Blue in Redアジア・オセアニア

種類 ショート
担当 氷邑
芸能 フリー
獣人 フリー
難度 普通
報酬 0.8万円
参加人数 8人
サポート 0人
期間 09/06〜09/10

●本文

青は、南国の孤島を取り囲むように広がったネイビーブルーの青。
赤は、その孤島に聳え立ったホテルの中で起こる惨劇を象徴する血の赤。
日本国の謀略により集められた32名の一般市民がたった一つの生存権を賭け、孤島のホテルで殺し合いを行う。
帰る事も、逃げる事も出来ない人間の極限が見せた弱さ、醜さ、美しさ、裏切り、愛情、友情、絆。
そして運命を捻じ曲げようとする比類無き強さ。

千ページ以上にも及ぶ良い意味でも、悪い意味でも問題作と言われたこの長編小説の映画化が決定した。
それに伴い、各方面から役者を募集している。

撮影する場面は物語の冒頭部分。天国から、一変して地獄に変わる場面である。

<ストーリー>
シーン1・幸運
主人公・赤城拓也は、福引で南国リゾート二泊三日一組ご招待の旅行チケットを入手。
恋人である青嶋奈緒美を誘い、出かけることに。これから始まる政府の陰謀を知らずに…。

シーン2・航海
南国に船で向かう観光客達。小規模な旅客船ではあるが、娯楽施設やプールがある。
拓也と奈緒美は、レストランで甘い一時を過ごす。客室に戻ろうとした途端、二人は睡魔に襲われる。

シーン3・暗転
目が覚めた拓也と奈緒美がいた場所は、寂れたホテルの大広間だった。他の観光客達も、それぞれ別の部屋で目覚める。
突然、クラシック曲と共に聞こえたのは、内閣総理大臣による『唯一の生存権』を賭けたサバイバルゲーム開催宣言の放送だった。

シーン4・始動
おあつらえむきに、大広間には様々な武器が置かれていた。
二人は武器を選ぶと、部屋を飛び出した。自分達が生き残るために。他の観光客達も、行動を開始する。

<登場人物>
赤城拓也:主人公。警備会社のアルバイト社員。正義感が強い。  
青嶋奈緒美:ヒロインで拓馬の恋人。大学院生で、国文科を専攻。心優しく、芯の強い性格。  
内閣総理大臣:サバイバルゲームの主催者。冷酷非情、目的のためには手段を選ばない性格
(声のみの出演。20代後半〜30代後半の男性が好ましい)     

※上記以外の登場人物、取得武器は自由に考案の上ご応募下さい。

●今回の参加者

 fa0509 水鏡・シメイ(20歳・♂・猫)
 fa0588 ディノ・ストラーダ(21歳・♂・狼)
 fa0898 シヴェル・マクスウェル(22歳・♀・熊)
 fa1431 大曽根カノン(22歳・♀・一角獣)
 fa1609 七瀬・瀬名(18歳・♀・猫)
 fa3090 辰巳 空(18歳・♂・竜)
 fa3890 joker(30歳・♂・蝙蝠)
 fa4354 沢渡霧江(25歳・♀・狼)

●リプレイ本文

 赤城拓也(ディノ・ストラーダ(fa0588))は、恋人の青嶋奈緒美(大曽根カノン(fa1431))と商店街で買い物をしていた。
 最後によった肉屋の主人から福引券を貰ったので、二人は福引所に向かった。
「一等は南国リゾート二泊三日、一組ご招待ですって。当たるといいなぁ」
 奈緒美が拓也におねだりするよう控えめに呟く。
(どうせ、ポケットティッシュだ‥)
 高を括って拓也は福引きをしたら、金色の玉が出てきた。
「おめでとうございます、南国リゾート二泊三日、一組ご招待が出ましたー!」
 カランカランと鐘が鳴り、周囲の人々を驚かせる。
「はは‥」
 拓也は乾いた笑いしかできなかった。奈緒美はおめでとう、と素直に喜び、彼に感謝する。

 帰り道、二人は突然訪れた幸運の話をしていた。
「南国だから、当然泳げるわよね。どんな水着を買おうかな?」
「奈緒美なら、どんな水着だって似合うさ」
「そ、そうかな」

