コメディ米国出張南北アメリカ
種類 |
ショート
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担当 |
氷邑
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芸能 |
3Lv以上
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獣人 |
1Lv以上
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難度 |
やや易
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報酬 |
7.5万円
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参加人数 |
7人
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サポート |
0人
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期間 |
04/05〜04/09
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●本文
「今回のコントだが‥‥思い切って海外で行おうと思う。まずは全米進出だ!」
お笑い番組『ガハッ! とチャンネル』のプロデューサーが、何を思ったのか突然そう言い出した。全米デビューは、超有名アーティストでも難しいことを知らないのだろうか?
当時駆け出しAD(というが、今もAD)の平井・平良が考えたコメディシリーズは、幸いにも番組の名物コーナーと化した。
常連参加者も増え、視聴率もアップという嬉しい特典に、プロデューサーはウハウハ気分だった。
「というわけで、タイちゃん、企画宜しくね♪」
普段は期限が悪そうな顔をしているプロデューサーは、平井の肩をポンと叩いて上機嫌にそう言った。
「海外向けとなると、どうも前にやったのと同じになっちゃうんだよなぁ‥‥」
企画書の内容はこうである。
<「アメリカンジョークで笑いを取ろう!」企画書>
今回の観客はアメリカ人。
アメリカ人を本場のジョークでどこまで笑わせることができるのか?
持ち時間は三分。芸風は一切問わず。例により、下ネタは即退場とする。
『ガハッ! とチャンネル』では、我こそはアメリカ人を笑わせることができる! という意気込みの芸人、役者の皆様の出場をお待ちしております。
ピン、コンビ、グループ一切問いません。
優勝者には賞金2000ドルを進呈します。
南米アメリカ以外から参加される皆様の旅費は、当番組で負担致します。
●リプレイ本文
今回の『ガハッ! とチャンネル』は、何と! 米国出張版である。
全米デビューを目論んだ番組プロデューサーの咄嗟の思いつきにより、超がつくほど無謀な企画が始動されたのである。
アメリカンジョークでアメリカ人を笑わせよう、というこのコーナー、成功するのだろうか?
それは、出場者次第である。出演者の諸君、健闘を祈る。
●エントリーナンバー1:烏丸りん(fa0829)& 高白百合(fa2431)
舞台裏で、高白の姉という設定の烏丸は髪をアップにし、年齢を高めに見えるようメイクアップ中だった。
「武闘派の百合さんと、こういう仕事で組むなんて思わなかったわね‥‥」
引き受けたからにはやるしかないわね、と烏丸は割り切ることに。
それに対し高白は、普段の外見年齢よりさらに若く見えるようにメイクアップ中。演じるのは、元気いっぱいの悪気無しのドジっ子だ。こちらはやる気マンマンのご様子。
舞台に上がった二人が披露するコントは『テスト』。
烏丸は舞台に上がるなり
「ねぇ百合。あなた、私に何か隠していることないかしら?」
迫力のある笑みで、妹役の高白に詰め寄る。
「にゃ、にゃにゃ、にゃ〜んにも隠してなんかないデスヨ?」
百合の言葉遣いが妙におかしい。何かを必死に隠そうとしているのが丸分かりだ。
「特に、テストとかテストとかテストとか‥‥」
隠し事は、かえって逆効果だったようだ。
「あー」
テストの点が悪いことを悟ったのか、姉は自分の眉間をもみほぐしている。
「だ、だだだだって‥‥テストの当日に休んじったから‥‥」
しょぼんとし、反省している様子の百合を見て
「百合! どうしてそれを早く言わないの! 大丈夫? 熱はない? あぁ、なんてことに。天国のママに申し訳が立たないわ‥‥。今からゆっくり休みなさい。学校には私から連絡しておくから」
心底、百合を心配する姉だったが
「私は元気だよ。テストの日に休んだの、私の前の席の子だったし」
「‥‥‥」
ケロっとした顔で言う百合の言葉に、唖然とした表情でしばし硬直していた姉だったが
「さぁ、ピッチャー大きく振りかぶって第一球、投げました!」
自前コメントをしながら、ポケットから取り出した堅いボールを魔球を投げるかのように大袈裟に振りかぶり、百合めがけて投げた。
「お、おおおおねえちゃん!? ぼ、暴力反対っ!!」
派手にボール攻撃を食らい、百合はコミカルに倒れた。顔に当たらなかったのが、不幸中の幸いだった。
そのオチはインパクト大だったが、観客の反応は無かった‥‥と思いきや、暫くすると大きな笑い声が。
「やったわね、百合!」
「うん、お姉ちゃん!」
大喜びの烏丸と高白、もとい、姉妹だった。
●エントリーナンバー2:ドワーフ太田(fa4878)
「出るからには、賞金を狙っていこうかの」
舞台裏で気合を入れた後、司会者に紹介されたドワーフは舞台に上がった。
彼のネタは、本職であるプロレスラーを活かしたものだ。
