Blue in Red 2アジア・オセアニア

種類 ショート
担当 氷邑
芸能 フリー
獣人 フリー
難度 普通
報酬 1万円
参加人数 8人
サポート 0人
期間 09/24〜09/28

●本文

青は、南国の孤島を取り囲むように広がったネイビーブルーの青。
赤は、その孤島に聳え立ったホテルの中で起こる惨劇を象徴する血の赤。
日本国の謀略により集められた32名の一般市民がたった一つの生存権を賭け、孤島のホテルで殺し合いを行う。
帰る事も、逃げる事も出来ない人間の極限が見せた弱さ、醜さ、美しさ、裏切り、愛情、友情、絆。
そして運命を捻じ曲げようとする比類無き強さ。

千ページ以上にも及ぶ良い意味でも、悪い意味でも問題作と言われたこの長編小説の映画化が決定した。
それに伴い、各方面から役者を募集している。

撮影は、主人公以外の参加者サバイバルゲームの様子を窺うシーンから始まる。

<ストーリー>
シーン1・狂気
ゲームの始まりを告げらた後、ホテルの一室で年の離れた兄妹が怯えていた。
部屋にじっと閉じ篭っていたが、妹が廊下から聞こえる足音に精神が壊れてしまう。
そんな妹を不憫に思い、兄は妹を殺し、後追い自殺する。

シーン2・敵討
離れ離れになった親友、藤吉住男を探し、一人の参加者がホテル内を探す。
ようやく見つけたと思ったが、住男は喉を突かれて死んでいた。
敵討ちを決意した参加者は、住男が手にしていたナイフを握り締め行動を開始した。

シーン3・返討
会社社長の男は、顔を変え逃亡中の指名手配中の女性容疑者と鉢合わせに。
自分だけが助かればいい、いや、助かりたいと願う会社社長は、女性容疑者を殺そうとするが返り討ちにされる。
男は、死に際に離婚した妻の影と女性容疑者を重ね合わせる。

シーン4・監視
内閣総理大臣は、モニター越しに各参加者の様子を見ていた。
『本格的にゲームが始まったようだな。どうなるか楽しみだ‥』
その様子を見た秘書は、内閣総理大臣が恐ろしくなった。

<登場人物>
参加者兄妹:年の離れた兄と妹。
      兄は優しい性格、妹は気が弱く、兄に頼る傾向がある。
      (兄は20代半ばの男性、妹は14〜18歳位の女性が好ましい)

参加者A:親友の藤吉住男と共にサバイバルゲームに強制的参加させられた。
     何者かに殺された住男の敵を探し始める。

会社社長:コンピュータ会社社長。自己中心的な野心家。
     (20代半ば〜30代後半が好ましい)

女性容疑者:かつてはナンバー1のホステスだったが、ライバルを殺した後、整形で顔を変え逃亡中。
      (20歳以上が好ましい)

内閣総理大臣:声のみの出演(一人称:私、二人称:君/諸君 、〜たまえ)
       冷酷非情、国粋主義者、選民思想に凝り固まった狂人。
       男性に近い声を出せるのであれば、女性でも可とする
       (20代後半〜30代後半が好ましい)   

※上記の登場人物の名前(フルネーム)、取得武器は考案の上ご応募下さい。
 それ以外の人物の設定は自由ですが、名前を必ず考えてください。

 今回から死亡者リストと生存者数を表記します。

●今回の参加者

 fa0491 ハディアック・ノウル(23歳・♂・鴉)
 fa0588 ディノ・ストラーダ(21歳・♂・狼)
 fa1242 小野田有馬(37歳・♂・猫)
 fa1609 七瀬・瀬名(18歳・♀・猫)
 fa1920 加賀流堂(40歳・♂・竜)
 fa3890 joker(30歳・♂・蝙蝠)
 fa4371 雅楽川 陽向(15歳・♀・犬)
 fa4382 アルディーヌ・ダグラス(16歳・♀・猫)

●リプレイ本文

 現在の生存者:30名

 ホテル一室の中央で、廊下に響く足音に怯える野川夏希(雅楽川 陽向(fa4371)) は、兄の邑吏(ハディアック・ノウル(fa0491))にしがみついていた。
「怖いよ‥」
「大丈夫だ、お兄ちゃんがついてるから」
 邑吏は夏希を優しく抱きしめ、励ました。
 このツアーに参加したのは、邑吏が会社の飲み会に行った時、人が口にしてたのを聞いたからだ。両親を早くに亡くし、親代わりとして妹を養うため仕事に励み続けたが息抜きに妹と旅行も良いなと思い旅行会社に申し込んだのだ。
 邑吏は見回りに行くことにしたが、
「お兄ちゃん、独りにしないで!」
 恐怖に引きつり、泣きそうな顔の夏希が必死に訴え懸命に引き止めるが邑吏は聞かなかった。

