Blue in Red 5アジア・オセアニア
種類 |
ショート
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担当 |
氷邑
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芸能 |
2Lv以上
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獣人 |
1Lv以上
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難度 |
普通
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報酬 |
3万円
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参加人数 |
10人
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サポート |
0人
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期間 |
12/19〜12/23
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●本文
青は、南国の孤島を取り囲むように広がったネイビーブルー。
赤は、その孤島に聳え立ったホテルの中で起こる惨劇を象徴する血。
日本国の謀略によりランダムに集められた32名の一般市民が、たった一つの生存権を賭け、孤島のホテルで殺し合いを行う。
帰る事も、逃げる事も出来ない人間の極限が見せた弱さ、醜さ、美しさ、裏切り、愛情、友情、絆。そして運命を捻じ曲げようとする比類無き強さ。
千ページ以上にも及ぶ良い意味でも、悪い意味でも問題作と言われたこの長編小説の映画化が決定し、撮影は順調に進んでいる。
撮影は、暗闇と暴風雨の中での殺し合いのシーンから始まる。
シーン1
内閣総理大臣・真山壱の命令により、サバイバルゲームに参加した秘書の神凪華。
そんな彼女が目をつけた相手は、格闘界で知らぬ物無しの存在である坂崎。
「女のくせに、格闘界の革命児と呼ばれている俺の相手をするのか? やるからには本気でいくぜ」
「承知の上だ」
神凪と坂崎の火花散る闘いが始まろうとしていた。
その様子を物陰から見ていたのは、ガリ勉受験生の本木。参考書を握っている手は汗ばんでいる。
恐怖におののきながら、本木は振り向きもせずその場を去る。
シーン2
看護師の数井療子は、負傷者がいないかどうかホテル内を探索していた。
その途中、ある部屋の一室から出てくる赤城拓也と会う。
「俺の大切な人が‥死んでいた‥」
大切な人とは、数井が治療していた奈緒美のことだろう。それを察知した数井は、拓也を慰めようとするがどう言えばいいのかわからなかった。
その頃、榊都は自分を殺してくれる相手を求めながら廊下を歩いていた。彼女とすれ違ったのは軟派な飯田だった。
「お姉ちゃん、俺と遊ばない?」
このような状況でありながら、自分のスタイルを崩さない飯田を羨ましく思う都だった。
シーン3
花屋の店員である亜澄は、恋人の写真が入っているペンダントを握り締めながら彼を捜している。
「都築さん‥どこにいるの‥?」
花屋の店長である都築は、笑顔で自分の店で働き、ひたむきな姿勢の亜澄に惹かれ、時間はかかったがプロポーズをした。
これを気に二人は付き合い始め、結婚の約束もした。婚前旅行ということで、このツアーに参加したのだ。
都築も、別の場所で亜澄の名を呼びながら捜していた時、誰かとぶつかった。
「すまない」と声をかけるが、相手は何かを呟きながら平然と歩いている。都築とぶつかった人物は‥愛するものを失い、絶望のどん底
