突撃! アイドルおやつアジア・オセアニア

種類 ショート
担当 氷邑
芸能 1Lv以上
獣人 1Lv以上
難度 やや易
報酬 0.7万円
参加人数 8人
サポート 0人
期間 10/31〜11/04

●本文

「う〜ん‥‥」
 上層部から、ドッキリ企画番組を何か考えるよう言われたプロデューサーは相当悩んでいた。
 ドッキリのお約束といえるのは「やらせ」「寝起き」「いきなり」と相場が決まってるが、それではありきたりすぎる、もっと斬新なものを‥とかなり拘っていた。
 気分転換にと思い、先程収録を終え、挨拶に訪れたアイドルから貰ったチョコレートを一口。その時、何かが閃いた。

「そうだ! いきなりアイドルからお菓子を貰えばいいんだ!」
 
 というものの‥ただ貰いに行くだけでは芸がない。それではドッキリにならない。
 ドッキリ‥驚かし‥怖がる‥。
 それらを反芻し、思いついた企画は『お化けに扮してお菓子を貰いに行く』だった。
 ハロウィンだからこれでいいか、と割り切り、プロデューサーは早速企画作りに精を出した。

『突撃! アイドルおやつ』では、お化けの仮装をしてアイドル達からお菓子を強奪、もとい、分けて貰う出演者を募集しています。
 皆さんで番組を成功させましょう!

●今回の参加者

 fa0481 石榴(22歳・♀・猫)
 fa0485 森宮 恭香(19歳・♀・猫)
 fa3158 鶴舞千早(20歳・♀・蝙蝠)
 fa3309 水葉・優樹(22歳・♂・兎)
 fa3652 紗原 馨(17歳・♀・狐)
 fa3871 上野公八(23歳・♂・犬)
 fa3890 joker(30歳・♂・蝙蝠)
 fa4319 キバ(12歳・♂・犬)

●リプレイ本文

●第一のターゲット
 森宮 恭香(fa0485)は、黒ずくめ、裾の長いスカート、黒のヴェールと顔色悪めのメイクという魔女の仮装でアイドルを驚かすことに。
「そういうの結構好きだから、目一杯楽しませてもらおうかにゃ」
 妖しい笑顔でクスリと笑うと、不気味な雰囲気が倍増している。森宮がドッキリを実行する前に、スタジオ周辺で黒い野良猫を三匹ぐらい探し出し「後でたーんと餌をあげるから」と言い、手伝いを依頼した。魔女には使い魔、という拘りだ。
 控え室が並ぶ廊下でアイドルが帰って来たところを狙い、猫にその人の近くまで行かせて驚かす、という手段を早速実行。
 森宮のターゲットは、歌番組の収録を終え、控え室に戻る最中の松永彩里。足下から「にゃー」と猫の鳴き声がしたので、猫大好きの彩里は即反応し、黒猫の頭を撫でようとしたが、黒猫はふいっとかわし、森宮が待つ薄暗い廊下突きあたりにおびき出させた。 猫を抱き上げ、妖しい笑み神秘的な雰囲気で
「いらっしゃい‥‥いたずらをご所望? それともお菓子を下さるかしら?」
 と、スモーク焚きの演出と、魔女の演技で異様な雰囲気を醸し出す。
 彩里は何!? とたじろぎ後ずさりするが、他の黒猫に退路を塞がれ、不気味にニャーニャーせき立てるように鳴き、彩里ににじり寄る。
「わかってないのかしら‥‥『トリック・オア・トリート』。お菓子をくれなきゃ、私もこの子達も悪戯しちゃうわよ」
 ああ、ハロウィンね、と気付いた彩里は「ちょっと待ってて」と言うと、控え室からプチチョコレートの詰め合わせを森宮が差し出した小さな籠に入れた。
 氷の笑みで
「‥ハッピーハロウィン‥‥」
 と彩里とすれ違う瞬間に半獣化して去った。
「ね、猫耳魔女っ!?」
 彩里の驚き具合を見て、森宮は「やったね♪」と心の中で呟く。
「これ視聴者プレゼント、だよね? 喜んでくれるかな?」

