病・奈落佳人アジア・オセアニア
種類 |
ショート
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担当 |
氷邑
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芸能 |
3Lv以上
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獣人 |
1Lv以上
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難度 |
やや易
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報酬 |
7.5万円
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参加人数 |
8人
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サポート |
0人
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期間 |
01/29〜02/02
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●本文
「奈落佳人って知ってる?」
午前4時44分44秒に、奈落佳人なる人物が現れ、恋の怨みを晴らしてくれる。
中高生を中心とした若い世代の間で広まっている都市伝説であるが、時にはデマも流れている。
看護科の高校生は、憧れの看護師になるべく勉強を頑張っている。
そんな彼女には、入学してから付き合っている医師志望の恋人がいたが受験勉強専念を理由に、突然別れ話を持ち出した。
「酷い‥‥!」
あまりにも唐突な出来事に、ショックを隠しきれない彼女だった。
落ち込んだ気分で駅のホームで電車を待っていた時、他校の女子生徒の噂を耳にした。話の内容は、巷で噂になっている「奈落佳人」についての話題だった。奈落佳人の呼び出し方、恋の怨みの相手を奈落送りにする方法が語られていた。
『奈落佳人って、実はすごく貧弱らしいわよ。病状は、その日によって違うんだって』
恋の怨みを晴らすのが仕事なのに貧弱‥‥?
たとえそうであっても、自分を振った彼を奈落送りにできるのならそれでいい。
思い立ったが吉日。早速、彼女は佳人呼び出しを実行することに。
<1日目>
午前4時44分44秒、薄暗い部屋の中央に置いた姿見の前に立ち、奈落佳人を呼び出した。
この日の佳人は超貧血。顔色はホラー映画の幽霊みたいに青白い。
トマトジュースを飲ませたら元気になるかしら? と思った彼女。
<2日目>
昨日の不気味さは忘れられないが、怨みを晴らすまではと佳人を呼び出す。
顔色はまあまあだが、胃を押さえてご登場。
ストレスで胃が痛くなっている模様。
<3日目>
今度こそは健康な佳人様を‥‥! と祈る彼女。
姿見から登場したのは、咳き込む佳人だった。
咳をした後‥‥佳人の手には血がついていた。結核に侵されたご様子。
<4日目>
お願い、健康な佳人様! と必死に祈る彼女。
姿見から誰かが出ようとしているが、体がつっかえている模様。
ようやく姿を現したのは、肥満体の佳人だった。メタボリック症候群ですか?
<おまけ>
その翌日、同じ噂を耳にした会社員が興味本位で佳人を呼び出した。
姿見から登場した佳人の病状は‥‥会社員のみぞ知る。
噂話を鵜呑みにしてはいけない。その中には、真実もあれば、デマもあるのだから‥‥。
奈落佳人の話も、真偽は定かではない。それでも試してみますか?
<登場人物>
奈落佳人:中華風衣装を身に纏った謎の女性。登場時は日によって衣装が変わる。
高校生:依頼人。看護科の生徒で、病人佳人に遭遇する不運な少女。
会社員:興味本位で佳人を呼び出した依頼人。
※高校生、会社員は固定配役です。
※奈落佳人は一人ずつですが、場合によっては2役、3役も可です。
※会社員が呼び出した佳人の病気は、その時に登場する佳人役が決めてください。
※メタボリック症候群佳人役は、特殊メイクをします。
●リプレイ本文
『奈落佳人って、実はすごく貧弱らしいわよ。病状は、その日によって違うんだって』
病弱なのに、恋の怨みを晴らす仕事が勤まるのだろうか‥‥。
そんな奈落佳人の噂を知りつつ、呼び出した依頼人の物語が始まろうとしていた。
●貧血佳人
看護科の生徒である高校生(苅部・愛純(fa4350))は、午前4時44分44秒に姿見の前に立ち、奈落佳人を呼び出した。
願いが通じたのか、姿見から音も無くひとりの女性が現れた。ホラー映画に登場する幽霊を思わせる生気の無い表情で
「何か‥‥ご用でしょうか‥‥?」
と訊ねたのは、貧血気味の奈落佳人(DESPAIRER(fa2657))。貧血のせいで気分が悪いので、やや顔をしかめている。この時点で、普通の相手ならかなり驚きそうだが、看護師の高校生は平気だった。
