お笑い三国志!アジア・オセアニア
種類 |
ショートEX
|
担当 |
氷邑
|
芸能 |
3Lv以上
|
獣人 |
1Lv以上
|
難度 |
やや易
|
報酬 |
7.5万円
|
参加人数 |
6人
|
サポート |
0人
|
期間 |
04/16〜04/20
|
●本文
身体を張った番組は無いものか、と『ガハッ! とチャンネル』のプロデューサーは考えいた。
一時期、肉体をぶつけ合うお笑い番組がブームになっていた。
プロデジューサーは今、そういう番組を作りたがっているのだ。
番組スタッフにも企画を考えるよう指示したが、どれもこれもピンとこないものばかりだ。中には、白紙提出というのもあった。
堂々と白紙提出したのは‥‥
「ひ〜ら〜い〜っ! こっち来ーいっ!!」
呼び出されたのは、ADの平井・平良。
いつもは「タイちゃん」と愛称で呼ぶプロデューサーだが、この時ばかりはさすがに苗字で呼ぶ。
「おまえ、何で企画白紙なんだよっ! 俺をなめてんのかっ!」
激怒するプロデューサーに、平井はこう言った。
「完徹で『三国志』を読んでいたので、企画書けませんでした‥‥」
すぱーん!
悪気も無くあっけらかんと言う平井に、プロデューサーの容赦ないハリセンアタックが炸裂!
「馬鹿かおまえは!」
と怒鳴るプロデューサーだったが、冷静になると
「『三国志』か‥‥それは面白いかもしれんな」
と考え始めた。
で、出た結論がコレ。
「よし、決めたっ! 『三国志』の武将や軍師に扮装した芸能人達のお笑いガチバトルにしよう! 最初は「ダジャレ」で、次は「三つ巴」、最後はリーダーによる「わんこ対決」でいくぞ!」
誰も異を唱えるものはいなかったので、プロデューサーの意見はあっさり決定。
果たして、参加者は現れるのだろうか?
<豆知識:三国志とは>
●魏・呉・蜀の三国の興亡を中心とする筋とし、三国の名を冠する作品。
●中国の後漢末期から三国時代にかけて群雄割拠していた時代(180年頃−280年頃)の興亡史の通称。この時代の歴史物語が三国志と呼ばれるのは、ほぼ同時代の歴史家陳寿がこの時代の出来事について記録した歴史書の書名。
●曹操孟徳、 孫堅文台、劉備玄徳といった武将、 諸葛亮孔明を始めとする軍師が登場することで、多くの男性ファンの支持を得ている時代小説。
<ルール>
・一チーム五人(その中から一人リーダーを決める)。
・魏チームリーダーは魏皇帝、呉チームは呉皇帝、蜀チームは蜀皇帝とする。
・チームメイト達は、次の中から誰に扮するか決めること。
魏チーム:曹操、曹嵩、曹丕、諸葛誕
呉チーム:孫堅、孫策、周瑜、諸葛瑾
蜀チーム:劉備、関羽、張飛、諸葛亮
・女性参加者であっても、皇帝、武将に扮すること。
(付け髭は一切無し。男装というかたちになりますのでご安心を)
・参加者が少ない場合は、最低でも軍師と皇帝はいること。
<合戦という名の競技>
一回戦:諸葛誕、諸葛瑾、諸葛亮によるダジャレ合戦。
二回戦:武将の三つ巴(肉弾戦)。三回にわけて行われる。
三回戦:皇帝によるできたてホヤホヤの熱いわんこラーメン早食い。
※なお、当番組は『三国志』『三国演義』とは一切関係ありません。
●リプレイ本文
●修正の乱
番組撮影の前日。
お笑い番組『ガハッ! とチャンネル』のプロデューサーが考え、適当に作成した企画書に多少の訂正を加えたADの平井・平良は会議室に集まった参加者全員に手渡した。
(「プロデューサー、三国志ほとんど知らないのに‥‥。こんなのでいいのかなぁ‥‥?」)
その不安は、企画書に目を通したケイ・蛇原(fa0179)の一言で見事に命中。彼の目は、獲物を狙う蛇の如く光った。