「レスラー等の格闘家は、いろいろと誤解されやすい職業じゃ。この前、人をぶっ叩いて金がもらえるんなら、いい商売だなと言うヤツがおったんでこう言い返してやったわ。『人をぶっ叩いて金を稼ぎたかったら、格闘家より批評家になった方がいい。わしらがぶっ叩くのは相手だけじゃが、ちょっとでもしょっぱい試合をしようもんなら、相手どころか、目の肥えた格闘技ファンや批評家連中によってたかって叩かれるからの』とな」
少し間を置き、ドワーフは再び話し始めた。
「それと、格闘家の見せ場の一つにマイクパフォーマンスがある。わしの知り合いにな、一人マイクの時に必ず歌を歌うヤツがやつがおっての。そんなに上手い方でもないんじゃが、この前の試合ではヤツは随分体力を使い果たしたんじゃが‥‥何と、その後歌いおった。その時の歌はいつにもまして酷かったわい」
歌った知り合いだが、歌い終わるとものすごい拍手があったとのこと。
「その知り合いはな、控え室でこう言ったんじゃ。『もう少し時間と体力に余裕があれば、アンコールに応えてもう一曲歌ったのに』と。そこで、わしはこう答えてやったんじゃ。『それなら、ギリギリまで試合をやっていて正解じゃったな。客はお前さんの酷い歌がようやく終わったことに喜んで拍手をしていただけじゃから』」
このネタは‥‥微妙だった。
●エントリーナンバー3:ミルティア・リーエン(fa4465)& 高村 裕香(fa4638)
ドワーフがコントをしている際、舞台裏でスタンバイしているミルティアと高村の会話。
「ジョークで客を笑わせる‥‥ウチ、お笑い芸人ちゃうからそないなことやった事ないねん。けどな、裕香ちゃんとならきっと上手くやれると思うねん。頑張ろうな!」
「コメディか‥‥。初めてなうえに苦手分野ではあるが、引き受けたからには努力する」
プロレスで何度か対戦した事があるので、二人は少しは息が合うだろう。
「ミルティア、くれぐれも下ネタや放送コードに触るような発言は控えて貰おう」
「わかっとるって」
ミルティアの衣装は、エロ可愛いがコンセプトの際どい白ゴスロリ。高村が、ギャップ萌えがコンセプトは演歌歌手が見に纏っているような赤い晴れ着姿だ。
話し合っている最中、司会者が自分達を呼ぶ。
「はい、どもー!」
「ど、どうも‥‥」
テンションが高いミルティアに対し、高村はやや緊張気味。
担当は、ミルティアがボケで、高村がツッコミである。ハリセンを持っているので、ハリセンネタを知っているアメリカ人なら高村がツッコミとわかるだろう。
ネタは『起こった事をありのまま話す』だ。
「ここに来る時な、10万ドル言われとった賞金が、唐突に2000ドルに変わってたんや! 詐欺や催眠商法なんかやない、もっと恐ろしい物の片鱗を味わったで‥‥」
舞台袖でその様子を見ていた平井・平良はもの凄く焦った。ネタだと思われれば良いのだが‥‥。実は、スポンサー側に「1万ドルナンテ払エナイネー」と言われたので、急遽金額変更という裏話がある。
観客には、この話はジョークだと思って欲しい! と平井は願わずにはいられなかった。
「何でやねん」
スパーン! とハリセンでどつく高村。
「それとな、ここ来る時に服に泥が跳ねてもうて。ほっといたら染みになるて困っとったら、ボブっちゅう親切な人が『そんな時にはこれ!』言うて、塗るだけ洗剤を取り出してその場で実演はじめたんや。おかげで、ウチの服はピッカピカ! で、思わず1ダース通販で申し込んでもうたわ」
会場がややしらけたようなので
「気にしないでください。彼女は、いつもこうなんですよ」
肘でミルティアを小突きながら、高村がフォロー。
気を取り直したミルティアは、更に話を続ける。
「そういえばさっき、そこに鹿がおったんや。何か道に迷うたみたいで、引っ切り無しにきょろきょろしとってなぁ。ドジな子やなあ思っとったら、向こうから馬が迎えに‥‥あかん! これジャパニーズジョークやったわ!」
右手に持っているハリセンを、左手で叩いている高村が
「ミルティア‥‥このボケツッコミ形式の漫才は、ジャパニーズお笑いではないだろうか?」
とツッコミを入れたが、ミルティアはお構い無しに悩んでいた。
●賞金にボケかまし
「これで、すべてのコントは終了しました。審査結果は、もうしばらくおまちください」
司会者の平井の会話だが、画面上ではわかないが、全部英語である。英語ペラペラな理由は、後に明らかにしよう。
「審査の結果が出たようです。では、発表します。優勝は‥‥」
ドラムロールが、出演者達の胸を高鳴らす。皆、自分では‥‥と緊張しているようだ。
「優勝は、烏丸りんさん、高白百合さんのお二人です!」
平井が、声高らかに宣言する。番組スタッフが、店の看板くらいの大きさの紙を持ってきた。そこには『2000ドル』と金色文字で大きく書かれていた。
「烏丸さん、高白さん、おめでとうございます。優勝されたご気分はいかがですか?」
平井が聞くと、二人は同時に
『1ドル=12円程度!』
というボケをかました。
円相場では1ドル=119円なのだが、ご愛嬌ということで‥‥。
こうして、初めての海外出張コメディは無事終了した。
次があるのかどうかは‥‥予算次第である。
●
余談。企画した本人曰く。
「いやー、全米デビューはやっぱ無理だったかー。次は欧州デビューにするか」
全く、懲りていないご様子。
「プロデューサー、欧州も中東も無理です! 予算超不足ですから!」
「それにこの企画、上層部の反対押し切ってしたそうじゃないですか!」
その中で最も抗議したのは、ADの平井だった。
「僕、この番組で英語ペラペラだと思われるじゃないですか〜! あれは「吹き替えでした」なんてシャレにならないですよ〜!」
平井の司会振りだが、実は彼そっくりのアメリカ人のアフレコだった。平井はそれに合わせ、適当に口パクしていただけである。
んじゃ、宇宙にでも‥‥とプロデューサーの言葉を
『どこもノーサンキュー!!』
声を揃え、企画反対を訴えるスタッフ達であった。