商店街を宣伝しよう!アジア・オセアニア

種類 ショート
担当 氷邑
芸能 1Lv以上
獣人 1Lv以上
難度 普通
報酬 1万円
参加人数 10人
サポート 0人
期間 11/12〜11/16

●本文

 とある商店街の隅っこにある八百屋。そこでは、重大な問題があった。
 近くに大型スーパーが最近開店したため、八百屋を初めとする商店街の店の売り上げが赤字続きのため、店仕舞いをせざるを得なくなったのだ。
「三代続いたこの八百熊も閉店かぁ‥おらぁ、悲しいぜ‥」
 店前で、店主の親父は大泣きしていた。みっともないからおやめよ、というおかみさんの声など、全く届いてはいない。
「父ちゃん、この店のアイドルを募集していっそのこと閉店セールでもするか?」
 坊主頭の息子の案に、そうするか‥と肩を落としながら同意する親父。
「どうせなら、閉店は商店街全体で明るくいこう! そうと決まれば、早速交渉でぃ!」
 親父は、商店街で商売している全ての人に声をかけた。その意見に同意した店主達と共に、無理を承知で弱小プロダクションに商店街アイドルの募集話を持ちかけた。

 ○×商店街では、商店街を宣伝してくださる方を募集しております。
 職業、性別一切不問。
 参加ご希望の方は、八百屋『八百熊』の店主までご連絡ください。
 連絡先:(プライバシー保護のため伏せ)

●今回の参加者

 fa0352 相麻 了(17歳・♂・猫)
 fa0481 石榴(22歳・♀・猫)
 fa0585 畑下 雀(14歳・♀・小鳥)
 fa1396 三月姫 千紗(14歳・♀・兎)
 fa1747 ライカ・タイレル(22歳・♀・竜)
 fa2340 河田 柾也(28歳・♂・熊)
 fa2341 桐尾 人志(25歳・♂・トカゲ)
 fa3309 水葉・優樹(22歳・♂・兎)
 fa3503 Zebra(28歳・♂・パンダ)
 fa3957 マサイアス・アドゥーベ(48歳・♂・牛)

●リプレイ本文

●企画
 プロダクションに集まったのは、宣伝意欲のある9名。
「皆様、ありがとうございます」
 プロダクション社長が頭を下げる。
「こんなに来るなんて嬉しいねぇ。皆、たのまぁ!」
 話を持ちかけた『八百熊』の親父が感謝する。
 話し合わなければいけないことは、どうやって人を集めるかということだ。商店街閉店は一ヶ月後なので、遅くても来週の日曜には活動しなければならない。
「デボ子は公式HPでイベント開催の宣伝告知します‥。これで人が集まるかどうかはわかりませんが‥」
 遠慮がちに意見を述べる畑下 雀(fa0585)。
「僕は、商店街統一の告知ポスターを作成するね」
「俺は、石榴さんと共に行動します」
 石榴(fa0481)と 水葉・優樹(fa3309)の意見に「そらいいな」と賛成する親父。
「あたしは商店街のテーマソングを歌って宣伝するよ」
 三月姫 千紗(fa1396)の提案に「ご一緒しても良いかしら?」と協力を申し出るライカ・タイレル(fa1747)。三月姫は快く承諾した。
「僕らは商店街でコントしようと思います」
「僕らの腕の見せ所や」
 河田 柾也(fa2340)と 桐尾 人志(fa2341)が張り切る。
 コンコンと事務所のドアをノックする音がした。
「どうぞ」
 ドアを開けて入ってきたのはマサイアス・アドゥーベ(fa3957)。
「商店街を見物してて遅くなった。来る早々なんだが、意見を言って良いか?」
「何でも言ってくれぃ」
 コホンと咳払いしてマサイアスは意見を述べる。
「スーパーと商店街の客の取り合いだが、やりあってもムダである。こちらも特色を生かすなりして、うまく体力勝負を回避せねばな。○×商店街には特色等無いと言うかもしれんが、ほとんどの場合、自分達にとっては当たり前だから気づいていないだけで、それなりの特色はちゃんと存在する。特定の品に妙に力が入っていたり、他では見かけない品があったりな。まして、店単位ではなく商店街単位となればなおさらである」
 評論家だけあって、説得力は十分ある。
「だから、それを考えているんだよ」
「そうだ」
 相麻 了(fa0352)とZebra(fa3503)が腕組みをして考え込んでいる。
 話し合いの結果、宣伝は来週の日曜日に決まり、それまで、各自で出し物の準備をすることになった。

