アスリート・コメディアジア・オセアニア
種類 |
ショート
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担当 |
氷邑
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芸能 |
1Lv以上
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獣人 |
1Lv以上
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難度 |
やや易
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報酬 |
0.7万円
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参加人数 |
8人
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サポート |
0人
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期間 |
09/19〜09/23
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●本文
「ディレクター、次はこの企画でいきましょう!」
前回、無謀とも言える眠っている猛獣の面前で音を立てずに観客を笑わせるという企画の成功に気を良くし、新たな企画を提案したお笑い番組『ガハッ! とチャンネル』のAD。
生命の危険性が全く無い、と言えない企画に参加者がいて、番組が大成功したのは不幸中の幸いだった。
ディレクター、ADが差し出した企画書を見る。
「どれどれ…」
企画書の内容はこうである。
<「外国人から笑いを取ろう!(仮)」企画書>
今回の観客は日本語があまり(全くも含む)通じない外国人アスリート達。
日本語を理解できずに困っているアスリート相手にどこまで笑いを取れるか?
持ち時間は三十秒。芸風は一切問わないが、下ネタは即退場とする。
「外国人アスリート相手か。面白そうだな。いいよ、これ! 番組プロデュース、キミに任せるよ」
「あ、ありがとうございます!」
『ガハッ! とチャンネル』では、外国人アスリート達から笑いを取れるという自信のある出場者を募集しています。
我こそは! と思う芸人、役者の皆様の出場をお待ちしております。
ピン、グループ問いません。
優勝者には賞金5万円が進呈されます。
●リプレイ本文
●開始5分前
ミーティングルームに集まったのは7名。初心者から精鋭まで、様々な芸人が参加することになった。
「30秒間で言葉のわからない外人さんを笑わせればいいんニャよね?」
アヤカ(fa0075)がADに質問する。
「はい。スタジオには選りすぐりの50名のアスリート達が審査員となり、面白いと思ったら手元のボタンを押してもらうシステムになっています。50点満点、あるいはそれに近い点数の参加者が優勝です」
厳しいコント勝負になりそうだ。
「ども〜テレビ初出演の回路いいます〜」
それをものともせず、腰を低くして挨拶するのは回路(fa4668)。
「コントを気に入ったアスリート達がコミュニケーションを取る場合もありますので、その際はご協力お願いします」
ADの説明を受けた後、参加者達は用意に取り掛かった。
●一番手:観月紫苑(fa3569)
観月は礼をし終えた後、舞台に寝転がり、横になって直立のポーズのまま猛スピードでゴロゴロ右側に転がっていった。鉛筆を勢いよく転がしているイメージを想像してほしい。
次は反対側を同じようなポーズで転がりながら登場し、そのままハケていった。
ステージ上の移動は、30秒使い切らずにスピーディかつ、一切無言。転がる音以外の音は聞こえない。
その直後、舞台袖からドンガラガッシャーンと何かにぶつかって倒壊したような音と「あ〜〜〜〜」という悲鳴が遠く聞こえた。
得点は10点。拍手のない、限りない失笑系で終わってしまった。
●二番手:アヤカ
アヤカは、昔かじった程度のパントマイムを披露することにした。大したことは出来ないが、それなりに練習した成果を見せる良い機会だ。
基本は誰もいない方向から引っ張られたり、押されたりというもの。それをふまえ、ネズミを追いかけ回す猫みたいな演技をすることに。
色々と動き回るネズミを最初はそばえたりして、といううちにネズミの反撃。
ネズミに鼻を噛まれて逃がしてしまったが、また追いかける。
30秒間、アヤカは無駄の無い動きのパントマイムを披露した。
得点は30点。上出来なほうである。
●三番手:回路
お笑い芸人の意地に賭け、回路は笑いを取ると誓った。
舞台袖で今人気の外国人ロックシンガーバリの衣装を身にまとい、金髪のカツラを被って身も心も外国人になりきっている。
ローラーブレードに乗って華麗に、格好良く登場するつもりだったが、舞台の中央付近で転倒してしまった。これが少しウケたのか、何人かクスリと笑っている。
「ハロー、マイネームイズ、カイロ。ハワユー?」
わざとらしい発音で、元気良く挨拶をするが‥反応は無かった。
「ミンナー、ゲンキナイネー! スマイル、スマイル♪」
これならどないや! と、回路はある言葉を発した。
「ホッタイモ、イジルナ?」
誰か一人くらいは反応するやろ、と思っていたが、誰も反応しなかった。
得点は21点。大人しく帰ろうとしたその時、
『OH! ベルヴォー!!』
回路が扮した外国人ロックシンガーの大ファンだというアルゼンチン出身の十両力士がステージに乱入し、ぎゅ〜と抱きしめた。
「さ、さば折りは‥」
そう呟くと、回路は気を失った。
●四番手:ベクサー・マカンダル(fa0824)&海風・礼二郎(fa2396)
