Blue in Red 7アジア・オセアニア

種類 ショート
担当 氷邑
芸能 3Lv以上
獣人 1Lv以上
難度 普通
報酬 7.9万円
参加人数 10人
サポート 0人
期間 03/10〜03/14

●本文

 青は、南国の孤島を取り囲むように広がったネイビーブルー。
 赤は、その孤島に聳え立ったホテルの中で起こる惨劇を象徴する血。
 日本国の謀略によりランダムに集められた32名の一般市民が、たった一つの生存権を賭け、孤島のホテルで殺し合いを行う。
 帰る事も、逃げる事も出来ない人間の極限が見せた弱さ、醜さ、美しさ、裏切り、愛情、友情、絆。そして運命を捻じ曲げようとする比類無き強さ。

 千ページ以上にも及ぶ良い意味でも、悪い意味でも問題作と言われたこの長編小説の映画化が決定し、撮影は順調に進んでいる。
 撮影は、内閣総理大臣・真山壱が新参加者投入表明を行った後の大広間から始まる。

・シーン1
 真山の突然の発表に、驚きを隠せない参加者一同。
 ある者は自暴自棄になり、ある者はその場で自らの命を絶った。
 絶望の淵に立たされた参加者の選択肢は『生き残るための殺し合い』しか無かった。

・シーン2
 大広間から医務室に全速力で向かうのは、船医の志水剣一郎。
 一人取り残されている矢田メイのことが気にかかってのことだ。
 医務室に着くと、矢田の側には看護師の数井がいた。

・シーン3
 廊下をふらつきながら歩いているのは、血塗れの包丁を手にしたコック長の丸山高貴。彼は新たなる食材を求めていた。
 そんな彼と遭遇したのは、高校教師の田沼秀雄。
 狂気に蝕まれた丸山に怯える田沼は、どうするだろうか‥‥。

・シーン4
 赤城拓也は、栗原亜依に負わされた肩にネクタイを巻きつけて応急処置をした。
「こんなところで‥‥死ぬわけにはいかない‥‥」
 恋人、青嶋奈緒美の仇を求め、ふらつきながらも螺旋階段を昇る「赤い狼」の人格の赤城。

・シーン5
 モニター室にいる真山と秘書と神凪華。
 真山は神凪にキリング・ドールと共に行動するよう指示。
「キリング・ドール、おまえの出番だ。思う存分行動するが良い」
 かしこまりました、と機会音声のように返事をするキリング・ドール。

<登場人物>
 赤城拓也:本編の主人公。復讐を決意したことで「拓也」と犯罪者的人格「赤い狼」の人格が融合。
 神凪華:真山の命令で、参加者として参加の秘書。 
 田沼秀雄:死の恐怖で己を見失った高校教師。
 志水剣一郎:生きたいと願うものを救おうとする船医。
 数井療子:怪我人を治療しようと務める看護師。
 丸山高貴:狂気に蝕まれたコック長。
 矢田メイ:指名手配中の殺人犯。現在は医務室で療養中。 
 真山壱:内閣総理大臣。
      冷酷非情、国粋主義者、選民思想に凝り固まった人物。
      今回から本格的に登場。

※武器はホテル内を破壊する恐れのある重火器の類意外であれば問わず。
※その他の配役は生存者のみ選択可能です。

<これまでの生存者、死亡者(五十字音順)>
 生存者:赤城拓也、数井療子、カナ芳村、神凪華、霧咲彰吾、栗原亜依、榊都
      坂崎明憲、志水剣一郎、都築哲司、花沢美咲、檜村零児、方城瑞希
      丸山高貴、本木美鈴、矢田メイ、ユーリー芳村、渡辺雄一
     
 死亡者:青嶋奈緒美、青柳健一、亜澄涼子、飯田健太郎、海馬厚司 、梶原ゆう
      神田カンタ、月凪 鈴、野川夏希、野川邑吏、尾藤裕二、藤吉住男
      渡キリエ

<映画設定>
・大きな舞台の別の一場面としてリンクしている。
・参加者が何故集められたは各々設定。
・参加者には全員孤島に入る前にマイクロ爆弾を取り付けられて、島から出ると爆発。
・ホテルの外は森、罠有り。

●今回の参加者

 fa0588 ディノ・ストラーダ(21歳・♂・狼)
 fa0669 志羽・武流(21歳・♂・鷹)
 fa1610 七瀬・聖夜(19歳・♂・猫)
 fa3890 joker(30歳・♂・蝙蝠)
 fa3928 大空 小次郎(18歳・♂・犬)
 fa4040 蕪木薫(29歳・♀・熊)
 fa4235 真喜志 武緒(29歳・♂・狸)
 fa4354 沢渡霧江(25歳・♀・狼)
 fa4382 アルディーヌ・ダグラス(16歳・♀・猫)
 fa4591 楼瀬真緒(29歳・♀・猫)

