縁結美神アジア・オセアニア
種類 |
ショート
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担当 |
氷邑
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芸能 |
3Lv以上
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獣人 |
2Lv以上
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難度 |
普通
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報酬 |
7.9万円
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参加人数 |
8人
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サポート |
0人
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期間 |
01/17〜01/21
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●本文
縁結びの神様が祭られている『縁結び神社』。
人々が寝静まっている時刻、神社の主祭神・愛染明王神が一人の少女に語りかける。
「良いですか。あなたはも縁結び神の一柱(神は「柱」と人数を数える)なのですよ」
神徳篤く、慈悲深く、縁結びの力絶大なる神様である愛染明王神は話を続けるが、少女は退屈そうに大あくびをした。
「話の途中であくびしない!」
「‥‥だって、退屈なんだもん」
悪びれた様子もなく、少女は眠たい目を擦る。
「あたしにも縁結びをしろっていうの? お母様みたいに」
少女の母は、愛染明王神ととても仲が良かった縁結びの神であったが、数年前に早い隠居生活を過ごしているため神を引退した。
「その名に負けぬよう、縁結びに励みなさい、縁結美神(えんむすびのかみ)」
「イヤ」
きっぱり即答。憤怒相の愛染明王神は、更にその表情を険しくした。
「今までは多めに見てきましたが、もう許しません! 108人の縁結びをするまで、ここに戻ってはなりませぬ!」
「ええ〜!!」
「問答無用! 縁結びの神の力は残します、これなら大丈夫なはずです!」
こうして、縁結美神という名の少女は、108人の縁を結ぶまで縁結び神社に帰れなくなった。
<この後のストーリー展開>
縁結び神社を追い出され、途方にくれる縁結美神。
「これからどうしよう‥‥」
そう考えている時、誰かとぶつかった。ぶつかった相手は、もてそうな高校生だった。ごめん、大丈夫? と声をかける彼に一目惚れした縁結美神だったが、縁結びの神には『他人を好きになってはいけない』という掟がある。
様子が気になる縁結美神は高校生の後をつけるが、玄関の前で彼の携帯が鳴る。
相手は、一度別れた彼女らしい。高校生は「もう電話しないでくれ」と冷たい態度をとり携帯を切るが、その後、後悔しているような表情に。
「あの人、好きな人がいるんだ。決めた! 彼の縁結びをしよう!」
その翌日。縁結美神は『御神(みかみ)むすび』と名乗り、彼が通う高校に編入した。気になった高校生の縁を再び結ぶために。
<登場人物>
御神むすび:本名・縁結美神(えんむすびのかみ)。見習い縁結び神少女。
108人の縁を結ぶ(復縁含む)まで神社に帰れない。
高校生:むすびが一目惚れした少年。もてそうな外見。
一度縁を切った彼女がいる様子。
愛染明王神:縁結び神社の神様で、むすびの保護者的存在。むすびを監視するだけ。
高校生の元彼女:喧嘩して一度は縁を切ったが、復縁を望んでいる。
※上記キャスト以外は自由に設定してください。
※むすびの縁結び神力(魔法のようなもの)は、むすび役の役者が考えてください。
※むすびは外見18歳以下の女性が望ましいが、少女に扮することもできれば男性も可。
●リプレイ本文
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縁結び神社を一時的に追放され、途方にくれる縁結美神(ヒカル・ランスロット(fa4882))に縁結びのチャンスが訪れた。偶然出会った高校生に好きな人がいるとわかったからだ。そうと決まれば即、実行するのみ。