次に登場したのは、ベクサーと海風の二人。
彼らがするのは、あくまで観客を笑わせることが目的の二人が全く同じ手品をやり、同時に成功するはずが、微妙に内容が違っているというネタだ。
一本の糸を切って、切り目に布を被せ、取り除くと切ったはずの糸が繋がっているという手品を二人同時に行う。海風は成功するが、ベクサーは切った箇所が蝶々結びで繋がっている。海風は「違う、違う」とジェスチャーするが、何故かベクサーに「ドンマイ、ドンマイ」と肩を叩かれ、慰められてしまっている。
次は帽子の中にボールを入れて机の上に伏せ、帽子を持ち上げるとボールではなく耳の大きなネズミの人形が出てくるというもの。海風は成功するが、ベクサーが帽子を取ると中からリアルなネズミの置物が出てくる。海風は「違う、違う」とジェスチャーするが、ベクサーは「こっちの方がレベルが高い」と威張る。
最後は、片手に持っていたトランプを一枚握ると、手からズボンのポケットに瞬間移動するというもので、海風が手の中のトランプを握ったところで、突然ベクサーが海風のポケットの中のトランプを取り出してタネをばらしてしまう。
「最初からポケットにトランプ入ってるじゃないか! フジヤマゲイシャハラキリ!」
ベクサーは、突然訳の分からないことを言って退場してしまった。
勝手に怒って帰るベクサー制しきれなかった海風は、
「‥‥えと‥いっつあテレポート」
と、とりあえずタネのばれた手品をやって気まずそうに退場していった。
結果は37点。まあまあの結果だった。
●五番手:磯野兵衛(fa4673)
磯野のネタは、あらかじめ舞台で演技をする場所にバナナの皮を置いておき、単なる通行人のような感じで歩いてきたバナナの皮を踏んづけてすべってこける、という単純なものだ。
バナナネタは広まっていると思うので、それなりには受け入れやすいと予測してのネタである。
セッティングを終えると、磯野は舞台袖からバナナが置いてある舞台中央に進む。
お約束どおりバナナの皮を踏んだと思ったら‥なんと彼はタイミング良く跳躍し、空中にいる間は可能な限り回転している。
『な、なんなんだこいつは!』
『クレイジーなのか芸なのか、さっぱり分からないぜブラザー!』
一部の男性アスリートが、そのリアクションに驚く。
地面に落ちた際は、受け身の状態から素早く横転を開始し、凄い勢いで退場。その早業に、アスリート達は感心し、盛大な拍手を送った。
得点は40点。現時点の最高得点だ。
次の参加者が登場か? と思われたその時、素早く舞台に戻った磯野がバナナの皮をバケツに入れ、跡が残らないように床を雑巾で綺麗に吹いてから改めて退場した。律儀な男である。
●六番手:あずさ&お兄さん(fa2132)
最後に登場したのは、マッチョなオカマの人形「お兄さん」を相方に、一人芝居を繰り広げる不思議系美少女のあずさ。
「言葉が通じなくても「見てわかる」ネタならきっと笑ってくれるはず!」と意気込んだあずさのネタは天気予報。
小道具としてテレビサイズのモニターを用意してもらい、そこにVTRを流しながらネタをするというものである。タイミングが命なので、リハーサルは入念に行った。
あずさとお兄さんは画面の左側に立ち、今日のお天気をお伝えしますと一礼する。
『ベリーキュート!』
『プリティガール!』
と男性アスリート達の声が飛ぶ。あずさが男の子と知ったら、どのような反応をするだろうか。
モニター画面には「Todays Weather」の文字が表示されていたが、台風情報に切り替わるとあずさが画面を指しながら「大型で強い台風14号は‥‥」まで言ったところで、相棒のお兄さんがクシャミをした。それと同時に、台風がクシャミで飛ばされたかのように東海上に向かってすっ飛び、画面から消えた。因みに、お兄さんの音声はあずさのセリフとかぶるため別録り。舞台では動作のみ行っている。
一瞬沈黙したが、「東海上に抜け、全国的によく晴れた一日となりそうです」と続けると、画面は日本の上に大きな晴れマークが重なる。次はどうなるのだろうと、観客のみならず、舞台袖で観ている回路を除く参加者達も固唾を飲んで見ている。
画面は、TOMI−TVのある地方の予報に変わり、全て晴れマークになっているが、所在地のみなぜかタライマークになっている。
「関東地方も快晴ですが、ところにより‥‥」
そこまで言ったところで、上から金ダライが落ちてきてあずさの頭に命中。直撃を喰らいつつ、次の画面の説明をする。
画面は降水確率表示に切り替わっている。当然他は全て水色で0の数字だが、ここだけ何故か白で100になっている。
「雨の心配も‥‥ん?」
観客に背を向けて画面を覗き込むと、画面の下からクリームパイが。
あずさは避けることができず、顔で受け止めてしまった。
結果は最高得点の47点。この時点であずさ&お兄さんの優勝が決まった。
●お祝いは盛大に?
意識を取り戻した回路を含めた出場者全てが勢ぞろいすると、審査委員長である番組プロヂューサーがあずさに優勝トロフィーを渡し、お兄さんに優勝賞金5万円が入っている茶封筒を手渡した。
「みんな〜ありがとう〜♪」
あずさは、投票してくれたアスリート達に元気良く礼を言う。それから少し間を置き、お兄さんも礼を言った。
「あずささん、アスリートの皆さんがお祝いしたい、と言っていますが」
司会進行役のADがそう言うと、お祝いまであるの? と、あずさは素直に厚意を受け取ることに。
『嬉しい〜♪ で、どんなお祝い?』
お兄さんが尋ねると‥アスリート達は、手に持っている何かをあずさとお兄さんに投げつけた。
先程味わった感触に驚き、あずさはついに泣き出してしまった。
「こんなのヤダー!」
アスリート達はクリームパイネタをえらく気に入り、自分達もやってみたいと申し出たのだ。
こうして『ガハッ! とチャンネル』恒例のコメディシリーズは幕を閉じた。