●リプレイ本文


 秘書・神凪華(沢渡霧江(fa4354))のアナウンスで「自力での行動が不可能、およびこの放送が聴取不可能な者を除き、大広間に集合するように」とあったので、数井療子(蕪木薫(fa4040))は、それに従って大広間に行った。
 療子は、そこでゲームの主催者から新しい参加者の参戦予告を呆然と聞いていた。
 その場で所持武器で命を絶った参加者の脈をみたり、蘇生を試みたり、錯乱している人を落ち着かせようとしたりと、気丈に献身的に働きかけたものの、結局誰も救えなかった。
「ここは楽園。望みが叶う場所、私の天国」
 と呟く榊都(楼瀬真緒(fa4591))だったが、参加者の一人が振り回した武器で左腕を切りつけられた。
「(私、これで死ぬの? 楽になれるの?)」
 都の頭の中では、その思いだけがグルグルと過ぎった。療子は、都を手当てしようとしたが、彼女はそれを拒み、吃驚した表情で会場を走って逃げた。
 看護師としての使命を果たせなかった療子は、広間を後にし、医務室に向かうことにした。ここでなら、自分の力をフル活用できると判断しての行動だった。
 渡辺雄一(大空 小次郎(fa3928))は、友人である赤城拓也がいないことを確認すると、武器を手にして広間を飛び出した。

 モニター越しで、自暴自棄になる参加者、所持していた武器で自ら命を絶つ参加者を冷ややかな目で見下しているのは、主催者である内閣総理大臣・真山壱(joker(fa3890))。
「フン‥‥ここまで生き延びたからにはそれなりの覚悟を持つ者達だと敬意を表して挨拶に表われたというのに、この様とは愚かな‥‥。まぁ、じきに自滅するか残らず自害するか、いずれにせよ丁度いい篩いではあったか」
 ネイビーブルー姿の華は、そんな壱に、一瞬畏怖の念を抱いた。
「キリング・ドール、おまえの出番だ。思う存分行動するが良い。血潮に塗れ、骸の山に立つおまえはさぞ美しかろう。数多の命の果てる瞬間をその心に刻んでくるのだ」
 口調は冷ややかだが、見つめる壱の視線は穏やかで、ドールの頬にかけた指は愛しげにその輪郭を辿った。
「刈り取る獲物の恐怖と生への叫び、それはおまえに『命』と『感情』を感じさせてくれる。その時こそ、おまえには‥‥」
 その後の会話は、華には聞こえなかった。


 崩れた瓦礫の下敷きになった矢田メイ((アルディーヌ・ダグラス(fa4382))の頭や身体に包帯を巻いているが、血が滲み出ている。生きることを誓ったメイは、気力で生きている。
「生きて‥‥生きて償うんだから‥‥」
 船医の志水剣一郎((真喜志 武緒(fa4235))に恋心が芽生え始めているが、メイ自身、それに気づいていない。

 壱の警告後、焦燥感に駆られた剣一郎は医務室に駆けつけ、着くなり乱暴に医務室の扉を開けた。医務室には、ベッドに横たわっているメイがいた。自分がいない隙に、重傷のメイが何者かに狙われる可能性は高く、大広間での出来事があるので、剣一郎は余計心配だった。
 医務室に着くと、メイの側で看病をしていた療子は、剣一郎を見るなり一瞬身構えるが、すぐに解いた。剣一郎は、メイが無事なことを知ると、ホッとした表情で眠っているメイの頬を撫でた。
「君は誰だ?」
「自己紹介がまだでしたね。私は数井療子、看護師です。あなたがここに駆けつけた後、参加者達は我を見失い、自殺したりと大変でした。私は参加者達を救おうと必死でしたが‥‥誰も救えませんでした」
 そうだったのか、と剣一郎は療子の苦労を労った。
「何故、君は人を助けるんだ? 君は生きようとは思わないのか?」
 剣一郎の問いに、療子は
「‥‥解りません。こんな状況でこんな事をするのは偽善だと思うんですが‥‥私には他に打開策が見つからないんです」
 と神妙な面持ちで答えた。剣一郎としては、答えを期待している訳ではなかったのだが。
「とりあえず、君も少し休んだ方が良い。私は、自室に用があるので一旦ここを離れる」
 剣一郎はそう言い、医務室から出て行った。
 その後、今までの疲れが溜まっていたのか、療子は眠ってしまった。その間に目覚めたメイは、剣一郎がいないことに気付き、痛む身体に鞭打って起き、彼を探し始めた。


