奈落佳人〜歌声〜アジア・オセアニア
種類 |
ショート
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担当 |
氷邑
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芸能 |
3Lv以上
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獣人 |
1Lv以上
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難度 |
普通
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報酬 |
9.4万円
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参加人数 |
8人
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サポート |
0人
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期間 |
04/08〜04/12
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●本文
これは、映画「奈落佳人」上映前の話である。
監督と脚本家の輪島珠洲は、奈落佳人の世界を盛り上げる挿入歌、主題歌を作成する作曲家、音楽プロデューサーを探していた。
「この人は、佳人のイメージに合わないな」
「この作曲家さんは、インパクトが弱いみたいです」
『どうしよう‥‥』
その声は、見事にハモっていた。
悩んだ末、二人は「奈落佳人」の挿入歌、主題歌をアーティストを募集することにした。
<奈落佳人挿入歌>
『奈落数え歌』
奈落送りの際、佳人の部下が歌う曲。これは歌詞も考えてもらう。童歌のような曲調。
<奈落佳人主題歌>
『タイトル未定』
しっとりとした緩やかな曲。歌詞は「幽玄」「夢幻」等を連想させるようなもので。
主題歌を歌うのはウィスパーヴォイスの歌姫、遠間由樹に決定。
※『奈落数え歌』は作曲者だけでなく、歌い手も同時募集しています。
「こんなもんか」
「こんなものでしょうね。後は、アーティストの感性に任せましょう」
二人の賭けは、成功するのだろうか‥‥。
●リプレイ本文
●メンバー顔合わせ
「皆さん、お忙しい中集まってくださってありがとうございます」
チーフスタッフと共に、参加者達に礼を述べる輪島珠洲。
「蓮 圭都(fa3861)です、宜しくお願いします」
蓮は、佐武 真人(fa4028)、 橘川 円(fa4980)をはじめとする知り合い、仲間がいるだけで心強くなった。
「曲作るのって楽しいよね。幻想イメージとか、考えるだけで楽しいよ。知り合いや仲間も多いし、とても有意義なものになりそうだよ。皆、精一杯張り切っていこう」
主題歌作成は初めてなAG『朧月読』のリーダー、柊アキラ(fa3956)は、仲間達と作業するのを楽しみにしている。
「圭、久しぶりだね。今日は頑張ろう。大河君は、圭に変なことしちゃ駄目だからね」
柊がそう言うと、珂鴇大河(fa4406)はぎくっ! とビクついていたが、久しぶりの仕事なので気合いは十分、自分の仕事はきっちりこなす気でいる。
(「ちっ‥‥圭都に「ニャン子! 会いたかったぜー!」ってダッシュで向かいたかったのに‥‥」)
行動を起こす前に、柊に先読まれしたので思うだけにことにした。
「皆様、はじめまして。ミッシェル(fa4658)といいます、宜しくお願いします。有名な方もいらっしゃるようなので、圧倒され気味です‥‥。私も気合を入れて、映画製作サイド、楽曲製作サイド共に、納得のいくものにしたいと思います」
