Blue in Red 4アジア・オセアニア
種類 |
ショート
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担当 |
氷邑
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芸能 |
1Lv以上
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獣人 |
1Lv以上
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難度 |
普通
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報酬 |
1.2万円
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参加人数 |
10人
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サポート |
0人
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期間 |
11/24〜11/28
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●本文
青は、南国の孤島を取り囲むように広がったネイビーブルー。
赤は、その孤島に聳え立ったホテルの中で起こる惨劇を象徴する血。
日本国の謀略によりランダムに集められた32名の一般市民が、たった一つの生存権を賭け、孤島のホテルで殺し合いを行う。
帰る事も、逃げる事も出来ない人間の極限が見せた弱さ、醜さ、美しさ、裏切り、愛情、友情、絆。そして運命を捻じ曲げようとする比類無き強さ。
千ページ以上にも及ぶ良い意味でも、悪い意味でも問題作と言われたこの長編小説の映画化が決定し、撮影は順調に進んでいる。
今回の撮影は、殺し合いが再び始まる。
シーン1
尾藤は、こんなところから一刻も早く抜け出そうとホテルを走り回っていた。
彼は殺人犯として刑務所に服役中だったが、政府の策略により仮釈放され、このツアーに参加させられたのだ。
その途中、サバイバルゲームのリーダーである檜村と鉢合わせし殺害される。
「仇はとったぞ‥」
尾藤は内閣総理大臣、真山壱に作為的に選ばれたのだ。妻と娘の無念を晴らせ、自然に笑みが零れる。
シーン2
藤吉住男に刺された青嶋奈緒美は、ホテルの一室で目を覚ました。
看護していた看護師の数井は、赤城拓也の友人に看護するように頼まれたと言う。
拓也を探そうとする奈緒美だが、傷口が塞がっていないため、まだ起き上がれない。
「拓也‥無事でいて‥」
奈緒美はそう祈らずにはいられなかった。
シーン3
客船のコック長の丸山は、包丁を持ってホテル内をうろついていた。
「食材はどこ‥? 美味しく調理してあげるよ‥」
丸山にとって、参加者は料理の材料と同様の扱いだった。
運悪く丸山と鉢合わせたのは、武器アニアの神田だった。彼が選んだのは、ホテルにある鎧が持っていた斧だった。
やられるのは丸山か、それとも、神田か‥。
その様子を物陰で見ていた榊は、怖くなり逃げ出した。
シーン4
『また殺し合いが始まったようだな。これで何人の参加者が死ぬか楽しみだ』
モニターを食い入るように見ていた真山は、ワクワクすると同時にゾクゾクしていた。
『さあ、殺し合いをしたまえ! 私を楽しませろ!』
生存権をかけ、再び殺し合いが始まる様子がモニターに映し出されている。
<登場人物>
青嶋奈緒美:本作のヒロイン。重傷で動けない。
尾藤:真山の妻、娘を殺したストーカー(男性限定)
檜村:サバイバルゲームのリーダー。自意識過剰気味。
数井:奈緒美の看病をしている看護師(男女不問)
丸山:客船のコック長。恐怖で気が狂ってしまっている。
神田:武器マニアのオタク大学生。
榊:丸山と神田の殺し合いを目撃(男女不問)
真山壱:内閣総理大臣。声のみの出演(一人称:私、二人称:君/諸君 、〜たまえ)
冷酷非情、国粋主義者、選民思想に凝り固まった人物。
男性に近い声を出せるのであれば、女性でも可とする。
奈緒美、真山以外の登場人物の名前(苗字は予め決まっています)は各自で考えること。
<これまでの生存者、死亡者(五十字音順)>
生存者:青嶋奈緒美、赤城拓也、梶原ゆう、カナ芳村、霧咲彰吾、志水剣一郎
月凪鈴、方城瑞希、矢田メイ、ユーリー芳村、渡辺雄一
死亡者:青柳健一、海馬厚司 、野川夏希、野川邑吏、藤吉住男、渡キリエ
<映画設定>
・大きな舞台の別の一場面としてリンクしている。
・参加者が何故集められたは各々設定。
・参加者には全員孤島に入る前にマイクロ爆弾を取り付けられて、島から出ると爆発。