「とんでもない事になってきたな‥‥」
 セクハラで裁判を受けたが、壱の陰謀により無罪となりゲームに強制参加させらてた田沼秀雄(七瀬・聖夜(fa1610))は、そう考えながら廊下を歩いていると、誰かにぶつかった。相手は、ゲームに参加させられた事で狂気に蝕まれた旅客船のコック長、丸山高貴(志羽・武流(fa0669))。彼は未だに新たな食材を求め、返り血で汚れた白いコック服、血に塗れた包丁を手にしながら廊下をさ迷っていた。
(「殺されるのは嫌だ!」)
 口からでまかせを言ってその場を何とか切り抜けようとする秀雄は、脅えきった顔で
「一緒に、ここを切り抜ける為に闘わないか?」
 と高貴を誘うが、高貴は聞く耳持たずでジリジリと迫ってくる。
 恐怖の余り、腰を抜かし、その場でへたり込んだ秀雄は苦し紛れに持っていたカッターナイフを振り回すが、恐怖心で全然見当違いな攻撃になっているのもあり、高貴に全然当たらない。彼が本能で避けているのもあるが。
「なあ‥‥本当に一緒に闘わないのか‥‥?」
 何とかしようと一生懸命に説得しようとするが、効果は全く無い。高貴に対し、一矢報いるために敵にダメージを与えようとしたが、それも虚しく、高貴が振り回した包丁で手首を掻き切られた。高貴は、ふらついた秀雄の全身を容赦無く包丁で切り刻んだ。
「俺が興味があるのは新鮮な食材のみ‥‥。もっと食材が欲しい‥‥!」
 秀雄が倒れた後、新たなる食材を求め、高貴はそう呟きながら夢遊病者のようにふらふらと歩き出した。


 医務室に戻った剣一郎は、メイがいなくなったので慌てて探しに行いった。
「一体、何処に行った!」
 療子もいなくなっていたのだが、怪我人を治療するために去ったという程度にしか思っていなかった。

 赤城拓也(ディノ・ストラーダ(fa0588))は、肩に負った傷にネクタイを巻きつけて応急処置をした。
 こんなところで、死ぬわけにはいかない。恋人の奈緒美の仇を討つまでは。
 ふらつきながらも螺旋階段を昇っているのは、拓也ではなく『赤い狼』だ。
「おまえは‥‥。酷い怪我じゃないか」
 以前、自殺から救ったメイだと思い出す赤い狼。
「私もまだ人間でいられたという事か」
 剣一郎を探している最中に倒れたメイの頬にそっと口づけし、静かに自嘲気味な笑みを浮かべる赤い狼は、怪我など気にせず横抱きにメイを持ち上げ、医務室へ向かった。
 その途中、メイを探していた剣一郎に出会った。
 以前、医務室で見かけた顔だったので、剣一郎は声を掛けようとしたが、赤い狼がメイを抱いているのを見ると驚いた。
「メイ!」
 赤い狼の怪我が、このままでは命に関わると見た剣一郎は
「そのままでは時機に死の門が見えると思うが‥‥。君は生きたいのか? それとも死を望むのか?」
 と問い、手持ちの薬を投げ渡した。
「医師ならこの女を預かれ。私にはまだやらねばならん事がある」
 赤い狼は、剣一郎にメイを預けると肩の傷に一瞬眉を顰めながら闇の中へと消えた。
「彼女は何を心に抱えているのだろう?」
 メイを抱きかかえながらポツリと零した剣一郎の言葉は、メイには届いていない。

 その頃、都は止血もせず歩いている途中で、赤い狼を見掛け、道を変えた。痛みの為フラフラしながら、廊下に座り込こみ、死ぬんだと思っている所に剣一郎が通りかかった。
 助けてくれようとする彼に「自殺志願者に治療はいらないです」と言い、先に行く事を促した後、都はホッとしたように壁に持たれ、そのまま気を失った。
 偶然通りかかった療子は、都を見つけ、声をかけた。都は無意識に「助けて‥‥」とか細く言う。無意識の中、都ははっきりと死を拒否した。
「医務室に連れて行ってあげる。私の肩を貸してあげるから」
 療子の肩を借り、都は医務室へと歩き出した。

 雄一は、物陰でサイレンサー付きも拳銃を構えると赤い狼に狙いを定めた。
 彼の正体は、拓也の友人を装っている反政府ゲリラのエージェントで『赤い狼』の監視者だった。
「‥‥あばよ」
 背後から赤城の後頭部に狙いをつけるが、発射しようとした瞬間、背後から何者かに首を一突きされ絶命した。
 雄一の背後に立っていたのは‥‥。


「神凪、おまえには主にドールに付いていて貰いたいが、おまえ自身も楽しみたいだろう? あいつはどうだ? 知らぬ振りをしても無駄だ、参加者を選んだのはこの私なのだから。命令だ、神凪。あいつの首を狩れ」
 壱に参加者の一人を狩るよう命じられた華は、その相手が過去と共に捨ててきた家族だと判ったが、内心で葛藤しつつ、命令を実行することに。
 キリングドールと一緒に歩く時は、常に斜め後ろを歩く。正攻法で戦ったら絶対に勝てない相手だから、少しでも優位な場所にいたいと本能的に思っている。
 壱に対しては、戦争ごっこが大好きな子供が大人になったような印象だが、上司は上司、理不尽でも命が危険にさらされても、命令は絶対だ。
 総理がキリングドールによって殺される、それが全ての幕引きだと華は思った。
「顔‥‥器だけが似ていても、意味がないだろう。いっそ哀れに思う。おまえも、総理も」

 そう呟く華の表情は、少し悲しげだった。