縁結美神〜赤い糸修復アジア・オセアニア
種類 |
ショート
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担当 |
氷邑
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芸能 |
2Lv以上
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獣人 |
フリー
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難度 |
普通
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報酬 |
3万円
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参加人数 |
8人
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サポート |
0人
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期間 |
02/14〜02/18
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●本文
ごく普通の高校生、御神(みかみ)むすび。
その正体は、見習い縁結びの神、縁結美神(えんむすびのかみ)。
縁結びの仕事を怠ったため、住処である『縁結び神社』の主祭神、愛染明王神に108人の縁を結びまで戻ってきてはならぬ、と一時的に追放された身だ。
今は築25年の小さなアパートに住み、そこから学校に通っている。
「大家さん、いってきまーす!」
大家に元気良く挨拶し、駆け足で学校にむかうむすび。この大家、実は愛染明王神の使いである。追放されたむすびの一時的住処を密かに与えなさい、と命令されたのだ。
<この後のストーリー展開>
編入し、学校に馴染んだが、何やら教室が騒がしい。女生徒達が「ねぇ、誰かに渡した?」という会話が聞こえる。
「おはよう、御神さん」
学級委員長の星名ともがむすびに挨拶する。
「おはよう、委員長。今日、学校で誰かに何か渡す日なの?」
「今日はバレンタインデーよ」
「ばれんたいんでー‥‥? ああ、そういえばそういうのあったね〜」
縁結び神社にも、バレンタインデーやホワイトデーを機に縁結びを、と願い事をする参拝客がいたっけ‥‥とむすびは思い出うと同時に、大きな紙袋を持って教室に入った同級生がいた。
「中学時代からすごい量ね、彼が貰うチョコ」
「あれ、全部貰い物なの?」
「そうよ。彼、気さくで誰にでも優しいから人気あるのよ。あ、あたし、彼と同じ中学だったの」
窓際から、誰かを思う強い気持ちが感じる。
「あの子からだ‥‥」
窓際の席に俯いて座っているおさげ髪の少女、藤井冬子。クラスでは大人しく、目立たない存在の子だ。
(「藤井さん、彼にチョコを渡したいんだ‥‥って、あ、あれは!」)
むすびには見えた。彼と冬子が赤い糸で結ばれているのを。しかし、それは千切れかけている。
このままじゃ大変だ! 何とかしないと‥‥。
制限時間は6時限目が終わるまで。それまで、むすびは二人の赤い糸を修復できるのだろうか。
<登場人物>
御神むすび:本名・縁結美神(えんむすびのかみ)。見習い縁結び神。
108人の縁を結ぶ(復縁含む)まで神社に帰れない。
同級生:クラスメートで人気者。毎年、たくさんのチョコレートをもらう。
星名とも:学級委員長でむすびの友人。
藤井冬子:大人しく、目立たない大人しいクラスメート。
愛染明王神:縁結び神社の神様で、むすびの保護者的存在。むすびを監視するだけ。
※上記キャスト以外は自由に設定してください。
※むすびの縁結び神力(魔法のようなもの)は、むすび役の役者が考えてください。
※むすびは外見18歳以下の女性が望ましいですが、少女に扮することもできれば男性も可です。
●リプレイ本文
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縁結び神社の主祭神、愛染明王神(観月紫苑(fa3569))は、鏡で縁結美神の奮闘ぶりを見ていた。
「毎年この時期になると、乙女から男(おのこ)へと真っ黒で甘い豆菓子を贈って想いを伝える「弁天デー」という祭事の為に、縁結びを祈りに来る乙女が増えますわね」
バレンタインを「弁天」と勘違いなさっている模様。それでは、縁が切れてしまうのですが‥‥。
