新成人コメディアジア・オセアニア

種類 ショート
担当 氷邑
芸能 フリー
獣人 フリー
難度 易しい
報酬 1万円
参加人数 8人
サポート 0人
期間 01/03〜01/07

●本文

「ディレクター、新しい企画を考えました!」
 笑いを取るため頑張っているのは、お笑い番組『ガハッ! とチャンネル』のAD・平井・平良である。
 来年も積極的に様々な企画を提案し、頑張って欲しいものである。
「いつもご苦労さん、タイちゃん。で、今回の企画は?」
「これです!」
「どれ‥‥」
 プロデューサーが目を通した企画書の内容はこうである。

<「新成人になって笑いを取ろう!」(仮)企画書>
 今回の観客は、視聴者の中から抽選で選ばれた新成人の男女。
 テーマは『成人式』。
 出場者には新成人になってもらい、それに合ったコントをしてもらう。
 持ち時間は三分。下ネタは失格、退場とする。
 外見が20歳以上に見えるのであれば、未成年の参加もOKとする。

「成人式の日にちなんでの企画か。先取り新春番組だな。ま、いいか。それと、タイトルだけど、えちぃもんでも良いんじゃないか? たとえば‥‥」
「『ガハッ! とチャンネル』は深夜番組じゃないんですよ!!」
 そこまで考えているのか、こいつは‥‥頭固いな。
 そう思いつつ、平井の企画を承諾するプロデューサーであった。
「ありがとうございます!」
「タイちゃん、ついでだから司会と進行役お願い」
「え‥‥?」
 そこまでやるんすか!? と驚く平井。

『ガハッ! とチャンネル』では、スーツ、紋付袴、振袖を身に纏って新成人となってコントを披露してくださる出場者を募集しています。
 我こそは! と思う芸人、役者の皆様の出場をお待ちしております。
 ピン、グループ問いません。
 優勝者には賞金10万円が贈られます。

●今回の参加者

 fa0824 ベクサー・マカンダル(13歳・♀・鴉)
 fa2396 海風 礼二郎(13歳・♂・蝙蝠)
 fa2614 鶸・檜皮(36歳・♂・鷹)
 fa3503 Zebra(28歳・♂・パンダ)
 fa4371 雅楽川 陽向(15歳・♀・犬)
 fa5054 伏竜(25歳・♂・竜)
 fa5055 鳳雛(19歳・♂・鷹)
 fa5236 志羽・鳴流(15歳・♂・猫)

●リプレイ本文


 成人式ネタだというのに、外見、年齢共に未成年の参加者がいる。
「別にいいんでない? 3人が参加してくれなかったらこの番組成立しなかったし。ベクサー・マカンダル(fa0824)君と海風 礼二郎(fa2396)君はうちの常連だし。志羽君、2人を見習ってコントをするようにね」
 ディレクターの一言に緊張する志羽・鳴流(fa5236)。


「最初の出場者は志羽・鳴流。コントは『新成人代表の挨拶』です」
 白の紋付袴姿の志羽が舞台に登場。少しでも身長を高く見せようと、高下駄を履いているためふらついている。
「新成人を代表して、志羽鳴流さんに挨拶をしていただきます」
 平井のアナウンスが終わると、志羽は懐から紙を取り出して読み出す。
「えと‥‥その‥‥本日はお日柄も良く‥‥」
『今日は雨だよ!』
 とMDに焼き付けたツッコミがタイミング良く流れる。
「僕達は、今日で大人の仲間入りになりました」
『これで公衆の面前で喫煙できるよなー』
 台詞を噛みつつも、志羽は続ける。
「社会に貢献できる成人になりたいと‥‥」
『つまらねー!』
 野次と同時に、スタッフが空き缶やらゴミを投げつける。