●準備
「セール全体のイベント名だけど、冬眠前の感謝祭とかど〜だろ? 八百熊の軒先の写真と、デフォルメキャラクター「親父熊」を組み合わせてさ」
 親父熊とは、親父をベースにして描き起こした創作キャラクターで、ダンディな髭がチャームポイントな熊である。
「冬眠前か、良いチャッチフレーズだねぇ。誰が描くんだい?」
「絵心ある商店街の人に描いてもらおうかと‥」
 それなら良いのがいるぜと親父は携帯を取り出し、本屋の女主人に絵を描いてくれないかと交渉したところ、即OKが出た。
「やった!」
「やったね、石榴さん」
 石榴と水葉は手を取って喜んだ。
「早速、ポスターに使う写真を撮ろう。親父さん、協力してください」
 親父の許可をもらい、八百熊の店先の写真と親父本人を撮影。店の写真はそのままポスターに使い、親父の写真はイメージキャラクター製作の参考に。

「こんなもんかな‥」
 出来たての歌詞を見る三月姫。
「良いですね。でも‥」
 歌詞が完成し、曲も先程完成したのだが‥予算の関係でプロレベルの機材機器の導入は無理なのだ。「はふぅ」と溜息をつくライカ。
「自前ですが、この辺はアイデア勝負です」
「そうだね。頑張ろう、ライカさん」
 出来ないことは切り捨てて出来ることだけで考えることにした二人は、不意打ちの商店街でのストリートアカペラライブをやることに関して、商店街と協議することに。その内容に商店街側は驚いたが、面白そうだという意見が多かったので実行が決まった。

 畑下は、公式HPの掲示板に「デボ子からのお知らせ」というスレッドを作り、匿名伝言板の「デボ子スレ」にも商店街宣伝の書き込みをした。

 前日には、石榴と水葉が作成した本屋の女主人が描いた親父熊を中心に描き、上の方に宣伝のタイトルロゴ、下の方には開催日の日付と、当日のステージのプログラムが書き込まれたポスターが完成した。商店街までの簡単な道順、商店街の簡易地図、出演者達の簡単な紹介も忘れずに記入済み。マサイアスが企画した途中参加、途中離脱自由の「商店街再発見ツアー」の進行状況も固まり、後は当日を待つだけとなった。

●当日
 日曜ということ、ポスターの宣伝効果のおかげで○×商店街には大勢の人が集まった。商店街の入り口付近に設置された特設ステージでは、相麻作のアクションショーの真っ最中だ。舞台装置、役者は彼の友人で構成されている。今の状況は、茶髪少女と金髪乙女を取り囲む黒服の一団との戦闘シーンだ。
「ゴミは捨ておけない性分でね」
 武器の黒ステッキを巧みに捌き、悪漢共を蹴散らした後、格好良くキメポーズ。
「ではお嬢様方、アディオス」
 最後に胸の薔薇を投げ捨て、彼のショーは終わった。オバサマ方のハートの鷲づかみには成功したが、宣伝効果はいかに?