・ホテルの外は森、罠有り。
●リプレイ本文
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「釈放されたかと思ったらこんなところかぁ‥。早いところ自由になりたいもんだなぁ‥」
尾藤裕二(時雨(fa1058)) は、厨房から持ち出した包丁を手にしながら歩き、焦り気味に言う。とても偏った思想の持ち主で、人の死に美を感じている彼は、殺人犯として刑務所に服役中だったのだが、政府の策略により仮釈放されツアーに参加している。
そう考えている最中、サバイバルゲームをするためにツアーに参加した檜村零児(七瀬・聖夜(fa1610)) と鉢合わせした。
「俺の最初の獲物はおまえか。運が無いな、俺に出会っちまうんだもんな!」
不敵な微笑を浮かべ、零児は裕二に近づくが、裕二は怖気づくことなく、道化のように笑みを浮かべながら機嫌良さそうに語りだす。
「人を殺めるってのはぁ、意外と面白いもんだぜぇ? 付回して付回してぇ、精神的に追い詰めてぇ‥そしてチェックメイトだぁ」
零児に対し包丁を振り回すが、木刀でそれを二、三度受け止めた零児は、木刀で裕二を殴った。
「どうだ、木刀で滅多打ちにされる感じは」
滅多打ちにされながらも、裕二は更に語る。
「人の最期の瞬間を見たことがあるかぁ? 美しいものだぞぉ。最後の微かな痙攣‥あれには興奮さえ覚えるよぉ‥」
続きは、裕二が息絶えたため語られることはなかった。
「次の獲物は何処だ?」
尾藤を仕留め、ホテルの中を移動し始めようとしたその時、物陰から拍手が聞こえる。
「お掃除ご苦労様、聖者様。私は、赤い狼とでも名乗っておこう」
気障な言い回しで自己紹介をしたのは『赤い狼』の人格である赤城拓也(ディノ・ストラーダ(fa0588)) だった。
「これはお近づきの印というやつだ、宜しく」
イニシャル入りの白いハンカチを零児に投げ渡すと、赤い狼は去っていった。
「仇はとったぞ‥」
モニター越しで二人の殺し合いを見ていた内閣総理大臣・真山壱(joker(fa3890)) の微笑みは何処か致命的なものが壊れている印象だった。妻子が死んだ事の原因の一つに、ストーカーに気付けなかったという自分の鈍さがあるので、罪悪感も彼を変えたのかもしれない。
●
「気がついたようね」
意識を取り戻した青嶋奈緒美(銀城さらら(fa4548)) が目覚めたのは、ホテルの一室だった。奈緒美が目覚めるまで、看護師の数井療子(蕪木薫(fa4040)) は懸命に看病していた。ベッドから少し離れた位置の椅子に座り、タオルを畳んだり、シーツをハサミで切ったりして包帯を作っている。奈緒美が意識を取り戻した事に気付き、ハサミを椅子に置きゆっくり歩み寄る。
「傷は痛まない?」
「私‥どうしてここに‥?」
「赤城君‥て言ったかな。その子の友達って子が、キミの看病を頼んで行ったんだ」
拓也の友人が無事、ということは、拓也自身も無事なのだろうか。そのことが気になり、奈緒美はいてもたってもいられなくなり拓也を捜そうと起き上がるが、傷が痛み、思うように動けない。
起き上がろうとする奈緒美を、数井は抱えるように
「ああ、だめだめ、まだ傷口が塞がってないんだから安静にしてないと‥」
と制止するが、奈緒美は渾身の力を込めて療子を突き飛ばした。そのショックで、療子の意識は朦朧とし始めた。
「拓也‥貴方は私の物‥もう少しで完成なのに‥」
奈緒美は現在、父が学部長を勤める学部の大学院に在籍しているが、以前は海外で遺伝子工学の博士号を取得し、父と共に人間兵器の研究をしている才女だ。恋人の赤城拓也は、彼女が生み出した最高傑作になる筈だった。ツアーに参加する以前、拓也の別人格である『赤い狼』を催眠術で刷り込ませた人物は奈緒美の父だ。
「貴方をこんな所で死なせはしないわ‥」
満身創痍の体に鞭打ち、机に置いてある拳銃を手にすると、奈緒美は怒りに震えながら拓也を捜し始めた。
療子の意識は、奈緒美が部屋を出て行った後にはっきりとした。その時の彼女は、神妙な面持ちだった。
「この悪夢はいつ終わるんだろうね‥」
●
客船のコック長、丸山高貴(志羽・武流(fa0669)) は虚ろな目で廊下を歩いている。
「食材はどこ‥? 美味しく調理してあげるよ‥」
高貴を客船のコック長に就任したのは、内閣総理大臣というのは表向きで、実際は、高貴が勤めているレストランのコック長が仕組んだ罠だ。
殺し合いを聞かされた高貴は、そのショックを受け正気を失い、参加者は全て食材にしか見えなくなった。食材を求めさ迷い歩いているうち、神田カンタ(九条・運(fa0378)) とぶつかった。
「これはね‥中世ヨーロッパの時代に使われた武器でね‥」
カンタは自分が持っている斧の解説をしているが、小声で呪文を唱えているようにしか見えないが、実際は柄を短く持ち、コンパクトに斧を持ちながら再確認している。
