アットホームXmasアジア・オセアニア

種類 ショート
担当 姫野里美
芸能 1Lv以上
獣人 1Lv以上
難度 普通
報酬 1万円
参加人数 8人
サポート 0人
期間 12/24〜12/28

●本文

●LH柏木・Xmasパーティ!
 日本のクリスマスは三連休。
 便乗商法と言うわけでもないだろうが、それに合わせて、各商店街では、飾り付けに余念がない。
 ここ、ライブハウス柏木でも、それは同じ事だった。
「よし、これであとは、募集をかければ完璧だな」
 わざわざ往復3時間かけて、ショッピングセンターから直輸入した、ブルーの家庭用イルミネーションを取り付けたマスターはご機嫌である。
「おー、綺麗になったなー」
「おされだー☆」
 相変わらずたむろってる音楽連中が、感心しながら携帯電話と言う名のデジカメをパシャパシャと鳴らす中、マスターは指先を振るとこう言った。
「ちっちっち。これで満足してちゃあいけねーぜ。クリスマスと言えばカップルの量産デーだ。燃え上がる愛にはBGMが必要だろ?」
 彼が取り出したのは、『ライブハウス柏木・クリスマススペシャル感謝デー』と言う名前の踊るお手製チラシだ。ちなみに、チケット5%オフ機能付き。
「って、こじつけかよー」
「なーんでもいーだろ。どーせ、外に行く金ねぇ奴ばっかなんだから。西洋とはいえお祭には違いないんだし、皆でわいわいやろうぜ」
 遊園地やイルミネーション通りの様に、派手ではないが、その分アットホームな雰囲気を売りにしたいらしいマスター、そう言って意味ありげに笑う。
「つまり、クリスマスライブをやれと」
「そうとも言う。んで、当日はケーキも鶏肉も用意して、酒解禁にしてやるから、友達でも知り合いでも誘って来い」
 七面鳥、と言うわけには行かないが、チキンレッグの照り焼きに、クリームシチュー、デザートのケーキ、いい加減値段も落ち着いただろう今年のワインと、それなりに豪華なディナーを用意してくれるらしいマスター。
「わーい。ただ酒ただ飯食い放題〜☆」
「アホゥ。半分は仕事だ。食った分はギャラから徴収。ま、原価にしといてはやるが」
 喜ぶ面々にそう釘を刺す彼。仕入れ表を見ると、だいたい一人頭1500円くらいなので、普通のディナーくらいだろう。
 こうして、ライブハウス柏木では、クリスマスパーティの出演者と参加者を募集するメールが、関係各位に送り込まれるのだった。

●今回の参加者

 fa0142 氷咲 華唯(15歳・♂・猫)
 fa0160 アジ・テネブラ(17歳・♀・竜)
 fa0365 死堕天(22歳・♂・竜)
 fa0684 日宮狐太郎(10歳・♂・狐)
 fa0856 実夏(24歳・♂・ハムスター)
 fa1514 嶺雅(20歳・♂・蝙蝠)
 fa1726 小鳥遊 日明(12歳・♂・蝙蝠)
 fa2105 Tosiki(16歳・♂・蝙蝠)