に落ちた拓也だった。
シーン4
「フフ‥暗闇の効果もあり、ゲームが楽しくなってきたようだな」
各モニターを見ながら、真山は子供が楽しんでいるような笑みを浮かべる。
「総理、『奴』の準備が整いました」
秘書の一人が、真山に報告する。
「そうか‥いつでも参加できるようにしておけ、 キリング・ドールを」
キリング・ドールとは、一体何者なのだろうか‥。
絶望のどん底から這い上がった拓也は、奈緒美を殺害した相手を復讐のため捜し始める。
「俺の奈緒美を奪った奴は‥絶対に許せない‥!」
白木のステッキを握る手に、自然に力が入る。
<登場人物>
赤城拓也:本編の主人公。本来の人格「拓也」と犯罪者的人格「赤い狼」の人格を持つ。
今回は「拓也」の人格のみの出番となる。
坂崎:格闘界では知らぬ物無しと言われるほどの有名格闘家。
神凪華:真山の命令で、参加者として参加の秘書。
本木:ガリ勉受験生。外見年齢15〜18歳の男女が望ましい。
数井療子:ホテル内にいる怪我人の治療を努める看護師。
榊都:自殺志願の女性で、自分を殺してくれる相手を求め参加。
飯田:軟派男。殺し合いという状況の中、唯一自分を保っている。
亜澄:花屋の店員で、店長とは恋仲。
都築:花屋の店長。婚前旅行ということで、亜澄と共にツアーに参加。
真山壱:内閣総理大臣。声のみの出演(一人称:私、二人称:君/諸君 、〜たまえ)
冷酷非情、国粋主義者、選民思想に凝り固まった人物。
男性に近い声を出せるのであれば、女性でも可とする。
拓也、真山、神凪、数井以外の登場人物の苗字、あるいは名前、所持している武器は各自で考えること。
武器はホテル内を破壊する恐れのある重火器の類意外であれば問わず。
<これまでの生存者、死亡者(五十字音順)>
生存者:赤城拓也、梶原ゆう、数井療子、カナ芳村、霧咲彰吾、榊都、志水剣一郎
月凪鈴、檜村零児、方城瑞希、丸山高貴、矢田メイ、ユーリー芳村
渡辺雄一
死亡者:青嶋奈緒美、青柳健一、海馬厚司 、神田カンタ、野川夏希、野川邑吏
尾藤裕二、藤吉住男、渡キリエ
<映画設定>
・大きな舞台の別の一場面としてリンクしている。
・参加者が何故集められたは各々設定。
・参加者には全員孤島に入る前にマイクロ爆弾を取り付けられて、島から出ると爆発。
・ホテルの外は森、罠有り。
●リプレイ本文
●
神凪華(沢渡霧江(fa4354))は、黒いパンツスーツにパンプスという衣装で相手を求めていた。パンプスには、如何なる時でも相手と戦えるためにナイフが仕込まれていたり、鉄板が仕込まれていたりと色々細工してある。
「あいつが良い」
選んだのは、幕内最軽量力士でありながら大関まで上りつめた後に引退し、格闘家に転身した坂崎明憲(時雨(fa1058))。力士時代から稽古は人一倍積んできたので、筋肉はかなりついている。このツアーには、スポンサーから優勝祝いとチケットを貰い参加した。
「そこのおまえ、私と勝負だ」
表情ひとつ変えず、華は明憲に勝負を挑んだ。
「女は土俵に上がれねぇんだ、勝負にならねえ! 俺が坂崎明憲と知って言っているのか?」
「ああ、相撲取りから格闘家に転身した奴か。殺し合いの相手には丁度良い」
カポエイラ(ヘジォナウ(カポエイラの流派))を得意とする華と、相撲スタイルの格闘技を得意とする明憲の戦いが始まった。
明憲は「首ひねり」と「うっちゃり」風味のバックドロップを、華にいつ仕掛けるかを張り手を連打しながらタイミングを見計らっていた。華は、張り手を起用にリズミカルな蹴りで受け止めている。隙あらば、仕込みナイフで明憲を貫こうとするが、筋肉が厚いため、かすり傷程度で終わる。
モニター越しにその様子を窺っている真山壱(joker(fa3890))は、華を見ながら
「生ぬるい日常は、彼女にとって地獄同様だっただろう。戦地こそ、彼女にとっては理想の地だ。其処が『天国』にならぬよう、祈っているよ」
