邦人達と門鞍の出会いアジア・オセアニア
種類 |
ショート
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担当 |
氷邑
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芸能 |
3Lv以上
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獣人 |
1Lv以上
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難度 |
やや易
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報酬 |
6.3万円
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参加人数 |
7人
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サポート |
0人
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期間 |
09/29〜10/02
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●本文
老舗の呉服店『かどくら』の4代目店主、門鞍将司。
彼は呉服店店主の他に、もうひとつの顔がある。
病んだ心を持つ『客』を持て成すカウンセラーだ。
着流しをラフに着こなしていることから、その筋の業界では『着流しカウンセラー』と称されている。
「ふあぁ‥‥」
鼠色の和服に黒い紐でたすきがけという姿の将司は、つい欠伸をしてしまった。
「カウンセリングが無いというのは良いことですが、仕事が無いのはつまらないですね」
と、カウンセラーらしからぬことを口にした。
その時『かどくら』に客が訪れた。
「いらっしゃいませ」
礼儀正しく対応し、客を出迎えたのは良いが‥‥その人物、いや、人物達は一風変わっていた。
「変わった場所だねぇ」
ギャンブラー風の女性が、不思議そうな顔をして店内を見回している。
「何か、地味ーな衣装ばっかだねぇ。もっと派手なのないの?」
展示してある着物を凝視して、派手な服装に身を包んだ人物が訪ねた。
この人達は、一体何者なのでしょうか‥‥?
狐につままれたような表情の将司に、世話役と思われる執事と思われる男性が事情を説明し始めた。
「突然のご訪問、申し訳ございません。私は、この方々の世話係を勤めております執事邦人と申します」
執事邦人は、胸ポケットから名刺を取り出し、将司に手渡した。
「この方達は、何者なのですか?」
「この方々は、気楽邦人異界から人間界に遊びに来られた「邦人」と称される皆様です。サイコロを持っている女性は「ギャンブラー邦人様」で、派手な格好をされている殿方は「気楽邦人様」でございます」
執事邦人は二人しか紹介しなかったが、他数名、邦人らしき人物がいる。
「あらあら、珍しく賑やかだと思ったら、大勢お客様がいらしたのね」
のほほんと情況を見て、微笑んでいるのは『かどくら』先代店主である将司の母、光栄。
「お母さん、そんな呑気なことを言っている場合では‥‥」
「いいじゃない。そうだわ、今日は臨時休業にしてお茶会を催しましょう」
お茶会ですか、それは宜しゅうございますねと大喜びの執事邦人は張り切っている。
他の邦人達も「賛成ー!」と大はしゃぎ。
こうして、邦人達と門鞍親子のお茶会が開催されることとなった。
面白ろおかしいお茶会になるかもしれませんね‥‥と、将司は不安になったが、たまには羽目をはずすのもいいでしょうと開き直った。
<主な登場人物>
門鞍将司:呉服店『かどくら』4代目店主兼カウンセラー。生真面目な性格。
門鞍光栄:将司の母。おっとり、のほほんとした女性。
執事邦人:「邦人」と称される謎の人物たちの執事(世話係)
ギャンブラー邦人:ギャンブル好きの姉御肌。
気楽邦人:派手な衣装を好むお気楽極楽な性格の男。
※その他の人物(邦人含む)は自由に設定してください。
※ストーリー展開は、お笑い傾向となります。
成長傾向:発声、芝居、演出
●リプレイ本文
●お茶会を始めましょう
「今日は、お客様が大勢いらしたので嬉しいですわ〜」
変わり者揃いの邦人達を客と勘違いした門鞍光栄(葉桜リカコ(fa4396))は、手馴れた手付きで準備を始めた。おっとり、のほほんでなければ、突然の訪問客に慌てふためいていただろう。