「108人の縁結びが終わるまで戻ってはならぬとは言いましたけれど‥‥縁結美神は本当に大丈夫でしょうか‥‥」
その様子を縁結び神社に奉納されている鏡で見ている愛染明王神(椎名 硝子(fa4563))は心配になり、お目付役を送り込むことにした。
「縁(えにし)、こちらへ」
縁(カナン 澪野(fa3319))、と呼ばれた銀の長い髪と白い浄衣姿の美少女のような少年がポンっと現れた。
「今から縁結美神の元へ赴き、彼女を見守ってあげて下さい。縁結美神が神の道を踏み外しそうになった時以外は、決して手を出してはなりませんよ」
「かしこまりました」
縁は縁結美神を見守るべく、現代社会に降り立った。それを見て、溜息を愛染明王神。
「わたくしも甘いですね‥‥」
その頃、縁結美神は彼の縁を再び結ぶ為に高校に編入することを決意。そこまでは良かったのだが、編入手続きとか、制服調達等しなければならない。
困っていたその時
「おい、そこのおまえ」
どこから声が? とキョロキョロしている縁結美神の後ろにいたのは実体化したお目付け役の縁だった。
「私は縁、愛染明王神の命により、今日からおまえのお目付け役になった。宜しく」
「お目付け役? 厄介なのを押し付けてくれたわね‥‥」
溜息をつく縁結美神は、縁なら何とかできるのではないかと思い、手続きの準備をさせることに。
「え・に・し・く〜ん、お願いがあるの♪ 明日から、彼が通う学校に行きたいから後は宜しく♪」
手続き等を全て縁に押し付け、縁結美神は明日から行動を開始することに。
「本気でやる気があるのか無いのか‥‥困ったお嬢さんだなぁ。仕方ない、手伝ってやるか」
●
「このクラスに新しい生徒が来るって話聞いたか? 女の子だってさ!」
今朝、担任が来る前にその情報を掴んだ柊瑞樹(Rickey(fa3846))はテンションが高い。いつもなら「ホントか?」と話に食らいつく友人なのだが、失恋をしてからはそういう話に乗らなくなった。瑞樹は、友人が最近付き合っていた彼女と喧嘩別れした事を彼から聞き心配している故、元気付けようとしている。
ガラッとドアが開き、担任と編入生として学校に潜り込んだ縁結美神が教室に入ってきた。
「今日から皆さんと一緒に勉強する事になった御神むすびさんです。仲良くしてあげて下さいね」
数学教師で担任の白川愛良(葉月 珪(fa4909))が紹介する。
「御神むすびです、宜しくね♪」
元気良くクラスメートに挨拶する。
(「あ‥‥あの人と同じクラスだ。事が運びやすくなるわ」)
お目当ての彼、青羽蒼(羽生丹(fa5196))を早速発見。
「御神さん、あなたの席は窓際の前から3番目よ」
「は、はいっ」
突然、愛良に声をかけられ驚くむすびだったが、彼女の手に千切れた赤い糸のようなものを見た。
(「もしかすると‥‥彼の元恋人って先生?」)
二人はかつて付き合っていたのかもしれないと、縁結びの神特有の勘が働いた。
むすびの席は、彼の前。
「俺、青羽蒼。君、ちょっといいね、俺と付き合ってみない? 期間限定でさ」
失恋の痛手はどこへやら、愛良にわざと見せ付けるかのようにむすびに急接近接近する蒼。愛良の反応を見ようとしているのだろうか。そんな2人を見ても、愛良は顔色ひとつ変えずに教室を出た。その後、廊下で溜息をついた。
「確かに仲良くとは言いましたけど‥‥蒼にはやはり同い年の子の方がお似合いなのでしょうね。蒼の事を思えばこそ、二人を応援すべき‥‥ですよね‥‥」
誰にも見られないように、涙を流す愛良。蒼の態度に堪えきれないかったようだ。
1時限目は英語。教室に英語教師の黒井律子(Chizuru(fa1737))が入ってきた途端、教室の雰囲気が張り詰めた。
日直の「起立、礼」の後、律子は眼鏡越しに生徒達を見渡した。
厳しそうな先生と思いながら、むすびは授業を受けていたが、眠たくなったのかあくびをした。
「そこ!」
見つかった? とむすびは焦ったが、律子がビシッと指さした先には、隣同士の男女だった。
「恋愛は学業の妨げ。浮ついてる暇があれば、単語の一つも覚えなさい!」
と説教。
律子は風紀にとても厳しく、特に恋愛は学業の妨げと古風な考えの持ち主だ。地味なスーツは一切着乱れ無し、髪はきっちり一つに纏めるというスタイルは彼女の性格そのものとも言える。
●
昼休み。
「むすびちゃんも蒼狙いっぽいよなー。全く、もてる奴は羨ましいぜ。この色男!」
むすびが蒼に好意を持っていそうなのを見て、新しい恋をすれば元気になれるかと考える瑞樹は、冗談交じりで蒼にヘッドロック。