「縁結美神の様子はどうでしょうか‥‥」
鏡に映ったのは、とある高校の教室。
●
2月14日。
編入した高校に馴染んだ御神むすび、本名、縁結美神(ヒカル・ランスロット(fa4882))は、いつも以上に教室が騒がしいことに気付いた。
「委員長、今日は何か渡す日?」
隣の席に座っているクラス委員長の星名とも(ジュディス・アドゥーベ(fa4339))に聞くと
「何を言っているの? 今日はバレンタインデーよ」
「ばれんたいん? ああ、そういえばそういうのあったね〜」
(「縁結び神社にも、バレンタインデーを機に縁結びを、と願い事をする参拝客がいたっけ‥‥」)
むすびがそう思い出すと同時に、大量のチョコをゲットした松本晶(Rickey(fa3846))が元気良く教室に入ってきた。
「おはよう!」
気さくで誰にでも優しい晶の声で、クラスの女子の胸はキュン、とときめいた。
「松本くん、受け取って!」
「あたしのも!」
その遣り取りを沢渡ことり(縞りす(fa0115))は、クラスの男子に義理チョコを配りながら見ていた。天真爛漫、純真無垢な彼女は、本当の恋をしたことがないためか、バレンタイン関係もお祭り程度にしか考えていないので、チョコを手渡すのは、義理チョコ配りのバイトをしているんだ、という感じである。
誰とでも仲良くなれる性格なので男子生徒からの受けも良いが、恋だの愛だのはとことん鈍いので特定の人と付き合うとかいうのは無い。‥‥というが、人の恋路には敏感だったりする。
そんなことりを羨ましそうに見ているのは、窓際の席に俯いて座っている黒縁眼鏡をかけて、着崩の無い制服姿の藤井冬子(長澤 巳緒(fa3280)) 。
「あれ? 冬子ちゃんも持ってきてたんじゃなかったっけ?」
と小声で囁くことりに冬子は全く気付かず、手作りチョコを気にしながら思案中。
(「せっかく作ったんだし‥‥勇気を出して‥‥。でも‥‥やっぱり駄目だよね。私なんかがチョコを渡して告白しても‥‥」)
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むすびのクラスの前を偶然通りかかり、その様子を見ていた英語教師・黒井律子(Chizuru(fa1737))は、それを見過ごすことが出来なかった。
「バレンタインなのは理解しますが、紙袋一杯チョコはさすがに見過ごせません」
と、晶が持っていた紙袋を即、没収した。
「恋愛もいいですが、学校は遊び場ではありません。他の子も、チョコは見つけ次第没収。わたくしが預かって放課後返しますからね」
「すみません‥‥。でも、くれた子達に悪いので、学校から帰る時に返してくれませんか?」
晶がどうしてでも、と言うので、律子は放課後まで没収することにして教室から出ようとしたが
「藤井さん、何を隠しているの?」
チョコを渡そうかどうか迷い思案している時、運悪く律子に見つかってしまった。
「えっと‥‥あの‥‥」
「チョコね? これも没収」
「すみません、黒井先生‥‥」
冬子が大人しくて真面目な性格ということを知っている律子は、彼女がチョコを持ってくることはありえないと推測するも、他の生徒への手前もあるのでチョコを没収した。それを見たむすび達は引き止めたが、律子は聞く耳持たずで職員室へと向かった。
「晶もドジよね。しまえる分だけでもしまっておけばよかったのに。あ、御神さんは去年のこと知らなかったわね。晶、毎年たくさんのチョコを貰っているの。本命、義理含めて。中学が一緒だったから、彼の貰いぶりは知っているわ。去年なんか、抜き打ちで持ち物検査、休み時間に見回りで大変だったんだから」
ともの言葉に、松本くんって大モテなのねと返すむすび。
「でも、藤井さんがチョコ持ってきてたのは、ちょっと意外だったわ。彼女、男の子に興味無さそうなカンジだし」
ともと話をしていたむすびだったが、落ち込んでいる冬子にある異変を感じた。冬子の小指に巻き付いている赤い糸が、途中で切れていた。結ばれていた相手は晶。
千切れた糸は、その日のうちに結ばないと二度と元に戻らなくなることを知っているむすびは、放課後までには赤い糸を結び直すと固く誓った。
●
一時限目終了の休み時間、銀の長い髪、白い浄衣装を身に纏ったむすびのお目付役・縁(カナン 澪野(fa3319)) は、むすびに呼び出された。
頼みたいことがある、とむすびは、相談内容を縁に伝えた。
「成る程‥‥そういうことなら、手伝う」
「ありがとう!」
