雛祭りコメディアジア・オセアニア

種類 ショート
担当 氷邑
芸能 3Lv以上
獣人 フリー
難度 やや易
報酬 7.5万円
参加人数 8人
サポート 0人
期間 03/03〜03/07

●本文

「プロデューサー、新しい企画を考えました!」
 笑いを取ろうと日夜努力しているお笑い番組『ガハッ! とチャンネル』のAD、平井・平等は企画書を手にプロデューサーの元に駆け寄る。
「今回の企画は何だ?」
「これです!」
「どれ‥‥」
 企画書の内容はこうである。

<「桃の節句で笑いを取ろう!」(仮)企画書>
 今回の観客は、視聴者の中から抽選で選ばれた保育園児から小学生の少女(保護者同伴)
 テーマは『雛祭り』。
 出場者は、お内裏様、お雛様、五人囃子等、雛人形に扮して桃の節句に合ったコントをしてもらう。
 持ち時間は三分。下ネタは失格、退場とする。

「桃の節句か‥‥。あれ、飾るのは良いんだけど、仕舞うのが大変なんだよなぁ。カミさんが、早く片付けないと娘が嫁に行きそびれるってうるさくてな。前回、タイちゃんが参加したの結構評判良かったから、今回もキミに出てもらうかも」
「へ‥‥?」
 鳩が豆鉄砲を食らったような顔をする平井。
「毎度になるけど、プロデュースはキミに任せる」
「は、はい‥‥」
 いつものやる気はどこへやら、今日の平井はやる気がなさそうだ。
 平井はペコリと頭を下げると、企画を纏めるためデスクについた。

『ガハッ! とチャンネル』では、雛人形等に扮してコントを披露してくださる出場者を募集しています。
 我こそは! と思う芸人、役者の皆様の出場をお待ちしております。
 ピン、コンビ、グループ問いません。
 相方が欲しいとご希望される方は、当番組ADの平井がお相手を務めます。
 優勝者には、賞金10万円が贈られます。

●今回の参加者

 fa0182 青田ぱとす(32歳・♀・豚)
 fa0427 チェダー千田(37歳・♂・リス)
 fa2632 紗草みりん(23歳・♀・ハムスター)
 fa3566 だいふく(15歳・♂・狼)
 fa3569 観月紫苑(31歳・♀・熊)
 fa3578 星辰(11歳・♀・リス)
 fa4040 蕪木薫(29歳・♀・熊)
 fa5218 荊木・星河(16歳・♂・豹)

●リプレイ本文

●一番手:星辰(fa3578)
 十二単を身に纏った星辰は、歌に合わせて雛人形の華麗な舞を披露した。

 お内裏様とおひな様、ふたり並んで同床異夢♪
 三人官女のスパイ団♪
 五人囃子の機関銃♪
 今日は楽しい雛祭り♪

 歌の歌詞はアレだが‥‥舞は観客が見惚れるほど優雅であった。

●二番手:青田ぱとす(fa0182)
 押しの強い演技がウリの青田のコントは『三人官女』。
 白粉に小さい紅、丸い眉を塗る、という平安風メイクで登場。
「‥‥なんや」
 第一声の後、着物を纏って、鬘被って無愛想に。
「あんたら、三人官女が皆、同じ思ってるやろ。違うねん。右からな、『ムスビ』『眉無し』『口開き』言うねん。あたしは、『口開き』やからよう喋るのよ」
 後の二人はどうしたの? と観客の女の子が言うので
「『ムスビ』はトイレや。口びちーっとむすんでるからな。むずむずしてんねん。口むすーっと結んだまま。『もう、トイレかー』言うたら『うん』て頷いてね。行っとけ言うて」
 眉無しはー? という質問には
「眉無しな。間違えて眉毛書いてもうたから消しに行くって。気づかんいうのにな。あ、二人が帰ってきたわ。お帰り、ムスビ。すっきりした? 大変やったろ着つけ。後ろ、ちょうちょ結びになってるもん。直したる直したる」
 上手に行き、ムスビの帯を直す仕草をする青田。
「眉無しお帰り。ムスビ帰って来たで。あー綺麗に眉無くなっとるな。ヤクザみたいやで」

 飾られた雛人形を見た親子(観客の一組を特別出演)は見るなり
「おかあさん、この口開けてる人形アホみたいでイヤやー」
「うそん、あら、ホント」
 口開きを見た後、親子はそそくさと下手に向かった。
 青田らしい、インパクト大のコントであった。