●第二のターゲット
 鶴舞千早(fa3158)とjoker(fa3890)の二人は、半獣化して蝙蝠の羽を出し、吸血鬼に扮するという共通点から行動を共にすることとなった。
「アイドルに向かって仮装をして『お菓子くれ〜』ですか‥。何か子供に戻った気分で楽しそうですね」
「それもそうだけど、脅かしてお菓子を貰うという目的を忘れないでね」
 上手くお菓子を貰うことができればいいが、普段からお菓子とかを沢山食べているようなアイドルもいれば、そうでないアイドルもいる。そう想定した鶴舞は、万一に備え、あらかじめお菓子を用意していた。もちろん、それらは視聴者プレゼントに回す予定。その辺はスタッフが何とかしてくれるだろう。
「jokerさん、その鞄、何が入っているんですか?」
「これ? アイドル達の写真集やCDが入っているんだ。ポスターとか」
 あくまでメインはアイドル、という彼なりの考えの上での行動だ。
 ターゲットとなるアイドルのマネージャーから、時間帯を聞いておいたので控え室特攻のタイミングはバッチリである。
「じゃ、行こうか」
「はい」
 二人が乗り込んだ控え室にいたのは、ウィスパーボイスが好評の歌手、遠間由樹。
「な、何ですかいきなり!?」
 突然の訪問者に、由樹は驚いた。
『トリック・オア・トリート』
 二人の声は見事なまでにハモっていた。
「はぁ‥」
 たじろぎながらも、由樹は鞄の中に入れてのど飴を差し出した。
「これだけ?」
「私、今ダイエット中なので‥」
 と申し訳なさげに答える由樹。 
「由樹さん、あなたのファーストアルバム『愛に染めて』の宣伝をしてください。コレつけて」
 jokerが由樹に黒い猫耳ヘアバンドと猫尻尾をつけ、アルバムを差し出していきなり宣伝するよう勧めた。戸惑いながらも、由樹はアルバムの宣伝を始めた。その隣では、jokerがアルバム宣伝ポスターを掲げて協力していた。
「楽しかったですね」
「宣伝もできたし、大成功だね」
 君達、ドッキリとお菓子を貰うのを忘れていないかい?

●第三のターゲット
 淡い緋色の着物を着て、完全獣化して黒毛の猫又に扮した石榴(fa0481)と、同じく完全獣化し、石榴が用意してくれた黒のタキシードをマントを羽織ってファントムに扮した水葉・優樹(fa3309)は、ターゲットのアイドルが楽屋に来るのをじっと待っていた。
「普段こんな格好滅多にしないからな‥何だか変な感じだ」
 慣れない衣装からなのか、石榴と一緒なのだからか、水葉は落ち着いていない。石榴はおどろおどろしそうな骸骨、自前のババ・ヤガーを抱えながら
「優樹さんに貰った冬華だけど‥尻尾出すための穴、あけたくなかったから‥今回お仕事に使えなくて、ごめんねっ? 今度また別のお仕事で機会作るね‥。えっと、改めてありがとう、大事にするよっ‥ダイヤモンドダストもねっ」
 と小声で照れながら、石榴は水葉にそう言った。水葉は石榴と以前依頼で一緒になったことがあり、それ以来彼女を意識するようになっている。それ故、彼女といると落ち着かなく、真っ直ぐ顔を見られないでいる。
 楽屋に戻って来たのは、お笑いアイドルのみかん。二人はマネージャーからみかんが戻るタイミング、お菓子の有無を確認していた。
 勢い良くドアを開け、二人同時に「とりっく・おあ・とりーと! 悪戯嫌ならお菓子をちょーだいっ」とみかんに言う。
「な、何やの!?」
 いきなりの登場に驚くみかんに対し、二人はお菓子頂戴とねだる。
「お菓子を渡してもらおうか‥でなければ‥」
 マントを翻し、迫りつつ来る水葉の行動に「なる‥」と納得したみかん。彼女はボストンバックの中から、ロイヤルビスケットとキャラメル、チョコスナックを取り出すと「ほい」とあっさり手渡した。
 二人のドッキリ、お菓子を貰いは成功した。
「慣れない仕事で大変だったけど、ま、これはこれで楽しかったかな。石榴さんとも並んで仕事できたし。普段なら俺は撮影する側だから、こんなことなかなか無いからね。でも‥どっちかって言えば、撮る仕事の方が好きかな。その方が‥その‥真っ直ぐ見ること出来るから」
「優樹さん‥」
 このまま甘いムードにもつれ込みかと思いきや
「このお菓子、視聴者プレゼントだね」
 石榴のこの言葉で雰囲気が一変した。