「青羽くん、彼女いる?」
直接、彼女について聞き出そうとしたが、不機嫌な表情で教室を出て行く蒼。
「御神さん、青羽くんに惚れたのね? うんうん、分かった。このゆりさんに任せておきなさい」
出て行った蒼とむすびを見比べつつ、むすびに肩をまわしながらにゅふふふと笑う石井ゆり(高白百合(fa2431))。
むすびが蒼に一目惚れしたと勘違いした百合は、2人をひっつけようと画策中。
「彼の後を追うわよ」
むすびの腕をぐいっと掴み、百合は教室を出て行く。
蒼が向かった先は裏庭。彼一人かと思いきや‥‥。
「あ、白川先生だ。何を話しているのかな?」
物陰から様子を窺うむすびと百合。
「蒼を心配するあまり、少々強く注意し過ぎたりしてごめんなさい。言い過ぎたこと、後悔しているわ」
青羽くんの元彼女って、白川先生だったんだ! と心の中で驚く百合。
愛良は復縁したいと思っているが、まったく取り合って貰えない。
(「このままじゃ駄目だ! 何とかしないと!」)
むすびが行動に出ようとしたその時
「お兄さんが青羽さん?」
蒼に近づいたのは、学生服を着た縁だった。仕事だから仕方ないが、むすびと蒼が接近するのを見るのは面白くない。
(「な、何でえにしがここに!?」)
何がどうなっているのか困惑しているむすびを、百合が強引に押し出した。
「今がちゃぁんすっ! いっちゃえゴー!!」
むすびを告白させるための行動だったが、その後、彼女は倒れた。
2人の後を追いかけた瑞樹は、百合に何があったのかを聞き出すと蒼を問い詰めた。
「蒼、まだ白川先生の事が好きなんじゃないか? 素直になった方がいいって! このまま本当に別れちまったら、絶対後悔するぜ?」
まだ互い好きあっていることを見抜いた瑞樹は、2人の仲を心配している。
「そこ! 校内での恋愛は禁止!」
風紀取締役として目を光らせていた律子が割り込み、お説教に入ったのは運が悪いとしか言いようがない。
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「えにし〜、チョット手伝ってよ」
縁の力も借り、むすびは千切れていた赤い糸をしっかりと掴み、蒼と愛良を赤い糸で簀巻きにして呪文を唱え始めた。
『恋を実らす赤き糸よ、再び結ばれ給え!』
「待て、お前は急ぎすぎだ! しかも大雑把すぎ! なぜ簀巻きなんだよ!」
なぜ簀巻きなのかは、むすびのみ知る。
「赤い荒縄よりはマシか‥‥」
縁結びが無事終了し、2人の小指には元通りの赤い糸がしっかりと結ばれた。
「器用ね‥‥。ねぇねぇ、その手品のタネ教えてくんない? 駄目?」
縁結びを目撃した百合は、神力を派手な演出の手品と信じているようだ。
「ごめん、これ、手品じゃないの。私の役目はこれで終わり‥‥。ここで起こった事は全て忘れるから。青羽くん、白川先生、お幸せにね」
(「彼の事は吹っ切ったはずなのに‥‥」)
抱き合う蒼と愛良の幸せそうな姿を見ていると、胸が苦しく、切なくなり、涙が溢れた。
「良くやったな。残り107人。それまでずっと私が側にいるから‥‥泣くな‥‥」
むすびの頭を撫でながら、そっと優しく抱きしめる縁。縁の胸で、むすびは蒼を思いながら泣き続けた。
●
むすびの神力で復縁した蒼と愛良は幸せな表情をしている。
一度は復縁を諦め掛けたが縁結びの神力により、互いに素直な気持ちを打ち明け合い、謝って復縁を果たす。
「この前は、つい言い過ぎちゃってごめんね。蒼の事が誰よりも好きだから‥‥だからこそ心配で、色々言ってしまって‥‥。本当はね、学校の風紀だってどうでも良いと思ってしまう位、大好きだよ」
「俺も、本当は先生と一緒が良い‥‥」
愛良の改めての告白に、顔を赤らめて素直な気持ちを蒼は伝えた。
「あのさ、ホワイトデーのクッキー焼きたいんだけど‥‥教えてくれない?」
「私でよければ教えてあげるわ」
2人のよりが戻った事を喜んだ瑞樹は、笑いながらこう言った。
「何処かに俺と付き合ってくれる先生とかいないかな‥‥」
「自分の気持ちに負ける事なく良くやりましたね、縁結美神。あなたの試練はまだまだ続きます。立派な縁結びの神になって帰ってくる事を、わたくしは待っています」
優しさと厳しさが入り交じった表情で呟く愛染明王神。
後日談。
校内恋愛に厳しい律子だったが、むすびの神力の余波を受けて恋愛至上主義に変貌した。学内での恋愛取締りを緩め、様々な異性に声を掛け捲るという暴走振りだ。
「黒井先生、おもいっきり変わりましたね」
今までの律子を知る教師達は、驚きを隠せないでいる。