「この企画ですが、細かく書かれている点は認めますが、ここまで武将の名前を並べるのでしたら各国の皇帝の名も出していただきたいものですね。あなたはご存知ないでしょうが、劉備玄徳は蜀の皇帝になった人物ですよ」
ファンの方に叱られないように悔しいけど面白い、そう言ってもらえるようにしないといけませんね、と付け足すケイ。
「ケイさんの仰るとおりですね。皆様のご意見をまとめ、迅速に訂正しますので、どんどん意見を言ってください」
ペコペコ頭を下げながら、不手際を謝罪する平井。大ポカやらかしたのは平井ではなくプロデューサーなのだが、参加者に申し訳ないことをするワケにはいかないと、責任感の強い平井は即、行動を開始した。
「劉備って皇帝だったの!? それ、初耳ー!」
そのすぐ横では、面白そうだからと参加した『三国志』をほとんど知らない迷路(fa5237)が、大きな目をぱちくりさせながら驚いた。
「そ、それじゃあさ、こういうのはどうかな?」
咄嗟に思いついた迷路の案は以下の通り。
魏チーム皇帝:曹操、諸葛誕
呉チーム皇帝:孫権、諸葛瑾
蜀チーム皇帝:劉備、諸葛亮
「これなら人数丁度でしょう?」
「マリスは、迷路さんが言っている感じでいいと思ウヨ。その三人が一番有名だしネ」
迷路とマリアーノ・ファリアス(fa2539)の意見に待ったをかけたのは、稲川ジュンコ(fa2989)だった。
「それは良いアイデアだと思うけど、魏の皇帝は曹丕よ。曹操は皇帝になっていないわ。劉備は漢の皇帝になったけど、呉との戦いに敗れた後に病死したの」
「そ、そうなの!?」
これまた吃驚の迷路は、博識の稲川を歓心の目で見る。
それから数時間後、皆が話し合っている最中、平井は急ピッチで修正作業をし、綺麗に仕上がったものを皆に手渡した。
「こ、これでいかがでしょうか!!」
コピー機がある部屋まで猛ダッシュしたので、体力を使い果たし、窒息状態の平井は会議室前でぶっ倒れた。
「お疲れ様でした」
倒れた平井を抱き起こし、マサイアス・アドゥーベ(fa3957)に平井を寝かすように指示するケイ。迷路、マリアーノ、稲川の三人が急いで椅子を並べてベッド代わりにし、マサイアスはそこに平井を寝かせた。ケイは、企画書に目を通して担ぎ上げるとそこに寝かせた。
「文句無しの訂正振りです。タイちゃん、良く頑張ってくれましたね」
「わしらのために良く頑張ったである平井くん! 皆、彼の頑張りに応えるのである!」
「マリスも頑張るネ!」
「あたしも! でないと、アイデア出した甲斐ないもん」
「あたしもそのつもりで出場したのよ。それは当然」
「わたくしも、それに応えなければならないですね。わたくしの提案が、彼をこのようにしてしまったのですから」
「我が輩も、皆と同じである!」
ダンディ・レオン(fa2859)が右腕を掲げると、残りの参加者も掲げた。全員の心がひとつになったところで『お笑い三国志!』の覇権争いが始まろうとしていた。
(「プロデューサー‥‥僕はあなたを恨みます‥‥」)
意識朦朧状態の平井は、何度もこう呟いた。
●ダジャレの戦い
第一回戦は、諸葛誕、諸葛瑾、諸葛亮によるダジャレ合戦。
「子瑜、頼むぞ!」
全面的に諸葛誕ことマサイアスを信頼し、送り出すのは呉の皇帝、孫権役のマリアーノ。
頭には綸巾(青の組紐で作った頭巾)を戴き、道士の着物を身に纏った諸葛誕役のマサイアス、諸葛瑾役のケイ、諸葛亮役の迷路の順に登場。ケイに関しては、驢馬顔にメイクアップして登場という本格的な扮装振りである。三国志の知識豊富な彼のこだわりだろう。