「い、以上で挨拶を終わります‥‥」

 大人って難しいや。僕、まだ大人になんかなりたくないや。
 これが、コント終了後の志羽の感想だった。


「続きましては、成人の仲間入りを果たした雅楽川 陽向(fa4371)。コントは『一人コント・服選び』です」
 実年齢=成人の彼女にとって、記念すべき番組となるだろう。
 女性の着物を選ぶとこからネタが始まる。
「あらあら綺麗ね」と大はしゃぎする母親の言葉に「どれにしようか」と迷っている様子の娘を見事に使い分けて、更に様子を見ていた店員も演じる。
「いらっしゃいませ。どれもすごくお似合いですけど、お好きな色は?」
 と親子に訊ねる。
 親子は次々に
「この桜色や青空の色が良いわね」
「髪は赤い飾り付けしたいわね」
「白い花も綺麗だけど、白無垢様にとって置かないと。どれが良いかしら?」
 と話し合っている。因みに、これは母の希望である。
「こっちの黒は? 結婚式に着れるし」という娘に「あなたにぴったりのを忘れていたわ!」と母が選んだのは、淡い緑に裾が白い模様の着物。
「これでございますか?」
と尋ねる店員は、落ち着いた若草色で、早春にもよろしいかととにっこり。
「確かにあってるけど…」
 と語尾が濁る娘に対し、いいじゃない、あなたのはウグイス嬢でしょう? と母の鶴の一言が下された。
 
 続いては男性編。おかんと僕の一人二役。
「うちのおかんは早いです。僕が迷う前にパッとおかんが選び手渡します」
「だってあんた、紋付き袴以外着れないじゃない」
「‥‥ごもっとも。反撃できずオチでござる」
 最後は語尾に「ござる」が付いたオチだったが、観客は笑っていた。
 成人式は一生に一度やもん! せっかくの企画やから、皆さんのコントも見ていきたいですよ♪ という雅楽川に「いいよ」とOKするスタッフ。
 頑張った彼女には、観客として最後までコントを見て欲しい。


「次は‥‥って、ちょっと!」
 平井を遮り、鶸・檜皮(fa2614)が舞台に乱入する。
 本業はカメラマンの鶸だが、童心に返って途中乱入。ディレクターは「面白いからやらせろ」と書いたカンペを平井に見せる。

 そんな彼の新成人のキーワードは
「酒タバコ解禁」
「成人式に祝辞を述べるえらい人にヤジを飛ばす」
「メリケン粉かけ」
「木刀持ってお礼参り」
「盗んだバイク走り出す」
 の5つ。
 銜えタバコで偉い人ご用達ちょんまげカツラを被り、酒瓶、木刀片手にブレーキの壊れたバイクで成人式会場に乱入という破天荒なコントだった。
 止まることを知らない仕様のバイクに乗り、ヤジを飛ばしお礼参りの独りチキンレースで走り回った挙句、振りまいたメリケン粉でスリップし転倒し、救急車で運ばれ退場。
 体を張った反面教師をぶり示した鶸は、新成人に対し道を外すことの無いようにとのメッセージを送った。
 コント終了後、局にクレーム電話が殺到したのは言うまでも無い。


「次は、コメディシリーズ常連『やみくもあんどん』。コントは『新成人草野球』です」
 野球のユニフォームを着たベクサーは、成人式を終えたばかりの海風のところへ「高校の卒業式以来だね」と言いつつ近づき、挨拶もそこそこに「野球しよ!」と誘う。
「何? いきなり‥‥」
「商店街公認の新成人祝賀草野球大会やってるんだけどさ。野球しようよ」
 ベクサーの一言に「そんな話してなかったよ?」と言う海風。
「商店街主催だしね。今のところ参加者の平均年齢が34歳で成人が足らなくてさ。困ってるのよ」
「それ新成人関係ないよ、絶対! それにボク、野球やったことないし」
「高校の時に言ってたじゃない。結婚するなら断然メジャーリーガーがいいって」
 それに関しては、海風は何も言ってもいない。過去は見え見えの捏造である。
 帰ろうとする海風の袖を掴んで
「ちょい待ち。賞品も出るんだよ、勝ったチームには。豪華な賞品」
「豪華賞品?」
 何だろう? と気になる海風だったが、商品が最新式マッサージチェアーと聞いて呆れた。
「どう考えても、新成人をターゲットにした賞品じゃないよ」
「参加することに意義があるんだよ」
「でもボク、野球のユニフォーム持ってないし」
「スーツのままでもいいからさ」
「やだよ、これ高かったんだよ?」
 等のやりとりをした後、ベクサーは一旦引き下がったと思いきや‥‥数分後、サッカーのユニフォームを着て「新成人サッカーっていうイベントがあるんだけど」と海風を誘うが「何でもいいのかよ!」と断られた。
 息がピッタリの2人に、観客は盛大な拍手を送る。