 次はZebraによる、商店街の品物を使っての出現マジック。八百屋の兄ちゃんという感じで、捻り鉢巻と前掛けという衣装で登場。アシスタントには、八百熊の息子を起用。坊主頭に黒いウサ耳というのは違和感があるが、半ば強引につけられたのだ。ステージに置かれている1m立方くらいの木箱の中が空だということを観客に見せ、「今日はまだ野菜を仕入れてないじゃないか〜!」と木箱に蓋をし、手で軽く叩いてから空け、まずミカンを取り出す。
「ミカンか。コタツにはやっぱりこれだよな!」
 これを繰り返し、商店街の品物をどんどん取り出しながら誉めてセール価格をアピール。取り出す品物は徐々に大きくなり、魚、南瓜、白菜等が出てきた。「鍋にはこれ!」という彼の心遣いだ。
 最後には空だったはずの木箱がガタガタ揺れ、八百熊のおかみさんがバーンと登場。Zebraのマジックは大成功だった。

 畑下はZebraが舞台に立っている間、八百熊の親父、商店街の皆に挨拶をしていた。彼女の衣装は、母が用意してくれた灰茶のキャミビスチェに緑灰のボックスプリーツミニだ。何回も着てる衣装だが、胸元が大きく開いてるのも、スカートの丈が短いのも全然慣れていない。客と距離が凄く近いので、いつも以上に恥ずかしい‥。
 彼女が披露するのは、4thシングル『サヨナラをください』。予めカラオケとラジカセとマイクは用意してあるので、いつでも歌える。なお、舞台に上がる前に、こっそりと半獣化している。

「サヨナラをください
 わたしの心から
 あなたを忘れる魔法をかけて下さい」

 サビが流れると「デボ子ちゃーん!」というファンの声援が聞こえた。ステージが終えるなり、畑下はこそっと半獣化を解き、そそくさと帰っていった。

 ステージが盛り上がっている頃、三月姫とライカのアカペラライブが行われていた。

「おいでよ ○×商店街へ 何か良いことがあるかも
 おいでよ ○×商店街へ 素敵な出会いがあるかも
 行ってみようよ ○×商店街へ 夢の欠片を探しに
 行ってみようよ ○×商店街へ 夢との出会いがあるかも

 今日の素敵な情報は〜肉屋の全コロッケ、50円均一で〜す!
 
 さぁ、皆でレッツ ゴー 行ってみようよ ○×商店街」

 二人の元気な歌声が、商店街に響き渡る。

 八百熊の前では「まいむ☆まいむ」の二人が親父を巻き込んでコントをしているが、前もって打ち合わせの上である。「やるならうちの前でやんな」という親父の粋な計らいで、八百熊前で行っている。これは商店街ツアーの一環でもある。
 ネタは単身赴任中の夫の留守を預かる河田扮する主婦『オカン』と、桐尾扮する小学3年生『マー君』の松茸を巡るシビアな攻防。
 久し振りに父親が戻るとの電話を受け、豪華な夕食をと商店街へ買い物に来たところからコントは始まる。
「おかん、松茸や! あれ買うて!」
「国産のえぇ品やけど、その分ステキなお値段やないの!」
 哀れ、バトルに巻き込まれる親父は息子の指示通り松茸が入った籠を手に取ろうとするが、オカンの無言の威圧に負け、椎茸やらエリンギ等を手にする。マー君は必死に親父を励ましつつ、オカンに松茸を買わすべく動く。根負けしたオカンは、松茸1本と同じ金額で他の秋の野菜や茸をどれだけ買えるか親父に提示させ、籠盛りの野菜と様々な茸を買う。
「マー坊。あんたの今晩のオカズ、松茸一本だけやで」
「えー!?」
「今夜はお鍋に炊き込みご飯〜オトンと私だけでな☆ 八百熊さんはお野菜新鮮で安ぅて助かるわ〜」
「さっき思い切り睨んでたやないか!」
 マサイアスがツアーコンダクターを勤める商店街ツアーの客と、通りすがりの人達は、コントが終わると拍手した。
「次に行くである」
 マサイアスは、ツアーの客を次の場所に向かわせた。

 ステージや商店街の人々の作業の様子も記録していた水葉は、コントの様子を楽しそうに撮影した。撮った写真やビデオは記録として使うことにしたが、一部の写真は自分用に取ってある。

 解散後、商店街の売り出しセールに行ったり、商店街を見学したりと自由行動に。河田と桐尾の二人は、仮装のまま買い物に行ったのでかなり目立っていた。

 二週間後。宣伝の効果が大きかったのか、めでたく○×商店街の存続営業が決まった。