ギターが得意、ということで参加したミッシェルだった。
「『奈落佳人』だけど、コミカル版のほうには出演したことがあるから、何となく思い入れがあるの」
出演経験のある橘川が、私も頑張るわと張り切る。
「皆さん、早速仕事にとりかかりませんか?」
皆を促すのは、『奈落佳人』本編に出演経験のあるエルティナ(fa0595)。
●『奈落数え歌』作成
皆は、まず『奈落数え歌』の曲作成にとりかかった。
「曲調ですけど、ミドルテンポの童歌調はどうでしょうか? シンプルなコードでなだらかにして。歌詞の一順目はアカペラ、メインボーカルがはっきりと歌声を響かせ、コーラスはユニゾンで。二順目からは演奏が入るが、主旋律はボーカルが担い、ハモりも入れ、ゆっくりとした伴奏に、鼓が一定のリズムを支え、琴や二胡で音が沿いながら、アクセント的に鈴を鳴らすようなカンジ、と考えてみました」
最後は鈴の音が涼やかに鳴り静かに終わる、という方針を、ミッシェルは提案。
「楽器ですが、皆様の要望に応じて用意してあります。その中に、鼓、二胡も含まれていますのでご心配無く」
輪島が、ミッシェルの提案後に付け加えるように取り揃えてある楽器の種類を説明した。
「あの、その中に中国古筝とベイビーハープはありますか?」
エルティナの質問に「勿論です」とにっこり微笑みながら言う輪島。
「ミッシェルさんのアイデアに賛成。それじゃ、私の担当パートはコーラスにするわ」
「僕はメインボーカルでいきたいんだけど‥‥いいかな?」
蓮と明石 丹(fa2837)が、それぞれの担当希望を述べる。蓮は、憧れの先輩である明石に声に合わせてコーラスするのが嬉しかった。
「それじゃ、俺は演奏担当で。『奈落数え歌』ではピアノを弾こう」
ミュージシャンの佐武は、演奏担当を申し出た。
「じゃ、俺は鼓でいくぜ。曲調が決まったから、イメージは掴みやすいじゃん」
こういう音がいるんだろうなって想像できたたので本番が楽しみな珂鴇は、やる気十分、いつでもOKな状態だ。
「私は、琴『花梨』で演奏します。音大時代に嗜んでいたから、演奏は大丈夫。歌い手の歌声を引き立てるような演奏を心がけるわね」
穏やかに微笑み、担当を述べる橘川。
演奏担当が作成した曲に合わせ、エルティナは歌詞の一言一句を考え、丁寧に纏めた。
「曲、できました!」
「歌詞も完成しました」
皆が一斉に報告する。
完成した歌詞をチェックした輪島は
「あの‥‥もう一行歌詞を足していただけませんか‥‥? 古神道の『布留の言』をイメージされたようですが、ひとつ足りないような気がしますので‥‥」
控えめにエルティナに加筆を要請した。
わかりました、すぐに付け足しますとエルティナは作業にとりかかかった。一行のみの加筆なので、あっという間に終了した。
●主題歌作成
「俺の提案としては、曲調とボーカルの声質を活かすのに主題歌を歌う遠間由樹の声を重ね録りしていきたい。彼女自身の声にコーラス担当の声を幾重にも重ね、幻想的な雰囲気と奥行きを出す方法だな」
繰り返しの作業になるので、細かく、丁寧に仕上げなければならないが、重ね録りは、歌全体を通しユニゾンと高音、低音でのハモリパートを基本にという佐武の案に異議はなかった。
「それじゃ、ドラムは曲を崩さないように、控えめに、しっかりとリズムを刻むほうがいいかも。最後は音を消せるように音は小さく持っていき、余韻を残すのに邪魔にならない程度まで刻む、ってのはどうよ?」
それは雰囲気次第だが、音を合わせてみねーとわかんねー、と意見を述べる珂鴇。
「私は、主題歌では真人様と一緒にギターを担当いたします。由樹様の歌声も曲に合わせての重ね録りは、より印象的になることでしょう」
皆の足を引っ張らないよう練習して臨みます、とミッシェルが言う。
「しっとりしたスローテンポのバラードも良いわね。最初の部分の繰り返し部分はボーカルの重ね録りで、それに沿うような二胡の音色で静かに始まって音色も重ね、奥行きを増してゆくような雰囲気はどうかしら?」