「そうと決まれば、実行開始だ! チョコは昼休みに渡すから、裏庭に来てくれ」
むすびと別れ、二時限目の最中に誰もいない職員室に透明化して忍び込んだ縁は、没収された冬子のチョコを律子から奪還しに職員室に向かった。恋する人間の思念を辿る術を使い、冬子の気を探った。
「何で俺がこんなことを‥‥まぁいいか。しっかし、あの先生、マメだねぇ。没収した物に名札付けてるなんて。あ、あった、コレだ」
透明化していても、油断は禁物。縁は注意深く、職員室を後にした。
昼休み、むすびは縁に会うために裏庭に向かった。
「これだろ?」
チェック柄の紙に包まれ、青色のリボンが付いたチョコをぶっきらぼうに渡す縁。
「うん、これこれ! ありがとう、縁♪」
早く冬子さんに渡さないと、と急いで教室に戻るむすび。
●
六時限目は化学の実験のため、理科室に移動することに。
「御神さん、早くしないと遅れるわよ」
「ちょ、ちょっと待ってよ!」
ともに急かされたむすびは、慌てて教科書等を持って教室を出た。
(「やっぱり、藤井さんから貰える訳ないよね」)
晶は内心諦めモードだった。
教室を出て暫くしてから、筆入れが無い事に気付いた。
「あれ? 確かに持ったと思ったんだけど。教室に忘れて来たかな?」
一旦、教室に引き返すことにした。
それを見たともは、晶が戻る前に、彼の机の上に筆入れを置いた。
「御神さん、変わったことを頼んでくれたわね。何でこれが晶の恋の成就になるのかしら?」
首を傾げ、不思議がるともだった。
むすびは理科室に向かう途中、冬子を呼び止めて話を切り出した。
「ねえ、冬子さん、今日誰かにチョコ渡すの?」
「あなたには関係無いことだけど‥‥」
「これ、なーんだ?」
むすびが冬子に手渡したのは、律子に没収されたはずのチョコだった。
「これ‥‥なんで御神さんが‥‥?」
「黒井先生から奪回してきたんだ」
チャンス、といわんばかりに、晶が走って理科室に向かっていた。
透明化した縁は、修復の手助けをするためにむすび、晶、冬子の周りにバケツの水をかけまくった。簡易な結界代わりである。
「むすび! 早く二人の赤い糸を修復するんだ! 見られたら面倒だろうが!」
見られたは大変と、縁は目眩ましの術を使って周囲を誤魔化すことに。
『千切れた赤き糸よ、再び結び、恋を成就させ給え!』
むすびは、何時もの通りに赤い糸で晶と冬子を簀巻きにし、糸を強化させた。
「さて、もう切れかけないようにもうちょっと強化しておこう」
他にやり方は有ると思うのが、大雑把な性格なむすびらしい方法である。
「いつ見ても謎な術だが、めでたしめでたし‥‥だな」
縁はむすびと笑い合った。
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縁は急いで術を解き、後はむすびに任せた。
「今がチャンスよ。彼にチョコ渡しちゃいなよ」
むすびは冬子の背中を押して告白を応援する。冬子は不思議に想いながらも、むすびの言葉に背中を押され、晶にチョコを渡し告白した。
「松本くん、ずっと‥‥あなたの事が好きでした。これ‥‥受け取ってください」
チョコを渡しその場を離れようとした時、思いがけない返事が。
「藤井さん、これ、本当に貰っていの? 藤井さんって、俺が話し掛けてもあまり喋ってくれないから、嫌われてるんじゃないかって思ってた‥‥」
一呼吸置き、晶は改めて告白した。
「有り難う、凄く嬉しいよ。僕も藤井さんの事、前から好きだった」
少し照れた様に言う晶に、冬子は嬉しさのあまり涙を流す。
「あれ‥‥とっても嬉しいのに涙が‥‥」
涙を流す冬子に、晶は爽やかな笑みでハンカチを手渡した。
優しく微笑もながらその様子を見ているむすびに、冬子は「ありがとう‥‥」と言った。
「お幸せにね♪」
赤い糸が再び結ばれ、強化された事を確認した後、むすびは2人を残して理科室へと向かった。
六時限目終了後、何も知らない律子が慌てて理科室に駆けつけた。
「ごめんなさい冬子さん! あなたのチョコ、失くしてしまったみた‥‥あら、それは?」
晶の手に、冬子のチョコがあるのを見た律子は一安心。
「仲良くなるのはいいですが、学生の節度はわきまえて頂戴。それと、松本君は預かっていたチョコを放課後取りに来るように」
放課後、晶は紙袋を返却してもらった。その上に、ちゃっかり律子の義理チョコが入っているのを知らずに。
「切れかかっていた縁を結び直しましたか‥‥。その分、新たに結ぶより難しいところもあるのですが‥‥。よくやりました、縁結美神」
愛染明王神は、微笑みながら晶と冬子の様子を見ていた。