「これより、各国軍師によるダジャレ合戦を行う。皆の者、思う存分優れた知識を活かして戦うが良い!」
開催宣言したのは、呂布に扮した『ガハッ! とチャンネル』のプロデューサー。
「はじめっ!」
鳴り響く銅鑼の音を合図に、合戦は行われた。
マサイアスのターゲットは、諸葛誕のケイだ。
「江東の田舎者は江東に帰れ」と伝え、イエスかノーか、その場にて口答せよ、との追い討ちをかけるが、ケイは聞く耳持たず。
次のターゲットは、諸葛亮の迷路に対するピンポイント攻撃。
「フクリュウだ何だと言われておるが、所詮副流、主流にはなれんわ!」
臥竜と称されたことをネタにしたダジャレのようだ。
「お主の策など穴だらけよ、孔明だけにな!」
マサイアスのダジャレはまだ続く。
「我らが魏には、孟徳様が丞相であらせられる。上昇気流に乗って、まさに常勝と言ったところである!」
オチをつけたところで勝った! と思ったが
「レモンの入れもん!」
「アルミ缶にあるみかん!」
「布団がふっとんだ!」
「これ誰んだ? おらんだ!」
適当に思いついたのダジャレをすごい勢いで言いまくる迷路に、こう来るとは思わなかったマサイアスは脱帽し、うなだれた。
「わしの負けである‥‥」
舞台袖でその様子を見ていたマリアーノは
「蜀は其の竜を得、呉は其の虎を得、魏は其の狗を得たり、というが‥‥狗、というよりは、セントバーナードだな‥‥」
とぼそりと言った。
後はケイさんのみね! と意気込む迷路だったが‥‥ダジャレが思いつかず、白旗を振り降参宣言。
そんな二人を無視し、ケイは一人ダジャレを続けている。
「蜀では、兄の亮がお世話になっております。瑾と申します。お兄様が呉にいらっしゃれば、二人合わせてリョウとキン」
意味がわかっているのか、いないのかわからない観客は唖然としている。
「『おい、軍師、作戦を立てろ』『はい、リョウキンが必要になります』」
ここで苦笑する観客。
「ともあれ、兄もわたくしも忠義を尽くす主君を誤ったりはしません。所轄はきちんと守ります。実はこのわたくし、顔で馬鹿にされたことがありましてな。驢馬の頭に『諸葛子瑜』と書かれまして。『こいつが諸葛瑾だ』ということなのですな。わたくし、ショックでした。『へえ、これはまた人の意見をきかなそうな軍師でありますな』。馬の耳に念仏というでしょう?」
顔ネタが出たところで、ようやく笑い出した観客。
そこで銅鑼が鳴り響き、合戦終了を告げた。
「ダジャレの戦い、勝者、諸葛瑾、ケイ・蛇原!」
プロデューサーが声高らかに宣言する。現時点では、呉は一歩リード。
●天下三分の野望戦
二回戦は、武将の三つ巴合戦である。当初は、三回にわけて行われるはずだったのだが、思わぬ番狂わせで「生き残り形式」で行うことに。
(「参加者が少ないとは思わなかったぞ‥‥」)
高みからの見物のプロデューサーは、そう思いながら見ていた。自分の企画に不備があったことをど忘れしているように。
出場者は、皇帝になる以前の孫権役のマリアーノ、恰幅の良さを買われ、メンツが足りないので是非出場してください! とスタッフに頼まれたマサイマスは曹操役として急遽出場。
最後の一人は、スタッフに頭をペコペコ下げられて頼まれ、仕方なく出場の劉備役のダンディ。
「父上、兄上、私に力を‥‥!」
拳を握り、戦う決意を見せて意気込んでいるマリアーノ。
「肉体労働は得意ではないのだが‥‥出るからにはやるである!」
戦う気マンマンのマサイアス。
「我が輩が、優れた武将であることを今ここで見せるのである!」
やることが違うであるな、と自画自賛するダンディ。