お茶会の前に、まずは会場となる客間をお掃除しないと、と箒を手に張り切る光栄。
「お母さん、張り切っていますね。今日一日、お休みしてもバチはあたらないでしょう」
楽しそうな母の様子を見た門鞍将司(百鬼 レイ(fa4361))は、台所に向かう前にその様子を見て微笑んだ。
やかんでお湯を沸かしている間に、食器棚から人数分の湯呑み茶碗を用意しようとしたが‥‥
「そういえば、普段、お茶の用意はお母さんがしていたんでした‥‥」
緑茶、玄米茶、ほうじ茶等の茶葉は、日本茶好きの母が多数取り揃えていていつでも用意できるようにと、わかりやすい場所に置いてあるのが不幸中の幸いである。
「お茶菓子は、いつもここに用意してあるんですよね」
ニッコリ笑い、将司は食器棚の一番高い位置にある引き出しを開けた。そこには『かどくら』御用達の和菓子店『だいこく』の豆大福、みたらし団子、きんつば、すあま等、様々な甘味が揃えられていた。子供の頃、甘味の誘惑に勝てずに母の目を盗んでは食べたことをふと思い出す現店主。
「光栄殿、手伝うことはないであるか? どうも落ち着かん」
そわそわしながら、光栄の手伝いを申し出る堅物邦人(ダンディ・レオン(fa2859))。
「あら、私としたことが‥‥。お客様を放っておいたりしたらいけませんね〜。ここは良いですから、お店のほうでごゆっくりしてらして」
「し、しかし‥‥」
その時、助け舟が。
「お母さん、湯飲み茶碗はどこにあるんですか?」
「ああ、それでしたら‥‥」
説明するよりは、あなたが用意したほうが早いですと将司に言われた光栄は、申し訳ありませんが‥‥と、堅物邦人に客間の掃除を頼んだ。
「頼まれたからには、綺麗にしないとな」
堅物邦人が張り切ったこともあり、客間は見違えるほど綺麗になった。
●その頃の店内
派手なアロハシャツに大量のアクセサリをつけた「お気楽極楽」がモットーの気楽邦人(鳳雛(fa5055))は、物珍しそうに店内に展示してある着物や小物を見ていた。
「この服、色は俺好みなんだけどなぁ。もうちょい柄が派手だったらねぇ」
おぼっちゃま邦人(マリアーノ・ファリアス(fa2539))は、着物コーナーの隣にある帯を見ていた。記念にお持ち帰りしたい様子だったが、ボディーガードを兼ねた執事邦人(伏竜(fa5054))に「坊ちゃま、いけません」と窘められた。おぼちゃま邦人が欲しいと駄々をこねるが、上手く言いくるめた。流石は執事。
●お茶のご用意ができました
「皆さん、お待たせしました。お茶の用意ができましたので客間のほうへどうぞ」
将司の案内で、店内にいた邦人達は客間へ。
会場である客間の檜製テーブルには、人数分の湯飲み茶碗と急須、種類豊富な茶葉、和菓子が用意されていた。
「皆さん、ごゆっくりしてくださいね。お茶は色々ありますから、お好きなものをどうぞ」
興味を示し始めたのは、おぼちゃま邦人だった。朱塗りの茶筒の蓋を開けると、匂いを嗅ぎ始めた。
「おい、おまえ。これは何というお茶だ?」
坊ちゃま、そのようなお言葉遣いはいけませんと執事邦人に注意されるがお構いなし。
「小さいのにお目が高いですわね。それは京都の老舗から取り寄せた「宇治茶玉露」ですわ」
「ここでは、高級なお茶なのです」
門鞍親子の説明に「ふむ、そうか。これは良い品だ、さすがは老舗といったところか」とご感心。
「ボクはこのお茶を飲む」
「僭越ながら、私も、坊ちゃまと同じものをいただきます」
光栄が手際良くお茶を淹れると、二人に「どうぞ」と微笑みかけて湯呑み茶碗を差し出す。
「見事な器だ。これは何焼きだ?」
焼き物にも興味を示された様子のおぼっちゃま邦人。
「それは「伊万里焼」の工房で作られたものです。今は亡き祖父が買い揃えたものです」
「おまえ達の祖父は、見る目があるんだな。感心、感心」
お茶のお味のほうは‥‥おぼちゃま邦人にはまだ早すぎたご様子。
「に‥‥苦い‥‥。これ、口直しの菓子を!」
「はーい、ただいまー!」
犬のような耳と尻尾を振りながら、可愛らしく登場したのは見習いの執事邦人(仲間好色(fa5825))。本人はチョビヒゲ付け、大人っぽく振る舞っているが、言葉遣いは治せないようで‥‥。
苦味に耐えられないおぼっちゃま邦人は、見習い執事邦人が持ってきたきんつばを一口で食べた。
「これは美味だ! もうひとつ所望する!」
「はい、どうぞ♪」
もっと召し上がってくださいね、と、光栄は皆にも和菓子を薦めた。