●リプレイ本文

「ジングルベール、シングルヘール‥‥な人も世の中いるだろうけど、ボクらはアットホームなくりすーますー♪ っと。よーし、これで良いかなっ」
 早々と鼻歌交じりで、クリスマスツリーを仕上げる日宮狐太郎(fa0684)。主に100円ショップの安上がり材料を使ったにも関わらず、ツリーは綺麗におめかしされ、淡い光を放っていた。
「結構凝っているんだな‥‥」
 完成しつつあるパーティ会場を見回して、そう呟く氷咲 華唯(fa0142)。既に、常連が連れ込んだ招待客と呼ばれる賑やかしが、あちこちで歓談中。
「せやけど、周りホンマカップルだらけや。クリスマスは恋人と素敵な夜をってトコかいな〜」
 その様子を見て、心底うらやましそうな実夏(fa0856)。まだ付き合っている異性は特に居ないと話していたので、人寂しいのだろう。
「えーなー。ほんまえーなー」
 マスターのツッコミに、俺もほしーなーー。カノジョほしーなー。と、言葉無き訴えをする実夏。おかげで「えぇい、仕事せんか独り者」と、蹴り飛ばされている。
「うう、世の中は世知辛い‥‥。でもまぁ、せっかくのクリスマスや。ちっこい子供から大人まで、もうええっちゅーねん! ってくらい、楽しんでってもらおうや」
「それはいいが‥‥、俺、こんな服しかもってないぞ? いいのか?」
 そこへ、嶺雅(fa1514)が自分の服を示して、そう言った。ゴシック風のチャイナ服。男物のヴィジュアルっぽい衣装は、ハードなカンジが、いかにもバンドかホストやってまーすと主張している。黒を基調としたそれも、コウモリらしさをアピールしていた。
「飾りてんこ盛りだから、怖がられナイかなー」
 音楽野郎のご多分に漏れず、彼もまたピアスだのシルバーアクセだのがキラキラしている。子供によっては、怖いと泣き出しちゃったりするもので、嶺雅さん、ちょっとびくびく。
「大丈夫だと思うよ。僕が怖くないし」
 その子供の部類に、確実に入っているコタがそう言った。幾分大人びて入るものの、同年代の少年にそう言われ、嶺雅さんはほっとしたように、「そうか‥‥。なら大丈夫‥‥ダナ」と答えている。
「お祭ごとだからね。そんなに堅苦しく考えなくても良いんじゃないかな。楽しく賑やかにしたいし」
 早々と白い縁取りつきの赤い帽子に、同色の半ズボンと上着、ブーツをはいた少年サンタになった小鳥遊 日明(fa1726)が、そう言った。テーブルの辺りに置いてある大きな白い袋には、マスターと一緒に詰め込んだ、演奏用の鈴や、駄菓子なんぞが入っているとの事だ。
「まぁ、あんまり歌は得意じゃないんだけどね」
「心配しなくても、歌の上手い人、沢山いるし。それに、いつもだったら、家族と一緒だし。その延長だと思えば、上手く行くと思うよ☆ 多分ね」
 自信なさそうにそう言うサンタ姿の日明に、コタはそう言って励すのであった。

「わぁ、綺麗‥‥」
 きよしこの夜が全員の合唱で流される中、会場のあちこちに並べられたキャンドルへ、火が灯される。幻想的な光景に、コタが目を輝かせていた。
「よし、ろうそくは全部点いたな。グラスは‥‥行き渡ってる?」
「OKです」
 スーツ姿で、合唱に参加していた実夏がそう確かめると、ワンピース姿のアジ・テネブラ(fa0160)が頷く。
「シャンパンの用意はー?」
 日明がそう言うと、マスターが何本か冷蔵庫から出してきた。
「ちょっと待て、中々抜けな‥‥」
「わぁぁぁ、フライング禁止ー!」
 シャンパンが抜けないと言うのは、どこの世界でもあまり変わらないもので、じたばたする日明に、コタが慌てて手伝いに行ってみたり。
 そんな大騒ぎを経て、テーブルの上に並べられた料理。チキンレッグの照り焼きから、ケーキに至るまで、20種類くらいの料理が、所狭しと自己主張中。
「はい、これ持っててね」
 コタが、照れくさそうな表情を浮かべている、自分より小さな子に、グラスを持たせ、子供用シャンパンを注ぎ込んでいた。それらのお膳立てが全て整うと、サンタ姿に着替えた実夏が、高々とそれを掲げる。
「「「せーの、かんぱーーーい」」」
 ぱぱんっとクラッカーが鳴り響き、わぁぁっと歓声が上がった。
 そのまま、お喋りに興じる招待客。皆、お腹が減っていたらしく、料理が瞬く間に消えて行く。だが、せっかくのワインは、あまり消費されていなかった。
「酒、あんまり出てねぇなー」
 誰か飲まないのか? と言いたげなマスターが、出番待ちのTosiki(fa2105)を見ると、彼はノンアルコールのシャンパンを、グラスに注いでいる真っ最中だ。
「って、楽しみにしてた割には、ジュースかよ」
「だって俺、飲めな‥‥」
 じと目でツッコむマスターに、チキンレッグ片手にそう答えるトシ。
「そうそう。まだ二十歳前だしね」
「って、今年なったんじゃ‥‥」
 未成年はお酒飲んじゃダメだヨと、そう言う嶺雅に、死堕天(fa0365) が「中身は20だよね‥‥」と言い始める。
「成人式まだだから。でもその辺どうなんだろ」
「誕生日がくるまでは未成年って事にしとけ」
 悩み始めた嶺雅さんに、マスターがそう言った。と、やっぱりノンアルコール組の実夏がこう言い出す。
「だいたい、ボーカリストにとって喉は商売道具やん。酒で傷でもついたらどないすんやねん」
「まー、それもそーだけどよー」
 何年もこの業界で食っているだけあって、そのあたりの理屈は心得ているようだ。
「それに、マスターだって飲んでないだろ」
 実夏の指摘どおり、マスターも先ほどからお茶組。だが、そう言われた彼は、意味ありげな顔でこうきり返す。
「酔っ払い料理、そんなに食いたいか? お前ら」
「「「イヤデス」」」
 とんでもない味になるのは、火を見るより明らかだ。ぶんぶんと首を横に振る3人だった。