と他愛の無い口調で軽く言う。
物陰で2人の戦いを見ていた秀才眼鏡少女、本木美鈴(十六夜 勇加理(fa3426))は困惑していた。
「こ、殺し合いって何よ! そんなの聞いてない!」
受験勉強の為に南国リゾート地の静かなホテルに来た筈なのに、目の前の惨劇現実を知り、急いで逃げ出した。
華と明憲の戦いは20分以上も続いている。ぶっ続けの戦いは、いくら戦闘のプロでも相当きつい。明憲の喉元めがけて蹴り技を繰り出そうとする華に、何者かが食べかけのハンバーガーを投げつけた。
「‥‥誰だ!」
2人の眼前に現れたのは、反政府組織が送り込んだエージェント―コードネーム、クラウン―の飯田健太郎(結城丈治(fa2605))。
「ふん、政府の雌犬め」
健太郎を睨みつける華。
「坂崎、おまえとの勝負は一旦中止だ。そこのおまえ、私の顔にハンバーガーを投げつけた事、後悔させてやる‥‥!」
息を整えた華は、一時撤退し壱の元へと戻った。
●
数井療子(蕪木薫(fa4040))は、シーツで作った包帯を包帯を携帯し、各部屋を回っていた。普通な表情と声を表に出す事を心掛けつつ、軽く部屋を覗き込んで室内に向かい「怪我人はいませんか?」と声をかける。
敵意の無い人に出会った時に警戒心を抱かれると思った療子は、武器を持っていない。包帯もズボンの後ろポケットに入れ、手ぶらに見えるようにしてある。警戒心を見せないが、常軌を逸した人間が居る事も把握済みなので注意している。
ある部屋の一室から出てきた赤城拓也(ディノ・ストラーダ(fa0588))に出会った療子は、ビクっとしてから拓也の顔を認識した。
「キミ‥‥怪我してないかな?」
療子の言葉が届いていないのか、拓也は
「俺の大切な人が‥‥死んでいた‥‥」
と小声で呟き、落胆する。今の彼は、別人格『赤い狼』ではなく、赤城拓也本人である。
大切な人―青嶋奈緒美―が死んだ事をすぐに把握できない療子は、呆気に取られたような表情を一瞬浮かべた後、息を飲む。殺人に狩り出している人間がいるのだという事実の再認識、彼女を引き止められなかった事の後悔が入り混じり、何も言葉が出ず、悔しさの余り下唇を噛んだ。
「‥‥気休めは要らないよ」
拓也は、フラフラと歩き出し療子から離れた。
自殺志願者の榊都(楼瀬真緒(fa4591))は、自分を殺してくれる相手を探してホテル内をさ迷っていた。
「お姉ちゃん、俺と遊ばない?」
先程と打って変わって、人懐っこい笑顔で健太郎は都を誘うが、都は思い詰めた感じの表情で彼を見ている。
「あなたが‥‥私を殺してくれるんですか?」
自分を殺してくれるのかどうか、健太郎に尋ねるが
「何だ、一般人か‥‥。ま、せいぜい頑張りな」
隠し持っていたナイフを手品師のように袖の奥にしまうと、健太郎は去っていった。
都は殺してくれる相手を求め、再びホテル内をさ迷い始める。
●
花屋の店員、亜澄涼子(結(fa2724))は、ホテルの廊下を慎重に歩きながら店長の都築哲司(真喜志 武緒(fa4235))を捜していた。
「都築さん‥‥何処‥‥?」
電気が消えてしまい、暗闇の中、一人でこんな所に居るのが心細いのか、涼子は少し泣き声になっている。
「もういや‥‥早く出たい‥‥」
しゃがみ込み弱音を吐くが、外は暴風雨で逃げ出す事が出来ないため、哲司を捜し続けるしかないと勇気を奮い立たせ、再び歩き出す。
哲司も涼子を捜し求め廊下を歩いていた時、フラフラと歩いていた拓也とぶつかった。
「すみません!」
焦って拓也を見るが、様子がおかしい。
「こんな所でどうしたんだい?」
都築の問いかけに、拓也は返事をしない。何があったのか察しが付いた哲司は、自分の体験談を話すため、拓也を引き留めた。
「君は昔の俺のようだね。大事な人を失って途方に暮れている‥‥。昔、とても大事な人が‥‥轢き逃げされて死んじゃったんだよ‥‥犯人は未だに不明‥‥」