●三番手:紗草みりん(fa2632)
「明かりを点けましょ導火線〜♪ さて、今度は雛祭りでございます」
 明るく登場した紗草のコントは、まだ自分の立ち位置がまだ決まってない新人の役者が、新しく始まる特撮キャラを演じると言う内容だ。
 彼女が出演するのは『お雛様戦隊(仮称)』のヒロイン・ヒナカンジョー。
 スタジオ入りすると、雛段が置いてあったので、紗草は来て驚愕した。何故なら、スタジオの雛段には御内裏様が無かったのだ。
「多分、世界の御内裏様を五人囃子で牛耳ろうとする悪の結社『ハヤシファイブ』の仕業に違いありません!」
 そんな訳で、早速ヒナカンジョーの出番である。何処からか聞こえて来た声に導かれ、雛壇に置かれている三人官女の雛人形を手にし、掲げて変身!
「みみみみみー」
 と言いながら変身。なお、変身シーンは黒子(番組スタッフ)が風呂敷を広げて隠している。変身完了すると、黒子はダッシュで退場。
 ヒロインというが、魔法のステッキ無し、変身しても衣装と顔は変化無し。
 因みに三人官女の人形は、変身後に壊すと大変なので、ゆっくりと雛段に戻す。
 変身したので、ヒナカンジョーはパワーアップの為にひなあられをモグモグと食べる。‥‥あら? 倒れたようですが‥‥?
『説明しよう! ヒナカンジョーはひなあなれを食べ過ぎてお腹がいっぱいになったのだ!』
 余談、このナレーションの声はADの平井・平良である。
 そんな訳で、戦う前にヒナカンジョーは倒れた。
『君が倒れたら世界の平和はどうなる!? でも大丈夫。ハヤシファイブは一年に一回しか活動しない! っていうけど、お内裏様いないとお雛様が泣くよ?』
 ナレーションのツッコミ虚しく、ヒナカンジョーは倒れたままだった。
 このコントは、変身ヒロイン好きの女の子にはウケた。

●四番手:観月紫苑(fa3569)& 蕪木薫(fa4040)&荊木・星河(fa5218)
 観月、蕪木の双子姉妹が考えたのは『御内裏様の奪い合い』という、昼ドラに近いネタだった。お内裏様は平井が演じることになっている。
 観月、蕪木姉妹はお雛様の衣装に身を包み、しずしずと登場。
 女の子達が「大きなお雛様‥‥」と言うが、母親に「そんなこと言っちゃいけません」と窘められている。
 お雛様二人の衣装、髪型、化粧は、見た目には殆ど同じになっているが、平井のお内裏様衣装はやや大きいのか、登場の際、何度も裾を踏んでは転んだ。
 コントは、雛壇風セットの屏風の前でお雛様二人が仁王立ちとなり、その間に肩身の狭そうなお内裏様を立たせたところで始まった。

「あなた! 今年は勿論、わたくしを隣に座らせてくれますわよね!」
「いいえ! お姉様よりわたしのほうですわよね!」
「「どっちを雛壇に座らせるの!?」」
 と二人同時に責め立てる。お内裏様はどちらも怒らせたくないので、しどろもどろ。
「き、決められないよ‥‥」
 と誤魔化す。
「わたくしのほうが優しくてよ。あなたがおねしょをした時、怒らずに優しく布団を干して差し上げられるのはわたくしよ」
 観月お雛様に迫られるお内裏様が口にしたのは
「お、怒ってる気が‥‥じゃなくて、僕はおねしょなんてしてないよ!」
 ‥‥だった。
「あら、わたしのほうが女として魅力的よ。お姉様なんて、お裁縫もできないし、お料理だっていつも焦げちゃうし」
 蕪木お雛様の言葉に
「あ、あなたのお料理だって、いつもお砂糖とお塩を間違えていてよ!」
 と反撃する観月お雛様。
「まあまあ‥‥」
 二人を宥めようとするが、お内裏様を無視して姉妹は喧嘩続行。
 女の子の夢を壊さない、という配慮をしてあるのでソフトな内容だ。
「もしかしてあなた、私たちの見分けがついてないんじゃなくて?」
 と観月お雛様が言い出すと、姉妹はその場をぐるぐる回り
「「姉はどっち!?」」
 とお内裏様に質問。
「えと‥‥こっち」
 お内裏様が見事にハズして妹を選んだ為、また揉めに揉める。これはネタではなく、平井のマジボケだ。
 間違えたお内裏様に鬼気迫る表情で近づきつつある観月お雛様を制したのは、弓を手に、矢筒を背負って踊りながら登場の荊木演じる左大臣。
「お雛様方、見事この矢がお内裏様の頭の上の桃を貫きましたらお姉さん、外れましたら妹さんがお内裏様の隣に並ぶ‥‥ということで如何カナ?」
 左大臣がこのような仲裁を申し出ると、お内裏様は「怖い」と断った。
 じゃあしょうがないなぁ、と右大臣の格好をしたマネキン人形を引っ張り出してきて、その頭の上に桃を乗せてた。
 左大臣が矢をつがえると、ドラムロールが始まり、止まると同時に放った矢はトス! と見事に人形の額を貫いた。それを見たお内裏様は、顔面蒼白状態で断って良かったと心の中で呟いた。