高校生は、依頼の話をしてみようとするが、
「‥‥耳鳴りがして‥‥良く、聞こえません‥‥」
一応聞こうと努力はしてみますが、あまり役に立てず、しまいには座り込んでしまった。
「すみません‥‥ちょっと、立ちくらみが‥‥」
「ちょっと待ってて、すぐ戻るから!」
高校生は台所に行き、冷蔵庫からトマトジュースの缶を持ってきた。
「ありがとうございます‥‥トマトジュース、ですか‥‥? では、いただきます‥‥」
良かれと思ってしてくれていることなので、正しい対応はもちろんのこと、多少見当違いの対応をされても、気づかずにおとなしく言うことを聞く貧血佳人。高校生は、貧血佳人を頭を低くして寝かせ、貧血佳人を安静にしておいた。
結局朝になるまでには完治せず、最後に一言お礼を言う貧血佳人。
「‥‥いろいろと‥‥ありがとう、ございました‥‥」
立ち上がろうとするが、フラフラするので奈落送りどころではないようだ。
「‥‥お役に、立てなくて‥‥すみませんでした」
ゆっくりと立ち上がると、貧血佳人は姿を消した。
●胃痛佳人
翌日に現れたのは、中華風衣装が乱れ、すっぴんに近いメイクでご登場の奈落佳人(紗草みりん(fa2632))。
「胃が‥‥胃がキリキリと‥‥痛いの‥‥!」
胃痛のせいか、何処か脂汗を浮かべた、うーんとうなりながら苦しげな喋り方になっている。胃を押さえつけているため、その部分の衣装はクシャクシャになっている。
「腸も痛いかもぉ‥‥」
胃だけではなく、腸も弱いようで。
「うう、胃がぁ‥‥キリキリって痛むよぅ‥‥わかる‥‥?」
胃を抑えながら苦しむ胃痛佳人に
「胃痛の主な原因はストレスなんです。『病は気』からと言うでしょう? 気にしすぎると、かえって悪くなるわよ」
と胃痛佳人にアドバイスする高校生。人ならぬ存在である奈落佳人だが、病気にはなるようだ。
高校生の言葉に安心した胃痛佳人は、まだ痛む胃を押さえながら去っていった。
●結核佳人
人数が合わないため、女装をして結核に侵された奈落佳人を演じるのは百鬼 レイ(fa4361)。メイクで頬がこけさせ、どことなく顔色が悪い様子に見せている。
呼び出された時の佳人は、焦点の合ってなさそうな目だった。
「私を呼んだのは‥‥・ゴホッ、あなたですか‥‥ッゴホゲホッ!」
女子高生の話を聞く前に喀血し、床にへたり込んだ結核佳人。
「しっかりして!」
結核佳人の肩を掴んで励ます高校生。それを無視し、結核佳人は窓の外を見て
「あの葉っぱが全て散ったら‥‥私は死ぬのね‥‥」
この時期に葉っぱなど無いはず‥‥と思いきや、いつのまにか一枚の葉が枝についていた。
そう言った瞬間、突然嵐のような強風が吹き、葉を一気に吹き飛ばした。それを見た結核佳人は、燃え尽きたように真っ白になり、窓の外を見ながらフェードアウト。
「話‥‥聞いてくれなかったわ‥‥」
呆然とその場に立ち尽くす高校生であった。
●メタボリック佳人
「今日は健康な佳人様が現れますように‥‥!」
姿見に向かい、必死で祈る高校生。祈りが通じたのか、姿見から誰かが登場しようとしているが‥‥
「そこのあなた! お願い、手伝って!」
必死に出ようと頑張っているのは、奈落佳人(迷路(fa5237))だったが、お腹の肉が妙に目立つ。華麗な中華風衣装が台無しになるくらいに。
「‥‥メタボリック症候群ですか?」
高校生の質問に「めたぼりっく何とか、って何?」と聞き返すメタボリック佳人。余談、メタボリック佳人の腹部の肉は特殊メイクだ。
メタボリック症候群というのは、簡単にいえば高血圧、肥満、高血糖、高脂血症等の成人病危険因子が重なった状態の呼び方である。登場したメタボリック佳人は、肥満以外の症状は無いのだろうか、というのが疑問だ。
高校生の協力もあり、ようやく出られたものの‥‥姿見は壊れてしまった。
「痩せなきゃ駄目ね‥‥」
メタボリック佳人がそう呟くと、高校生はダイエットに良い食べ物、カロリー、ウォーキング等の簡単な運動を事細かく教えた。
「どこまでやれるかわからないけど、頑張って痩せてみるね。ありがとう」
と言い、メタボリック佳人は姿を消した。
高校生の依頼だが、ダイエットのことで精一杯なので何一つ聞いてはいない。
「今日も話、聞いてもらえなかったなぁ‥‥。うちもダイエットしようかな‥‥」
そう思った高校生であった。
●花粉症佳人
高校生の願いも虚しく、今回登場した奈落佳人(千音鈴(fa3887))も病気持ちだった。箱ティッシュを抱え、姿見から出現した奈落佳人は、目は充血、鼻もかみ過ぎて赤く、お約束台詞を切り出そうとしては「ぶえっくしょん!!」とくしゃみを連発。「くしゃみ」「鼻水」「鼻づまり」「目のかゆみ」と、花粉症4大症状を見事に発症中のご様子。花粉症による充血を分かっていても、目が血走っているようで少し怖い。
「私を呼び‥‥ふぇ、ふぇ‥‥」
鼻水が出てしまったので、「失礼」と断ってから後ろを向き鼻水を拭いた。良く見ると衣装の袖口がテカってるように見えるが‥‥もしや袖で拭いたとか!?
