Blue in Red 8 アジア・オセアニア

種類 ショート
担当 氷邑
芸能 3Lv以上
獣人 フリー
難度 普通
報酬 9.4万円
参加人数 12人
サポート 0人
期間 04/15〜04/19

●本文

 青は、南国の孤島を取り囲むように広がったネイビーブルー。
 赤は、その孤島に聳え立ったホテルの中で起こる惨劇を象徴する血。
 日本国の謀略によりランダムに集められた32名の一般市民が、たった一つの生存権を賭け、孤島のホテルで殺し合いを行う。
 帰る事も、逃げる事も出来ない人間の極限が見せた弱さ、醜さ、美しさ、裏切り、愛情、友情、絆。そして運命を捻じ曲げようとする比類無き強さ。

 千ページ以上にも及ぶ良い意味でも、悪い意味でも問題作と言われたこの長編小説の映画化が決定し、撮影は順調に進んでいる。
 撮影は、内閣総理大臣・真山壱が新参加者投入表明を行った後の大広間から始まる。

・シーン1
 キリング・ドールと共に行動している秘書の神凪華。
 大広間の様子はどうなっているだろうか、と気になり、華はそこへ向かった。
 そこで、華は錯乱状態に陥ったかつての家族を見た。哀れに思った彼女ががとった行動は‥‥。

・シーン2
 医務室。船医の志水剣一郎は、矢田メイにここで療養するよう強く勧めた。
「メイ、早く良くなってくれ。もう‥‥愛する者を失いたくない‥‥」
 メイの手を、剣一郎は強く握った時、看護師の療子は、生を望んだ都の傷の手当てを素早く行った。

・シーン3
 傷を負いながらも、赤城拓也は恋人・奈緒美の仇を捜していた。
 そんな彼の前に立ち塞がったのは、サバイバルゲームのリーダー、檜村零児。
「俺、すっげぇ美人を殺ったんだ。殺すのは勿体無かったぜ」
 と、零児は拓也に自慢げに話し始めた。彼こそ、奈緒美を殺めた憎むべき相手だ。
 それを察知した拓也は、どう出るのか。

・シーン4
 亡き恋人、涼子の亡骸を横抱きにしたまま、都築哲司はふらふらと歩いている。
 哲司の表情には、生気が無く、今にも倒れそうだ。
「私が、あなたを彼女の元へ連れて行ってあげましょうか?」
 暗殺者、霧咲彰吾が背後から声をかけた。その言葉に、哲司はどう答えるのか。

・シーン5
 モニター室でその様子を見ているのは、内閣総理大臣である真山壱。
「私の一言で、参加者達はかなり動揺しただろう。大切な者、愛する者を失った私の悲しみ、すべてを失った私の辛さを‥‥おまえ達も骨の髄まで味わうがいい!」
 最愛の妻と娘を失い、幸福な家庭を崩壊させられた怒りを、壱は参加者にぶつけた。

<登場人物>
 赤城拓也:本編の主人公。復讐を決意したことで「拓也」と犯罪者的人格「赤い狼」の人格が融合。
 神凪華:真山の命令で、参加者として参加の秘書。 
 志水剣一郎:生きたいと願うものを救おうとする船医。
 数井療子:怪我人を治療しようと務める看護師。
 矢田メイ:指名手配中の殺人犯。現在は医務室で療養中。 
 榊都:自殺志願者だったが、負傷したことで生きたいと願う。
 都築哲司:花屋の店長。恋人・涼子を失ったことにショックを受け心神喪失状態。
 檜村零児:拓也の恋人・奈緒美を殺害したサバイバルゲームのリーダー。
 霧咲彰吾:口調は丁寧だが、冷酷非情な暗殺者。
 真山壱:内閣総理大臣。
      冷酷非情、国粋主義者、選民思想に凝り固まった人物。
      今回も本格的に登場。

※武器はホテル内を破壊する恐れのある重火器の類意外であれば問わず。
※その他の配役は生存者のみ選択可能です。
※華の家族は、今回登場していない生存者に限りますのでご注意ください。
※キリング・ドールはNPCが演じます。

