歌姫の輝く翼を広げてアジア・オセアニア
種類 |
ショート
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担当 |
氷邑
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芸能 |
3Lv以上
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獣人 |
フリー
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難度 |
やや難
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報酬 |
9.5万円
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参加人数 |
8人
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サポート |
0人
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期間 |
03/18〜03/23
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●本文
ウィスパーボイスが好評で『癒しの歌姫』と呼ばれている19歳のアイドル歌手、遠間由樹。
彼女は、ある大物演歌歌手のヒット曲『大河ながし』の歌詞が由樹の1stアルバムのタイトルであり、ヒット曲となった『愛に染めて』の歌詞と酷似していると直訴した。それに加え、そのファンと思われる人々の誹謗中傷でマスコミの餌食になり、イメージにあう作詞等困難な課題を押し付けられ心が押しつぶされたが、マネージャーの石元総と協力者達のおかげで、由樹は心を開き、少しだが自信を取り戻した。
盗作疑惑が無事に晴れたが、由樹は作詞活動を自粛し、歌手活動に専念することに。
大勢のファンに心配をかけたお詫びと新曲発表を兼ねたコンサートを開きたいと、由樹は所属事務所の社長に提案した。
新曲は、音楽プロデューサーTATSUMAが作詞・作曲、編曲を手がけた『夢祭』というバラード。それを含め、問題となった『愛に染めて』を除いた数曲を歌うことに。
「由樹、何故コンサート開催を要求したんだい?」
石元が由樹に訊ねると
「ファンに心配をかけさせたお詫びと、私はもう大丈夫ってことを見せたいの」
と気丈に答えた。
「マネージャー、お願いがあるの。コンサートに友情出演してくれる人を探してくれなかしら?」
自分に協力してくれた人達の支えがなければ、今の自分はここにいない。
感謝の意を込めて、無理とわかっていながらも由樹は石元に頼んだ。
「突然のお電話、申し訳ありません。2ヵ月後に行われる遠間由樹のコンサートに協力していただけませんか? 裏方、コーラス、バック演奏等、ご自分のできる限りのことで構いませんので」
石元の呼びかけに、何人の協力者が集まるだろうか。
コンサート曲目
『光に向かう蝶』:デビュー曲。スローテンポのサンバ調曲。募集要員、コーラス二名。
『陽に当たる場所』:真夏の太陽を思わせるアップテンポの曲。募集要員、バックダンサー。
『闘技幻想』:格闘ゲームのCMに起用された舞踊調の曲。募集要員:バックダンサー。
『さくらワルツ』:由樹が始めて作詞を手がけたワルツ調の曲。必要要員:コーラス、バック演奏。
『夢祭』:ラストを飾るバラード。協力者全員と歌う予定。
●リプレイ本文
●顔合わせ
コンサート2ヶ月前。
マネージャー、石元総に召集された7人が事務所に来た。
「皆さん、どうぞ宜しくね。マネージャーの石本さん、お声がけありがとう。皆で成功させようね! えいえいおー!」
弾むような明るい笑顔で右腕を掲げて張り切っているのは、アーティストの朱里 臣(fa5307)。
「由樹さん、宜しくな」
由樹に握手を求めるブリッツ・アスカ(fa2321)。
「初めましてかな? CD聞かせてもらってたよ。すごく素敵な歌声だね。同じ歌い手として共演させてもらえて嬉しいな。どうぞ宜しく」