 南国リゾート地には旅客船で向かっている。
 小規模ではあるがプールがあり、参加者達は着くまで各々楽しんいる。拓也と奈緒美は、プールサイドで寄り添いながら海を見詰めていた。
「お二人さん、良い雰囲気だね」
 声をかけたのは、拓也のバイト先に勤めるバイト警備員で大学院生の渡辺雄一(辰巳 空(fa3090))だった。
 近づこうとするがその途中で転び、愛用のサングラスをずらした。
「渡辺も来ていたのか」
「ああ、くじ引きで当たってな。こんな所で会うとはな。あ、君が奈緒美さん?」
「は、はい」
「俺は渡辺雄一。拓也から君のことを良く聞かされているけど、実際に会うのは初めてだね。よろしく」
 最初は戸惑っていた奈緒美だが、気さくで明るい雄一に少しだが打ち解けることができた。
「奈緒美、そろそろレストランに行こう。渡辺も一緒にどうだ?」
「やめとく。二人の邪魔したくないんで」
「私、着替えてくるわね」
 二人は一旦部屋に戻り、正装してからレストラン前で待ち合わせすることに。

 食事の前に、黒のスーツを着たツアーの主催者(シヴェル・マクスウェル(fa0898)がにこやかに挨拶をする。
「ようこそ皆様。お集まりいただき、誠にありがとうございます。ごゆるりとお楽しみ下さい」
 主催者は、レストランにいる参加者達を見渡す。
 窓側に座っているのは、白のタキシード姿の拓也と大胆なローズ系色のイブニングドレス姿の奈緒美。
 その後ろの席に座っているのは雄一。
 中央に一人座っているのは、優しそうな青年、霧咲彰吾(水鏡・シメイ(fa0509)。

「最後の晩餐になるかも知れないのだから」

 妖しい笑みを浮かべ、主催者は退場した。今後を微塵も感じさせぬまま。
「何、あの人」
「気にすることは無い。ホレホレ、俺様に感謝なさい」
 冗談めかして、拓也は胸を張る。それに元気付けられたのか。潤んだ眼差しで、指を絡めるように手を繋いでくる奈緒美の額に軽いキスで返す。

 食事に舌鼓を打っている最中、拓也は急に睡魔に襲われた。
「奈緒美‥?」
 奈緒美も同じ状態で、その場にいる何人かも、睡魔に襲われ、ついに負けてしまい眠っている。
 拓也も堪えきれず、テーブルに突っ伏した状態で眠った。

 拓也が目を開けると、宿泊先のホテルの大広間が見えた。側には奈緒美が眠っている。身を起こして立ち上がり、部屋の様子を伺うと他の参加者達数名も眠っていた。同じような手段で運ばれたのだろう。
 奈緒美の身体を揺すり、起こそうとしたその時だった。
 大音量でモーツァルトのレクイエムが流れ始めると同時に、放送が始まった。

『私は日本国内閣総理大臣。君達は光栄にも私により選ばれた者達だ、感謝したまえ』
「な、何‥此処は何処‥」
 目覚めたばかりで、何が何だかわからない状況の方城瑞希(七瀬・瀬名(fa1609))が呟く。
『諸君らはたった一つの生存権をかけた殺し合い、サバイバルゲームを行って貰う。何故選ばれたか。それは各々が良く知る所だと思う。胸に聞いてみたまえ。心当たりが何も無ければ運命なのだろう』
「冗談‥だよな?」
 放送の内容に、拓也は受け入れられない現実を知る。
「これってどういうことなの?」
「俺にもわからない!」
 奈緒美の不安が、拓也の不安を煽る。
「サバイバルゲーム、人殺ししなくちゃいけないの‥そんなの絶対いや!」
 瑞希は頭を抱え、何故、ここにいるのかという心当たりを考えていた。
 彼女の趣味はPCにより、政府の秘密事項を除き見ること、俗に言うハッキングである。政府機密事項であるサバイバルゲームに触れてしまった為に参加させられたのだ。
『難しいことは無い。殺し、生き残ればそれで良い。実にシンプルだろう? 生き残った英雄には、一生豪遊できる賞金を保証しよう。乗っていた船だが、爆破した。逃げられては困る。船に乗る前に健康診断を受けただろう? その時、こっそりと諸君の身体にマイクロ爆弾を体に埋め込ませてもらった。この島から一歩でも出るとドカン! なを忘れないように』
 その言葉に、拓也は横にいた彰吾がフッと笑ったような気がしたが、それより問題は今の放送の内容だ。
「爆弾だって‥? そんなのは嘘に決まってる!」
 心中の不安を打ち消そうと拓也は叫んでいた。
『では諸君、張り切って殺しあいたまえ』
 その台詞がスタート合図となり、ゲームは開催された。
 それが終わると同時に、別室で目覚めた雄一が大広間に駆け込んできた。
「今の放送は何なんだ」
「俺達が殺し合いをしなければならない、ということらしい‥」
 半ば呆然としたまま、拓也は答えた。
 雄一は慌てて大広間の中央に置かれてある武器のひとつから白木のステッキを拓也に手渡し、さっさと逃げろ! と言い残し、雄一は姿を消した。

