは、それこそチキンハート全開で、わめき倒している音声だけが、辺りに響いていた。
「大丈夫ですか? 太平さん。はい、ジュース☆」
「あ、ありがとう‥‥」
 げっそりとやつれた顔で、ベンチに座り込む太平洋に、マイくんがそう言って、缶ジュースを差し出した。
「げ、激甘ッ!」
 口に入れた瞬間、咳き込む洋ちゃん。見れば、黄色いラベルのそれには『甘さマキシマム☆』と書かれている。
「え? 何かおかしい事ありました? あそこでおねーさんが売ってた奴を買ってきたんですけど」
 マイが指し示した先にいたのは、地元物産コーナーで愛嬌をふりまくゆか。地元では箱単位で買っていく奴もいるという、日本一甘い缶コーヒーがその正体だ。
「それにしても、そろそろ日が暮れてきたね。何か特別なアトラクションはないかな‥‥」
「あ、それなら、良いものが! お、大平さんが出られたら凄く面白そうだなって思うんですけど‥‥」
 日明が周囲を見回して、そう言うと、マイはてててっと簡易パンフレットを差し出した。そこには『今日の演奏家達』と題されて、彼の親戚が出ると言うステージが、記されている。なお、話は事前にマイが社長に通してあるので、問題はない。
「えっと、か、かっこいー!大平さーん、惚れるー!!」
 顔を引きつらせながら、こっそり舞台に上がっている彼に、声援を送るマイ。必要以上にちたぱたしているのは、慣れていないせいだろう。おかげで日明に『そこまでムキにならなくても大丈夫だって』と、肩ぽむされてしまう。
「えぇと、指令はこれかなー」
 そのステージを、やっとのことで終えた洋ちゃんに、スタッフから将来日記が手渡される。「読んで読んでー☆」と、興味津々のマイが覗き込む中、そこに書かれていたのは。
「彼女にチュリトスを買って手渡し。俯きながら礼をいう君を促し、2人手を繋いで歩く。掌から伝わる温もりがただ、愛しくてならな‥‥って、なんじゃこりゃあ!」
 思わず投げ出してしまう洋ちゃん。しかし、そこへゆかが駄目押しするかのよううに一言。
「太平さーん、その近くに、ヨーロッパの要塞をモチーフにした豪華なレストランがあります。予約しておきましたから、どうぞー」
 もはや拒否権はなさそうだ。まぁ、相手が女性だと思っている洋ちゃんは、ぶつくさ言いながらも、可愛い子と楽しくディナー出来るなら‥‥と、要塞レストランへれっつらGO。
「そろそろ花火が始まるみたいだよー」
 予約者限定秘密の小部屋に案内された後、日明がパンフを見ながら、〆のイベントを提案してくる。しばし悩んでいた洋ちゃんだったが、意を決して、2人を花火会場へと連れ出す。
「おお、良い雰囲気ですね!」
「さぁ、ここで男を見せるか太平洋!」
 そしてその花火会場で。見上げる日明と、良い雰囲気に。盛り上がるギャラリーをよそに、もう一組、盛り上がっている御仁がいた。
「ヒメ先生‥‥、今宵は二人で語り明かしませんか?」
「語り合っても良いけど、修羅場手伝ってね☆」
 いや、こっちはむしろデート相手と言うよりは、アシスタント確保と言った風情だったが。
「貴方の為なら、何だって手伝っちゃいますよ。なんだったら手取り足取り‥‥」
「だからそう言うのはあとにしろと!」
 うっかり口説きモードに入っているルシフに、コーダ君のやっかみ半分の突っ込みが飛んでくる。
「しーっ。静かにしないと、バレちゃいますよ!」
「うるさいなー。俺は心のチューナーなんだから、苦労しているヒメ様には、手を貸すのさ」
 女性との楽しいひと時を邪魔された彼、不機嫌そうに文句をつける。が、そんなものは家に帰ってやれといわんばかりに、文句をつけ返す司会。
 と。
「‥‥おーまーえーらー!」
 そんな彼らを地獄に叩き落すような、太平洋ボイス。
「やばっ。あーら、太平センセ、いつからそこにっ!」
「さっきからおったわ! てか、皆して何を企んでいるのだ!」
 びしぃっと綾ちゃんのカメラ越しに詰め寄る洋ちゃん。余りにも必死なので、コーダ君が気の毒そうにこう言った。
「いやー、センセがだいじそーに後ろに庇ってらっしゃる、二人の綺麗どころさんを使ってねぇ」
「え?」
 状況が理解できない洋ちゃんに、綾ちゃんがちょいちょいと手招きして、こう一言。
「洋ちゃん。ちょっと耳かし」
「なにーーー! 男ーーーー!?」
 あんぐりと口をあけてしまう彼。それこそ、綾ちゃんのカメラが回っている事も忘れて、硬直してしまった。
「ごっ、ごめんなさい〜っ で、でも、ここまでもつとは思わなかったよ〜っ!」
 平謝りの日明。しばらくそんな彼に、パクパクと口を動かしていた洋ちゃんだったが、ごきゅっとさっきの激甘コーヒーで、脳みそに栄養を取り戻すと、こう詰め寄ってきた。
「いやだって、どう見ても、可愛い女の子じゃんか! どこが男っ! ってか、もしかして両方か!?」
「「うん」」
 声をそろえて頷く日明とマイ。がくんと『_○□��』の状態にってしまう洋ちゃん。
「だ、騙された‥‥。考えてみれば、俺に美少女2人からデートの申し込みなんて、話が出来すぎていると思った‥‥」
「ケケケ、見事に騙されて。洋ちゃんが鈍いんか、この子らが綺麗すぎるんか‥‥。それとも寂しい洋ちゃんの心が、現実を認めるのを拒んではるんか‥‥。美しいって罪やね‥‥洋ちゃん」
 うちは十人並みでよかったわーと、これ見よがしにほっとしたポーズを取る綾に、「余計なお世話だーーーー!」と、憤慨しきりの洋ちゃんである。
「てか、本当に、本当に男なの?」
「うん、ホントだよ。触ってみても良いけど」
 一縷の希望をもちたい洋ちゃんがそう言うと、日明はしれっとしてそう応える。その手元には、学生手帳があり、学ラン姿の写真が、しっかりはっきり映っていた。
「ねぇねぇ、ホテルも用意してるんだけど、使う?」
「いらんわ!!」
 ゆかが、まーーったく空気を読まずに、にこやかにそう言う。即座にお断りされたそれを、横からルシフがもったいないとばかりに、チケット奪い取り、ヒメに差し出していた。
 なおこの後、めそめそと泣き濡れる太平洋へ、五段重ねの手作りケーキがプレゼントされたと言う。