慧(fa4790)が穏やかに微笑むと、リラックスした表情をして「宜しくお願いします」と言う由樹。
「私は裏方の新井久万莉(fa4768)よ。宜しくー。知り合いから頼まれてね参加したの。仕事の都合でコンサート手伝えないから、代わりに行ってくれって。あ、伝言あるの忘れてた。『由樹に頑張れって伝えてくれ』だって」
引き受けたからには成功させる、という意欲満々。
「元気になってくれたようで何よりね」
と声をかけた乾 くるみ(fa3860)は、由樹が立ち直るきっかけを作ってくれた一人だ。
「衣装はどうなってんのかな? あんまりヒラヒラしたのとかは苦手なんだけど‥‥」
ブリッツの意見に、石元は「由樹の衣装とお揃いですが、多少の変更はできます」と答えた。
「わかった、最終的には任せるよ」
リハーサルの間、メンバーは由樹と親睦を深めつつ、自分の担当についての打ち合わせと練習を念入りに行った。音響の新井の責任は重大だが「大丈夫!」と胸を叩いた。
当日。
「『音楽』は音を楽しむって書くのよ。肩の力抜いて楽しみましょうよ。ファンの皆に私は元気だよって顔見せるんでしょ? 誰でも笑った顔が一番可愛いんだからさ」
ポン、と由樹の肩を叩いて励ます乾。
「スタンバイお願いしまーす!」
スタッフの一人が、裏方担当に声をかける。
「皆さん、一緒に頑張ってコンサートを成功させましょう」
由樹は精一杯微笑んだ。
●開幕
「こんばんは、遠間由樹です。私のコンサートに来てくれてありがとうございます。最後まで楽しんでいってください」
薄紅色のステージ衣装の由樹が左手を抱えて開始宣言をすると、ファンは盛り上がりだした。
最初の曲は、由樹のデビュー曲『光に向かう蝶』。スローテンポなサンバ調のイントロが短めに流れる。
♪いつか光を見る 殻に籠もる蝶 空を優雅に舞う 夢見続ける
♪自分が飛び立つのは どんな所かな? 少し怯えながら 想像する
歌の出だしは好調で、澄んだ由樹の歌声が会場に響き渡る。
「そろそろサビだね。何度もリハやったから、スピーカーの位置や角度を弄ってベストの音響になるよう調整はバッチリ! いくよ!」
新井が音響調整と同時に、歌詞はサビ部分に。
♪ヒラヒラと キラキラと 大空を舞うよ 必ず どこかで 疲れ果てようと
♪しなやかに 軽やかに 美しい翅広げ 悔いが残らぬよう 太陽まで舞うよ
由樹の声に大らかに明るい慧と瑞雲 カスミ(fa5440)の声が綺麗に重なり、見事なハーモニーを醸し出す。慧は時折スキャットで歌詞英訳を交えて光る蝶を表現した。
次は『陽に当たる場所』。清涼飲用水のCMに起用された曲だ。
CMに南国調の曲を探していた製造会社の社長が、是非当社商品のイメージソングに! と言わせたエピソードがある。
♪照りつける日差しが 私を焦がすの 真夏日の光が スポットライト代わり
♪蜃気楼が揺らめき 舞台を作る 波飛沫は 観客のアンコールよ
ショッキングピンクと黒を基調にしたサンバドレスを身に纏った大道寺イザベラ(fa0330)は、こう思いながら明るく、由樹を引き立てるように踊っている。
(「アタシ、頑張れって言うの嫌いだけど‥‥今日は別。精一杯愉しもうね!」)
一生懸命な由樹の姿をファンに見せる事に集中していたが
♪舞台に駆け出すの 私 アンコールの雨に 打たれながら
サビの部分でつい熱くなったのか、少し前に出てしまった。
●中盤
様子窺いながら、ブリッツは見に纏っている衣装を見ていた。
白い丈の短い布製のドレスに金縁に深紅の胸当てをつけ、腰には月桂樹をあしらった金色のベルトにサンダル。ギリシャ神話か古代ローマ帝国を象徴する衣装は『闘技幻想』に合わせて作られた。
「ダンサー足りてる? 演奏しながらなら前出られるよ」
乾はヴァイオリンと絡むは面白そう提案したので、スタッフはOKしたが、衣装を合わせるのに手間取るのでブリッツの衣装を簡素にしたものに。
白銀ビキニアーマーの腹部とパンツ部分に、やや薄めの布を当てた衣装の由樹が、舞台中央の奈落から現れると同時に『闘技幻想』のイントロが流れた。少し長めなので、着替えの時間は少しある。
♪野に舞う蝶の如く 自在に舞う踊り子 羽衣 ヒラリ揺れて 空を華麗に飛ぶ
♪風の如く走るは 剣士達が振るう刃 怪しげに光る瞳 死闘を垣間見るの