「君は良い食材のようだ‥私の見事な包丁捌きで、最高の食材にしてみせるよ‥。まずは血抜きしないとね‥アハハハハハ!」
奇声を上げながら斧を振り下ろすカンタだったが、高貴は彼の攻撃を防衛本能で避けている。
榊都(斉賀伊織(fa4840)) は、その様子を廊下に展示してある彫刻の物陰に身を潜めながら見ていた。
「ここを歩いていれば、楽になれるのよね‥」
職場でいじめられている自殺志願者の都は、パソコンで自殺サイトを見つけ、このツアーに参加すると殺して貰えるという噂を聞き、自ら望んで参加したのだ。ホテル内をうろついていれば、殺してもらえるのかと思っていた矢先、カンタと高貴の殺し合いを目撃することとなった。
カンタに殺されそうになる高貴だったが、かろうじてカンタの心臓に刺身包丁を突き刺した。死を確認すると、高貴はカンタの頚動脈を切断した。生温い血が、高貴の顔と服に飛び散る。返り血を浴びながら、高貴は更に狂気に蝕まれた。
「まだだ‥まだ足りない‥もっと‥もっと食材が欲しい‥!」
その様子を見終えた都は、逃げながら頭の中で血の鮮やかさと臭いに、死ぬ事に対して恐怖をおぼえた。死にに来たのに、いつの間にか恐怖が生へと執着させ始め、無意識に音や匂いに対して敏感になっている。隠れんぼをしている時のように音や声、匂いが少しでもすると影のある所に身を潜め、気配を消すように周りに意識をあわせ潜む。
「私、死にに来たのに、まるで隠れんぼみたいな事してる」
逃亡中だというのに、都は苦笑した。
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「また殺し合いが始まったようだな‥。何人の参加者が死ぬか楽しみだ。さあ、殺し合いをしたまえ! 私を楽しませろ!」
モニターでの殺し合いを見た壱は、興奮を抑えきれずにいた。
「総理、お茶をどうぞ」
グレーのスーツを着て、モノクルをつけた総理秘書の神凪華(沢渡霧江(fa4354)) がお茶を差し出すが、壱は気付いていない。華はフリーランスの傭兵をしていた経験があるため戦闘能力は高いので、壱のボディガードも兼ねている。お茶を差し出した後、意味深な目でモニターを見て去っていく。生き残りそうな参加者の目星をつけておくための行動だ。
拓也を求め、奈緒美はフラフラと歩いている。
「こんなとこにも、獲物が居やがった」
拳銃を手にした零児は、不敵な微笑で奈緒美に近づき、手近のドアノブに手をかけると乱暴にドアを開け、ベッドに奈緒美を押し倒した。
「動けねえのか、つまんねえな」
興味無さげにそう言う零児が奈緒美に近づこうとした時、零児のズボンのポケットからヒラリと何かが舞い落ちた。
「それは‥拓也のハンカチ。ま、まさか‥拓也を殺したの!?」
「そうだと言ったら?」
零児のその一言に半狂乱になった奈緒美は、拳銃を乱射するが、一発も当たらない。
「これで一気に息の根を止めてやる」
零児は、右手に装備している拳銃を奈緒美の眉間めがけて撃った。その一撃で、奈緒美は絶命した。
それから十数分後、赤い狼がその現場に到着した。眉間を打ち抜かれて絶命している奈緒美の目を閉じ、部屋にある車椅子に乗せた後、スーツの胸ポケットに飾ってある赤いバラを握らせた。
「グッラックハニー‥グッラックマミー‥」
赤い狼は、自分が奈緒美に作られた存在と知っていたのだろうか。その呟きは、彼にしかわからない。
「そろそろ全ての役者が舞台に出揃う。此処でひとつ大きな催しでも欲しい所だが‥ああ! 丁度お誂え向きのものがある‥彼らはもはや神にも見捨てられたのだな!!」
大型台風の接近と合わせたようにホテルの内部電源を落とし、暗闇と暴風雨の中の殺戮劇を楽しもうかと画策する壱。
「神凪、おまえもゲームに参加しろ。見ているだけでは退屈だろう」
「宜しいのですか?」
「構わん、内閣総理大臣命令だ」
「かしこまりました」
華はお辞儀の後、その場を去っていった。
死亡者:尾藤裕二、神田カンタ、青嶋奈緒美
生存者:23名
本格的なゲームの幕は、今開かれた。
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「カーット!」
監督の声と共に、撮影は終了した。
「志羽君、キミ、演技の経験は?」
「脚本の勉強のため、何度かありますが」
「キミは俳優と名乗って良いほどだ。キミの演技、良かったよ」
「ありがとうございます」
礼儀正しくお辞儀する志羽。
「joker君、声のみの出演だが、良い演技だった。布石の台詞が特にね」
「ありがとうございます!」
大喜びのjoker。
「ディノ君、キミも良かったよ」
「ありがとうございます」
爽やかな笑みで礼を言うディノ。
「皆の演技も良かった。次もこの調子で頼むぞ!」