 雄一から渡されたステッキを握ると、拓也は奈緒美と共に行動を開始した。ゲームを否定し、逃げるために。
 どのくらい走っただろうか。二人は参加者の男に出くわす。男は奈緒美を盾にするという卑劣な行動に出た。
「な、奈緒美!」
「おっと、動くな。一歩でも動くと、この女がどうなるか」
 拓也は恐怖にかられて、攻撃衝動の赴くままステッキで男の喉を突いた。
 それと同時に、奈緒美は男にナイフで腹部を貫かれ、ドサっと倒れた。男は喉から大量の血を流し、絶命したように見えた。
「ヒトって簡単に死ぬんじゃないか‥ハハハ」
 返り血を浴び、赤く染まったタキシードを見ながら、拓也は精神のバランスを崩しかけた。倒れている奈緒美のことなど気にも留めず。
「‥私はもう迷わない。このゲームに勝ち残ってみせる」
 俺が「私」に変わった瞬間、拓也は悲劇の主人公のようになった顔でフラフラと歩いていった。
 男は事切れてはおらず、拓也の後を追おうとしたが何者かが男の前に立ち塞がり、止めをさした。その人物は、まるで拓也が消えるのを待っていたかのように現れた雄一だった。
 奈緒美が倒れていることに気づくと、息をしているかどうか確認した。幸いにも、まだ息がある。
「拓也、何で壊れたんだ‥」

 それと同じ頃、ホテル内の別の場所で霧咲彰吾と、喧嘩っ早い極道者の渡キリエ(沢渡霧江(fa4354))が対峙していた。
 キリエは遺伝子的に劣った人間と解析され、政府により頭数合わせに参加させられた。彼女が柳刃包丁を選んだのに対し、彰吾はアーミーナイフを選んでいた。
 彰吾の正体は、実際は人殺しを好む残忍な性格の死刑囚だが、内閣総理大臣により保釈された身である。目的はサバイバルゲームに参加させるため、というのは言うまでもない。
 そんな彼のルールは参加者の苗字五十音順の逆に狩っていくことである。偶然にも、標的である『わ』の苗字のキリエに遭遇したのは幸運であった。
「銃も魅力的ですが、ナイフで十分ですね。逃げないんですか? まぁ、逃がすつもりはさらさらありませんが」
 説得より暴力を選び、本能のままに行動する鉄砲玉のキリエに逃げる気は無い。むしろ、良い相手とも言える。
「あんたが弱そうに見えたから、先に排除しようと思ってね」
 その言葉に、彰吾は恍惚の笑みを浮かべた。
「ふふ、嬉しいですよ。また人を狩ることが出来るなんて」
「その台詞、そっくりそのまま返してやるよ!」
 キリエが彰吾の腹部を狙おうとするが、彰吾は素早く避けると、キリエの背後に回りこむと、左腕で口を塞ぐと同時に、素早くナイフで喉を掻き切った。
「『わ』の狩り、終了。次は『よ』ですね」
 彰吾は次の獲物を求め、次なる場所へと向かった。

 瑞希は、どうしてでも人殺しはやりたくは無いが、自分の身を守る為、至る所にトラップを仕掛けることにした。まずは、自室に侵入して来られると大変なので、入り口に初歩的なネット跳ね上がり式の物で生け捕りにすることにしようと考えたが、ネットが無かったので、ベットのシーツ等を代用した。
「此れで、少しは時間が稼げるかな?」
 これだけでは安心できないと、近くに森林があるか窓から確認。
「あ、あった。使えそうな物探して、あそこまで運ばないと」
 森にトラップを仕掛ける為に材料を探し纏めて、瑞希は森林まで持ち出すことに。

「今のところおおよそ想定の範囲内です」
 と事務的に秘書(シヴェル・マクスウェル(fa0898)二役)が報告する。
『終わる事なき煉獄は‥今まさに此処から始まる。いかなる阿修羅が目覚めるか、楽しみだ』
 内閣総理大臣(joker(fa3890))は期待に胸を躍らせた。