「続けまし、ぶえっくしゅ! うっ‥‥!?」
くしゃみの勢いで舌を噛んでしまった。
その後も必死で会話を成立させようとするが、くしゃみ連発、鼻水垂らし、による会話中断で全く進まない。目はかゆいし、鼻は出たかと思えばつまって苦しいしで、やや苛々しているような雰囲気。もう一度言うが、目が血走ってるのは花粉症の所為である。‥‥多分。
ティッシュは僅かな時間の間にどんどん減って行き、使い果たして依頼人にティッシュ請求。結局、会話は全く進まず、看護科の生徒である依頼人に、花粉症対策・対処法のアドバイスを受け、おまけに大量のポケットティッシュをお土産を貰い、姿見へよろよろと帰還。この様子では、とても奈落送りどころの気分では無い。
今日も依頼は不成立で終わった。
●健忘症佳人
会社員の紺野宗二(スモーキー巻(fa3211))は、興味本位で奈落佳人を呼び出した。
健康そうではないものの、特に病気をしているようには見えない、結い上げた髪に簪を差し、仙女の様な中華風衣装に薄い化粧の儚げな微笑を湛え、歌いながらゆらると現れたのた奈落佳人(長束 八尋(fa4874))だった。
「悩める者よ、惑いて来たれ。あしきそのゆめ、はるか奈落へ送りましょう」
ただ呼んでみただけ、というわけにもいかないので、以前振られた相手を奈落送りにしてもらおうかと宗二は考えた。
「私をお呼びになったのは、貴方ですね?」
宗二は頷いた。
「……というわけなんだけど、お願いできるかな?」
「その様な事があったのですか‥‥」
話を聞いた後も同じ台詞と共に微笑み、「あらー」「おやまあ」「それは大変」と見た目に反して、物忘れの酷くなったお婆ちゃんの様な感じで、縁側でまったり茶を飲むような緩い雰囲気を醸し出している。
「どの様な事があったのですか‥‥?」
「え?」
奈落佳人の質問に一瞬驚いたが、宗二は説明をした。
「さっきも話したと思うけど‥‥」
結局、何度も話したと言われても「はて?」と首を傾げて微笑んでいる奈落佳人。
依頼してはみるものの、話したはずのことを最初から順に聞き返されたりしたことから奈落佳人が『健忘症』であることを理解した宗二。
もともと恨みのある相手でもなかったので、奈落送りを諦めて健忘症佳人の相手をすることに。お茶でも飲みながら、健忘症佳人に朝までとりとめのない話をしたり、会社の愚痴を聞いてもらったりした。
話し込んでいるうちに、夜が明けた。
「ありがとう、佳人さん。なんだか少し元気出たよ」
宗二が別れの挨拶をし終えると同時に、微笑みながら昇る太陽に溶けるかのように健忘症佳人はすぅーっと消えた。
「さて、会社に行く準備をしないと‥‥」
奈落佳人と話しこんだおかげか、晴れ晴れとした気分の宗二は姿見の前を離れ、支度を始めた。
●撮影終了後
「病気をテーマにしたのは不安だったけど、無事、撮影を終えたようですね」
奈落佳人シリーズの脚本を手がけている脚本家の輪島珠洲は、内容が不謹慎になるか心配だったが、それは取り越し苦労のようだった。
「出演してくれた皆さんに感謝、です。さて、次の脚本を書かないと‥‥」
完成VTRを見終えた珠洲は、次の脚本に取り掛かるべくその場を後にした。
「‥‥できれば、次は全うな奈落佳人を書きたいわね」
冗談で書いた『お笑い佳人』が好評だった為、慣れないお笑いを書く羽目になった珠洲の苦労は、まだまだ絶えないらしい。