●第四のターゲット
 紗原 馨(fa3652)、上野公八(fa3871)、 キバ(fa4319)の三人は、神社ドッキリに挑戦することに。ハロウィンに合わないが「日本と言えば肝試しです♪ それに仮装テーマは『お稲荷さんと狛犬』ですから」とスタッフを説得した。
 エレベーター前に簡単な鳥居を設置し、左右に完全獣化して阿形の狛犬役の上野、吽形の狛犬役のキバが座って待機し、エレベーター内に完全獣化したエレベーターガール姿の紗原が隠れて二度ビックリを狙う方針だ。
 ターゲットは新人アイドル、星河ひかり。ひかりがエレベーターに近づいたのを確認したキバは、携帯で紗原に合図。ひかりがエレベーターに乗ろうとすると‥上野が首を彼女のほうに向け、
「お菓子ちょーだい!」
 と脅かす。驚いたひかりが困惑している間に上野は床に倒れこみ、ゴロゴロと転がりながら「お菓子ちょ〜だぁいよぉ〜」と駄々っ子のようにぐずる。
「お菓子くれなきゃやだー」
「やだもん…ぐすん」
 最後にはキバと共に、床に突っ伏して啜り泣く。
 解放された、と安心したひかりはエレベーターに乗り、エレベーターガールに「一階までお願いします」と言うが‥反応が無い。
「あの‥」と遠慮がちにエレベーターガールに声をかけると‥
「トリック・オア・トリート!!」
 と獣姿の紗原が振り向き、お決まりの台詞を言う。
「きゃー!!」
 エレベーターにひかりの悲鳴が響く。
「あー、脅かしちゃったんだからオアじゃないですかねぇ‥。あの‥お菓子ください‥」
「これしかないですけど‥」
 ひかりがショルダーバッグから取り出したレモン味のグミを、今にも泣き出しそうな表情で紗原に手渡す。
「ついでだから、写真も取るね。あ、これにサインしてくれるかな?」
 ポラロイドカメラで撮影後、ひかりに写真を手渡しサインをさせた。
 手の込んだドッキリは大成功だったが、お菓子を貰うのはやや失敗に終わった三人だった。

●貰ったお菓子はどうなる?
「皆、良く頑張ってくれた。君達のおかげで、お菓子がこんなに集まったよ。ご苦労様」
 目の前にあるお菓子を目にしたプロデューサーは、番組成功に気を良くしていたが‥自分のものだと勘違いした上野が「わーい」と喜び、その場でお菓子をがっついた。
「君、それは視聴者プレゼントだぞ!」
「視聴者プレゼント? なにほれ? これは俺の物‥ゴフッ!」
 プロデューサーの強烈なツッコミに、上野は驚いた。
「上野君、食べた分のお菓子買ってきて。自腹でね!!」
 上野はご立腹のプロデューサー命令により、急いで食べた分のお菓子を買いに走った。
 紗原がゲットした星河ひかりのサイン入りポラロイド写真は、お菓子詰め合わせセットと共に抽選で一名にプレゼントされることになり、残りはお菓子の詰め合わせと、ドッキリ企画参加者のサイン色紙をプレゼント、ということになった。

 放映当日。
 番組自体は意外にも視聴率が高かったが、プレゼントの抽選結果はイマイチで終わった。
「う〜ん、おやつを持っているアイドルって少ないんだな。ダイエットしてる子が多いからか‥?」
 プロデューサーの反省点はそれだけだった。他にもあるだろう。