大切な人、というのは彼の前妻だ。悲しみに沈んでいたところを心優しい亜澄に救われ、恋仲に至る。
「今でも犯人を憎んでいるが、憎しみはいつか身を滅ぼす」
その言葉は、拓也の心に届いているのだろうか。
「都築さん!」
「涼子!」
やっと会えた哲司を発見し、涼子は喜んで駆け寄る。廊下の角から突然現れた人物に刺されが、それでも涼子は哲司のところに行こうと身体を引きずりながら進む。
「死にたくない‥‥幸せになるんだから‥‥」
哲司のペンダントを握り締めながら、涼子は絶命した。悲しみを浮かべた顔は、哲司に抱きかかえられた時、幸せそうに見えた。
「涼子! 死んじゃ駄目だ! 目を開けてくれ!」
悲痛な叫びが、ホテルに響き渡る。暫くは悲嘆に暮れていたが、哲司は決意した表情で顔を上げる。
「独りにしたら可哀想だからね‥‥連れて行くよ‥‥」
涼子の頬をそっと撫でた後、彼女を腕に抱えた。
「憎しみはいつか身を滅ぼすと言ったけれど‥‥少なくとも生きる糧にはなる。今の俺のように‥‥」
自分と涼子、2つのペンダントを握りしめ、拓也に背を向けて言う哲司。
「俺は‥‥誰が彼女をこんな目に遭わせたのかそれを知りたい‥‥! 君は…どうしたいのかな?」
じっと拓也の目を見た哲司は、涼子を腕に抱いたまま、闇に向かって廊下を歩き出した。
「俺は‥‥」
どうしたいのかと言う都築の問いかけに、続く言葉が出ない拓也。怒りに震えるより悲しみに沈み、恋人を殺した犯人への復讐に割り切れないでいる。
●
逃げ出している時、何者かに襲われて背中に傷を負った美鈴は金槌を落し、崩れ落ちそうになるところを拓也に抱きとめられた。彼は、冷静さを取り戻していた。
「大丈夫? これ君の?」
参考書を差し出し、美鈴に手渡す。
「有難うございます‥‥」
拓也は、美鈴が船にいた時から密かに憧れていた人物だった。
「大丈夫ですから」
男性に免疫がない上、憧れの拓也に介抱されたので痛みを忘れ、舞い上がってしまう。
「やせ我慢しない! レディを送り届けるのは紳士の嗜みなんだから」
拓也は美鈴を横抱きにすると、船医の所へ連れて行った。美鈴は、恋のときめきで気絶していた。
「か弱い女の子の命を狙い、奈緒美を奪った奴は‥‥絶対に許せない」
拓也の中で、弱者を守る力となる決意がみなぎる。
「人は知恵によって火を操り光を得た。だが今は闇。正気も理性も全て暗黒に飲まれ本性がさらけ出される。フフ‥‥ゲームが楽しくなってきたようだな。生存者達は、何処までそのささやかな灯火を護れるのか。一度解き放たれれば、生ける者全てを屠るまで奴は決して止まらない」
モニターに映っている拓也の首を人差し指で刈り取るようになぞる壱に、秘書の一人が話しかける。
「そうか‥‥。いつでも参加できるようにしておけ、 キリング・ドールを」
「失礼します」
華が一礼し、壱の元に近づいたが、壱は「つけられたな、神凪」と言い放つ。
華の背後に立っていたのは、ナイフを手にした健太郎だった。
「やっと見つけたぜ。『Blue in Red』、赤い血に潜む悪魔の遺伝子を」
「おまえ、さっきの! よくも私に‥‥!」
怒りに身を任せ、健太郎を攻撃しようとする華を壱が制した。
「それは一体、何処にあるのかね?」
「とぼけるな。さっき言った‥‥ぐはぁっ!」
バッグから麻酔銃を取りだそうとした健太郎の眼前に、突然、少女にも似た女性が現れ、彼が手にしていたナイフ素早く奪い取ると、健太郎の頚動脈を切断した。
「これがキリング・ドールだ。悪魔の遺伝子を持つ、私が愛する女性‥‥」
華はキリング・ドールの正体を知っているが、壱がこれを出すほどこのゲームを楽しんでいるのかと少々驚いたが、その様子を表に全く出さなかった。
死亡者: 亜澄涼子、飯田健太郎
生存者:21名
復讐ゲームは、静かに幕を開けた。