対戦形式は『騎馬戦』。馬は下っ端兵士に扮したスタッフが担当。出場する三人には、覇者の証『ゴールデンハリセン(名前は豪華だが、見た目は金色の普通のハリセン)』が手渡された。
対戦形式は、武将が体制を崩して落馬、あるいは騎馬が崩れると負けというシンプルなものであるが、勝負は真剣そのものだ。
「皆の者、戦いの時来たり! いざ、尋常に勝負!!」
いつの間にか諸葛亮の衣装に着替えたプロデューサーは声高らかに宣言すると、銅鑼を鳴らした。
それが、合戦開始の合図となった。
「今より降伏を口にするものは、ハリセンで叩かれる机同様と思うが良い! 誰だ、それじゃ、バナナの叩き売りだと申すのは!」と自己ボケツッコミするが、戦法は押したり、引いたりと相手を攪乱するような動き方をスタッフに指示、という真面目振り。マリアーノが小柄で動きが素早いこともあり、他者の攻撃をひょいとかわす。
「我が輩の意地、しかと見せてしんぜようっ!」
と言いながらマッチョポーズを取ったダンディは、スタッフに突撃命令! 格闘能力が高い彼は、腕力で勝負を挑むようだ。マサイアスに関してはツッコミどころ多数ではあるが、誰もそれに触れようとはしなかった。
今、観客が見ているのは、チャンバラごっこのように見えるハリセン合戦であった。
「バナナの叩き売り、甘く見ないことネ!」
「なんの、返り討ちにしてくれるわ!」
マリアーノとダンディが同時攻撃を仕掛けるが‥‥彼らの攻撃をモロにくらい、吹っ飛んだのは丁度その間にいたマサイアスであった。
「ふ、不覚である‥‥っ!」
そう言うと、マサイアスは華麗に宙を舞う。落下しそうになる寸前、騎馬役の兵士スタッフは彼を上手くキャッチし、逃げるようにそそくさと退場した。
マサイアスが敗北したことで、一対一の勝負となった。腕力は互角であったが、身軽さをフル活用して攻撃を避けたマリアーノ扮する孫権が勝利!
「勝負あり!」
銅鑼の音が、勝負終了を告げた。現在の結果、呉チームの圧倒的勝利。
「やったネ!」
マリアーノが大喜びでガッツポーズをした途端、疲れ果て兵士スタッフの一人が体制を崩したため、全員が体制を崩れた。マリアーノは、それでもガッツポーズをしたままだった。
●命運を賭けた三国熱闘
各国の命運を賭けた勝負は、のこり一つとなった。
「皇帝諸君、あなた方には中国4000年の歴史の味を存分に堪能していただこう!」
プロデューサーの言葉に「それ、何のこと?」と頭を傾げるのは、豪華な錦の衣装を纏い、立派な椅子にもたれかかるように王座に座っている皇帝役の三人。
左から曹丕に扮した稲川、豪華な衣装に着替えた二回戦に引き続き孫権に扮したマリアーノ、彼同様、豪華な衣装に着替えた劉備に扮したダンディ。
孫権、劉備に関しては皇帝ではないのだが、人数合わせなので勘弁してもらいたい。その説明は、テロップ表示されている。
マリアーノはもう一度
「父上、兄上、私に力を‥‥!」
と意気込むが、それはもう既にやったであろうとダンディに突っ込まれた。
「ムシロ売り風情の劉備と、碧眼の小童の孫権が相手か。勝つのは、この曹丕よ!」
とノリノリの演技を見せ、曹丕になりきっている稲川。
「我が輩も負けないである! 負けたら劉備玄徳の名が廃るわ!」
各自、戦う気は十分である。熱気が、会場全体にみなぎっている。
「三国の命運を賭けた勝負は、わんこラーメン早食い勝負なり! では、開始!」
銅鑼の合図と同時に、女官姿の女性スタッフが小さな椀を載せたワゴンを引いて登場。要は、わんこそばの麺をラーメンに変えただけのものだが、出来立てホヤホヤなので熱い。猫舌には超過酷な合戦である!
