セカチューカップルアジア・オセアニア
種類 |
ショート
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担当 |
氷邑
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芸能 |
2Lv以上
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獣人 |
1Lv以上
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難度 |
普通
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報酬 |
3万円
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参加人数 |
8人
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サポート |
0人
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期間 |
12/14〜12/18
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●本文
「あの‥これは‥」
お笑い番組『ガハッ! とチャンネル』のプロデューサーの企画書に目を通したADがそう言うと
「なかなか良いだろう。我ながら傑作だと思う」
「はぁ‥」
プロデューサーの企画、初めて見たよ‥と心の中で呟くAD。
プロデューサーの企画は『世界地図の中央でカップルがイチャつく』、略して『セカチューカップル』である。本人曰く「クリスマス用のコント」とか。
「クリスマス用番組、として企画したもんだ。録画取りして、雰囲気はCGで‥。とまぁ、こんなカンジだ。要はカップルのアツアツ振りを視聴者に見せつける企画だ」
企画内容はこうである。
<セカチューカップル企画>
・出場資格があるのは恋人同士のみ(同姓問わず)
・会話にお笑い要素(ボケ、ツッコミ)を必ず入れること
・背景は巨大な世界地図。テーマは「世界中に自分たちの熱愛振りを見せる」
・最も熱愛度が高いカップルが優勝
「この企画も賞金出すんですか?」
「いや、夜景が綺麗な高級ホテルレストランのディナー券。そのほうが相応しいだろう。かなりの出費だが、こうでないと参加者が納得せんだろう」
この人、真面目に企画考えてるよ! と内心驚くADだったが、「素晴らしいです、さすがプロデューサー!」と褒めまくり。
この企画に参加する勇気あるカップルがいるのかどうかは、運次第。
●リプレイ本文
お笑い番組『ガハッ! とチャンネル』初の恋愛系コメディ『世界地図の中央でカップルがイチャつく』(以下『セカチューカップル』)に参加したカップルは4組。
どのような熱愛振りを世界地図の中央で見せてくれるのだろうか‥‥。
●不器用な恋愛
舞台の中央にセッティングされたベンチに並んで座っているのは、赤い毛糸でマフラーを編んでいる真神・薫夜(fa0047)と、赤面しながらカチコチに緊張し、動けない状態の雨堂 零慈(fa0826)。
「運命で結ばれた赤い糸? 見えるわけないじゃないそんなもの‥‥あら? これのことかしら」
何故か2人の小指には赤い毛糸が結びついている。しかも、丁度良い具合に世界地図上の赤道部分に。びーっと引っ張った先にあるのは、真神が編んでいる編みかけのマフラーだった。
(「拙者は恋愛沙汰には無縁だが‥‥間違いは正さなければ‥‥」)
「真神殿、赤道の位置に小指を持ってきて赤い糸と赤道をかけているみたいだが、赤道は赤くないぞ‥‥。因みに赤道とは、緯度0度線を差し全周約40キロある。あと、エクアドルという国が赤道直下にあるがスペイン語で赤道という意味を持つ‥‥」