 座が盛り上がってきた所で、ライブハウスらしく、ステージタイムと相成った。
「なぁ、二曲歌っても良いのか?」
 ケイが舞台袖と言う名のバックヤードでマスターに尋ねると、どうやら、大丈夫のようだ。
「良かった。時間ないからダメだとか言われたら、どうしようかと思った」
 ほっとした表情のケイ。演奏者の気分と言うのは、少なからず観客に伝わってしまうもの。納得しないまま演奏してしまっては、せっかくのクリスマスが台無しになってしまうから。
 作ってきたのは、オリジナルのクリスマスソングが二つ。皆でわいわいと盛り上がっているようなイメージの明るいメロディと、バラード調のラブソング。両方とも、アコースティックギターを演奏楽器に選んだものだ。アップテンポの曲に、クラシックな楽器はどうかなと、一瞬躊躇したが、それはそれで雰囲気が出ると言うもの。全体的に子供っぽいラインなのは、本人がまだ若いから、仕方のない事なのだろう。それでも、会話に夢中の恋人達には、調度良いBGMだったようだ。
「はっはっはー。楽しい気分にさせてもらったぜ。それじゃ、俺も一曲弾かせて貰うかな!」
 出番が来たトシが、おもむろにサンタ帽子を被り、ステージへと乱入してくる。彼は持ち込んだリモートキーボードを鳴らし、定番クリスマスソングを、やたらとアップテンポに弾いてみせる。音源は同じ様にクラシックなので、ややジャズテイストなアレンジとなっていた。最近は、若い人達にも人気があるそうなので、このくらいでも良いのかもしれない。
「曲だけじゃ寂しいな。おし、出来た」
 と、全編インストルメンタルなトシのキーボードに、少々物足りなさそうなヴァレス、何やらメモっていたが、満足したように立ち上がる。舞台では、トシが曲をメドレーにして、最後はお正月ソングで〆ていた。
「聖夜たぁ良く言ったもんだが、俺はいつでもごーいんぐまいうぇいだ。行くぜー!」
 そう言うと、マイクでシャウトするヴァレス。それに合わせて、トシがメロディを変えた。曲自体は、あらかじめ彼から貰っている。後は、指定された音源で、精一杯弾くだけの事。
 彼の曲は、最初こそ高音で、スローテンポに始まったものの、ワンフレーズ終わった後、急にメロディラインの速度が上がる。早弾きと言うわけではなく、そこでテンポが少し上がったようだ。