※貫く、と表現されているが、実際に使用したのは吸盤付きの矢である。

 マネキンの額で、矢羽が揺れるように仕掛けてあるのが間抜けた雰囲気を醸し出していて面白い。
「それ見たことか!!」
 とお雛様達に突っ込まれながら、左大臣退場。
「良い子は人に向かって矢を飛ばしたりしちゃダメだぞ〜!」
 と、お約束の注意をしながら。
 
 逃げ出そうとするお内裏様を
「「逃がしませんわよ〜!!」」
 とお雛様方は自分の着物の裾を持ち上げ、お内裏様の後をダッシュで追いかけつつ退場した。

●五番手:チェダー千田(fa0427)
 大トリを務めるのは、過去二回優勝経験のある良く動き、良く喋るピン芸人38歳、人懐っこい顔を太フレームの横長六角形のダテメガネで隠しているムチャジャッカーに転職したてのチェダー。
 彼が登場するなり、観客は盛大な拍手で彼を出迎えた。
 今回のチェダーのコントは、雛壇の五段目、仕丁達のコント。名づけて『ひとり三人上戸』。泣き上戸がコントのメインだが、人生悲しい事だらけ。怒り上戸は、本人は真面目のつもりだが、怒る観点が大概ズレている。笑い上戸は、甘酒一杯でいつもへべれけ。行動や発言がえげつないが、無自覚、記憶に無し。
 その三人を顔芸とポーズで表現するという、今までの彼にしては珍しい内容だ。
「泣き上戸です‥‥。私のこと、ご存知ですか‥‥? 雛壇の下のほうで、いつもこの顔で、靴持ってるんですけど‥‥知りませんよねぇ。ハァ‥‥」
 今にも泣きそうになる程の表情で、話を続ける。
「この靴がですね‥‥ずっとこうして持ってるんですが‥‥結構、臭いんですよ‥‥トホホ‥‥」
 お次は笑い上戸。
「でもいい事もあるよね☆ お召し替えの時、生足拝めるもんねぇ〜うっふふふ」
 一瞬にしてスケベ顔に。
「何たる不埒な! 拝むなら三人官女辺りで止めておくべきであろう!」
 頑固親父のような表情で怒り出す。
 
 一瞬、舞台が暗転すると、チェダーの姿が消え、舞台の中央にモザイクボードが置いてある。
『橘を折った人物にその事を口止めされていて心苦しいんです‥‥。犯人は、笑い上戸なんですけど‥‥本人、記憶に無いって言うし‥‥』
『三人官女と五人囃子の愛憎劇を知ってしまったんです‥‥』
 チェダーお得意の持ちネタ、モザイクボードも使い、音声を変えて五人囃子Dの証言としてあらゆることを暴露している。

 また舞台が暗転。中央のスポットライトが上戸姿のチェダーを照らし出す。
「そもそも、何で私達みたいなのがここに居るかですよ‥‥。何でもですね〜、泣い
たり笑ったり怒ったり‥‥」
 最後は素のチェダーの表情に戻り
「君達が人間らしく過ごせるように、だって。‥‥今みたいにさ♪」
 と笑顔でシメた。

 審査の結果、優勝者は、観月、蕪木、荊木組とチェダー千田の一組と一名に決まった。