雨堂の説明はまだ途中だが、真神は遮るように
「私、マフラーを編んでたのよ。極度のぶきっちょだから、編んでるうちに絡まっちゃったみたい」
と、赤い毛糸を引っ張る。そのせいで、編みかけのマフラーは解けてしまう。
「折角クリスマスにプレゼントしようと思ったけど、間に合わなかったわね。手編みのマフラーベタかしら? ベタよね?」
「そのようなことは無いと思う‥‥」
「こんなになっちゃったからこれは綺麗さっぱりぽいっとしましょ。プレゼント、他に用意してなかったのよね」
真神が他にも無いかと、ん〜っと考え込み、「何も形だけが愛じゃないわ」と力説し始めた。
「豪華なディナーも高価なプレゼントもいらないの、貴方が傍にいてくれるだけで十分よ」
愛してるという思いを込め、雨堂の頬に軽く口付ける。それでも刺激が強すぎたのか、雨堂の顔は更に真っ赤になった。
「大好きな貴方といるだけで幸せな気分になれる。それでいいじゃない?」
「そ‥‥そうだな‥‥」
カメラ目線で満面の微笑みを浮かべる真神と、視線を逸らして照れている雨堂の2人は、熱々よりもごく自然のありふれた恋愛の形を世界中に届けた。
●差がある恋愛
次に登場したのは、世界の中心は私達☆ と言わんばかりに身長差など気にせずに腕を組みまくりのメルクサラート(fa4941)とウィン・フレシェット(fa2029)。この2人、身長差だけでなく、年齢差もかなりのものである。
「違う世界の中心が、こんな所の訳ないだろ」とウィンが叫ぶと
「世界の中心と言えば、地軸の頂点。南極と北極よ」
とメルクサートが壁の地図を秘伝の拳法で破き、南極を私の足元に踏みにじりる。
ああっ、世界地図がぁ!! と舞台袖にいたスタッフは、突然のハプニングに驚いた。
「俺、南極がいいな、ペンギンより、ホッキョクグマの方が有意義な時間が過ごせそうだし」と話題をふると、「じゃあ、北極でも良いわ」と妥協。
「は! 世界の形状は球体‥‥なればどこもが世界の中心であり、どこもがそうでないと言える」
破れた世界地図を踏みにじりながらメルクサートが言い出し、こんな事もあろうかと思って買っておいた地球儀を取り出して、おまけについている月球儀を取り出す。
「さあ、2人だけの新世界に飛び出しましょう!」
と日本の種子島宇宙センターにウィンを連れ出そうとするが
「どうせ行くなら、俺、火星の方が良いな」
と、更にボケ倒してオチをつける。二人の恋愛は、世界どころか、宇宙に向かっていくようだ。
破れた世界地図は、半ベソをかいているスタッフが新しいものに取り替えた。
セッティングが終わるのに、かなりの時間を費やした
●純粋な恋愛
地図を取り替えている間、水葉・勇実(fa5242)は、林檎(fa0484)とペアでカップルの演技の練習をしていた。水葉は、普段なら裏方が仕事なのだが、一応芝居はそこそこ出来るからと今回は演じる側に。
(「冗談のつもりで林檎さんに、演技力を鍛えたいならちょうど良い仕事があるよ、なんて言ったらいつの間にか本当に受けることになるなんて‥‥」)
芝居技術を高めようと思っていたところに、勇実さんが「お芝居の仕事がある」と話を持ちかけてきたことがきっかけで、林檎は出場することに。
「‥‥恋人同士の芝居をする、という事でよいのでしょうか‥‥? そういった経験はありませんし‥‥。勇実さん、ご指導のほど、よろしくお願いしますね」
林檎は、水葉の指示に従うことにした。
ここまで来たらしょうがない、カップルということで通そう、と決めた水葉。芝居をするという点では嘘はついていないので良いだろう。
普段は「さん」付けで読んでいる林檎を、呼び捨てにしてイチャついて見せればいいのか‥‥と水葉は悩むが、演技だけと割り切る。林檎はあまりこういう知識が無いらしいから、彼が指示するこことになる。
二人は、手を繋ぎながら舞台に登場した
(「腕を組む、体を寄せあう、見つめあうのが普通‥‥」)