<これまでの生存者、死亡者(五十字音順)>
 生存者:赤城拓也、数井療子、カナ芳村、神凪華、霧咲彰吾、栗原亜依、榊都
      坂崎明憲、志水剣一郎、都築哲司、花沢美咲、檜村零児、方城瑞希
      丸山高貴、本木美鈴、矢田メイ、ユーリー芳村、
     
 死亡者:青嶋奈緒美、青柳健一、亜澄涼子、飯田健太郎、海馬厚司 、梶原ゆう
      神田カンタ、田沼秀雄、月凪 鈴、野川夏希、野川邑吏、尾藤裕二
      藤吉住男、渡辺雄一、渡キリエ
※前回(7)の撮影で、田沼秀雄は丸山高貴に斬殺。渡辺雄一は何者かに殺害。

<映画設定>
・大きな舞台の別の一場面としてリンクしている。
・参加者が何故集められたは各々設定。
・参加者には全員孤島に入る前にマイクロ爆弾を取り付けられて、島から出ると爆発。
・ホテルの外は森、罠有り。

●今回の参加者

 fa0330 大道寺イザベラ(15歳・♀・兎)
 fa0588 ディノ・ストラーダ(21歳・♂・狼)
 fa1610 七瀬・聖夜(19歳・♂・猫)
 fa3028 小日向 環生(20歳・♀・兎)
 fa3890 joker(30歳・♂・蝙蝠)
 fa4040 蕪木薫(29歳・♀・熊)
 fa4235 真喜志 武緒(29歳・♂・狸)
 fa4354 沢渡霧江(25歳・♀・狼)
 fa4382 アルディーヌ・ダグラス(16歳・♀・猫)
 fa4591 楼瀬真緒(29歳・♀・猫)
 fa4882 ヒカル・ランスロット(13歳・♀・豹)
 fa5450 皇 流星(18歳・♂・一角獣)

●リプレイ本文

 真っ白なロングコートを着た神凪華(沢渡霧江(fa4354))は、迷うことなく大広間に向かった。

『あいつの首を狩れ』

 あいつとは、両親の再婚によりできた年の離れた妹だ。
 お姉ちゃんと呼び、自分を慕う妹を華は当初とても可愛がっていたが、次第に妹が疎ましくなり、家を飛び出した。
(「あれから十数年。こんな形で再会するとは‥‥」)
 運命の悪戯とは、まさにこのことだ。

 大広間に残っているのは、正気を失った者達だが、唯一自分自身を保っていたのは本木美鈴(小日向 環生(fa3028))だけだった。家族で縁日に行った時、華が姉妹になった記念にと買ってくれたペンダントを握り締めながら。
 そんな時、大広間の中央に座り込んでいた参加者の一人に襲われそうになった美鈴は、襲われた弾みで側に落ちていた包丁を素早く取り相手を刺した。
 初めて人を殺したというショックで、美鈴は我を失いそうになったその時、華の姿が見えた。
「お、お姉ちゃんなの‥‥?」
 怯える美鈴をそっと抱きしめ、華は自分が姉だと名乗った。
「お姉ちゃん!」
 華と会えたことに喜ぶ美鈴は、華の胸の中で泣いた。その間、華は穏やかな笑顔を浮かべて場を和ませたが
「冥土への土産はこれでいいだろう」
 華はそう言うと身を反転させ、キリング・ドールに美鈴を刺すよう命じた。躊躇うことなく命令に従うキリング・ドールは、美鈴の返り血で汚れた。
 死ぬ間際まで、美鈴は華と揃いのペンダントを握り締めていた。
「過去も物も‥‥未練がましく抱えているというのは惨めなものだ」
 キリングドールのように、と無表情に言う華。
「おまえにはわからないだろう。死んでほしいが手を汚したくないという矛盾など。総理を手にかけることができるおまえにはな‥‥」

 その様子を、モニター越しに内閣総理大臣の真山壱(joker(fa3890))は、華の葛藤がどのような結果になるのかと興味深げに見ていた。
「自らの手で妹を殺めることができないとは‥‥情けない秘書だ。キリング・ドールが神凪の言うことを素直に聞くとは意外だったがな。無意識のうちに気に入られたか?」