「次は、Zebra(fa3503)による手品です」
 紹介の後、元気良くZebraが登場。
「ハッピーマンデー! 成人おめでとう!」
 彼が成人を迎えたのは昔の話だが、思い出に漂ってる場合ではない。
 紋付袴でピシッと決めて、新成人の女性達に見つめられながら、壇上に颯爽と立つ事にする。
 壇上には、1m四方くらいの、めでたい感じのデカい箱があり、白地に赤い縁取りのついた紙や金色の紐で飾られている。所謂『紅白饅頭が入った箱』のビッグサイズ版。
「それでは新成人の諸君、この箱の中を見てくれたまえ。空っぽで、これから色んなもので満たされていく可能性のある箱だ。ヘイ! タイちゃん! こっち来いよ!」
 強引に平井を紅白箱に押し込んで蓋をし、箱の周りをくるっと回って、箱に紙吹雪をバッと散らして扇子で扇ぎながら蓋を開ける。
「タイちゃんがどのような可能性に目覚めたか、とくと御覧あれぇー!」
 箱の中から出てきた平井は、豪華絢爛な着乱れた振袖を身に纏い、顔には舞妓、というよりはおかめのような化粧をしていた。
 余談。手品というが、予め平井に協力を要請し、箱の中に隠してある「着易く加工した振袖」を急いで着えさせ、かつ手探りで化粧をさせただけである。
 平井と手を取り、Zebraは満面の笑みで紙吹雪を舞わせ退場。


「最後の出場者は、伏竜(fa5054)、鳳雛(fa5055)のお二人です」
 鳳雛に引っ張られて参加することになった伏竜。
 貴重な経験ということで、コントは『真面目すぎる性格の新成人』。
 伏竜は、羽織袴に脇差を持って登場。真剣は危険なので、本物そっくりの作り物である。
「成人式、マジかったりー」
 隣にいる鳳雛が、携帯をいじりながらブツブツ言う。
「かったるいなら来なければよかっただろう」
 と直立不動で一言するが、鳳雛は携帯をいじっている。
「ちゃんと話を聞け」
 と注意するが、つまんねーしと返される。
 注意しても聞かないので、話を聞けぇっ! と伏竜は大声を出してしまった。
「いや、つーかお前だよ!」
 とすかさず周囲に突っ込まれ、ひんしゅくを買った。
 慌てて周囲に謝罪した後、今度はどこか遠くの方が騒がしくなる。
 事態が落ち着いた後、今度は外が騒がしくなった。
「ああ、暴れてる奴いるみたいだな。最近よく聞くだろ? 荒れる成人式って」
 他人事のように鳳雛が言うと、伏竜は荒れるってレベルじゃねーぞ! と突っ込む。
「どいつもこいつも‥‥俺の刀のサビにしてくれよう」
 制止されても、止めるな、神聖なる成人式を汚す輩を見過ごしてはおけん! と怒りを露わにする伏竜。それがなお悪いと言われて「そうか‥‥俺が悪かった」と反省したしたかと思えば
「責任をとってこの場にて腹を切る!」
 と宣言。
「切るなー! それこそ大荒れ! トラウマになっちまうだろ!」
 止めるなと言われたが、いや止めるって! 全力で止めるって! と止め続ける鳳雛だが、いつの間にかレスラースタイルに戻り
「いい加減にしろコラ!」
 伏竜の背中にドロップキックぶち込みフィニッシュ!
 プロレスラーと総合格闘家の2人らしいコントは、強引なオチで終わった。

●結果発表
 審査結果が書かれた紙を持ち、平井が舞台中央に立つ。
「今回の優勝者は‥‥成人の仲間入りを果たした雅楽川 陽向嬢です! 実年齢を晒すことは女性としては大いなる勇気です。彼女の勇気を称え、優勝としました。新成人の公正な審査結果も含まれています。雅楽川さん、舞台へどうぞ!」
 観客席にいた雅楽川は、平井にエスコートされ舞台へ上がった。

 彼女にとっても、新成人にとっても記念すべき日でありますように‥‥。