 独りぼっちになった夏希は、部屋の物陰に隠れて兄を待つことにした。
 なかなか兄が帰らないので、殺されてしまったんだ、次は私の番なんだという死の恐怖に駆られそうになるが、それを抑えるため、自分を抱き締める仕草をした。
 その頃、邑吏は誰も居ないことを確認し終えて部屋に戻ろうとしたが、背後から近づく何者かに鈍器のようなもので頭部を殴られた。倒れるほどではなかったので、振り返って何者かと確認しようとしたが、相手は既に逃げていた。
「夏希が危ない‥!」
 やや朦朧とする意識の中、夏希の身を案じ急いで部屋に戻った。

 部屋の扉の前を通る足音がするたびに、夏希は極度の緊張状態に追い込まれていた。
 兄のいない恐怖、いつ死ぬかわからない恐怖に、次第に夏希の精神が蝕まれていく。誰かの足音が聞こえたかと思うと同時に、ドアが開いた。
「きゃああああっ!」
 それが引き金となり、夏希の精神は壊れ、悲鳴を上げ終わると人形のようになってしまった。
「夏希っ!」
 慌てて駆け寄った邑吏は夏希の体を揺するが、何の反応も無い。時間が経てば元に戻るだろうと思っていたが駄目だった。
 それを不憫に思った邑吏は、部屋の丸テーブルに置いてある銀製のペーパーナイフを手にし、夏希を抱きしめて躊躇いがちにナイフを握り、妹の命を奪った。開いたままの夏希の目を手でそっと閉じ、
「これからも‥ずっと‥一緒だ‥」
 邑吏は後を追うように自殺した。

 青柳健一(加賀流堂(fa1920))は、先輩ジャーナリストが仕事が忙しく休みが取れなかった為、休暇が合っていたという理由で福引で当たったというチケットを譲り受けた。先輩は定年前の大きなスクープとして総理大臣の周辺を探っていたためゲームの参加者として選ばれたのだが、彼が身代わりになる形となった。
 健一の精神は恐怖と緊張の連続ですでに壊れ、狂気に囚われている。
 一つの部屋の中に人の気配を感じ足を止め、ゆっくりとドアを開けると、折り重なるように倒れている野川兄妹が見えた。
「素晴らしい」
 狂気の微笑を浮かべ、デジタルビデオカメラで兄妹の姿を撮影する。
「いいね〜恐怖のあまりの無理心中! 本物の恐怖と狂気! これこそ芸術だ! 世に残せば素晴らしい作品になる! 表情も捉えておかないとね、特に女の子のほう!」
 野川兄妹の表情を撮ろうと無防備に近づき触れようとした時、息絶えてなかった邑吏が健一を妹を侮辱するものと見なし、渾身の力を込め自分を刺したペーパーナイフで彼の心臓を貫くと同時に力尽きた。

 方城瑞希(七瀬・瀬名(fa1609))は、ホテル室内でトラップに使えそうな物を探している。
「これも使えそうね」
 一緒にいるはずの友人の藤吉住男にも手伝ってもらおうと思ったが、室内にいる気配が無い。
「住男? 何処? 外に出ちゃったのかしら」
 住男を探すために、瑞希は室外に出た。
 暫く廊下を進んでいくと、誰かが倒れていた。誰だと思い近づくと、それは喉を突かれていた住男だった。
「住男‥何こんな所でふざけてるの?」
 冗談だと思い、問いかけてみたが反応が無い。
「起きてよ!」
 起こそうとしても起きないことで、瑞希はようやく住男が死んだ事に気づく。
「誰がこんな事を‥許さない! 絶対許さない!」
 住男が握っていたナイフを手にし、瑞希は仇を求めて歩き出した。

 赤木拓也(ディノ・ストラーダ(fa0588))は、武器である白木のスティックを手にし、虚ろな表情でホテル内を歩いていた。
 彼の中では、極限状態中に覚醒した冷徹な天才犯罪者『赤い狼』と、本来の人格で封印されつつある正義感が強く、優しい青年『拓也』の意識が混濁している。
 ツアーに参加する以前に何者かにより催眠術を施されて別人格(赤い狼)を刷り込まされ、脳機能の大部分を封印されていたが、ゲームのショックで赤い狼が部分的に開放されたのだ。
 そんな拓也の背後から、何者かが突然襲い掛かってきたが上手く避け、
「私の獲物になりたいか?」
 赤い狼が瑞希の不意打ちに対してステッキで一閃、ナイフを簡単に弾き飛ばした。
「貴方が住男を殺したのね!」
 両手でナイフを握り締め、キッと睨む瑞希。彼を敵と確信したのは、血のついたステッキを見たからだ。正面から行っても勝ち目が無いからと、後ろから襲った。
 赤い狼は瑞希の首にステッキを突きつけ、止めを刺そうとしたが、
「殺しちゃ‥駄目‥だ」
 その瞬間、拓也の意識を取り戻した。
「大切なもの失くしたような悲しい瞳だ‥謝って済む訳ないけどごめん‥」
「何‥? そんな事言われたら、憎めなくなるじゃない‥」
 瑞希は、赤い狼の出現を制しようと葛藤し、頭を抱えながらフラフラと歩き出す拓也に戸惑いながらも我を取り戻してその場を逃げ出した。