優しく、どこか物悲しいメロディのギターに、零れ落ちるような音をキーボード、ベースも低音をしっかりと印象的に響かせ、ドラムも丁寧にリズムを刻む。ヴァイオリンとチェロもハーモニーを美しく奏で、伴奏に由樹のウィスパーボイスが綺麗に乗せ、二胡のゆるやかなフレーズを奏で、歌詞の一言一句を大切にしつつ大らかに。最後は、歌詞の終わりに合わせ、しんと余韻を残すような静けさので終わる、というのが橘川の案だ。
「うむ、どれも良いアイデアだ。異議無しだ。その調子で作曲と演奏を頼むよ」
チーフプロデューサーの褒め言葉に、作曲、演奏担当者は安心した。
皆が奏でるメロディに合わせ、エルティナはイメージに沿う歌詞を考えた。
作業中、主題歌を歌う遠間由樹とマネージャーがスタジオに訪れた。
「はじめまして、主題歌を歌う遠間由樹です。作業のお邪魔してすみません。桜のムースを持って来ましたので、皆さん召し上がってください。私の手作りなんですけど‥‥」
根を詰めて作業していたこともあり、皆、疲れていたので由樹の差し入れは有難かった。
「ありがとうございます。今、温かい紅茶を淹れてきますね。由樹さんの喉を労わらないといけませんしね?」
微笑しながら、橘川は紅茶を淹れに給湯室に向かった。
由樹が差し入れたムース、橘川が淹れてくれた温かくて美味しい紅茶で癒されたメンバーは、再び作業にとりかかった。
頑張った甲斐があり、作詞、作曲作業は順調で、仕上がりもさほど時間はかからなかった。
●『奈落数え歌』収録
明石がメインボーカルで、蓮と柊はコーラス担当。
演奏楽器は、佐武はピアノ、橘川は琴、ミッシェルは鈴、エルティナは古筝、珂鴇は鼓。
一順目は、明石のアカペラで始まり、二順目は再び歌詞の頭から歌い、演奏がつく構成となっている。
一つ人の憎しみの
深きに勝るものはなし
水鏡たゆたう願いは廻り
寄らば真には雫が沈む
いずこか鈴の音鳴らすなら
無為の想いをば奈落へ流す
七人の子ら天に昇る頃
やおの心をば巡りて遠く
数え歌の流れは、奈落佳人の設定に沿って奈落送りまでを「数える」感じになっている。メインボーカル担当の明石は、コーラス担当の蓮と柊の声をしっかり聞き、二人をリードするように音程に気をつけて歌った。
柊は、明石の声に重ねるように丁寧に、添える感じでハモり、蓮は真剣に、女声の高音を活かしたコーラスを披露した。
演奏陣も、明石を引き立てることを心がけ、丁寧にメロディを奏でる。
ピアノの佐武は、音を前面に出すのではなく、あくまで歌声を支えるように演奏し、
橘川は優雅に琴を爪弾き、珂鴇は鼓を響かせてしっかりリズムを取り、エルティナは童謡を歌うように緩やかに中国古筝を弾き、ミッシェルは伴奏と鼓のリズムを支えるかのように、琴と中国古筝の音に沿いながら、アクセント的に鈴を鳴らす。
曲の最後は、ミッシェルが鳴らした涼やかな鈴の音で静かに終わった。
●『夜想花』
主題歌のタイトルは、話し合った末『夜想花』に決まった。
担当は、明石はベース、橘川は二胡、珂鴇はドラム、エルティナはヴァイオリン、ミッシェルはギター、蓮はキーボード、柊はチェロである。
彼らが奏でるしっとりしたスローテンポのバラード演奏に合わせ、由樹の囁く歌声が披露された。
はらり・はらり・はらり
はらり・はらり・はらり
その部分のみ、由樹のボーカルを重ね取る。
不寝の囁く あやどりのない夜ごとの調べ
朧に照らす小さな蕾は 色づき匂うこともなく
薄紅を 密やかに秘めたまま
雲間に見上げる月だけが 強く 孤独へ惑う影を映した
けれど 花よ散るな 実を結ばぬ花よ
はらり・はらり・はらり いく重にも響かせて
想い孕んだ花弁を 涙雨の雫がそっと撫でる
哀しみ飲み込む水面へ 葉を揺らし落ちていく 寂静 寂静
皆と由樹の頑張りで、収録は終了した。