食べ盛りではあるマリアーノだが、普通に大食いをやっても勝てるかどうか怪しいので、スタッフに「お笑いの範疇で許されるなら、三国志に引っかけた妨害工作をしたい」と冗談で言ったのだが、お笑いであればOKとあっさり言われた。
そんな彼の戦法が、麺を一玉全部繋いでおいてもらう『連環の計』。わんこそば形式で椀にアツアツの替え玉を移し変える女官が大変なだけで、効果が薄い出オチ系の策である。
『連環の計』とは、船と船とを連環の鎖で繋げ、火を放った計略である。
「もっと頂戴っ!」
食べては替え玉を要求するマリアーノ。
その隙に、両隣にいる曹操、劉備の替え玉にスープを激辛にするため細工をした。作戦名は『火計』。火は『火鍋』の火を意味する。
「か、辛いであるっ! 何故、こうなるのであるか!」
文句を言いながらも食すダンディに対し、平然とした表情で黙々と食す稲川。
(「おかしいナ。量が足りなかった‥‥トカ?」)
不思議がるマリアーノだったが、ダンディは勢い良く食べ始めた。
(「かなり熱いであるが、このダンディ・レオン‥‥いや、劉備玄徳は最後の最後まで食い尽くしてやるのであるうぅ〜!!」)
劉備としてのプライドもあっての行動であったが、それが自滅の第一歩であることを知っているのだろうか。
椀が合計で100を超えた頃、稲川は棄権した。
「も、もう食べられないわ‥‥」
机に突っ伏してダウンした。
その間、マリアーノとダンディの一騎打ちが続いていたが、スープの辛さに耐え切れなくなったダンディが棄権した。ラストスパートの無理が祟ったようだ。
その様子を見たプロデューサーは、銅鑼を鳴らして終了の合図を送る。
「わんこラーメン早食い勝負、勝者、孫権、マリアーノ・ファリアス!」
やったネ! と大喜びするかと思いきや‥‥食べ過ぎたのか、口元を押さえてゲップを堪えるマリアーノだった。
こうして、呉が圧倒的勝利を治め、三国制覇を成し遂げた。
●三国時代終焉という名の罰ゲーム
その後、すぐに表彰式が行われるのかと思いきや‥‥下っ端兵士スタッフ達が、まだダウンしている稲川をスタジオ外に連れ出した。
会議室に連れ出された稲川に
「これに着替えてください」
兵士スタッフが差し出したのは、際どい大胆な黒い水着だった。ハイレグであるのは言うまでも無い。
「ひとつ聞くけど、マリアーノくんとダンディさんが負けてもコレを着せたの?」
「男性の場合は、罰ゲームとして大胆なバニーガールの衣装を着てもらうことになってます」
女性だけこんなのなんて理不尽よ! と怒る稲川だったが、上からの命令ですのでと言われたので、渋々諦めて水着に着替えることにした。
「あなた達、いつまでいるつもり? 出てって! 出ないと着替えられないじゃない!」
稲川の一声に、そそくさと会議室を出て行くスタッフ達。
スタジオに戻った稲川の姿は、際どい水着のうえ、鎖で繋がれた状態での登場。
ワケが判らない状態の彼女の前に置いてあるテーブルの上には、スープは真っ赤のラーメンが入った丼がデン! と置かれていた。
「早食い大会最初の脱落者、曹丕は罰ゲームで熱湯風呂に入ります! その前に、激辛、激アツの『赤壁ラーメン』を食べていただきます!」
と諸葛亮姿のディレクターが説明。赤壁は『赤壁の戦い』から名づけたのだろう。