 冷静さを取り戻した瑞希は、バックに入れてあるモバイルパソコンのことを思い出した。
「あれがあれば、システムに侵入して爆弾の解除方法もカメラの死角も解るはず」
 振り返ることなく、急いでモバイルパソコンを取りに部屋に戻った。

「まったく‥冗談じゃない。俺が死ぬ事は世の損失だ」
 ぶつぶつと独り言を呟きながら、眼鏡をかけたイケメン俳優かと見紛う容姿の会社社長、海馬厚司(小野田有馬(fa1242))は、目覚めた場所からホテル内のバーへ移動していた。一室に閉じ篭らず、堂々と出歩いているところから自信家振りが窺える。
 バーに辿り付いたのは偶然だった。景気付けに酒でも飲むかと思い立って足を踏み入れると、体のラインの出るようなダークスーツに黒のストッキング、ハイヒールという出で立ちの矢田メイ(アルディーヌ・ダグラス(fa4382))と鉢合わせした。
 実年齢より多少若く見えるメイが、ホステスを殺害し、整形をして逃亡中の容疑者と知らない厚司は、一瞬ぎくっとした様子で足を止めた後、すぐに人の良さそうな笑顔と言葉でメイに近づいた。
「こんにちは。貴女のような女性がこのようなゲームに? 災難ですね」
 妖しい雰囲気を漂わせながら無邪気に微笑むメイに、厚司は離婚した妻を重ね合わせて見ている。その間、さり気なく辺りを視線で伺い、背後に位置するテーブルの上に飾ってあったリボンを手に取り、後ろに隠しながら結び目を解いている。近づきすぎると怪しまれるので、途中で足を止めながらメイとの距離を詰め、彼女が振り向いたら一気に首を絞めようと目論んでいたが、
「貴方もこのサバイバルナイフの餌食になる‥? フフッ」
 メイはそれを知っていたかのように言い、厚司の頚動脈をサバイバルナイフで一気に掻き切り、大量出血死させた。

 あいつも‥気が強くて‥俺をビンタ一発で黙らせたっけ‥

 妻のことを思い浮かべながら、厚司は事切れた。
「ヤだぁ、血って爪の間に入ると一週間は取れないんですもの」
 メイは返り血を浴びたままカウンター越しの椅子に座り、脚を組みながら狂気の高笑いをした。
「私はこれから先も人を殺し、いつか誰かに殺されるのかしら‥」
 暫くして、落ち着きを取り戻したメイは身も心も疲れてきたのか、サバイバルナイフで自殺を図ろうとするが、
「罪人に自らを裁く権利は無いと知れ」
 拓也、いや、赤い狼がサバイバルナイフを叩き落し、氷の微笑と共に去っていった。
「それでも生きろというのね‥」
 赤い狼が去った後、メイは自分の手にこびりついた返り血をじっと見た。

 内閣総理大臣、真山壱(joker(fa3890))は、モニター越しに参加者達の監視をしていた。
 画面から目を離さず、殺し合いを見る興奮を理性で抑えているが、内面の狂気と子供のような残虐性が表情に滲み出ている。
『本格的にゲームが始まったようだな。彼らは存在するに値しない劣悪人種だが、此処には極限まで凝縮され純化した真実の人間達が生きている。実に素晴らしい、実に美しい…』
「ふん、悪趣味な」
 監視カメラに微笑みつつ、血に染まったタキシードから赤いスーツに着替えた赤い狼が呟く。
 何故、彼がここにいるのか。
 廊下をうろついていたところを秘書の一人が見つけ、壱の命を狙う要注意人物かもしれないと見なし、ここに連れてきたのだ。

『この美しき世界、生に対するあくなき欲望こそ今の日本に足りない物。更なる高みへとステージを上げるには‥奴を使うか‥』

 死亡者:野川夏希、野川邑吏、青柳健一、海馬厚司
 生存者:26名

 生存権を賭けた殺し合いは、まだ終わりそうも無い。