 医務室では、船医の志水剣一郎(真喜志 武緒(fa4235))は、容態が悪化した矢田メイ(アルディーヌ・ダグラス(fa4382))の看病に必死だった。
「私は、再び愛した者を失うのか‥‥」
 意識が朦朧としてきているが、メイは自分はもう駄目かもしれないとわかっている。
「あなたに会えたから‥‥私は本当の愛を知ったのかもしれない‥‥」
 息が途切れ途切れながらも、メイは話し続ける。
「私は‥‥罪を犯し‥‥顔を変え‥‥人を騙しては逃げるの繰り返しだったけど‥‥あなたを‥‥愛しているわ‥‥」
「メイ、諦めるな! 私も愛している! だから死なないでくれ!」
 メイの手を強く握り締め、剣一郎は酒必死に叫ぶように呼びかける。
「愛されるのって‥‥こんなに‥‥優しい気持ちになれるのね‥‥愛‥‥し‥‥」
 言葉の途中で、メイは穏やかに眠るように息を引き取った。

 数井療子(蕪木薫(fa4040))の治療を受けて助かり、メイの死を目の当たりにした榊都(楼瀬真緒(fa4591))は、二度と目覚めることのない「死」の恐怖を味わった。
 メイの死により、剣一郎は今まで以上の虚無感と絶望感に襲われたことで我を見失い、ふらりと医務室を出た。
「数井さん、志水先生が! 数井さん?」
 メイの死にダメージを受けた療子は、完全に気力を失い、能動的に動くけくなった。
「キミは生きることを望んだんだね‥‥」
 療子はそう呟くと、剣一郎を追う都を虚ろな目で見た。

 玄関ロビー付近で剣一郎を見つけた都は、彼を呼び止めた。
「自殺志願者だった私がこう言うのも変だけど‥‥そんなことしても、メイさんは喜ばないよ。彼女をもう一度見て。先生がいたから、安らかな表情で永遠の眠りについたんだと思う。私も先生みたいな人に出会えてたら、自殺なんて考えなかった。先生はまだ必要よ」
 その話を聞いた剣一郎は、駆け足で医務室に戻った。
 医務室のベッドで穏やかに眠っているように見えるメイの唇に、剣一郎はそっと口づけた。総理への復讐を誓いながら‥‥。


 赤城拓也(ディノ・ストラーダ(fa0588))は、痛む傷口を押さえ恋人・青嶋奈緒美の仇を捜していた。
 拓也だが、外見は普通の青年だが、遺伝子改良実験によって生み出された試作人間兵器で、犯罪者的人格『赤い狼』と記憶をリンクしている。それ故、赤い狼の時の出来事を拓也は全て把握し、通常では不可能な人格切り替えも可能だ。
 そんな彼の前に立ち塞がったのは、サバイバルゲームのリーダー、檜村零児(七瀬・聖夜(fa1610))。殺人意欲に火がついたのか、木刀を構えながらじりじりと拓也に迫ってくる。
「おまえ、俺が仕留めた女の男か? だったら、あの世で会わせてやるぜ!」
 不敵な笑みを浮かべながら、零児は木刀で拓也を攻撃したが、素早くかわされた。
「おまえが俺の奈緒美を‥‥許さない!」
 感情に身を任せ、ステッキを振り回して零児を攻撃する拓也だったが、ひょいとかわされ、彼の膝蹴り攻撃を腹部にくらった。
 その途端、拓也の表情と口調がガラリと変わった。
「座興はこれで終わりだ。君はもう『私』に逢ってしまったのだからな」
 拓也は、素早く人格を赤い狼に切り替えた。
 零児は、赤い狼が繰り出す鋭い攻撃に窮地に陥ったその時、運悪くその場を通りがかった花沢美咲(大道寺イザベラ(fa0330))をこいつは使えると、美咲の手を強引に掴んで引き寄せると羽交い絞めにした。
「何よっ!」
 逃げようとしたが、零児に拳銃をこめかみに突きつけられたので動けなかった。
「この女がどうなっても良いのか!」
 形勢逆転かと思われたが
「その子は関係ない、放せ」
 冷徹な表情でジリジリと零児に歩み寄る赤い狼に恐怖を感じた零児は、このへんにしとくが、次に会った時は覚悟するんだなと負け惜しみを吐き捨て、美咲を突き飛ばして解放すると去った。それと同時に、赤い狼は人格を切り替え拓也に戻った。
「怪我はない?」
 突き飛ばされた美咲を抱き起こし、医務室にいる船医さんに一応診てもらうといいよと肩を貸し、美咲を医務室まで連れて行った。
「あ、ありがとうございます‥‥」
 美咲は、自分を助けてくれた拓也に恋をしたようだ。