「ちょっと待ってよ! こんな状態じゃ食べられないじゃない!」
「ご心配なく。兵士が食べさせてくれます」
プロデューサーがそう言うと、兵士は箸とレンゲを持ち、稲川に一口ずつ食べさせた。
「か、かっらーい!!」
懸命にラーメンを啜る稲川だが、際どい水着で露出した素肌に熱くて辛いスープがかかり、その刺激に身悶える。
もう嫌ー! と抵抗するが、兵士は容赦無く食べさせる。
「兵士の皆さん、そのくらいにしておきましょう。曹丕は身動きが取れませんでしたね。これぞまさしく『連環の計』ですね」
プロデューサーの言葉に「連環の計じゃないわよ!」という稲川の抗議空しく、次の罰ゲームがスタート。
お次は熱湯風呂。この時、臍の上に蝋燭を立てるという三国志マニアしか判らない罰ゲームを選ぶ事もできるといわれたが「その丞相とは違う!」と突っ込む稲川。このネタは、本当にマニアしかわからない。『三国志』を知り尽くしている平井案、というのはここだけの話。
そんな目に遭っても
「孔明! 周瑜! 謀りおったな! 郭嘉がおればこのような事にならなかったのに‥‥」
と最後まで曹丕を演じきった稲川。
稲川ジュンコ、女性ではあるがキミこそ立派な三国武将だ! 見事である!
罰ゲーム終了後、稲川は兵士スタッフに連れて行かれ、退場した。
「酷いことしてくれるわね! 口の中は辛いし、身体はまだヒリヒリしてるわ! どうしてくれるのよ!」
稲川がご立腹状態なので、兵士スタッフは宥めるのに一苦労だった。
その間、表彰式が行われていた。
●反省会
「皆さん、お疲れ様でした。今回はプロデューサーの不手際で、大変ご迷惑をおかけしまた」
ペコペコと頭を下げる平井。
「それと‥‥最後の罰ゲームは運悪く今回は稲川さんがすることになりましたが、他の皇帝役の皆様にも同様のことをやっていただく予定でした」
あの格好であんなことを!? と驚くマリアーノとダンディ。
「男性の場合は衣装が違いますが、内容は同じです」
「まさか、あの企画を考えつくとは思いませんでした。タイちゃん、あなたが三国志ファンであることを見抜けなかったわたくしを許してください」
ケイはそう言うと、平井に頭を下げた。
「ケイさん、あなたの指摘があったから番組を面白いものに仕上げられたんですから頭を上げてください」
皆さんのアイデアがなかったら番組は赤っ恥をかくところでした、と照れながら答えた。
「タイちゃん、もう一度『三国志』を読んで、壮大な男達の歴史浪漫を堪能してください」
「はい」
無事終了したんだから、それでいいじゃないという迷路に、マリスも同じ意見ダヨと言う。
「わしは二回連続出場であったが、しんどくはなかったである。むしろ、楽しめたである!」
「我が輩も同様である! 最後のわんこラーメンのスープだが、途中から辛くなっていたのが不思議であるが」
マサイアスとダンディも楽しめたようで何より。ダンディの最後の一言に、マリアーノはギクッとなったが、それは気のせいということで。
「ところで、稲川殿の姿が見えないようであるが‥‥」
ダンディの質問に、平井は、稲川さんは、気分が優れないからお先に失礼しますと帰られました、と答えた。迷路は、何となくであるが理由を悟ったが、何も言わなかった。
こうして、お笑い版『三国志』の撮影は無事終了した。