ブリッツは由樹の歌に合わせ、軽やかで、かつ力強さを感じさせるようなダンスを披露した。何度も由樹と動きとも合わる練習をした成果が出て、うまく由樹を引き立たせた。乾は、踊りながらバイオリンで間奏を奏でた。
曲終了後、スタッフが大きな黒い布を持ってきて由樹を覆い隠し、由樹はマジックの早代わりの要領で、桜の精を思わせる天女風衣装に着替えた。
間を置き、瑞雲はフルートで『さくらワルツ』のイントロを緩やかに吹き始めた。それに合わせ、朱里がキーボードでメロディを弾き、曲に合うキラキラとした音をいくつか入れた。基本はピアノ音色でワルツのリズムだ。二人の衣装は、由樹とお揃いだ。
(「久万莉さん、オケ、打ち込みなら必要ないかもだけど、今回用に作る音入れるの手伝うよ!」)
新井との綿密な打ち合わせで、この曲は多少アレンジされている。
♪儚げに見える 月夜の桜 満月の光 照らすのは何
♪悲しげな顔 見せるのは誰 薄衣纏う 桜の精霊
ワルツであるが、由樹の要望で緩やかに編曲された。
由樹のウィスパーボイスに合わせ、慧は中世的な声質を活かしてハモり、流麗にハーモニーを響かせる。
儚げだが、美しい緩やかなワルツは、ファン達の身体を少しずつ、緩やかに揺らし始めた。乾はおどけを封印し、舞い落ちる花びらをイメージして軽やかに踊りながらバイオリンを奏でた。
●難題
コンサート一週間前、由樹が自ら封印した曲をどうするかを全員で話し合った。
「由樹さんが本当は作詞もやりたいと考えているんなら、アンコールで「愛に染めて」をやるのでもいいんじゃないか? 全ては由樹さんに任せるようよ。自分で責任取れたら、だけどね」
ブリッツの案に、皆はどうしようかと思案していた。
由樹は当面自粛ならいずれ機を見て再開しても良いが、それなりの覚悟がいる。
「歌うことを想定して、客入れの際のインストは入れるの? んじゃ、一応伴奏の練習もしておくわ。楽譜頂戴」
乾は、客が望み、由樹がその気になら、アンコールの差し替えも考えているようだ。
「お節介だろうけど、『愛に染めて』を歌わず作詞も自粛って、あなたはそれでいいのかな? ファンは歌ってほしい、作詞も続けてほしいと思ってるだろうし、あなたがそれに応えたい、一歩踏み出そうとするなら全力でサポートさせて貰うよ」
新井は『愛に染めて』のオケを準備し、由樹が歌いたいと言うのならそれを流すことに決めた。
「私はこれまでの事情、何も知らないんだよね。今回来たのは、コンサートを成功させるためだし。それは協力を惜しまず、集まった皆でステージに向き合いたいっていうこと。由樹さんがファンのためにって想ったその気持ちに、寄り添いたいっていうこと。
他の皆もそうだと思う。自分らしく活動ってのは難しいんだろうけどね」
朱里の意見はこうだ。
「由樹さんの今後や『愛に染めて』を歌って欲しいかどうかは‥‥私からは何も言わない。一連の件に関わるのはこれが最初で最後なんだけど、知らなかったとはいえど相当ショックだったろうし。それにそうして欲しいかどうかを求めるのは、コンサートに来てくれたファンであり、それを決めるのは由樹さん自身だから」
自分で決めるべき、と意見を述べる瑞雲。
「あの‥‥もし、私が『愛に染めて』を歌うとしたら‥‥皆さん、協力してくれますか? ファンが望むのであれば、私はそれに応えたいんです。そして‥‥自分を奮い立たせたいんです!」
由樹がそう力強く宣言すると、皆「わかった」と頷いた。
●終演
「名残惜しいですが、この曲でコンサートを締めくくります。音楽プロデューサーのTATSUMAさんが私の為に手がけてくださいました。曲は『夢祭』です」
優美な曲が流れると、由樹は声高らかに歌いだした。その歌声は、CDで聴く声よりも美しかった。
曲終了後、ファンが名残惜しそうにアンコールする中、由樹はマイクを握り直しこう言った。
「わかりました。アンコールに応え、この曲を歌います。私を変えるきっかけとなった『愛に染めて』を」
自分を変えよう、奮い立たせよう、勇気を見せよう!
そう決意した由樹の心は、微塵の揺るぎも無かった。
マイクを持ち直し、歌い始めた。
♪果てない夢を 流れ止まらぬ川に流して
♪思いを詰めた言葉を 鬼灯に入れて 愛に染めて
♪私の思いを どうか伝えて‥ お願い