 亡き恋人・涼子の亡骸を横抱きにしたまま、都築哲司(真喜志=二役)はふらふらとあてもなく歩いている。かつては穏和な表情だったが、茫然自失中のため、今の彼から生気は感じられない。
「そこのあなた、もう生きるのも苦痛でしょう?」
 アーミーナイフの刃を舐めながら都築にそう訊ねるのは、人殺しを好む残忍な性格の死刑囚の霧咲彰吾(皇 流星(fa5450))。
「私のために死んでください」
 その言葉で、哲司は彰吾が何を言っているのかわからなかった。
「今‥‥何と言った?」
「聞こえなかったのですか? 私のために死んでください、と言ったんです。そこの彼女のように」
 彰吾が涼子を殺害した犯人だと知るなり、涼子の亡骸を床にそっと下ろし
「おまえが‥‥おまえが涼子を!」
 殴りかかったが、彰吾にアーミーナイフで心臓を一突きされた。
「ごめん‥‥涼子の仇を討てなかった‥‥。僕も逝くから‥‥寂しくないよね‥‥?」
 息も絶え絶えに這いずり、涼子の元に近づいた哲司は、涼子と折り重なるように死亡。
「美しい光景ですね」
 その様子を見て微笑んだ彰吾だったが、何者かに背後を貫かれ、口篭った苦鳴を残して死亡した。
「美しさの無い者に、生き抜く値打ちはないのだよ」
 音もなく現れ、素早い突きで彰吾を殺害したのは赤い狼の人格の拓也だった。
「アディオス」
 ステッキを引き抜き、彰吾の血を撒き散らす赤い狼は何処へと去った。


 壱は、モニター室でホテル内の様子を窺っていた。
「奪った後に無くした後に後悔をしても、もう遅い。取り返しがつかん。大切な者、愛する者を失った私の深い悲しみ、すべてを失った私の辛さと絶望、生き残りゲームの参加者であるおまえ達も骨の髄まで味わうがいい! ハハ‥‥ハハハ‥‥ハーハッハッハッ!!」
 ヒステリック気味に、壱は大笑いした。スクリーンに映し出されるマネキンのように倒れたままの参加者、時折監視カメラに飛び散った血を見て、狂気に酔いしれ、何時もの正常で冷静な精神は少しずつ揺らぎ始めた。
 正気に戻り、医務室に向かう途中の都をモニター越しに目に留めた壱は、彼女を見て何かを思い出したようだ。
「あの女、何処かで…。榊都という名だったか。そうだ、あの事件の‥‥。何故、自分が自殺志願者になったのか忘れているのか? それとも、まだ逃げているのか? 同じ穴の狢だろうに‥‥」
 その言葉は、何を意味しているのだろう‥‥。

 方城瑞希(ヒカル・ランスロット(fa4882))は、監視カメラ越しに叔父である壱の説得を廊下の一角で、誰もいないことを確認し、斜め上にある監視カメラに向って必死に説得を試みた。
「叔父様、こんな事もう止めて。元の優しい叔父様に戻って。どうして返事を返してくれないの? 叔父様! 返事して!」
 当然のことながら、何の返事も無い。瑞希は、そのことに不安を募らせた。

 死亡者:本木美鈴、矢田メイ、都築哲司、霧崎彰吾
 生存者13名

 運命の歯車は狂い始まり、急速に回り始めた。誰にも止められない速度で‥‥。