掃除でお疲れ気味の堅物邦人には、将司がほうじ茶と豆大福を差し入れた。
「お疲れ様でした、堅物邦人さん。甘いものを食べると、疲れが取れますよ」
「そ、そうか。では、いただくである」
ぶっきらぼうに言うと、堅物邦人は豆大福を頬張ったのはいいが、胸につかえてしまい、慌ててほうじ茶で流し込もうとしたが‥‥
「あっちぃー!!」
舌を火傷してしまった。
「大変ですわ、すぐ、お水を持ってきますね」
光栄は、パタパタと台所に行き、コップを水に酌むと堅物邦人に手渡した。
「‥‥ふぅ」
●気楽にいきましょう
「お茶会ってのは、そんな感じなんで堅苦しいものなのかい? だったら、俺はヤだぜ?」
気楽主義の気楽邦人には、退屈なご様子。
「物事を難しく考えないでさ、素直に「この茶美味い」「苦い!」「こんなもんじゃね?」とか、正直にいこうや」
気楽邦人はお茶に目もくれず、テーブルに茶菓子を適当に食べている。
「おっ、それ美味そうじゃん。いただきっ!」
「それ、ボクの〜!」
おぼちゃま邦人が食べようとしていたすあまを横取りし、パクッと口の中に入れて味わう気楽邦人。
「‥‥超甘ぇ」
「気楽邦人様、私達は招かれた客だ。礼儀正しくしなければ駄目だろう」
「わーってるよ。作法なんて関係ねえよ、お堅いこと言うなって。な? お二人さん」
話題を振られた門鞍親子は、一瞬、困った表情をした。
「お二人とも、お茶をお持ちしました」
見習い執事邦人がお盆に載せて持ってきた湯呑み茶碗の中見は、玄米茶だった。運ぶ最中、見習い執事邦人が転びそうになったので、執事邦人が慌ててフォロー。
「ありがとう」
「今度は気をつけるんだぞ」
「みしきくんも、玄米茶飲む。おばさん、淹れて下さい」
見習い邦人の玄米茶を用意した光栄は「はい、どうぞ♪」と屈んで手渡した。
「子供扱いしないでなの」
「ご、ごめんなさい‥‥」
子供とはいえ、執事は執事。大人と同じ扱いをしてほしいお年頃である。
お茶に満足したのか、それとも飽きたのか、おぼちゃま邦人は客間にある壷や掛け軸を見ては、これは何処何処のものだな、と鑑定。専門家には敵わないものの、大まかな目利きができる様子。
「おぼちゃまと仰られていることもある、見事な知識ですわ」
「感心しました」
門鞍親子に褒められ、少し得意気なおぼっちゃま邦人はご満足。
「上流階級の人間として、これくらいの教養は常識として備えていなければならないのでね」
●秋の景色を楽しみましょう
将司がカーテンを開けると、庭にある花壇にはいっぱいのコスモスが咲いていた。
「もう、すっかり秋の風情なんですね‥‥」
初めの内は、邦人達のパワーに圧倒されて軽く戸惑っていたものの、コスモスを見るなり、冷静沈着な将司に戻った。
「そこのおまえ、ボクは今度はほうじ茶とやらを所望する」
「俺はきんつばプリーズ♪」
「我が輩は‥‥豆大福をもうひとつ」
●最後は紅葉酒
場の空気に慣れてきたのか、将司は本職が暇なので邦人達のカウンセラーを行うことにした。
「(悩みを解決する側の『気楽邦人』には。お悩みが全く無さそうに思えるのですが‥‥」)
もう少し、羽目を外してもいいですよね? と、将司は冷蔵庫から日本酒一升瓶を取り出した。
「皆さん、お名残惜しいですが、これでお開きにしましょう。最後は「紅葉酒」といきましょう。未成年の邦人さんたちには、ミネラルウォーターも紅葉を浮かべてありますから大丈夫ですよ」
折角ご店主が用意してくださったので、いただきましょうと言い出したのは執事邦人。
「茶会の締めが酒、ってのはいいねぇ」
乗り気の気楽邦人。
「我が輩は、酒は飲めんのだが‥‥」
店主の心遣いを無にするわけにはいかない、と、堅物邦人も飲むことに。
「皆さん、今日は『かどくら』主催のお茶会に参加してくださってありがとうございました。縁もたけなわですが、この辺でお開きにしたいと思います」
将司の音頭で、乾杯を始めた。
紅葉酒の反応はというと‥‥意外と好評であった。
「将司〜お代わり〜♪」
その中で、一番飲みまくっていたのは気楽邦人だった。
お茶会と、いうよりも、最後は宴会で日が暮れ、夜になった。
●後片付け
酔っ払った邦人達は、酔いつぶれた。
おぼちゃま邦人と見習い執事邦人は、はしゃぎすぎたのか眠っている。
「楽しいお茶会でしたね、将司さん」
「そうですね。たまには、こういうのも良いものです」
「邦人さん達、また来てくださると良いですわね」
「それはどうでしょう?」
お茶会は、親子、邦人共に楽しめたようであった。