小声で復唱する林檎。実際に手を繋ぐが、身長の関係で動きにくい。
「えぇと‥‥」
「次は腕を組んで‥‥いや、腕を組むって自分でやるんじゃないよ。僕の腕を組むんだよ?」
「‥‥はい」
林檎は改めて、正しく腕を組む。意図せず体を寄せる結果にこれでいいのでしょうか‥‥?と水葉に問うように彼を見上げ、真っ直ぐ見つめる。
こうも素直に実行してくれるので、これはもう少しいけたりするかな? と思った水葉は、目をつぶって林檎に顔を近づけ、頬辺りに軽くキスをした。
「‥‥な、何をするんですか‥‥」
カメラを気にして、静かに怒る林檎。
「そんな表情もするんだ、可愛いね」
「‥‥人前、ですよ‥‥。勇実とは今後、距離を取らせていただきますね‥‥。だからといって、物理的に近くにいていいというわけではありませんからね? 貴方は油断なりませんっ‥‥」
頬を赤らめ、続けて説教をしようとしたが言葉が見つからず、そのまま早足で退場する林檎。
「ご、ごめん、でも恋人なんだしこれぐらいはおかしくは‥‥って、待ってよー」
二人は、世界地図の中央で純粋培養の恋愛を見せた。
●真剣な恋愛
最後に登場したのは、シグフォード・黒銀(fa0103)とアンリ・バシュメット(fa1390) 。
シグフォードはアンリとは恋人関係だが、アンリの女優活動に支障が出なければ良いいがと気を遣い、アンリは、ラブラブぶりを見せ付けろだなんて‥‥む、無理に決まってるじゃない‥‥! と思っていた。
二人が苦戦しているのはボケとツッコミ。シグフォードは話の流れでふざけたりするのは得意だが、意図的なボケは苦手である。デートとかの話とかを話しつつ軽くジョークでも交えれば良いかな? というより、彼にはそれが限界だった。
アンリも自分がツッコミ担当だが、イマイチボケツッコミが分からない。アメリカンジョークと同じで良いのかと考えている。とりあえず、シグフォードは馬鹿なことを言ったら『そんなわけないでしょ!』と合いの手を入れれば良いと思った。
シグフォードは基本的に鈍感+どこか抜けた天然思考で、恥ずかしい事とかも平気で言ったりした後に「拙かったか?」と言うタイプで、アンリは基本的にツンデレなので、カメラの前ではツンツンしっぱなしだが、恥かしいギャグでも飛ぼうものならツッコミと関係なく容赦なく怒る。根本はシグフォードラブのため、やりすぎたときなどは目に見えて落ち込んだりしながら、そっと彼に謝ったり慰めたりしている。ツンツンしたりオロオロしたり忙しいアンリの姿で、二人の遣り取りは漫才のように見える。
暫くし、そんな遣り取りの最後にシグフォードは一か八かの賭けに出た。
「そういやもう付き合って1年くらい経つのか‥‥。去年のクリスマスの路上ライブでコーヒー貰って以来結構色々としてきたなぁ‥‥もうすぐまたクリスマスが来る。一世一代の大勝負‥‥やってやるか!」
意を決し、真剣な顔をしてダイヤリングをポケットから取り出して
「アンリ‥‥世界一幸せにしてみせる、だから俺と‥‥結婚してくれ」
押しに弱いアンリは、カメラの前で二つ返事でOKし、感動の涙を流した。
「こんな日本中に流れるところで言い切ったんだから‥‥し、幸せにしないと許さないわよ‥‥! 馬鹿、大好き‥‥」
2人の恋は、世界地図の中央で無事に実った。
●結果発表
企画したプロデューサーが登場し、『セカチューカップル』の結果発表をした。
「発表します。世界中に熱烈振りを見せたカップルは‥‥シグフォード・黒銀、 アンリ・バシュメットのお二人です」
観客席から、盛大な拍手を送られ、互いの顔を見つめ合い、照れる2人。
「決め手となったのは、シグフォード氏の意を決した告白です。当番組を通じて告白した彼に敬意を表します。シグフォード氏、アンリ嬢、どうかお幸せに!」
景品である「夜景が綺麗な高級ホテルレストランのディナー券」を受け取った二人の表情は、見ている側も幸福になりそうなほどの笑顔であった。
全てのカップルに、幸福が訪れますよう‥‥。