白い天使達が奏でる賛美歌
一緒に歌おう綺麗なWhite Merry Xmas

夜明け時の空を見上げると
舞い降り始めていた白い天使達
白が世界を鮮やかに染め上げてゆく
恋人達の季節

「ステキな曲‥‥」
 アジが素直にそう言った。と、サンタ姿の日明が、まるで誘うようにこう言う。
「どうそ、アジさん。一緒に踊ろう?」
 手を取ったまま、くるりと回る彼。つられて一緒に踊ってしまったものの、彼女は申し訳なそうに答えた。
「あ、でも私、この後出番が‥‥」
 既に相方の実夏は着替えを終えている。音源もマスターに渡した後なので、後は次の出番で歌うだけだ。
「じゃあ、一緒に歌おう。ね?」
「はい‥‥」
 喉の調子を整えるのには、軽く声を出すのが一番だ。ウォーミングアップに使ってしまって申し訳ないとは思ったが、一緒に歌う事そのものは、悪い事じゃない。そう思い直して。
 歌い終わると、両側から、サンタ姿のアジと実夏が、キャンドルを持って舞台上にあがる。曲は、しっとりとバラード調にアレンジされたクリスマスソング。
「聖夜に祝福を‥‥」
 アジの歌声に合わせるよう、綺麗なハーモニーを見せる2人。まるで、サンタに姿を変えた天使と、それを見守る精霊のように。
 マスターが、照明に雪の模様を入れてくれる。外は星空が見えるほど乾いていたが、キラキラと瞬くイルミネーションは、充分にその代わりを果たしてくれた。
「次は英語曲。知らない奴もいるかもしれ無いけど、まぁ聞くだけ聞いてね」
 嶺雅がそう言ってピアノを奏ではじめる。海外の曲と言うのは、中々知名度が上がらないが、どこかで聞いた事のあるメロディばかりなので、客の中には、一緒に歌いはじめる者もいる。もともと、食事の間に流せる曲と言うのを前提にしていた為、それで充分だった。
「メリークリスマス! 皆楽しんでるかな〜?」
 充分に観客の興味が引かれたところで、再びヴァレスが乱入した。逆に、実夏とホールへと降りて行ったアジは、ジンジャークッキーを子供達に配りながら、こう言う。
「最後は皆さんで、ジングルベルを合唱したいと思います」
「皆の声も、俺らに聞かせてや」
 と、それを受けて、日明が背中にかついたサンタ袋から、鈴を出し、客へと配って歩く。
「はい、どうぞ。みんなでこれで、最後に一緒にしゃんしゃん、って振ってね」
 小さな子供には笑顔で。目の前で鳴らして上げると、真似して同じ様に振ってくれた。
「えぇと、これとこれを繋いで‥‥っと」
 一方舞台では、観客に鈴を配っている間に、トシが、楽器の音源を、店に設置してあるものから、自分のノートPCに繋げなおし、ホールを回れるようにしていた。
「そっちはどうだ? ケイ」
「何時でも大丈夫だ」
 もう1人、ケイの方も自前のギターを持ち込んで、調整中。
「俺、楽器は全くダメなんだけど‥‥」
 歌い終わった嶺雅さんがそう言うと、日明が「だったら、これよろしく」と、鈴を手渡す。まぁ、このくらいなら、楽器の苦手な自分でも、どうにかなりそうだ。
「ちょっとくらい音痴でも気にしないでね! 最後は皆で合唱しよう! すべての人に、メリークリスマス!」
「メリークリスマス!」
 夜のライブハウスに、ジングルベルの曲が響き渡る。こうして、パーティはつつがなく終了するのだった。

 翌朝、片付けがひと段楽した頃。
「あ‥‥あの‥‥、今日はありがとうございます‥‥」
 アジが、少し恥ずかしそうに、実夏に礼を言っていた。
「ん? いや。俺ぁ自分の仕事しただけやし」
 眠そうな彼、目をこすりながら、そう答える。そんな彼に、アジが差し出したのは、少しだけ豪華にラッピングされたクッキーだった。
「あと、これ‥‥クリスマスプレゼント‥‥」
 隙間から良い香りが立ち上っている。頬を染めながら、そう言う彼女。本人にとっては、実夏を意識したわけではなく、ただ純粋にお礼とお祝いの意味を込めただけだったが。
「ええの?」
「はい。お礼って意味も含めて・・・・。余りもの‥‥みたいなものですけど‥‥」
 聞きかえす実夏に、彼女はそう言って頷く。明らかにシングルと公言した彼に、プレゼントを差し出すあたり、恋愛感情には少し疎いのかもしれない。
「ありがとさん」
 だが、実夏はそれ以上何も言わず、ただその感謝のプレゼントを受け取っていた。その耳には、マスターが鼻歌で奏でる、ヴァレスのクリスマスソング。

皆が想い人と体を寄り添い幸せそうな顔で
今という時に感謝する

「こういうクリスマスも悪くない‥‥。楽しかったな‥‥」
 満足そうに呟くアジ。あいまいになった過去の記憶。でも、その中に、こんな心地よい充足感があったような気はする。
「そか。楽しんでもらえたなら、俺も幸せ。ごっつええクリスマスプレゼントやわ」
 その表情に、実夏はそう言ってくれた。誰もが楽しめるクリスマス。それが実夏の目標だった。その『誰しも』は、大人も子供も、スタッフも関係はない。

白い天使達が奏でる賛美歌
皆には届いているかな? この幸せな歌声が
明日には終わってしまえど 想い出はいつまでも心に残る
だから一緒に歌おう 綺麗なWhite Merry Xmas

 だから笑顔で迎えよう。ハッピーハッピークリスマス。